転生した狐はメイドになる   作:くまんじゅう

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家族

 やっぱり、この子・清水奈南は転移者のようだ。

 

 未だ、先程の光景の衝撃から抜け出せていない奈南ちゃんの手を取っていつも買い出しに来る街まで歩く。この森は落ち着いて話すには魔物が多いし五月蝿いからだ。

 

「あっ、あの! ノウェム・・・さん?」

「ノウェムでいいよ、さん付けとか慣れてないし」

「は、はい! ・・・・じゃあノウェム、ここって・・・・何処なの?」

 

 奈南の質問にそれもそうかと思った。この子の認識としてはここは未知の場所だろう。一応、私がこことは違う世界を知っていることはとぼけておこう。

 

「ここは超魔導王国の北側にある森の中だよ、君は森のこんなに深いところまでどうやって来たの?」

「それは・・・・・分かりません。それに、私が知っている国に超魔導王国という国は無いんです」

「? ・・・転移でもしてきたの?」

「転移?」

「そう、転移魔法」

 

 あっ、固まった。どうやら、奈南は私と同じく魔法がない世界からやってきたらしい。最初は滅茶苦茶混乱するよね。気持ちは痛いほど分かるよ、本当に。

 しかし、このままだとミリム達のいる家に帰るのが深夜になりそうだから、少し時短しよう。

 

「この速度で移動していたら日が暮れそうだから、このまま街まで転移するね」

「えっ?」

「じゃ。手、離さないでね」

「えっ、え、えっ?」

 

 突然のことに理解が追いついていない様子の奈南を無視して転移の術式を発動させる。魔素への抵抗力を持っていないだろう奈南には防護術式を展開してあるので、奈南と一緒でも大丈夫だろう。

 

「えっ、景色が変わった!?」

 

 私と奈南は街門のすぐ手前まで転移した。初めての転移に奈南はまだ混乱しているようだが、直ぐ慣れるだろう。私は、目を剥いている奈南の手を掴んだまま門前に立つ顔見知りの衛兵に話しかけた。

 

「この子と街に入らせてもらえますか?」

「ああ、あんたか。分かった。あんたはもう年間分支払っているが、そいつの分で銀貨2枚だな」

「2枚ですね・・・はい、どうぞ」

「・・・確認した。入っていいぞ」

 

 いつも買い出し来ているから衛兵も慣れた対応だ。街に入るのには銀貨がいるが必要経費だと思って支払う。収入はあまり多くないが、街の子供達に生活用の魔法を教える週に2日の私塾のようなもので一応は収入を得ているのだ。

 街に入って一度一息入れようと食事屋に入って2人分の飲み物を頼み終わった時、奈南が混乱から復活したようで申し訳なさそうに声をかけてきた。

 

「あの・・・ノウェム、すみません。こんなに良くしてもらって」

「ん? これくらいは大丈夫だよ」

「それでも、ありがとうございます」

「なら、どういたしまして、って言っておこうかな・・・・・それで、ななちゃんは色々と質問したいんじゃないの?」

「はっ、はい! 質問したいです! それじゃあ────」

 

 その後、奈南からは様々な質問が飛んできた。この世界のこと、さっきの転移魔法のこと、この国のこと、そして私自身のこと。質問し終わった奈南は気疲れか、ぐったりとした様子だが数日もすれば現実を受け入れられるだろう。そんな奈南は、目元に腕を押し当てて小さく呟いている。

 

「そっか、やっぱりここは地球じゃないのかぁ・・・・・・・・」

 

 やっぱり不安などで感情がごちゃ混ぜになっているようだ。私の場合はラミリスさんと直ぐに出会えたから不安は割と小さかったが、それでも数日は寂しさや望郷の念に駆られた。同じ様に不安を感じているだろう奈南に、何か話したら楽になるだろうと話題を振ってみる。

 

「ねえ、奈南ちゃん。貴方の家族はどんな人達だったの?」

「家族、ですか・・・・・・・私の家族は──」

 

 奈南は家族のことを話し始めた。父と母と奈南の三人家族だということ、父方の祖父母の家によく行って遊んでもらったこと、家族三人で一緒に旅行に行ったこと。

 話している内に幸せなことを思い出したのだろう、暗かった奈南の表情には少し笑顔が浮かんできた。

 

「そっか、優しいお父さんとお母さんだったんだね」

「はい、とても優しい人でした。でも、人間関係にだけは気をつけろって口を酸っぱくして言われましたね」

「人間関係? それはまたどうして?」

「父には妹がいたみたいなんですけど、その妹さんが人間関係が原因で殺されてしまったのが理由らしいです」

「そうなんだ・・・・・」

 

 家族構成も死んだ原因も前世の私と同じだという件の妹に私はシンパシーを感じていた。人間関係が本当に難しい問題だということを、私は前世で身をもって知ったが、その妹はそこで人生が終わったのだ。妹さんは無念の中で死んだのだろう。自分と同じ様に、新しい幸せをどうか掴んでいてほしいと願わずにはいられなかった。

 そんな風に奈南と話していると、ふと思い出したように奈南が口を開いた。

 

「気になったんですが、ノウェムの家族はどんな人なんですか?」

「私の?」

 

 自分の家族のことを話していて私のことも気になったのだろうか・・・・・・まあ、これぐらいなら言ってもいいだろう。

 

「私は娘みたいな子と、その子の友達のドラゴンと一緒に暮らしてるよ」

「ドラゴンが友達!? それに、娘!?」

 

 見た目16歳くらいの人形態の私に娘がいるということが予想外だったらしく、奈南は大声をあげて驚いた。周りの迷惑そうな人を見る目に気づいて、直ぐに奈南は店にいる人達に平謝りしていた。

 

「大きな声だったね」

「うぅ・・・・・・・いやいやそうじゃなくて。娘ってどういうことですか! 一体何歳で────」

「勘違いしているみたいだから言っておくけど、友人の娘だから。私が産んだわけじゃないよ」

「あぁ・・・・」

 

 私の発言で自分の勘違いに気づいて顔を赤くする姿はちょっと可愛い。でも、勘違いをダシにして色々言うのも悪いだろうと思って、適当に気になったことを質問してみる。

 

「さっき話に出てたから気になってたんだけど、その父方の祖父母の御名前ってどんなのだったの?ななちゃんの名前はこの世界では珍しいから気になるんだ♪」

「うぅ〜〜〜〜」

「ほらほら、唸ってないで」

「うぅ〜〜〜〜〜・・・・分かりましたよぉ」

 

「おじいちゃんの名前は菊月武光で、おばあちゃんは菊月美代子でしたね」

「・・・・・・・ぇ」

 

 その名前を聞いた瞬間、私の中で時が止まったような気がした。

 しかし直ぐに復帰して、()()()()の確証を得ようと質問をする。

 

「じゃ、じゃあ・・・・・・・ご両親は?」

「え〜っと・・・・父さんが清水一馬、お母さんが清水千紘でしたね」

「清水、一馬・・・・・・・・菊月・・・・一馬」

 

 菊月一馬。

 その名前には非常に聞き覚えがあった。いや、千紘という人以外の全員の名前に私は聞き覚えがあるのだ。この体に生まれ変わってからは一度も耳にしていない名前、一度も口にしなかった名前。どちらもなかったのも当然だろう。何故ならそれは───

 

 それは、前世の私───『菊月千夜』の家族の名前そのものだったのだから。

 




中々時間がとれなくて一週間ぶりに書いたらめっちゃ文が雑になった、、、

一応書いておくと、名前の読みは 
菊月千夜=「きくづき ちよ」
菊月武光=「きくづき たけみつ」
菊月美代子=「きくづき みよこ」
清水(菊月)一馬=「しみず(きくづき) かずま」
清水千紘=「しみず ちひろ」
です!

ノウェムが虚無崩壊を得るか?

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