私とディーノは天星宮に来ていた。
二人の遺体を清めて安置しておきたかったからだ。
少しでも汚れたままにはしたくなかった。
「フェルドウェイさん達はどうしたんですか?」
「あいつらは冥界を監視していてこっちに来れないらしい」
ディーノに始原たちがいないことを不思議に思って聞くと、そんな返答が帰ってきた。以前ヴェルダナーヴァに異界に封印した存在の話を聞いていたが、その監視にはフェルドウェイ、ザラリオ、オベーラ、コルヌが向かっているらしい。
ヴェルダナーヴァが亡くなったのに気づいてこちらに戻ってこようとしているとは思うがヴェルダナーヴァが亡くなった今、それには門が必要だ。そしてその門は物質世界に召喚されて弱体化していない悪魔達が守っているから来られないだろう。
今動ける始原はディーノ、ピコ、ガラシャの三柱のみらしい。
始原たちがいない理由がわかったので、気にせず二人の亡骸を安置することにする。
始めてきたときから何回か訪れているため、安置する場所は直ぐに思い浮かんだ。
「ディーノさん、聖安堂に行きましょう」
「聖安堂・・・・・あそこか。確かに御二方にお眠りしてもらう場所としては丁度いいか」
聖安堂は大事な物を保管する場所としてはこれ以上無い位最適だ。
天星宮の地下に作られていて、内部からの攻撃に弱いという欠点もあるが、そのかわりに外部からの攻撃には絶対的な防御力を有する。ヴェルダナーヴァ手ずから造り、始原達も私もそれに手を貸した、疑いようもなく世界中の何処よりも安全な場所だ。
そこなら、二人も安心して眠れるだろう。
ディーノさんに聖安堂の中を整えてもらっている間に、天星宮内の城の一室でミリムと子竜を胃袋から出し、術で眠りに落とす。最低5日は起きることは無い。ミリムには自由に遊んでいてもらいたいが、今だけはと眠ってもらった。
自己嫌悪でどうにかなりそうだ。
その後、ミリムが眠っている部屋とは離れた一室で二人の亡骸を清める。
体全体に痛々しく残っている傷を塞ぎ、付着した汚れを術で消し去る。見ただけではただ昼寝をしているだけに見えるようになった。
この処理をしている間、私がどんな表情をしていたのかは考えたくなかった。
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ディーノから用意ができたと思念が飛んできたため、二人の亡骸を聖安堂の最奥に運ぶ。
見えてきたのは、有り得ないほどに神聖な雰囲気で満たされた氷の棺だった。
「聖霊力で作られた棺ですか?」
「ああ、魔に属するものでは破壊不可能だ」
「確かに、私では傷すら付けられなさそうです」
聖櫃に二人の亡骸を納める。
二人の亡骸は聖遺骸として、この場所で永遠に眠り続けるだろう。
最後にと、聖櫃に保管された二人をちらりと見る。もうこれで、長らく二人と会うことは無いだろう。
「ヴェルダナーヴァ様、ルシア・・・・・・・・・本当に今まで、ありがとうございました」
聖安堂をでて、来たときと同じように九曜で元の世界に戻る孔を開ける。
「ノウェム、行くぞ」
「ええ、ディーノさん。行きましょうか」
さあ、国落としの時間だ。
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大陸の東側にあるとある王国。
その国の王は今、幸福の絶頂にいた。
「漸く邪魔なあの国が崩壊を始めたぞ、これであの土地は私のものだ! そうだろう!」
「ええ、おっしゃるとおりでございます。偉大なる王よ」
王の問いかけに答えたのは、王にクーデターを起こし内部から彼の国・ナスカ王国を崩壊させてはと遊説した男だった。
(馬鹿な王だ。これだから暗君は御し易くて助かる)
心のなかでは王を馬鹿にしきっている男だが、外面はとても良いので王は全幅の信頼を男に寄せていた。
(あの方の命は果たしたが、これでどうなるというのだ)
男はある人にこの国を使ってナスカ王国にクーデターを起こせと命令されていたが、クーデターを起こして何をしたいのかは全くもって知らなかった。
しかし今は成功を喜ぼうと、男と王は気分を良くして酒を酌み交わした。
これより数刻後、この国は地図からも歴史からもその名前を消すことになる。
男たちはそんな可能性を欠片も考えず、酒に酔いしれていた。
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王国の上空に私とディーノはやって来た。
一見すると穏やかな顔をしているディーノは、その優しい顔の裏側に何もかもを焼き尽くすほどの怒りを携えている。かくいう私も、表面上は無表情で佇んでいるだけだろうが、内心は怒りでどうにかなってしまいそうだった。
「ディーノさん、王国全体に結界を張ります。魔法は使いますか?」
「いや、使わずに滅ぼす・・・・・・・誰一人として逃すなよ」
「勿論──────【
魔法の使用を不可能にする【魔法不能領域】と、空間を断絶してスキルや物理的手段による逃亡を不可能にする【断絶結界】を発動し、国全体を覆う。
そして、その二つの結界を新たに獲得した
これでこの国からは誰も出られなくなる。この土地から生命の灯火を僅かな火種すら残さずに完全に消し去る、そのための術だった。
「ディーノさん。私は国の北半分を滅ぼしますので、南半分を御願いします」
「分かった」
それだけ会話して、ディーノは南に飛び去っていった。
どちらも、もう我慢するのが限界だったみたいだ。
空の上から眼下に広がる街を見下ろす。
酒場で騒ぐ男、仕事に励む女、家で誰かの帰りを待つ婦人、美を追求する芸術家、屋敷で贅沢の限りを尽くす貴族、貧しく飢えた浮浪者、広場で遊び回る子供達。
彼らの輝かしい生活が、尊いものに見えていたはずの営みが、今はとても腹立たしいものに思えて仕方がなかった。
「貴方達全員に平等な死を与えます・・・・・・・・・・・私の復讐に付き合ってくださいね」
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広場めがけてゆっくりと降下する。
私についている狐の耳や尻尾に気付いのだろう。衛兵や破落戸達が剣や弓、魔法を向けてくるが、全く気にならない。
「止まれ!! 薄汚い魔人め!!!」
「・・・・・・」
「幼い少女の姿をしていたとして、貴様からは邪悪な気配がにじみ出ている! それに、その醜い姿。穢らわしい!!! 我らが葬り去ってくれる!!!!」
「・・・・・・」
「貴様!!! 何かいったr」
「五月蝿い」
先程から耳障りな声で喚くから思わず切り刻んでしまった。
人を殺しても、やっぱり何も感じない。罪悪感があるかと思っていたが、やっぱり薄まっていたらしい。
無感動に自己を分析している私を他所に、周囲からは衛兵が死んだことにギャーギャーと叫び声が上がる。
「・・・・・・耳障りだな」
そう思って九曜をワイヤーに変化させた。
そして、この広場にいる人間を全て──────宙に磔にした。
耐えきれず細切れになったのが殆どだったが、どうでもいい。
「がっ・・・・・・このっ・・・・・」
「あれ? まだ息があるんだ。優秀だね、今日は死ぬには良い日だよ?」
「この・・・・・・・悪魔め・・・・・・・」
悪魔か、悪魔を召喚してみるのも良いかもしれない。それに、私は狐で悪魔はギィなのだが─────
「ただの肉塊に何を言っても無駄か」
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あの後、同じようにして三つの街を無人にした時、世界の言葉が聞こえてきた。
《確認しました。ユニークスキル『
解析の結果を見ると、何かを殺すことに特化している。それも、大人数を殺すことに。
悪虐者の権能は自らに恐怖を抱いた者の魂を無理やり抜き出す能力。抜き出す時は口から人魂のように魂が浮かんでくるように見えるが、その時に対象にはこの世のものとは思えないほどの激痛が与えられる。
「確かにそれは・・・・心無き者の所業だね」
街を一つづつ滅ぼすのも面倒になってきたところだったので、今獲得した『悪虐者』と、「使ったことがなかったな」と思い出した『
『悪虐者』は常時発動しておくとして、まずは憤慨者の使っていなかった権能『激怒』を使用してみる。
「『悪虐者』『激怒』───発動」
発動を宣言した瞬間、私の視界は真っ赤に染まった。
後から分かったことなのだが『激怒』の効果は使用者の身体・魔法能力を向上させ、狂化させるという厄介なものだった。
それを発動してしまった私は、何も考えられなくなって肉体の操作を手放した。
「キャッッッハハハハ♪」
理性なき獣の狂笑と逃げ惑う悲鳴だけが、炎と黒煙で焼けたように赤黒く染まった夜の空に響き渡っていた。
ノウェムに解釈違いを起こす人もいるかもですが、彼女は怒り狂ったら前回みたいなことを躊躇なくやります。まあ、狂うまで怒ることが超レアなんですが。
(ノウェムの強さ)もし今のノウェムが一回目のワルプルギスの時のリムルと戦ったら、リムル側は解析はできても偽装されていて本当のことはわからないし、解析に時間がかかりすぎる術が使われて対処には暴食之王使うしか無い。ノウェムはリムルの放出系は吸収や打ち消せるが、暴食之王は喰らえないし、誓約之王の絶対防御は突破できるが、攻撃は避けられるということで千日手になりますが、周囲への被害を考えなければノウェムがギリギリ勝つかもって感じです。究明之王持ってるヴェルドラ召喚されたら流石に負けますが、普段伝説級に偽装して使っている九曜を偽装解除するか、虚飾之王の悪壊という権能を上手く使えばヴェルドラと同時でも普通に勝てます。
ノウェムが虚無崩壊を得るか?
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得る
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得ない