転生した狐はメイドになる   作:くまんじゅう

11 / 42
殆ど解説+説明回です


魔厭術

 ナスカ王国に来てから10年程経った。

 

 この10年で私もだいぶこの国に馴染んできたと思う。来た当初は人々が距離感を測りかねていて少し遠巻きになっていたが、食べ歩きなどをしていると人獣形態の幼い容姿も相まって、おまけされたり、おばちゃんにお菓子をもらったりするようになった。

 扱いが完全に小学生くらいの幼子にする対応だったのは少し心にきたが、10年も経てば色々と吹っ切れるものである。持っていた恥じらいなど10歳くらいの子たちとの隠れんぼを本気で楽しんだ事を自覚した時点で全て吹き飛んだよ。

 

 王国に来る原因となったルドラ達との冒険にも何度もいった。ルドラがヴェルダナーヴァに「〜〜に認められろ」とか言われていたのを形代の実験も兼ねて盗み聞きしてたので近い内にまた冒険に出ると思う。

 また、ナスカ王国に来た当初から開発を進めていた魔法と陰陽術を組み合わせたハイブリッドの術も完成した。その術を作る過程を説明するに当たって、まず魔法と陰陽術について説明しよう

 

 初めに、魔法とは「何らかの効果を生じさせるイメージを特定の法則に則って具現化させる代物」らしい。また、あくまでイメージが主体のため竜種等の精神生命体にも効果を及ぼすという。

 魔法にも多様な種類があり、元素魔法,精霊魔法,召喚魔法などが代表的なもので、霊子という粒子を操作することで初めて使える神聖魔法や核撃魔法などもあるらしい。また、ラミリスさんが言っていた原初の魔法というあらゆる法則が無視できる異次元の魔法も存在する。ルシアでも使えないというそれを使えるラミリスさんってヤバいと改めて思った。

 

 次に陰陽術だが、これは私が転生した際に獲得したスキル『陰陽道』を同じく転生時に獲得していた『神通力』『魔造者』と統合して得た『陽魔造』に含まれている権能である。

 私の扱う陰陽道の本質は魔素や霊子などの粒子を通じて相手にエネルギーを与え、現実に介入する技術である。このエネルギーに様々な付随効果を与えることで相手に呪いやバフなど付与することが出来る。対象は生物にとらわれず、無生物や大気、使用者の練度やエネルギー量によっては時などの概念にも影響を及ぼす。

 対象にエネルギーを奪われるかもしれないという難点はあるがエネルギー自体を吸収するなど常識外のため、それも無視していいレベルの欠点である。また、形代なども併用することでエネルギーを与える粒子の回路に防壁を展開して反撃を防ぐことも可能だ。

 

 ルシア曰く、この陰陽道の権能があるだけで魔素だけでなく霊子にまで干渉が可能なためユニークの権能としては異常だそう。

 

 この2つの術を組み合わせるに当たって、まず問題になったのがエネルギー消費量の問題である。

 どちらもエネルギーを使用し発動するが、組み合わせるとエネルギー消費量が乗算されて嵩んでいくのだ。加算ではなく乗算というのが厄介で一度完成させた術式を試しに発動させていたら7回で魔素が尽きて低位活動状態に入ってしまった。

 2つ目の問題が制御の難しさである。ルシア曰く制御の難易度は核撃魔法に使う黒炎核(アビスコア)を軽く凌駕しているらしい。使ってみた感触として使う度に膨大な知恵熱が溜まっていくような感覚のため、演算系のスキル『信哲者』がなければ発動すら出来なかったと思う。

 

 この2点を解消できれば通常の魔法耐性を無視して相手に影響を与えられる術式になる。ルシアは「聖魔攻撃耐性である程度は威力が減衰されそうかも」と言っていたが。

 

 課題の解決にはルシアの協力もあり一人の時とは桁違いの速度で進んだ。それでも、約10年もかかったが。

 開発が大きく進んだ経緯には私が新たなスキルを獲得したのと、ルシアのスキルが進化したからというのがある。

 

 まず、スキルとは成長を世界が認めたときに獲得できる”特殊現象発動システム”であり詠唱や法則の理解は不要な代物だ。

 私はこれまで、スキルは大きく分けて「コモンスキル,エクストラスキル,ユニークスキル,固有スキル」の4つに分類されると思っていたのだが、ユニークスキルの更に上位のスキルとして究極能力(アルティメットスキル)というものが存在するらしい。

 究極能力はヴェルダナーヴァ曰く魂に大きな揺らぎが起き、魂に根付いたスキルが進化することで獲得することがあるという。

 ルシアは以前行った地域で、自らの力を凌駕する魔物複数体との戦いの中で進化し、神人となりスキルを進化させた。まさかルシアが魔法だけでなく剣も扱えたのにはだいぶ驚いたし、正直ビビった。

 

 ルシアが獲得したスキルは「知識之王(ラファエル)」というサポートに特化したスキルで、その演算速度は以前とは桁違いであり、大幅に開発が短縮されるなど大活躍だった。また、ルドラも同時期に「誓約之王(ウリエル)」というスキルを獲得していた。民の声を聞くこともできるそうで、非常にルドラらしいスキルだと詳細を聞いたときに皆で大笑いしたものだ。

 

 私も新しいスキルを冒険の中で芽生えさせた。

 私が獲得したユニークスキルは「福音者(コヘレト),攻究人(パスカル)」の2つ、権能はそれぞれ

『福音者』宣告、平静、虚喰

『攻究人』属性変換、空間制御、万能感知、思考加速

 となっている。福音者は字面だけでは効果がわかりにくいが”宣告”は何処にいても無条件に言葉を聞かせられる権能、平静は魔法効果やスキルの付随効果を霧散させる権能、虚喰は放出系の攻撃を取り込める権能だ。

 

 福音者を得る時に戦った魔物が魔王種を持っていたようで、私も魔王種を獲得してはいる。

 攻究人は魔厭術の研究をしているときにヴェルダナーヴァから応援として与えられた。これまで、思考加速ができなかったので有り難い限りである。

 

 この2つの要因で最終的には術式の開発・改良スピードが当初の100倍以上になって、漸く術が完成した。スペックとしてはルドラとの模擬戦で披露した際に、誓約之王の絶対防御を展開し損ねたルドラが一ヶ月動けなくなるほどの威力を見せた。その上観戦していたヴェルグリンドに解析出来なかったとまで言わしめたのだから、対解析用のプロテクトを術式に百以上も仕込んだかいがあるというものだ。

 

 こうして、魔法でも陰陽術でもない私とルシアだけの新たなる術「魔厭術」が完成したのだった。

 

 ***************************

 

 剣術の稽古をルドラやルシアを相手にしていたとき、ふと10年前に頼んでいた武器のことを思い出したので、ヴェルダナーヴァにいつ完成するのか聞いたら「もうできているよ」と返された。どうして早く言わなかったのかと問いただすと、

 

「ノウェム、術の開発に夢中になってすっかり忘れてたでしょ」

 

とそう返されたのでぐうの音も出なかった。そのまま時間が過ぎていったが、私が魔王種を獲得したときにお祝いとしてヴェルダナーヴァは創った武器を渡してくれた。

 

「銘は九曜(グラハ)。ノウェムがこの武器の真価を引き出すのを楽しみにしているよ。」

 

九曜は九つの姿に変形出来るため、普段はその一つのネックレスにして持ち歩いている。

 

 話は変わるが、最近ヴェルダナーヴァとルシアがよく二人っきりで話しているのを見かける。あの二人、怪しいなぁ・・・・・・・異種族間で子供って出来るのだろうか? 

 

 とまあ、そんなこんなで先が楽しみな日々だった。

 

 ***************************

 

 精霊の棲家に篭っていてはできなかったような経験をつんで、「一度棲家に里帰りでもするかな〜」と考えながら蛇腹剣の使い方をルシアとヴェルグリンドと訓練していると、修練場に勢いよく入ってきたルドラが突然声を張り上げた。

 

「よしっ! お前ら、魔王に挑みに行くぞ!」

 

 本当に突然の宣言だったので思わず、

 

「そんな! 風呂に行く位のテンションで! 言うなっ!!」

 

 と切りかかってしまったが、誓約之王の絶対防御に防がれた。絶対防御の先のドヤ顔のルドラが非常に、とてもとても苛つくが、一旦それは置いておこう。

 

「で、一体全体どうして急にそんなことを言い出したんですか?」

「いいわよ、行きましょう!」

「そうです兄様! 流石に急すぎです! 一体何があったんですか?」

 

 ルドラに理由を急かす。ヴェルグリンドは全肯定のため論外だが、ルシアも兄が突然言い出したことに混乱して説明を求めている。

 

「いやな、ヴェルダナーヴァと約束したんだよ”世界を統一して、皆が笑顔で安心して暮らせる理想的な世界を作る”ってな。で、その約束を果たすためにはまずは魔王に認めて貰えって言われたんだ」

「それで魔王に挑むことになったんですか」

 

 呆れた理由だ。約束のために、かつてヴェルダナーヴァに戦いを挑んで認められたという魔王に挑みに行くなんて。しかし、私もヴェルダナーヴァの理想に共感して調停者を引き受けたのだ、ここで協力を惜しんでは本末転倒だろう。

 

「では、行きましょうか」

「ノウェム!?」

「そういうことなら良いじゃないですか、ルシア。それに、私も調停者の先輩には会ってみたいですし」

 

 ルシアが唸っているが、行くのはもう確定事項だろう。ルドラは発起人だしヴェルグリンドはルドラのことに関しては全肯定だ、ここに私も賛成したのだからルシアだけではもう反対しきれないだろう。

 

「うぅ〜〜〜もう! 分かりました!」

「そうか! なら、早速行くぞ! 北の果て──氷土の大陸に!」

 

 ラミリスさんのところに里帰りするのは、もう少し先になりそうだ。

 




物語の都合上、誓約之王と正義之王の交換は何回かギィと交戦した後っていう設定にしました(ルシアとヴェルダナーヴァが結ばれるのも)。
九曜は原作の創生級ってインドの宗教が名前の元ネタっぽいてな。と思って名付けました。九曜は神話級に偽装してあります
魔厭術はやろうと思えば絶対防御貫通します。元の陰陽術が霊子とかが扱えるのが前提になってるので。まあ、普段はそんなことしないんですけど



ステータス
 
名前:ノウェム
種族:聖魔霊──幻竜狐
加護:精霊女王の加護、星王の紋章
称号:嚆矢の異世界人、調停者
魔法:<元素魔法><物理魔法><精霊魔法><上位精霊召喚><上位悪魔召喚><陰陽術><神聖魔法><核撃魔法><魔厭術>
技能:固有スキル『神獣化バカスモノ』
ユニークスキル『憤慨者シャイタン』『信哲者シリエタモノ』『陽魔造マーリン』『福音者コヘレト』『攻究人パスカル』
耐性:『痛覚無効』『自然影響無効』『精神攻撃耐性』『状態異常耐性』『物理攻撃無効』

保有武器:[九曜グラハ]

ギィ以外の原初って出す? どうでもいいが作者はテスタロッサが好き

  • ディアブロ
  • テスタロッサ
  • ウルティマ
  • カレラ
  • レイン
  • ミザリー
  • 出さない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。