転生した狐はメイドになる   作:くまんじゅう

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出会い

 どうやら小説などでよくある''転生''をしたらしい、それも多分狐に。

 

(まぁ・・・ウジウジしててもしょうが無いか)

 

 転生したという衝撃と森の中に放置されている驚愕で、大分長い間固まったりグチグチと不平を並べていたが、改めて周りを見渡してみると大自然というのも意外と悪くないと思えてくる。

 大都会の草一本生えていないアスファルトと違って、草木が生い茂り澄んだ空気が流れている。また、森林はそこまで低木だったり高木だったりし過ぎてはいないようで、葉の隙間から入る日差しが柔らかく地面を照らしている。そして、耳を澄ませばザーという川のせせらぎが聞こえてきた。

 

(あぁ〜〜〜〜落ち着くぅ〜〜〜)

 

 雄大な自然というものは、日々人間関係などで荒んだ現代人の心を癒やしてくれるらしい。

 これは自然信仰が生まれたのにも納得ができるというものだ。

 

(それにしても、ここは一体何処なんだ? 日本と同じ様に温暖で雨が降りそうな植生をしているけど、スキルだか何だか聞こえてきたからそもそも地球なのかすら怪しいし)

(うぅ〜〜〜ん・・・・・・・・・・・・・・・・よし、分からん! 推定異世界ということにしておこう!)

 

 名もなき狐は非常に楽観的に決めた。

 

 ────────────────────

 

 思う存分楽しんだので森を探索してみることにした。

 最初に感じた通り温暖だが熱すぎはしないようである程度草木も生えている。やはりどこの世界でもこういう場所があるのは共通なのだろう。

 

(ケッペンで言ったらCfaかCfbそれかCwってところかな〜)

 

 地理は好きだったので植生から大体の気候は予想できる。やってて良かった高校地理。

 

 そして探索していてもう一つはっきりと分かったことがある。それは確実にここは地球ではないということだ。ん? なぜそんなことが分かったのかって? そ・れ・は────

 

「グギャァァァァァァァァァ!!!」

「コォォォォォォン!!! (ギャ────!!! タスケテ─────ッッ!!!!!!)」

 

 はい。現在絶賛命の危機に瀕しているからだよッッ!! 

 

(マジで何なのあれ!? 明らかにデカいヘビ!! 10m以上とか意味わからん!?)

 

 後に分かったことなのだがこのデカい蛇は嵐蛇(テンペストサーペント)と言ってB+ランクはあるかなり強い魔物で、そんなのと生まれたばかりの狐が会ったりなんてしたら結果はもうお察しで、今にも食われそうになっていた。

 

「コォォォン!!! ・・・コッ!? (イヤァァァ────!!! ・・・・・・・えっ!? 行き止り!?)」

 

 嵐蛇から森を一心不乱に駆け抜けて逃げ続けていたら、運が悪いことに先には崖が広がっていた。崖はものすごい高く断崖絶壁で、こんな子狐が落ちたらひとたまりもないのは明らかだった。

 絶体絶命。転生して初日に脳にちらつく明確な''死''の感覚。私の心はついさっき経験した

 死に怯え、悲鳴を上げている。

 どれだけ生きたいと願っても単なる子狐にできた事は毛を逆立て、牙を抜き出しにする精一杯の威嚇ぐらいしか無い。

 しかし、無慈悲にも追いついてきた蛇は『追い詰めた』と瞳に嗜虐的な光を宿し、じりじりとにじり寄ってきている。

 

(怖い。怖い怖い怖い。イヤダ! もう死にたくない! 誰か、誰か───)

 

 

 

 

 

 

 

「弱いものイジメは辞めるのよさ」

 

 

 

 

 

 

 

 周囲に謎の声とともに光が降り注ぐ。

 さっきまで強大な化け物にしか思えなかった蛇が、まるで虫けらであるかのように空からの無数の光に貫かれ、うめき声を上げながら容易く絶命する。

 驚愕に固まってしまっている私をよそに光を放った謎の声の主が眼の前に降り立つ。

 

「大丈夫?」

 

 声の主は不思議な姿をしていた。

 光を宿しているかのように眩く輝く金髪に物語に出てくるエルフのように長く尖った耳、トンボのように長細い翅。想像上の妖精がそのまんま現実にいるかの様な女性が、とても優しい声音で私に話しかけている。

 私を救ってくれた人は本当に────言葉を失うほどに美しく微笑んでいた。

 

 

 

 私は後の最古の魔王の一柱、''精霊女王ラミリス''と運命的な出会いを果たしたのだった。




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