暴風竜ヴェルドラ。
現象の具現化とも言える、最強たる竜種の一体。
内に秘めるエネルギーは二人の姉を凌駕し、星王たる兄に次ぐ。
しかし、強さでいえば竜種最弱。
それは何故か?
偏に、その膨大なエネルギーを扱いきれていないからだ。
そもそも、エネルギーを扱うとはどういうことか?
これは水をイメージをすれば分かりやすい。
水はそれ単体では、池や湖のようにただそこにあるだけでは、人間に大した影響力はない。精々生命の源になるくらいだ。しかし、それを水車などで別の力に変換すれば人の生活に大きな影響を与える。
そして電気はもっと分かりやすい。
ただ電気だけがそこにあっても、私達はその恩恵を受けられない。電気があり、そして電気を流して動く機械があって初めて、私達は電気という強大な力の恩恵を受け取ることが出来るのだ。
ではエネルギーはどうか?
エネルギーの場合、エネルギーという電気が魔法やスキルといった機械を動かすことでエネルギー単体では得られない現象を世界に具現化する。
つまり、只々エネルギーのみで暴れまわることしかできず、魔法やスキルを十全に使いこなせていないヴェルドラなど恐るるに足りず、負けるはずが無いということだ。
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「──『静寂』」
「何なのだそれは!! さっきから狡いであろう!!!」
174回
これがなんの数字か分かる人はいるのだろうか?
正解は──私がヴェルドラの攻撃を魔法やスキル、剣戟などで打ち消した、又は吸収した回数である。
暴風系魔法の解析と劣化版にはなるが再現などはとっくの昔に終わっているし、ヴェルドラの鱗なども掃除が面倒なので剥がれたそばから回収している。
言っては何だが、そろそろ面倒になってきた。
では次に0回
これが何の数字かは話の流れから予測がつくだろう。
ヴェルドラが私の攻撃を防げた回数である。
馬鹿の一つ覚えみたいに同じ魔厭術を撃っても毎回中る。それどころかただの元素魔法にすら中るし、防げていないのだコイツは。
そのせいで先程からヴェルドラは、私が普段周囲への影響を鑑みて使えていない術たちの実験台となっていた。竜種は無駄に硬いから実験台として最適なのだ。
「【
「ヌガァァァ!!!!!!!! さっきから痛いではないか!!!!」
本当にどうしてこのクソトカゲは避けないのだろう?
解析しているにしては遅すぎるし、舐めているのであれば馬鹿だ。
今だって破滅の炎でヴェルドラの鱗が何枚か剥がれた。
直ぐに再生するから良いのだが、絵面は完璧に私がヴェルドラを痛めつけてドラゴン虐待している風で最悪だ。
こんな光景をミリムちゃんに見られていると思うと・・・教育に悪すぎる!
そんな風に考えてそろそろ終わろうかなと考え始めた時
──────悪寒が走った。
ヴェルドラの攻撃によってじゃない。
ヴェルドラの攻撃はスキルでも魔法でもブレスでも突撃でも、静寂と九曜で対処可能だ。現に私は戦い始めてから無傷だ。
では何だ?
そう思った時、一つの可能性にたどり着いた。
(まさか、まさかまさか!! そんな筈はない! だって────)
その繋がり辿って確認すると、
────────ルシアの名前が消えていた。
(どういう・・・・・・こと)
フィリアの保有者登録方法は本人の魂の形や輝きをフィリアに覚えさせることだ。
登録によって得られる保有者権限があって初めてフィリアの能力は引き出せる。他にも私の魔素が認証の鍵となる作成者権限もあるが、今はそんなことはどうでも良い。
フィリアが魂を忘れない限り保有者一覧から名前が消えることはない。
意図的に登録を解除をしていないのに、フィリアが魂を忘れて一覧から名前が消える。
それが意味することは二通り
1つ目、保有者が何らかの方法で魂の形が変わり輝きが燻るほどに精神を追い詰められ、魂が摩耗または変質すること。
2つ目、保有者の魂の形がなくなる────保有者が死んで魂が粉々に砕け散ること。
どちらにせよ緊急事態には変わりない。
咄嗟にそう判断して行動を起こそうとしたその時、私に何かが直撃して肉体が崩壊を始めた。
「クアァ────ハッハッハ!!! 漸く中ったぞ!!! 見たか!!!」
「この非常事態に!!! クソトカゲがぁぁ────!!!!!」
戦闘中に他のことに気を取られたのが不味かった。
感知するのを忘れて魔法を食らってしまった。
食らった魔法────暴風系魔法の効果である体の崩壊が私を蝕んでいる。
(体は後!! もう撃退なんて言ってられない!! まずはクソトカゲを消滅させる!!!)
九曜をワイヤーに変化させ、ヴェルドラを空中に縛りあげる。ワイヤーに静寂の効果を付与したためヴェルドラは【スキル】も【魔法】も何一つ使えない。
肉体の崩壊を無視して『
コルヌに使った時はある程度時間がかかったが今はその時間すら惜しい。
その願いが通ったのか、或いは単にスキルが進化したからか、術の構築は以前の比にならないほどに早く終わった。
「砕け散れ、クソトカゲ!!!───【
コルヌに向けて放ったときの軽く10倍は威力がある禍々しい光が、ヴェルドラの肉体のみならず
爆風は有り得ないほど来ているが、そんなことを気にしている場合じゃない。
体の崩壊した部位を物理的に切り取って魔素に変換し、その魔素を使って肉体を再生させる。これには1秒もかけていられない。
再生が終われば、すぐさまディーノとミリムを保護した結界まで転移して結界を解除する。
ミリムと子竜はヴェルドラを討った一撃に目を輝かせはしゃぎ、ディーノは私から距離を取ろうとしているが気にしている余裕はない。
「ごめんね、ミリムちゃん。文句は後でいくらでも聞くから」
そう言って有無を言わせずにミリムを子竜と一緒に『虚喰』で『胃袋』の中に閉じ込める。
ディーノが驚いた顔で剣を向けてくるがどうでもいい。
「おまっ!」
「ディーノさん、ルシアたちが危ない!!! 今直ぐ転移します、掴まって!!!」
そう叫ぶとディーノは直ぐに顔つきが変わり、即座に私の体を掴んだ。
そうしてフィリアの繋がりを通じて転移した私達の目に飛び込んできたのは
────────────既に息絶えたルシアと、たった今魂が砕け散ったヴェルダナーヴァの姿だった。
「ヴェルダナーヴァ様!!!」「ルシア!!!」
ディーノと私が同時に叫びを上げる。
しかし、どれだけ叫んでも現実は変わらない。
虹彩に映るのは二人の亡骸と、焼け落ちたログハウス、そして二人を殺したであろう刺客のみ。
嗚呼、どうして理不尽はいつも突然やって来るんだろう。
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気がつくと、雨が降っていた
どんよりとした雨雲が流れた涙を塗り潰す
私の手には、打刀に変化した九曜
彼にもらった大切な武器で人を殺めた
足元には、泣き別れになった誰かの身体
こいつを殺した感触はまだ手に残っていて、それが酷く気持ち悪い
雨が九曜に付着した何かを、ゆっくりと雪いでいる
罪の意識は、薄まり無くなってゆく
パチパチパチサァーサァーサァーと、雨音が嫌に耳に残った
ようこそこちら側へ。そう言って私を歓迎する気持ちの悪い笑顔を浮かべた怪物共の拍手が、どうしても鳴り止んでくれない
また一つ、フィリアは魂を忘れた。
私は遂に、心から魔物になってしまったみたいだ。
ヴェルドラ戦が滅茶苦茶雑になった。
ヴェルドラはもっと強いと思う人もいるでしょうが、リムルと出会ってラファエル魔改造を受ける前なので世界全体から見た強者相手にはこんなもんだろうと思ってます。
因みにこの二次創作のヴェルドラは、遊ばれ続けた上に一撃入ったと思ったらスキルも何もかも使えなくされてそのまま跡形もなく消し飛ばされるというトラウマ攻撃を食らったので、ノウェムのことはヴェルザードと同じ位かそれ以上に苦手になっています。もしかしたらロリすら苦手になるかも?
それと人格リセット完了!!
今のノウェムの心境はエレンに死者蘇生の話を聞く直前のリムルと酷似しているというね。可哀想だね!!
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フィリア保有者一覧
1,ミリム・ナーヴァ
フィリア作成者権限保有者
1,ノウェム
ノウェムが虚無崩壊を得るか?
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得る
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得ない