STAY WITH ME ドラえもん   作:ミサ菓子折

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[おばあちゃんをもう一度。]

深夜の病院を抜け出し、僕らはタイムマシンの元に向かった。

行先は50年以上前。

おばあちゃんが亡くなったその日だ。

 

ドラえもん「ところで君、おばあちゃんが亡くなった時のことは覚えているのかい?」

のび太「それが、あんまり覚えてないんだ。あの当時は亡くなったってことがよくわかってなかった」

ドラえもん「幼稚園だったね。それじゃ分からないのも仕方ないか」

のび太「僕は、その時の記憶から逃げていた気もする。ただただ、悲しかったんだ」

ドラえもん「いいのかい? また向き合うことになるんだぞ」

のび太「覚悟の上だよ」

ドラえもん「そういう意味じゃない。今日亡くなると分かってる人に会うんだ。それがどれだけ残酷なことか……」

のび太「もう随分前におばあちゃんに会った時、おばあちゃんは未来に自分が生きてないことを知ってたんだ」

ドラえもん「だから、大丈夫だって言うのかい」

のび太「わからない! わからないよ! でも……!」

ドラえもん「ま、そりゃそうだ。おばあちゃんも、最後に君と会うことがマイナスになると決まったわけじゃない」

のび太「意地悪だな、ドラえもんは」

ドラえもん「僕にはそれだけのことしか言えないよ。正しいか間違ってるか、僕にだって分からない」

のび太「うん、わかってるよ」

 

石ころぼうしで隠れながら家の中を歩き回る。

幸い、幼いころの僕もパパやママもいなかった。

 

ドラえもん「おかしいな。のび太ばかりかパパもママもいないぞ」

のび太「思い出したよ。おばあちゃんの体が悪くなって、このころはママとよく外に出かけてたんだ」

ドラえもん「パパは?」

のび太「仕事。このころは働き盛りだっけ……」

ドラえもん「おばあちゃんは家にいるのかい?」

のび太「……それも思い出した。この日、おばあちゃんは昼間のうちは元気だったんだ。それが夜に容体が急変して」

ドラえもん「その日のうちに亡くなったわけか」

のび太「今考えれば、パパと同じじゃないか……」

ドラえもん「のび太君。悪いように考えるのはよそう。ほら、この部屋におばあちゃんいるんだろ。さっさと会って、見つかる前に帰るぞ」

のび太「うん」

 

僕らは石ころぼうしを取る。

そして、おばあちゃんの部屋のふすまを開けた。

 

おばあちゃん「おや、出かけてたんじゃ……」

のび太「…………」

おばあちゃん「ひょっとして、のびちゃん……?」

のび太「おばあちゃん! 僕のこと、覚えててくれたの!?」

おばあちゃん「そりゃあ、忘れるものですか。そちらの青い子も!」

ドラえもん「あ、どうも。僕ドラえもんです」

おばあちゃん「いったい、どうしたんです! こんなに立派になって! 見違えましたよ!」

ドラえもん「ああ! そんな興奮しないで! 寿命が尽き……」

のび太「わあ! 何でもない! 何でもない!」

おばあちゃん「?」

のび太(バカ! 言ってどうするんだ!)

ドラえもん(ご、ごめん)

のび太「実は、僕の時代のパパが今危篤状態なんだ」

おばあちゃん「まあ、のび助が?」

のび太「僕はどうすればいいと思う? 教えてよ、おばあちゃん」

おばあちゃん「そう、のび助がねえ。ふふっ」

のび太「何で笑うのおばあちゃん? 危篤なんだよ? あの年じゃ、亡くなっちゃうかもしれないんだよ?」

おばあちゃん「そりゃあ亡くなるのは辛いことでしょうけど、のびちゃんはこんなに立派になったじゃないですか」

のび太「僕が立派になったって意味ないんだよ! パパは、パパは!」

おばあちゃん「のび助は満足してると思いますよ。のびちゃんが立派に育ってくれて、もうあとは余生を生きるだけ。そうでしょう?」

のび太「満足してる?」

おばあちゃん「ええ、そうですとも。今の私のようにね」

のび太「おばあちゃん……」

おばあちゃん「さてと、よいしょっと……」

のび太「おばあちゃん? どこへ?」

おばあちゃん「体の調子がいいうちに、のびちゃんにパンケーキを焼いてあげなきゃ。もう時間がないみたいですからねえ」

のび太「!!」

おばあちゃん「大人になったのびちゃんも食べていきますか?」

 

口の中に、甘い香りが広がる。

それは、最後に食べたパンケーキの記憶だった。

 

のび太「ううん、いらないよ。あの時のパンケーキ、とてもおいしかったよ、おばあちゃん」

おばあちゃん「それはよかったです」

のび太「……おばあちゃん」

おばあちゃん「のびちゃん、もうここには来ちゃいけませんよ。のび助のこと、よろしくたのみますね」

のび太「おばあちゃん!」

おばあちゃん「ドラえもんさん、のびちゃんのことよろしくお願いしますね」

ドラえもん「……はい」

 

おばあちゃんはそう言って、揺れる体で部屋を出て行った。

元気だと言っても、もう相当悪いのだろう

 

のび太「初めておばあちゃんに怒られちゃったよ」

ドラえもん「でも、来てよかった、だろ?」

のび太「うん。帰ろう、ドラえもん」

 

そうして僕らは未来へ帰った。

そして翌朝。

パパが目を覚ましたと医者から知らされた。

僕らは大喜びでICUに飛び込んだ。

 

ママ「あなた!」

パパ「いやあ、すまない」

ママ「よかったわ。無事に目を覚ましてくれて」

パパ「すまない。僕、もうタバコ止めるよ」

ママ「当然でしょ! お酒も禁止です!」

パパ「はは……きついなあ。そうだ、のび太」

のび太「な、なに? パパ」

パパ「実は、変な夢を見たんだ」

のび太「変な夢?」

パパ「目の前におふくろが立ってたんだ。それで言うんだよ。まだ来ちゃいけません、のびちゃんが悲しむでしょうがってね」

のび太「おばあちゃんが?」

パパ「僕が、『いやあ、あいつはもう僕なんか必要ないよ』って言ったら、今度はおやじまで現れて『バッカモーン』って竹刀で追い掛け回されてさ。それで目を覚ましたらここにいたよ」

のび太「僕にはパパがまだ必要だよ」

パパ「……そうか。じゃあ、もう少しだけ長生きしてみるかな」

 

おばあちゃん、助けてくれたんだろうか?

僕は帰り道、しずかちゃんにその話をした。

しずかちゃんは「きっとそうよ」と答えてくれた。

なんだか、僕は胸の中が熱くなったのだった。

 




タオルケットをもう一度……ではなく、おばあちゃんをもう一度です。
サブタイトルは『タオルケットをもう一度』から取りましたって話ですね。
おばあちゃんは全て気付いています。
自分はもう間もなく死ぬということも、のび太が死ぬ直前に会いに来たという無神経な行動にも。
それでも、立派に60代まで成長したのび太を見れたことは嬉しかったんじゃないでしょうかね。

まあ、「寿命が尽きる」と言いかけたドラちゃんのほうが一番無神経ですが。
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