ヴェルダナーヴァとルシアの結婚式から二年が経った。
この二年の中でも特に最近は驚愕の連続だった。
まず、ルシアが妊娠した。ヴェルダナーヴァの子供を身籠ったのだ。
最初に聞いた時は驚愕で思考が停止したが、それを報告してきたルシアの顔があまりにも綺麗で幸せそうだったので、心から祝福することが出来た。
それと同時に、もう1つ驚くべきことが起きた。ヴェルダナーヴァが人間になったのだ。
正確にはルシアが身籠った子供に力の大半を引き継いでしまったため、真なる人類と同レベルまで力を失ったのである。
もっとも、ヴェルダナーヴァ本人は「これでルシアと同じ時間を過ごして逝けるよ」と、寿命に縛られたことに喜んで、これを機に名前を”ヴェルダ・ナーヴァ”に変えてすらいたので結果オーライだと思う。それにルシアも”ルシア・ナーヴァ”とノリノリで名前を変えていたから二人は幸せなんだろう。
誰かが言っていただろう? 幸せならokだって。
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そんなある日、妊娠しているルシアを除いた私達はまた白氷宮を訪れていた。
今日もルドラとギィは仲良くセコい手を互いに使い合いながら戦っている。
ヴェルグリンドとヴェルザードも今日は外で大規模な姉妹喧嘩をしていた。流石竜種、喧嘩一つとっても大規模。
因みにやることがなかった私は、ミザリーから以前から興味があった紅茶の淹れ方を教わっている。
「ありがとうございます、ミザリーさん。お菓子ならルシアに習えるんですけど紅茶になるとルシアは使い物にならなかったので、有り難いです」
「いえ、大したことでは御座いません」
やはりミザリーはギィと同じ原初の悪魔とは思えないほどにマトモだ。
話しかけたらちゃんとした返答が返ってくるし、料理も上手。本当に悪魔なのかと疑ってかかってしまうほどに普通の性格をしている。
そんなことを考えながら紅茶を淹れていると、外から轟音が聞こえてきた。
これは・・・・・どうやら竜種姉妹の喧嘩が激化してしまったらしい。このままだと白氷宮が崩壊しかねないぞこれ・・・・・・・・・止めるか。
「ミザリーさん。あの喧嘩止めてくるので続きはまた今度にしてもらっても?」
「承知しました。いってらっしゃいませ」
ミザリーの返事を聞き急いでルドラとギィが闘っている場所へ戻る。
どうやら二人は休戦しているようで姉妹喧嘩から巻き込まれない位置に退避し、何やら話し合っていた。
ちょうどいいので、声を掛けるついでに白氷宮の保護もしといてもらおう。
「二人とも、あの姉妹喧嘩止めてくるので白氷宮の保護しといてください」
「おう、頑張ってな〜」
「早く止めてこいよ〜」
何とも気の抜けた返事をする二人を尻目に白氷宮から飛び立つ。
すると、竜の形態に戻った二人が世界の終末と言わんばかりの激しい喧嘩をしていた。
「二人とも────!!!! そろそろやめてくださ────い!!!!」
出来る限りの大声で呼びかけてみても止まる気配はない。自分たちの世界にトリップしてしまっているようだ。
そもそもの喧嘩の原因は二人の弟、この二年の間に新しく生まれたという竜種”ヴェルドラ”が我儘な暴れん坊で、そうなった責任をお互いの教育に擦り付けあっているらしい。
・・・・・なんとくだらない理由だろう。
「あの中に巻き込まれるのは面倒だし、もうこの際使っちゃうか」
いいことを思いついたので試してみることにする。これで二人が喧嘩を止めなかったら武力行使で三つ巴になるのが手っ取り早いだろう。
「発動────『世界宣告』」
《告。宣告を確認しました。対象──個体名ヴェルグリンド及び個体名ヴェルザード》
唱えた瞬間、私の意思に従って”世界の言葉”が竜種二人に届けられる。
《告。個体名ヴェルグリンド及び個体名ヴェルザードは直ちに戦闘を中断しなさい》
《繰り返します。個体名ヴェルグリンド及び個体名ヴェルザードは直ちに戦闘を中断しなさい》
「なっ!? どういうこと!?」
「これは!? ノウェム?」
自分たちの世界にトリップしていても、流石に世界の言葉は耳に入るようだ。宣告を発動した瞬間、次の一撃を放とうとしていた二体の竜が攻撃を中止した。
その瞬間、私は二人の頭上に転移して
そして分銅部分に多大な痛みを対象に直接与える魔厭術を纏わせ、大きく振りかぶり──二体の竜の脳天に振り下ろした。
「反省しなさいっ!!」
「「ギャッッッ!?」」
精神生命体ゆえに久しぶりに味わったであろう痛みに、女性が出してはいけない声を発して二体が墜落していく・・・・・・・超威力の鎖分銅の直撃で割れて剥がれてしまった二人の鱗はバレたら怖いし回収しておこう。
墜落地点に降りると二人の美しい女性が頭を抑え、苦しみ喘いでいた。
「ちょっとノウェム!? 滅茶苦茶痛いんだけど!!!」
「それはそうでしょう。そういう術を構築しましたから」
「ねえ、ノウェムちゃん。流石にこれは酷くない?」
「姉妹喧嘩で周囲を滅茶苦茶にした奴らにかける慈悲などありません。二人とも反省してください」
流石に二度も痛みをもらいたくないのか、二人は一旦喧嘩を止めて白氷宮に戻りはじめた。
そこで気になったことを聞くことにする。
「二人とも、そんなに弟さんは乱暴なんですか?」
「そうなのよね。本当にどうしましょう?」
「だから、消滅させて人格をリセットさせればいいじゃない!」
「それがやり過ぎだって言ってるの!」
このままだとまた喧嘩に発展しそうだ。
確かに、竜種が暴れ回るのは被害が大きいし防ぎたいヴェルザードの気持ちも分かる。しかし、消滅させて人格のリセットはやりすぎだというヴェルグリンドの意見ももっともだ。
何にせよ、一度見てみないことには始まらないだろう。
「一度私が対応してみますよ」
「・・・・・・・そうね一度任せて見るのもありかもね」
「姉さん!? ・・・・・・・まあ、実力は充分なのよね・・・わかったわ。ノウェム、お願いするわね」
その場は二人に一旦そういうことで納得してもらった。
時期は・・・・ルシア達の子供が生まれてしばらくして落ち着いたらで良いだろう。
結論がついたので三人で白氷宮に帰る。
迎えてくれたルドラとギィは、何やら真面目な表情をして
「世界をチップにしたゲーム・・・ですか?」
「おう!」
詳細を聞いていくと、これまた壮大なことをしようとしているらしい。
しかし、説明の中に、”ヴェルダナーヴァを安心させてやりたい”というものがあった。
確かに、寿命に縛られた今のヴェルダナーヴァは世界の行く末を見守れない。創造主としても、未来を生きる子を持つ親としても心配になるものだろう。そこで平和な世界を見せて「お前の創った世界は素晴らしい世界だ」とヴェルダナーヴァを安心させてやりたくて、このゲームを始めるらしい。
そう言われてしまったら、私としても無碍にはできない。何故ならそれは私が常々思っていたことでもあったからだ。やはりルドラと私は共に理想家という点で似ている。
しかし一つ気になったことがあった。
「それでしたら私はどうなるんですか? 私は魔物だけどルドラたちと共にいるし、調停者としての役割も持っていますよ」
「それなんだが、お前はどちらの陣営にも属さずにゲームの審判になってくれ。流石に調停者が二人も参加するのは避けたい」
私の質問にギィがそう返した。
それもそうか。ならば私はギィの魔物陣営とルドラの人間陣営、どちらかがやりすぎて片方が滅びないように調停者として審判を下そう。
そう考えて、その提案を了承した。
そうして、私を審判として長きに渡るギィとルドラの世界の覇権をかけたゲームが始まった。
ステータス
名前:ノウェム
種族:上位聖魔霊──幻竜狐
加護:精霊女王の加護、星王の紋章
称号:嚆矢の異世界人、調停者、審判者
魔法:<元素魔法><物理魔法><精霊魔法><上位精霊召喚><上位悪魔召喚><陰陽術><神聖魔法><核撃魔法><魔厭術>
技能:固有スキル『神獣化バカスモノ』
アルティメットスキル:『閻福之王ヘカテー』・・・思考加速、詠唱破棄、術理創造、法則支配、世界宣告、静寂、虚喰、胃袋
ユニークスキル:『憤慨者シャイタン』『信哲者シリエタモノ』『攻究人パスカル』
耐性:『痛覚無効』『物理攻撃無効』『状態異常無効』『自然影響無効』『精神攻撃耐性』『聖魔攻撃耐性』
保有武器:[九曜グラハ]
ギィ以外の原初って出す? どうでもいいが作者はテスタロッサが好き
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