転生した狐はメイドになる   作:くまんじゅう

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多分次回はまた時間空きます




二番目の 三番目の

 お説教代わりの戦闘へと移行して、ヴェルザードは本気を出していなかっただろうが勝利をもぎ取った後、私達は白氷宮へと戻ってきていた。

 戻って来る間にヴェルザードから「これからも遊ぼう」という誘いを受けたので了承した。ヴェルザードとの戦いは私も楽しかったから断る理由がない。正式にヴェルザードとは友達になったのでこれからも良い付き合いをしていきたいと思う。

 

 友人となった私とヴェルザードが共に戻ってきた白氷宮。

 そこで、当然のように私はギィに詰められていた。

 

「ノウェムお前、何だあのスキルは?」

「あの〜ギィさん? ちょっと離してもらっても?」

 

 今の私とギィの体勢は椅子に座った私に、ギィが片足を足の間にいれて顎を掴んで逃げれないようにしているというものだ。さっきからヴェルザードの視線が痛い。ヴェルグリンドも何やってるのかと呆れている。

 というかこれ、見方によっては恋人みたいではないか? 

 そう考えついた瞬間、私は転移でヴェルグリンドの後ろに移動した。

 

「ギィさん、流石にさっきの体勢はどうかと思います」

「お前がさっさと白状しねえのが悪い」

 

 しかし、このまま詰められても面倒だから一応、閻福之王(ヘカテー)だけは説明しておくか。

 

「なら、ギィさん。私の究極能力(アルティメットスキル)教えるので貴方のも教えて下さい。それで等価交換です」

「・・・・・いいぜ、調停者に隠していてもいずれバレるだろうからな」

 

 一瞬思案したギィだったが、メリットとデメリットを天秤にかけてメリットのほうが大きいと判断したらしい。ギィは契約を重視する悪魔族(デーモン)なので嘘を吐きはしないだろう。

 

「じゃあ先にお願いします」

「俺の究極能力(アルティメットスキル)は『傲慢之王(ルシファー)』だ。能力はどうせ知ってんだろ?」

「やっぱり大罪系でしたか!! それもスキルの再現が出来るヤバイ奴!!!」

 

 ギィが持っている究極能力は、ある程度予想はしていたがやはり大罪系だったようだ。それも大罪系でも一番厄介な『傲慢之王(ルシファー)』。

 一度見たスキルの完全再現という反則能力を有する、一番やめてほしいと思っていたスキルだ。恐らく『静寂』はコピーされたと見て良いだろう。

 

「さて、こっちが言ったんだ。勿論お前も正直に話すよなあ?」

「うっ・・・・・分かりましたよ、そういう約束ですしね」

「分かってるなら良いんだよ」

「私の究極能力(アルティメットスキル)は『閻福之王(ヘカテー)』です。ヴェルダナーヴァ様が手を加えたところがあるので通常の究極能力では有り得ない効果を発揮します」

 

 それを聞いた三人はそれぞれ違う反応をした。

 笑みを深めるギィに、戦っているときと同じ様に瞳を妖しく光らせるヴェルザード、そして納得したという表情のヴェルグリンド。

 三人ともヴェルダナーヴァが関わっていると知って、閻福之王の異常さの原因に得心がいったらしい。

 

 その後、一通りの事を話し終えて自分の椅子に座ったギィが思いついたように質問してきた。

 

「なあノウェムよお。ヴェルダナーヴァがいなくなった今、お前はこれからどう生きていくつもりなんだ? いっそ魔王になってもいいんだぜ」

「分かっているでしょうに・・・・・ミリムちゃんが一人で生きていけるくらいに育った後は、調停者としての役目に専念しますよ。後、魔王として君臨なんてしませんよ!!」

「お前は放っておくには惜しいんだが、まあいい。それでそのミリムのことなんだがな、あいつはどれほどの力を持っているんだ?」

「・・・・・・ギィさん、ミリムちゃんに手出しするつもりなら許しませんよ」

 

 私の今後のことを話していたのに、突然ミリムのことを口に出すものだから威圧してしまった。しかし、それに対してもギィは飄々と言葉を返す。

 

「ミリムは、ヴェルダナーヴァの娘なんだろう? そいつの力が世界に影響を与えたら俺の仕事が増えるんだ」

「・・・・・・まあ、そういうことなら良いでしょう」

 

 実際、ミリムが持つ力は親譲りに強力だ。調停者としては知っておきたいのだろう。

 

「ミリムちゃんは『魔素増殖炉』というものを保有しています。それがミリムちゃんが持つ最も危険な力ですよ」

「魔素増殖炉? 聞いたことがねえな」

「あの子がヴェルダナーヴァ様から受け継いだ力の塊ですよ。あれがあれば、怒りを燃料に魔素を無尽蔵に作り出せますから」

「そいつは・・・・・とんでもねえな」

 

 魔素増殖炉の実態を聞いたギィが悩ましそうに呟いた。一緒に聞いていた竜種姉妹もその危険性に気がついたようで顔を真剣なものにした。

 

「恐らく貴方の『傲慢之王』でも再現できませんよ」

「だろうな」

「それに、なにかきっかけがあればスキルとなってミリムちゃんに宿るでしょう。それも究極能力(アルティメットスキル)として」

「十中八九、俺と同じ大罪系の『憤怒之王(サタナエル)』だろうな」

「はい。恐らくはそうなるでしょう」

 

 大罪系の究極能力(アルティメットスキル)は美徳系と違って瞬間火力が非常に高い。その中でも美徳系究極能力最強の正義之王(ミカエル)の対となって生まれた究極能力、単純火力大罪系最強の憤怒之王(サタナエル)ともなればその破壊力は言うまでもないだろう。

 魔素増殖炉をスキルとして成立させるか、平穏に暮らすか。どちらにせよ────

 

「結局、ミリムちゃん次第なんですよ」

「だな・・・・・なあ、もしもミリムが魔素増殖炉を使って暴走したらお前はどうする?」

「あまり考えたくない仮定ですけど・・・・・・・止めようとしますね、確実に。でも、増殖炉の燃料となった怒りが正当なものだったら、思う存分やらせてあげたいとも思っています」

 

 その結果、ミリムが私と同じ様に魔王への進化を果たしたとすると、その過程でミリムは大きく悲しむだろう。私にとって”あの二人の死”が怒りと悲しみをどちらも孕んでいたように。

 悲しみに暮れたミリムを放置だけは絶対にしないが、その悲しみが彼女の糧となるのなら、恐らく私はそれを許容する。前ならこんな発想浮かばなかったのだが・・・・・・やっぱり私は魔物として生きてしまっているらしい。

 

「何にせよ、一先ずはミリムちゃんの安全に気を使っておきますね!」

「ああ、そうしてくれ」

 

 話が一段落しので、帰るとしようかな。白氷宮に来たのが昨日だったので、そろそろ良い時間だろう。

 

「では、私は帰りますね。ヴェルザードさんもグリンドさんも、また今度!」

「ええ、また今度」

「元気でね、ノウェム」

 

 返事を聞いてから、私はミリムと子竜と暮らしている家の近くの森に転移した。

 

 

 

 

 *******************

 

 

 

 

 近くの街で食材を買ってから家に帰ろうかなと転移した森の中を歩く。

 この森は魔物は多くないのだが、その分強いのでミリムと子竜にはあまり近づかないように言ってあるし、街の人も近寄ろうとしない。だから転移先としてはこの上ないほどぴったりなのだ。

 

「今日は何を作ろうかな〜。ハンバーグは前作ったし、串焼きっていうのも晩御飯としてはいまいちだよね〜」

 

 ミリム達に「食べておいて」と言って疑似冷蔵庫の中に入れた料理は、お子様ランチやハンバーグ、ケーキなどのミリムが好きな物ばかりだったから野菜も食べさせないとダメだろう。

 

「──ぃや────ぅ──てぇ────!!」

 

 鼻歌を歌いながら森の中を歩いていると、ふと悲鳴のようなものが聞こえてきた。意識を声の聞こえてきた方に向け、万能感知を発動させると、見覚えのある光景が目に入ってきた。

 

「いぃやああああぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!!!!」

 

 人が寄り付かないこの森で十代半ばくらいの少女が全力で走っている。いや、走っているのではない、逃げているのだ。

 そして少女の格好は恐らく学校の制服だった。たぶん、私以外だと世界で初めての異世界人だろう。

 追いかけている魔物が巨大妖蟻(ジャイアントアント)嵐蛇(テンペストサーペント)という違いがあるが、転生したての頃の私と似た様子で非常にデジャブを感じる。

 ここはラミリスさんみたいに助けてあげた方が良いだろう。

 この世界に来て戸惑っているだろうから、一応人獣形態から人形態に姿を変えておいて、服装はこの世界風に変えておいたほうが良さそうだ。

 

「だずげでぇぇぇ──────!!!!!!」

 

 準備が終わった頃、少女が行き止りで遂に泣きべそかきはじめた。

 

 まあ、潮時だな。この際、ラミリスさんとの出会いを全力で再現してしまおう。

 ならまずは────

 

 

 

 

 

 

「弱いものイジメはダメですよ!」

 

 

 

 

 

 

 ***********************

 

 

 

「いぃやああああぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!!!!」

 

 今までに無いくらいの速度で走っている少女は死に瀕していた。というより、死に瀕しているから全力で走っているのだが。

 

 少女は現状をよく理解できていなかった。

 朝、学校に登校していて、足元が光ったと思ったらいきなり何処かもわからない森の中にいたのだ。理解できようはずもない。

 理由も分からず森の中を歩いていると、赤い何かが見えたので近寄ってみればそこにいたのは────有り得ないくらい大きい蟻。目であろう部位をこちらに向けてきたその蟻に何故か敵意全開で追いかけられているんだから、全力で逃げるのも仕方ないというものだ。

 

(本当にどうゆう状況!? 何なのよあの大きい蟻!! ここ本当に地球!?)

 

 少女が冷静なら、体が異様に軽い事に気づけていただろう。しかしそのことに気づけず、少女は行き止りの崖まで追い詰められた。

 

「だずげでぇぇぇ────!!!!」

 

 追い詰められ、恐怖に身を震わせて泣き叫ぶ。それでも赤い蟻は少女を食べようとにじり寄ってくる。少女に出来ることは、祈ることだけだった。

 

(怖い怖い怖い怖い!!! お父さん、お母さん!! 誰か助けて! ────)

 

 

 

 

 

「弱いものイジメはダメですよ!」

 

 

 

 

 

 優しい声が聞こえ、恐怖で伏せていた顔をバッと上げると、大きな赤い蟻は光のようなものに貫かれていた。少女にとっての恐怖の象徴が、跡形もなくあっさりとこの世から消え去った。

 それを為したのは声が聞こえた方──恐らく自分の背後にいる人。

 恐る恐る顔を向けると─────とても美しい女性が立っていた。

 

「大丈夫?」

 

 そう聞いてくる彼女は、思わず見惚れてしまう程に滑らかな亜麻色の髪と、優しい光を宿すクリームイエローの瞳を持ったその顔に、悪戯っぽい笑みを湛えてた。

 

「はい・・・・大丈夫、です」

「良かった。じゃあ、自己紹介をしよっか────私の名前はノウェム。それで、貴方のお名前は?」

「・・・・・・・・・清水、奈南です」

「!・・・・そう、よろしく! ななちゃん!!」

 

 優しく微笑む少女と、未だ戸惑いから抜け出せない少女。

 二人の出会いは偶然か必然か。知っている人はいないだろう。

 しかし、そんな中で一つだけ確かなことがある。

 それは──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────これが後の”二代目魔王”と”三代目勇者”の、初の邂逅だったということだ。

 




はい、異世界人の登場です。オリキャラですが物語的に必要だったんです!申し訳ありません!!

この子の名前の読み方は「清水 奈南(しみず なな)」です!

サリオンの事考えたら二代目は辻褄が合わなくなるのでラスト部分を修正しました。
”二代目勇者”と”二代目魔王”の → ”二代目魔王”と”三代目勇者”の

ノウェムが虚無崩壊を得るか?

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