結婚式当日
後数刻で式が始まるというのに、ノウェムは未だ帰ってきていなかった。
「ねえルドラ、流石に遅いと思わない?」
「ああ、遅いな。几帳面なあいつらしくねえ」
ルドラとヴェルグリンドもいつまで経っても来ないノウェムに、流石に焦ってきたようだ。
「あの子、ルシアとは親友だから、来なかったらルシア悲しむわよ」
「そうは言ってもなぁ。思念伝達にもでねえし、呼びようがねえ」
(兄様、グリン姉様。ノウェムは来ていますか?)
とうとうルシアからも二人に思念伝達が来てしまった。今は新婦控室にいるだろうに、気配でノウェムがいないと分かって思念を飛ばしてきたようだ。
(いや、まだ来てねえんだ)
(そう・・・ですか)
ノウェムがルドラたちの下にもいないと判明してしまった為か心做しか声音は暗くなってしまっている。
このままノウェムは参加しないのかと本気で不安に思い始めたその時、ルドラたちのいる部屋の扉が勢いよく開いた。
「はっぁ、はぁっ・・・・遅くっ、なりましたっ!!」
「っ! ノウェム! 流石に遅いわよ! それに服汚れてる!」
(グリン姉様! ノウェムが来たんですかっ!!)
「ノウェム! 今すぐルシアに思念伝達してやれ! 不安がってるぞ!」
ノウェムが服が着崩れるほどに急いだ様子でルドラたちのいる部屋に飛び込んできた。
ヴェルグリンドとルドラに怒鳴られ、急いでノウェムは『
(ルシアすみません! ちょっと手が離せなくてギリギリになりました!)
(ノウェム! 遅いですよ! 来ないんじゃないかと思ったんですからね!)
ルシアに怒られ、しかし喜ばれて私は彼女の結婚式に臨む。
だけど本当にお祝いの品の用意が間に合って良かった〜〜〜。
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「ルシアのウェディングドレス楽しみですね」
「本当にね。でも、兄様の方も気になるわ」
チャペルのような式場で席に座りながらヴェルグリンドと小声で話す。
前世含めて初めて出席する結婚式だから、結婚するわけでもないのに緊張で一杯だが、それ以上に二人を祝福したいという気持ちが溢れて止まらなくなっている。
期待と感動で既に泣きそうになっていると、新郎の入場に入った。
入場してくるヴェルダナーヴァは創造主としての威厳もあり、新郎としての初々しさもある。非常にヴェルダナーヴァらしい姿だった。
「さすが堂々としてますね、ヴェルダナーヴァ様」
「まあ、兄様だものね。でもいつもより少し動きが硬い気もするけど」
そして、いよいよ新婦・ルシアの入場だ。
ルシアはルドラにエスコートされて入ってくるらしいが、どんな風になるのだろう?
そう思った途端、式場の扉が開きルシアがルドラの腕に手をかけて入場してくる。
その姿はまるで絵画のように美しくて、思わず見惚れてしまいそうになる。
「・・・・・・・・・・きれい」
「美しいわね、ルシア。それにルドラも珍しく真面目な表情でルシアをエスコートしているし、私もやりたいわね」
バージンロードを歩くルシアは、ウェディングドレスでゆっくりとヴェルダナーヴァに近づいていく。
途中、私を見つけ、とても朗らかな笑顔を向けてくれる。
私は涙腺がとうとう決壊し、ハンカチを何回も魔法で乾燥させないといけないほどに涙を流してしまう。
バージンロードを歩き終え、ルシアとヴェルダナーヴァは向き合いお互いを心から愛しいと言わんばかりの表情で見つめ合う。
二人の顔が近づき、重なる。
その光景は思わずスキルで写真を保存してしまうほどの光景で、顔を離した二人はこちらにも幸せが流れ込んでくると錯覚してしまう程に美しい笑顔だった。
世界で初めての竜と人の夫婦。
その誕生を祝福するように空は何処までも蒼く晴れ渡り、悲劇的な未来は絶対に二人のもとには訪れないのだろうと、そう、心から思った。 そう、思っていたんだ。
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式が終わって落ち着いた頃に私とルドラ、ヴェルグリンドは二人のもとに向かった。
初夜は二人で迎えさせるべきだとは思うが、その前に二人に渡したいものがあったのだ。
ヴェルダナーヴァとルシアの控室に着き、ノックをすると直ぐにどうぞという返事が返ってくる。
部屋に入ると、二人が寄り添いあい、隣り合って座っていた。このバカップルめ。
「結婚おめでとう御座います! 本当にいい式でした!」
「本当に、おめでとう。二人とも」
「ルシアが嫁に行っちまったなぁ。でも、おめでとう!」
「ありがとう、皆。兄様も、ありがとう」
「おう!」
「皆、僕からも、祝ってくれてありがとう。
孤独だった僕がこんなに幸せな日を迎えられるとは、思っていなかったよ」
ルドラはルシアと兄妹だったから、余計に妹の結婚が嬉しく感じるのだろう。泣きながら笑っている。
そして、ヴェルダナーヴァの思わず口に出てしまったであろう言葉に、祝福の気持ちが強くなる。
神という孤独から解放され、たった一人の愛する人を得た彼は嘘偽りなく真に幸せを噛み締めているのだろう。
ヴェルダナーヴァの言葉に、ルシアが感化されたように思わずと行った様子でヴェルダナーヴァを抱き締めている。初めは驚いていたヴェルダナーヴァも満更ではなさそうだ。
「これじゃあ、永遠に用を済ませられなさそうね。ルドラ、ノウェム、一回泣き止みなさい!」
「「・・・・・・はい」」
「それで良し! それで、私達がここに来た用件なんだけど、私達それぞれから二人に贈り物があるの」
「本当ですか! 嬉しいです!」
「ああ。だからノウェムはあそこまでギリギリになったんだね」
贈り物の話を聞いたヴェルダナーヴァに式に遅れそうになった理由がバレた。それもそうか、いつもは遅れるなんて有り得ない私が結婚式という大事な用事に遅れそうになっていたんだから。
「まずは私からでいいわね?」
「「・・・どうぞ」」
直前まで泣いていた私達より冷静に渡せると判断したのか、ヴェルグリンドが先に贈り物を渡す。
事前にヴェルグリンドはルシア用に、ルドラはヴェルダナーヴァ用に、私は夫婦用にと用意するものを事前に決めていたからあれはルシア用の品だろう。
「私からはこれ」
そう言ってヴェルグリンドが取り出したのは、竜を模した意匠が細工がされた銀白色に光る台座に、蒼い宝石が嵌め込まれたブローチだった。流石ヴェルグリンド、センスが光っている。
「兄様は蒼色の瞳をしているでしょう? だから、前にノウェムから教わったパライバトルマリンっていう宝石を探してブローチにしてみたの。喜んでくれた?」
「はい! ありがとうございます、グリン姉様!」
確かに、以前ヴェルグリンドとルシアと私で女子会もどきをしたときに前世の宝石の話とかをした気がする。正直、その時はヴェルグリンドの惚気話とルシアの恋慕の情に気を取られていて何を話したのかあまり覚えていない。あの時はちょっと寂しさを感じたなあ、だって二人とも相手がいて私だけ独り身だったから。今はもうあんまり気にしていないけれど。
「次は俺だな!」
ヴェルグリンドの次に、そう言ってルドラが前に出た。
ルドラが自信満々に取り出したのは、今まで見たこともないくらいに高級そうな酒瓶やワインボトル。それも同レベルのものが5人用の机が埋まるぐらいにずらりと並べられた。
「最高級のワインを国中から集めてみたぞ! 今度一緒に飲もうぜ!」
「ありがとう。そうだね、今度皆で飲み明かそうか」
ヴェルダナーヴァは心底嬉しそうにルドラと話している。
ここにいる全員、酒が大好きだからワインの贈り物は最適だろう。私もこっちの世界に来てから、未成年者飲酒禁止法なんて存在しないので何度か呑んでみているが意外と美味しい。状態異常無効があっても耐性を弱めれば酔えるから、時々皆で酒盛りをするんだよな。私の場合、ロリがワインを飲んで酔っ払って周りに介抱されている絵面になるので、なかなかに犯罪的だが。
ルドラが贈り物を渡し終えたので、いよいよ私の番になった。
今の私に出来る最高の贈り物を準備したが、喜んで貰えるだろうか?
いざ渡すとなると、そんな不安が一気に押寄せる。私が何を渡したとしても、二人が拒むはずなど無いとわかってはいるが、それでも不安は拭えないものだ。
そんな思いを抱えながら、異空間から用意したものを取り出す。
「私からはこれを」
私が二人に渡したものに、この場にいる私以外の全員が目を丸くした。
そう、私が二人に贈った物は──ー
「魔杖、ですか?」
「はい、私が全力で作り上げました」
そう、魔杖だ。
私がこの一ヶ月をかけてスキルも何もかもをフル活用して作り上げたものだ。
ラミリスさんのアドバイスで、どう気持ちを込めたら良いかと考えて”手作り”という手段を思いついて製作に取り掛かった。
一見すると30cmほどの、根本に宝石が嵌め込まれただけのモノトーンの木の棒だがその真価は別にある。私は製作時にこの魔杖に三つの機能を搭載した。
一つ目は精霊の召喚だ。
この魔杖に嵌め込んである宝石にはラミリスさんの助けを借りて下位精霊から作った炎、水、風、地の上位精霊にそれぞれ私が名付けして進化した存在がおり、彼らは魔杖の保有者を主とするため保有者の自身の配下として召喚が可能になる。
二つ目は魔厭術の限定行使だ。
魔杖の素材には獣形態の私の尻尾の毛と、魔素を安定させる役目を持つ神樹の枝を使った。それらを混合して魔厭術の術式を刻むに足る新たな素材を作成し、それを杖に加工した。
三つ目は保有者の選定だ。
これは魔杖を使用するための認証機能のようなもので、保有者として登録した人以外は使えないように何十にもロックが掛けてある。ロック術式には、術式を解析しようとすると解析者のスキルにウィルス術式を仕込むようになっているから、例えルシアの知識之王でも解析には年単位の時間がかかるだろう。現在登録されているのは、ヴェルダナーヴァ、ルシア、私のみだが、後に二人の子供も追加されるだろう。
これらに加えて通常の魔法の発動の補助器具としても使えるのだからオーバースペックもいいところだ。そんな内容を説明すると、どんどん皆の顔が引き攣っていった。
自分でもやりすぎだとは思ったが、親友の結婚祝いなのだ、全力のものをあげたかったんだから仕方ないだろう。
「ありがとうございます、ノウェム。少しやりすぎですけど、とても嬉しいです!」
「そうだね、確かにやりすぎだ。この魔杖はランクで言ったら今の段階で
「!! はいっ! 喜んでいただけて嬉しいです!」
私個人としては、もし二人の子供が生まれたらその子供の安全確保にこの魔杖を使ってほしいと思って作った。つまり、この魔杖は疑似防犯ブザーとして作ったのだ。
「ノウェム。この魔杖に名前はあるのかい?」
気になったのだろう。ふとヴェルダナーヴァがそんな質問を投げかけてきた。
「ありますよ。ちゃんとした名前が」
「へえ〜! どんな名前なんですか!」
ルシアも気になっているようで、あからさまに声が浮ついている。そこまで喜んでくれると作った甲斐があるというものだ。
「はい。この魔杖の名前は──────『フィリア』」
「フィリア・・・何だか人の名前のようですね」
「ええ。ですが、この名前には親愛や友愛といった意味が込められているんです」
「それはとても素敵ですね!」
フィリア。それはギリシャ語で友愛や親愛を意味する言葉。
最初は安らかに生きてほしいという願いを込めて『アタラクシア』という名前にしようと思っていたが、子供のことを考えると、その子には沢山お友達を作って楽しくいてほしいと願ったから『フィリア』という名前をつけたのだ。
その後、贈り物も渡し終えたので、新婚を二人っきりにしてあげようということで3人で部屋から出て、私達はそれぞれの部屋に帰った。
部屋に戻った後、私は二人のこれからに沢山の幸せが待っていれほしいと、心から祈り続けた。それが叶わないとも知らずに。
まだ恋人もいないのに一人で結婚式の作法や祝品のことを調べるというのはなんて虚しい行為なのだろう。
杖はハ○ポタの「レイブ○クローの髪飾りの杖」の宝石をインペリアルトパーズにしたものをイメージしてもらえばわかりやすいと思います。因みにインペリアルトパーズの石言葉は「友情、希望、潔白」です。二人の子供にピッタリだと思いませんか?
それと、この結婚を機に、ルドラとヴェルダナーヴァは正義之王と誓約之王を交換しました。この物語はノウェム視点なので描写はしません。
注意、この二次創作には未成年の飲酒を推奨する意図はありません。
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フィリア保有者一覧
1,ノウェム
2,ヴェルダ・ナーヴァ
3,ルシア・ナーヴァ
フィリア作成者権限保有者
1,ノウェム
ギィ以外の原初って出す? どうでもいいが作者はテスタロッサが好き
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