それから僕らは中学校に入った。
スネ夫はいなくなったけど、他のメンツはほとんど小学校と変わらず。
僕がいて、しずかちゃんがいて、ジャイアンがいて、他のメンバーもいて、あんまりうれしくもないけど出木杉も一緒だった。
肝心のいなくなったスネ夫も、空き地には時々顔を出してくれて、僕らはいつも通り遊んだのだった。
いつも通り野球をしたり、しずかちゃんの制服がかわいいって話で盛り上がったり、スネ夫の学校の愚痴話を聞かされたり。
だけど、それも中学に入って一か月が過ぎるまでだった。
そこで初めて、僕らは中学に入ったということをまざまざと知ることになった。
スネ夫「そういえば、君達ちゃんと勉強とかしてる?」
ジャイアン「あ? そんなもんいつも通りだろ」
スネ夫「それ、勉強してないってこと?」
ジャイアン「そうとも言うな」
スネ夫「ジャイアン、勉強はしておいた方がいいよ。いくら公立っていってもさあ」
ジャイアン「うるせえ! なんだ、またお坊ちゃん学校自慢か!」
スネ夫「そうじゃないよ。そりゃ僕の学校みたいに落第とかは、そうそうないだろうけどさ」
ジャイアン「ラクダイ? なんだそれ、旨いのか?」
しずか「聞いたことあるわ。中間試験とか期末試験のことよね?」
のび太「チューカン試験? キマツ試験?」
スネ夫「中学からは学期中に大きな試験が1、2回あるんだよ。それを中間試験、期末試験って言うんだ」
ジャイアン「何だよ、立派な名前つけやがって。小学校の時とどう変わるんだよ」
スネ夫「全然違うよ。小学校の時は先生の気まぐれみたいなもんだっただろ。中学は学年で統一の試験になるんだ」
しずか「そういえば、試験範囲も小学校の時とは比較にならないって聞いたわ」
のび太「ええ~っ!」
ジャイアン「てきとうにやりゃいいだろ、そんなの」
スネ夫「あのねえ、ジャイアン。いや、まあそっちの学校ならそれでもいいのか?」
しずか「よくはないわよ。成績悪いと親を呼び出されるわよ」
のび太「ええ~っ!」
ジャイアン「なんでえ。そんなの小学校と同じじゃねえか」
スネ夫「あ~、もう。とにかく、僕の学校じゃ全員順位が張り出されるから、僕はGW過ぎたら試験勉強。ここには来ない、いいね?」
しずか「ええっ、スネ夫さんところ全員張り出しなの? いやだわ、私のところも……」
スネ夫「いや、たぶんそっちは成績優秀者だけじゃないかなあ?」」
しずか「不安だわ。私帰って勉強しなきゃ」
のび太「あ、しずかちゃ~ん!」
ジャイアン「この馬鹿! しずかちゃん帰っちまったじゃねえか!」
スネ夫「わあ、ごめんって。でも、ジャイアンも本気で考えたほうが……」
「おーい」
ジャイアン「お、安雄たちも来たな。野球しようぜ」
スネ夫「んもう……」
僕たちは知らなかった。
中学校は小学校とは違うということを。
中間試験はヤバイ。
そんな恐れと噂はじわじわと僕らを襲い始める。
一人、また一人と空き地に来るものはいなくなり、中間試験1週間前になると誰も来なくなった。
残ったのは中間試験ってのがどんなのか分かってない僕と、小学校と中学校でそう変わってたまるかと意固地になってるジャイアンだけだった。
ジャイアン「なんでぇ、なんでぇ。試験が何だってんだ」
のび太「ほんとだね。みんな薄情だなあ」
ジャイアン「まったく、俺様も見る目がねえなあ。心の友はのび太君だけだぜ」
のび太「やだなあ、照れるじゃないか」
ジャイアン「のび太……」
のび太「ジャイアン……」
全く現実を見てなかったバカ2名をぶん殴ってやりたい。
あの時の僕は、現実逃避以前に現実そのものを理解してなかったと思う。
中学時代の苦い経験。
みなさんはありませんか?
それとも素直に勉強してたでしょうか?