転生した狐はメイドになる   作:くまんじゅう

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天星宮

 ある日、いつものこととなったルドラとギィの戦いを白氷宮で見守っていると突然、ヴェルダナーヴァから思念伝達が飛んできた。

 

(ノウェム。今すぐ王城に来れるかい?)

(・・・? どうしたんですか突然?)

(いいから、早く来てね)

 

 本当にどうしたのだろうか? これまでこんなに急な呼び出しなど無かった。その上、要件も言わずにただ「来い」とだけ言って終わりなど。・・・・・・・・・行っておくか。

 

「皆さん、申し訳ありません。急用ができてしまったので、一度失礼します」

「あら、珍しいわね。何かあったの?」

「ヴェルザードさん。本当にわからなくて、ヴェルダナーヴァ様にいきなり『 来い』とだけ思念伝達が飛んできたので」

「そう、兄様のことだから何か理由があるのでしょうね。いってらっしゃい」

「はい、いってきます」

 

 空間転移でナスカ王城の中にある修練場に転移する。そこからヴェルダナーヴァの私室まで歩く。その間もずっと何があったのかを考えていたが、結局わからなかった。

 そして、ヴェルダナーヴァの私室に到着した。部屋に入ると、ヴェルダナーヴァが椅子に座ってこちらを待っていた。

 

「ヴェルダナーヴァ様。思念伝達を聞いて来ましたけど、何かあったんですか?」

「来たね、ノウェム。じゃあ行こうか、今日は君に会わせないといけない者達がいるんだ」

「会わせないといけない者?」

「それは後で説明するよ。九曜を出して」

「・・・・・? はい」

「ありがとう・・・・・・・・■■■」

 

 ヴェルダナーヴァに言われた通りにネックレスにして首から下げていた九曜をヴェルダナーヴァに差し出す。

 受け取ったヴェルダナーヴァが九曜に向けて何か言葉を発したかと思ったら、九曜から光が溢れ、人一人入れる位のゲートのようなものが室内に展開された。

 

「何したんですか! ヴェルダナーヴァ様!! 九曜にそんな機能あったんですか!?」

「うん。九曜はネックレスになっている時は、とある場所への鍵としての役割を持っているんだよ」

「・・・・・・・・・・まあ、いいです。で、この転移門は何処につながっているんですか?」

「それはね、僕の生誕地──天星宮」

 

 ***********************

 

 ヴェルダナーヴァ曰く、天星宮とは創造神であるヴェルダナーヴァが生まれた始まりの地であり。球体の中に存在する、天と地のみがあり、草木は枯れず、水は濁らない。正に楽園というべき場所。

 そんな場所で誰が待っているのか聞くと、

 

「始原の天使達だよ。今回は顔合わせということで全員に揃ってもらっている」

 

 始原の天使はヴェルダナーヴァが光の大精霊から生み出した闇の大精霊から生まれた原初の悪魔と対を成す7柱の熾天使(セラフィム)のことであると、調停者の就任と同時に聞かされたのを思い出した。

 始原の天使の詳細を思い出したことで更に疑問が深まる。

 

「なぜ、そんな方々に私を会わせようと?」

「君は異世界人から世界のバランスを守る調停者だろう。君と始原達の役割は一部が被っているんだ。君は世界の内側から、始原達は外側からというふうにね」

「つまり、仕事の顔合わせということですか」

 

 理屈はわかったが、今回然り本当にヴェルダナーヴァはいつも唐突だ。いつか改善されることを期待しよう。改善が為されることは無いだろうが。

 

 そんなことを考えながら転移門を潜る。

 視界に飛び込んできたのは──理想郷。

 

「・・・・・・すごい」

 

 只々それしか言葉が出なかった。

 

 誰かの想像する天国とはここなんだと言わんばかりに美しく咲き誇る草花、それらを影から支えるように静かに流れる透明な水の流れ。まるで絵画の世界に迷い込んでしまったかのような世界がそこにあった。

 ヴェルダナーヴァに付いて舗装された道を歩いていると、木々や水の割合が減って、代わりに荘厳な城のような建物が立っていた。

 外観は白を貴重としていて、宗教画に描かれるような天界によく似合うお城だ。そして城の前には噴水があり、そこから聖なる気が溢れている。というより、この天星宮という空間全体から聖なる気が満ちている。しかし、それは魔に属するものに悪影響を与えるでもなく、遍く全てを包み込んでくれるかのような優しい聖の気だ。

 

「あの城の中に彼らは居るよ」

「・・・・・っ! はっ、はい!」

 

 あまりの美しさに呆けてしまっていた。

 

 周りに気を取られる様子もなくヴェルダナーヴァは城に向かって進んでいく。

 やはり、生誕地ということもあって見慣れているのだろう。

 

 ヴェルダナーヴァが城の門前に到着すると同時に独りでに門が開き、門の向こうには7人の天使が跪いていた。

 目の前で頭を垂れている彼らだが、一人一人の実力はとんでもなく高い。全員が覚醒したての魔王を超えるレベルのオーラを感じると言ったら伝わるだろうか。

 彼らが天使の頂点たる熾天使の更に上位の存在、始原の七天使なのだろう。

 

「ヴェルダナーヴァ様、お帰りなさいませ。この度は────」

 

 ヴェルダナーヴァに銀色の髪を持った天使が帰還を祝う言葉を述べる。彼が始原の七天使のリーダーなのだろうか。

 考えに浸って、ふと顔を上げると、天使たちがこちらを見ていることに気がついた。どうやら口上を述べ終えて、こちらの紹介に入ったらしい。

 

「みんな、この子は新たにギィと同じ調停者になったノウェムだ」

「只今ご紹介に預かりましたノウェムと申します。調停者としての使命が皆様の使命と一部重複しているため、この度は挨拶に伺った次第です。以後、宜しくお願い致します」

 

 天使たちの反応を伺うと、概ね良好なようだ。しかし、一部はそうもいかないようで──

 

「ヴェルダナーヴァ様! この者は調停者としては弱すぎる! この程度で一体どうやって世界のバランスを保つというのですか!」

「コルヌ! ヴェルダナーヴァ様の判断に否を言うつもりか!」

 

 コルヌと呼ばれた天使の一人が反対を申し出て、一人の天使に非難されている。しかし、ヴェルダナーヴァはそれを当然の意見と思っているようで、それに対し咎めたりは全くしようとしていない。

 

 さて、私はどうするべきだろうか? このまま無視しても良いだろうが、そうするとコルヌという天使との間には遺恨が残りそうだ。

 調停者としてそれは困る・・・・・・・・・・・・・・そうだ。いい事を思いついた。

 

「では、コルヌ様。一つ私の方から提案があるのですが」

「ん? なんだ」

「私と、全力で戦っていただけないでしょうか?」

 

 始原の天使たち全員がコルヌへの非難をやめ、私を見る。

 皆、口に出さないだけで分かっているのだろう、私と彼の間には圧倒的な力の差があることを。彼は覚醒魔王はこれくらいと、ギィに示された以上のオーラを纏っているのに対し、私はそれに未だ及んでいない。

 

 弱者の側から強者の側に戦いを挑むなど馬鹿のやる行為だ。

 

「その言葉の意味。分かっているのだろうな」

「ええ、それは勿論」

「・・・・・・・・・・・・・ヴェルダナーヴァ様、よろしいでしょうか」

「うん、認めるよ」

 

 それを聞いた天使たちはヴェルダナーヴァがこの戦いを認めたことに多かれ少なかれ驚いている。彼らの立場からしたら、ヴェルダナーヴァ自らが調停者として連れてきた者をその場で消滅させるのを認めているのと同義だからだろう。

 

 今の私の実力では万に一つも勝ち目はない。しかし、ここで実力を示さなければ調停者としては彼の言う通り役不足だろう。それは、理想のためにも認めるわけにはいかない。

 

 ────────さて、どう勝とうかな? 

 




始原たちの口調がわからない・・・・

(補足)ノウェムはナスカ王国で普段からルドラやルシア、ヴェルグリンドに模擬戦を挑んでいるし、ギィとルドラの戦闘を何度も見ているので戦いへの恐怖心はとっくに薄れてミジンコレベルになっております。というよりも、自覚はないですが少し戦闘狂になっています。

すみません次回まで少し時間が空くかもです

ギィ以外の原初って出す? どうでもいいが作者はテスタロッサが好き

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