転生した狐はメイドになる   作:くまんじゅう

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朝ごはん

 ルドラとヴェルグリンドは眼の前の光景に絶句していた。

 

 瞠目ではない、絶句だ。

 それは何故か? 

 

 本来、竜種とは仮の肉体として竜の姿をとっているだけの聖属性・魔属性双方を併せ持つ聖魔霊の頂点に立つ存在であり、心核の破壊からも蘇れる意志のある自然エネルギーとも言われるものだ。

 当然、聖魔霊だったとはいえただの狐が到達して良い領域ではない。

 しかし、ノウェムは自力でその領域にたどり着いた。そんな御業が可能だったであろう神たる存在は先程失われたというのに。

 それが二人がノウェムの進化を見守り、そして絶句した所以であり、ヴェルグリンドが進化に伴ってこもっていた繭のようなものから出たノウェムの肩を掴んで問いただすのも仕方のないことだった。

 

 

「ノウェム・・・・・・あなた。一体何をしたの!!」

「グリンドさん!? いきなりどういうしたんですか!?」

「何であなたから私達と同じ気配を感じるのかって聞いてるの!!!」

「そういうことですか・・・・・・竜種に進化しました。まあ、亜種ですけど」

 

 

 それを聞いた二人は驚愕が大きいのだろう、頭が痛そうにしている。ヴェルグリンドより少し早く復帰したルドラが質問を重ねてきた。

 

 

「一応聞いとくが、どうやってだ?」

「それは説明が難しいのですが・・・・・魔王へ進化する時に竜種全員の一部を素材として使用して進化したんですよ」

「竜種全員の一部? そんなのいつ手に入れたんだ?」

 

 

 ルドラがしたその質問を聞いていたヴェルグリンドはとても綺麗な笑みを浮かべている。絶対に嘘は許さないという顔だ、あれは。それもそうだろう、自分の知らない所で自分の一部が回収されていたのだから。これは正直に告白するしかないだろう。

 

 

「まず、ゲームが始まった時にグリンドさんとヴェルザードさんの喧嘩を諌めたじゃないですか?」

「ああ、あったわね。そんなこと」

「あの時、九曜で強く殴りすぎたみたいで二人の鱗が剥がれていたんです・・・・・・それで、怒られると思って・・・・・・証拠隠滅に・・・・・・回収・・・・・・・・・しました」

 

 

 声が思わず尻すぼみになっていくなかで恐る恐るヴェルグリンドの顔を見る。

 ──あっ、これお仕置きが待ってるやつだ。それも多分ヴェルザードさんと一緒の。

 ヴェルグリンドの笑顔が更に深まって怖い。戦々恐々としていると、見かねたルドラが別の話題に進めた。

 

 

「じゃっ、じゃあ。ヴェルダナーヴァとヴェルドラの一部はどうやって手に入れたんだ? 特にヴェルダナーヴァは簡単に自分の一部を渡さないだろ」

「ヴェルドラはグリンドさん達との約束で対応しに行った時に剥がれた鱗や血肉を放置するのはまずいと思って回収しながら戦ってました。・・・・・あっ、グリンドさん。すみません、ヴェルドラと戦っている途中にルシア達の・・・・・あれを感知したので焦ってヴェルドラは消滅させてしまいました」

「それはいいけど・・・・・そう、やっぱり戦ってる途中だったのね」

 

 

 ヴェルグリンドも私が二人の危機に参上できなかった理由を察したようだ。目を伏せて悲しそうにしている。そして、あっ、と気づいたようにヴェルグリンドが質問を続けた。

 

 

「じゃあ、兄様はどうやって?」

「ヴェルダナーヴァ様は・・・・・・二人の遺体を回収した時に飛び散った血と肉片も一つ残らず回収したので持っていました。二人の遺体は世界一安全な場所に安置しましたので、安心して下さい」

「そう、辛いことを聞いたわね」

 

 

 ヴェルグリンドもルドラも気遣いのないことを聞いたと思ったのか、申し訳なさそうにしている。

 この話をしていたら延々と空気が暗くなってしまいそうだったので、話題を変えることにする。というよりも、私の決意表明だが。

 

 

「二人とも、一つ話しておきたいことがあります」

「なんだ?」

「私はこれから調停者と審判者としての役目と、ルシア達の形見を育てることに専念しようと思います。ですので、これまでのように一緒に暮らすことはできません」

「何で? 調停者云々のことは分かるけど、二人の形見とはここで一緒に暮らせばいいじゃない」

「ミリムちゃんには、国とかのしがらみに縛られずに自由に生きてほしいんです。だから、王城に住まわせるのは避けたいんですよ」

「そういうことなら良いわ、好きになさい。ルドラもそれでいい?」

「ああ、いいぜ」

 

 

 良かった、二人は納得してくれたようだ。二人も親を失ったミリムちゃんには思うところがあったのだろう。

 その後、ずっと一緒にいられる最後時間ということで三人で色々と話し込んでいると夜になってしまった。

 そろそろいい時間なので、行くとしようか。

 

 

「・・・・・では二人とも、さようなら。また会いましょうね」

「ああ、いつでも来いよ」

「待っているわ。それとノウェム、お仕置きは1年後位にしてあげるわ」

 

 

 恐ろしいことが聞こえた気がしたが、今は気にしないで良いだろう。

 そうして二人に見送られながら、九曜で開いた天星宮への転移門に入った。

 

 

 **********************

 

 

 転移門を抜けて、天星宮内にある城に向けて歩き出す。

 道中で悪魔や始原たちに遭遇するわけでもなく、城にたどり着いた。城の中から少し荒れた気配を感じたためミリムちゃんを迎えに行く前にそちらに向かう。向かった先───広間にはヴェルザードさんがオーラを荒立たせて立っていた。

 

 

「ヴェルザードさん、どうしてここに?」

 

 

 天星宮に入るにはヴェルダナーヴァに入れてもらうか、大陸の西端の存在する巨人たちの居城・天通閣を通ってくるか、私のように鍵を所有していないと入れないはずだ。

 

 

「あら、ノウェム? あなたこそどうやってここに?」

「私は鍵を所有していますから、ここにはルシア達の娘を一時的に預けていたから引き取りに来たんですよ」

「そう、貴方も兄様から鍵を渡されていたのね」

「ええ・・・それで、ヴェルザードさんはどうしてここに?」

「私は兄様が亡くなったなんて信じられなかったから、ここにいると思って来たのだけど、どうやら本当だったようね」

 

 

 そうか、ヴェルザードさんはヴェルダナーヴァの気配が消えたのを察知して、急いで来たのか。ヴェルダナーヴァが亡くなったことで、これからは竜種の長姉として世界を導く役目も追わなければいけないこともあり、まだ色々と受け止めきれていないのだろう。暴走して暴れ始めていないだけ、彼女は立派だ。

 

 

「ヴェルザードさん」

「なに?」

「困ったことがあったら、誰かに相談してくださいね」

「・・・どういう事かしら?」

「ではまた」

 

 

 今のヴェルザードさんに余計なことを言えば爆発してしまうかもしれない。ならば一応、必要になるだろうことだけを言っておこう。彼女は多分頑張りすぎたり我慢しすぎたりしてしまうだろうから。

 なにか言いたげなヴェルザードさんの下からミリムが眠っている部屋に転移する。転移途中に虚飾之王の『隠匿』で自分を周囲と完全に同化し、実際に目で見ないとそこにいると分からないようにした。ヴェルザードさんから見れば天星宮自体から転移したように見えるため、追求のために追ってこれはしないだろう。

 

 

 

 **********************

 

 

 

 転移した部屋にはベッドの上で穏やかな寝息を立てるミリムと子竜の姿があった。

 

 

「放ったらかしにしちゃってごめんね、二人とも」

 

 

 ミリムを腕に抱き、術を駆使して子竜を尻尾に載せてから、九曜で室内に転移門を開く。二人にかけておいた眠りの術は家を用意してから解除すれば良いだろう。

 転移門を通って大陸の南西の辺りに位置する草原に来た。このあたりは近くに超魔導大国という王国があるが、近くに街があったほうが買い出しなどが楽なので良いだろうし、実は私が転生した森もこのあたりにあるため懐かしくてこの場所を選んだのだ。

 

 転移した後、ミリムと子竜を胃袋から取り出したベッドに寝かせて結界を展開してからから家を建て始める。術を使って効率化しても、頑丈な家にするためには少し時間がかかるため二人には寝ていてもらったほうが楽だし、ナスカ王国を出発してからあまり時間が経っていないためまだ外は暗い。暗い内に作業は終わらせておいたほうが、起きた後に二人は長く遊べるだろう。

 

 

 それから1時間ほど時間が経ち、辺りが明るくなってきた頃に漸く家は完成した。家はミリム達が落ち着けるだろうと思い、ルシア達の家を思わせる造りのログハウスにした。

 完成したため、ミリムたちが寝ているベッドごと完成した家の寝室に転移させ、眠りの術を解除してから二人を起こす。

 

 

「おきて、ミリムちゃん。」

「うぅ〜ん・・・・・ねぇね?」

「おはよう、ミリムちゃん。あなたも、おはよう」

「ふぁ〜〜〜〜」「キュ〜〜〜〜」

 

 

 ミリムと子竜は寝ぼけているのか揃って大きな欠伸をする。この子達にとっては私がヴェルドラと戦った直後のはずなのだが、なんとも呑気なものだ。でも、親が亡くなったと知って落ち込むよりは良いのだろう。

 寝ぼけているミリムたちの前に魔法で水を出して顔を洗わせる。この魔法はベッドの上でも水がこぼれないから動きたくない日には重宝している。顔を洗って目が冷めたらしい二人が遊ぼうとはしゃぎ始めたので、その前にと二人に声をかける。子竜の方は言葉がわからないのか首を傾げているが、まあ良いだろう。

 

 

「二人とも、今日からねぇねと一緒に暮らそう」

「ねぇねと?」

「うん。ねぇねと、一緒に」

「・・・・・・やった〜!」「キュイ───!」

 

 

 ミリムは一時はあまり理解できていなかったようでオウム返しをしていたが、ここまで嬉しそうにされると私としても嬉しいものだ。

 受け入れてもらえた所で、まだ遊ぶのが仕事なこの子達が遊び始めてしまう前にしなくてはけないことがあるのだ。それは──

 

 

「じゃあ、朝ごはん食べよっか」

「ごはん! 食べるっ!」「キュ──!」

 

 

 このようにして、私とミリムと子竜は共に暮らし始めた。

 




ノウェムは天星宮に行く前に虚飾之王でステータスを閻福之王しかもっていない状態に偽装していたので、ヴェルザードには獲得した3つの究極能力や竜種の亜種になったことはバレていません。1年後には竜種の方はヴェルグリンド経由で伝わってしまいますけどね。

恐らくこれかた作者が忙しくなるため、週一回か週二回の投稿頻度になると思いますので付き合って頂けると嬉しいです。
次回くらいには異世界人が出るかな?

ノウェムが虚無崩壊を得るか?

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