「──ぃ──ノ──ム──────ん」
(お父さん・・・・お母さん・・・・・・兄さん)
この世界に転生して、「ノウェム」という新しい名前を頂いてからは思い出すことさえ少なくなってきていたけれど、前世の私には大切な家族がいた。
娘の私にはだだ甘だったけれど、行きたくないと言っても何度も地質学の博物館やダム巡り、山登りなどの趣味に付き合わせてきた父、武光。
息子と娘の両方を溺愛し、部屋で本を読んだりとぐーたらしていると何故かいつも突撃して来てベッドを占拠して動画を見始める母、美代子。
勉強馬鹿という四文字がよく当てはまって、巨大数庭園数なんていう考えると頭が痛くなってくるようなものを母と一緒に突撃してきて解説していく兄、一馬。
今考えると私の家族は中々に濃い面子だったのかもしれない。しかし、一般的に「奇人変人」と揶揄されるようなそんな家族でも、私は彼らが大好きだった。
奈南の言葉で記憶の奥底に眠っていた彼らのことを思い出した。
もしも奈南が言った言葉が本当だとすれば、この子は前世の私の姪ということになる。
そうだった場合非常に不味いことになる。
私の場合は間違いなく死んだので肉体は焼かれて残っていないだろうが、奈南の場合は肉体ごとこの世界に転移している。そのため日本での奈南は恐らく行方不明ということになっている。つまり、兄は妹も娘も失い、両親はたった一人の孫すらも失ったのか?
じゃあ、もしも奈南がこの世界で死んでしまったら?
彼らはもうこの子に二度と会えずに死を迎えることになる。愛情深い彼らのことだ、一緒についていなかった自分たちを責めるだろう。最悪の場合─────
「ノウェム!!!」
「っっ!」
「良かった、漸く気付いてくれた。急に反応がなくなるので、びっくりしましたよ!」
「あっ、ああ、そういうこと。ごめんなさい、ちょっとトリップしちゃってた」
しまった、衝撃が大きすぎて思考の渦から抜け出せなくなっていた・・・・・・しかし、改めて奈南の顔を見てみると確かに前世の兄の面影がある。主に目元が似ているが、兄は碧眼ではなかったし桃色髪でもなかったのだが、染めたのだろうか? それとも突然変異?
「別にいいですけど・・・・・何を考えてたんですか?」
「君を元の世界に返す方法」
「!! 出来るんですか!?」
「ごめんね、まだよく分からないんだ」
考えていた内容は咄嗟に吐いた嘘だったが、実際帰還方法はよく分かっていない。恐らくヴェルダナーヴァなら出来るのだろうが彼は亡くなってしまい復活しないままになって久しい。
それに、帰還には恐らく次元の壁を超えなければいけない。次元の壁を超えて転移するにはそれに足る演算能力と転移先の時空間座標も必要だろう。向こうからこちらへの転移や召喚は出現地点の座標をこちら側で術式の中に組み込めるが、転移先の向こうの世界の座標を入手する手段がこちらにはない。できたとしても座標がランダムで宇宙のどこに飛ばされるか分からない九分九厘ハズレのロシアンルーレット転移しかできないだろう。
次元の壁を超えること専用の権能でもあれば話は別なのだが。
「まあ、できないことを考えてもしょうがないですね!」
「えっ? ・・・・・そんなあっさり諦めちゃっていいの?」
「なんというか・・・この世界に来て最初はどこかもわからない森にいるし、変な蟻に追っかけられるしで勘弁って感じだったんですけど、驚き疲れちゃって、一度落ち着いて考えてみるとそこまで悪い世界じゃないように思えてきたんですよね」
「ああ、そういうこと」
この子は切り替えがえらく早いと思ったら、そこは兄に似ているんだと気付いた。兄も変な所で思い切りのよい人だったから行動が似ている。流石は実の娘。
そんなこんなで話していると、日が暮れて空が赤く染まってきていた。流石にそろそろ帰らないとミリムが心配だ。
「じゃあ、一回私は帰るよ」
「えっ!? 一緒にいてくれるんじゃ・・・・・」
「さっき言ったでしょ、私子育てしてるから子供を放置はできません。ここの食事屋は宿も併設してあるから泊まるといいよ、お金は一応出してあげるから。16歳超えてるんだろうしできないとは言わせないよ」
「うっ・・・・・分かりました」
「ならば良し! 明日からはこの世界で生きていくうえで必要なこととか色々教えてあげるから、ちゃんと寝てね」
これだけ言えば野宿してスリに遭うとかはないだろう。それに一応は姪っ子らしいから最低限生きていけるくらいには教育してあげようと思う。
そんなことを考えていると、意を決した様子の奈南が声を上げた。
「なんでこんなに良くしてくれたんですか? 初対面なのに!」
確かに、そう思うのも無理はないだろう。
たまたま近くにいただけの私が彼女を
さて、どう応えようか?
理由としては「私が調停者だから」だったり「貴方が姪だから」だったりと、あるにはあるのだが、これらは彼女に話したらダメな理由だ。それを隠すために嘘で塗り固めるくらいなら、本心の一つを言ったほうが良いだろう。
「今の奈南ちゃんが昔の私とそっくりなことで悩んでたから」
「・・・・昔の、ノウェム?」
「そう。私も昔、貴方にとっては私みたいな人に助けられたから、今度は私の番かなって思ったの」
「そうなんだ・・・・・その人は何ていう人なの?」
ラミリスさんの名前は言ってもいいのだろうか? ・・・・・・・・・・まあ、あの人の性格なら「全然オッケーなのよさ!」とか言いそうだし問題ないだろう。
「私の恩人はラミリスっていう凄く優しい方、貴方が勇者になった時は会えるかもね」
「勇者? それってどういう─────」
「じゃ、またね〜〜」
奈南の返事を待たず、私は食品街の方面に足早に買い物に向かう。
「マズイ! 流石に時間かけすぎた! ミリムちゃん拗ねてないといいけど・・・・」
奈南に会う前に決めておいた晩御飯の材料を出来る限りの最高速で買っていく。こんなことのために思考加速を使うことなるとは・・・流石は熟練のおばちゃんたち、食材の争奪戦が激しすぎた。
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必要な食材を全て手に入れたため、急いで街門から外に出て人獣形態に戻り、ミリムと子竜の待つ家に転移する。
転移直後、転移の予兆を感じれたのかミリムが家から飛び出して抱きついてきた。
「ねぇね!! お帰りなさいなのだ────!!!」
「キュ────!!!!」
「ただいま!! 二人とも!!!」
ヴェルグリンドに呼ばれてからなので、二日ぶりに帰った家はとても暖かい。この二日間は様々なことがあったが、この笑顔をみると吹き飛んでしまった。やっぱり、この子達はたくさん食べてたくさん寝て、たくさん遊んで、そして笑っているのが似合っている。
そうは言っても、このまま晩御飯を教えるのもちょっとつまらないし、今夜のメニューはクイズで出してみよう。
「ミリムちゃん、ちょっとしたクイズをしない?」
「クイズ!! やってみたいのだ!!」
「良かった・・・・じゃあ問題です、今日の晩御飯は何でしょうか?」
「ばんごはん! うぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ヒント! ヒントなのだ!!!!」
「ヒントか・・・・・・じゃあ、この袋の中に晩御飯の具材が入っているから見てもいいよ」
そう言って腕に抱いていた紙袋をミリムが見えるように降ろす。袋の中には「鶏肉、人参、じゃがいも、玉ねぎ、乳、きのこ、ブロッコリー、塩」が入っている。レシピ通りに作るのなら後はバターと小麦粉がいるのだが、その二つは以前作ったものが家の疑似冷蔵庫にあったので買わなかった。
さて、ミリムはこの具材を見てメニューを当てられるのだろうか?
「ゔっ・・・・・・にんじんがあるのだ」
「大丈夫、人参は工夫して食べやすくするから、ねっ?」
「なら、いいのだ」
良かった。
野菜を殆ど食べずに免疫力が低下して病気にかかりやすくなった前世の兄のように、受験などの大事な日にダウンするという残念な想いを残すことをミリムにはしてほしくない。だからミリムには野菜を少しでも好きになってもらいたいのだ。
「ゔぅ〜〜〜〜わかんないのだ!! 答えを教えるのだ!!」
人参の件を一先ず飲み込んだミリムは必死に答えを探したが、わからなかったようだ。まあ、ここまで真剣に考えてくれたのだから答えを発表しよう。
「そっか、ちょっと難しかったかな? 正解はね・・・・・シチューでした!」
「シチュー!! やった──なのだ────!!!」
「キュ──!!」
ミリムと子竜の二人に今まで何度かシチューを作ったがやっぱり好きだったらしく、二人は目に見えて上機嫌になった。
「じゃあミリムちゃん、一緒に作ろっか」
「うん! 作るのだ!!」
「その前に一緒にただいまって言わない?」
「うん!!」
「じゃ、せ〜の───
────ただいま!!」」
そう言って私達は笑い合いながら家に入る。
少しふざけながらも、私の二日間の外出はこうして終わったのだった。
前半と後半で話の内容がえげつないほど違う、、、、だとっ!?
次回辺りに白が出てくるか魔王誕生かな?
これより作者はこのためだけに契約したネト◯リで「超か◯や姫」という作品を見てきます。マジで楽しみ!!
閑話として異世界人の話を2話書こうと思っていて、1話は決まっているんですが、あと1話が決まっていません。読みたい異世界人の話に投票お願いします。
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