転生した狐はメイドになる   作:くまんじゅう

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お久しぶりです、遅くなってしまいました。模試が終わったので急いで仕上げました。

それと「超かぐや姫!」最高だった。皆さん、やおよろー!



前夜

 私に向かって炎を纏った力の奔流が迫る。

 その力の名は『魔法』

 世界の法則に干渉する技術。

 

 それを前に私は──────────

 

 

 **********************

 

 

「はい。ななちゃん、お疲れ様」

「あっ・・・・ありがっ・・・とう・・・ございます・・ノウェム・・・」

 

 息も絶え絶えで大の字に転がっている奈南に汗ふき用の布と水を手渡す。

 奈南と出会ってから、既に早くも数年がたった。数年前はこの世界に慣れておらず、おっかなびっくりな様子だった奈南も今ではすっかりこの世界に順応した。

 

「それにしても」

「ん?」

「やっぱりノウェムさん、滅茶苦茶強いですよね」

「奈南に比べたら、そりゃね」

 

 奈南がふと思いついたように言った言葉にそう返す。先程まで奈南に魔法の稽古をつけていたのだが、思っていたよりも彼女の習得スピードはずっと早かった。どうやら彼女は魔法を感覚で扱っているようだが、それでもルシアに出会う前の私よりかはずっと早く習得できている。

 なぜかと考えていたのだが、答えは彼女のスキルを見ればすぐに分かった。

 

 ユニークスキル『駆使者(アヤツルモノ)

 教えられた何かを使うことが抜群に上手くなるスキル。これがあるのなら魔法の習得が異様に早かったのも納得だ。

 恐らくこれが、彼女が世界を渡った際に獲得したスキルなのだろう。このスキルの影響か、彼女は触りを教えただけの徒手空拳もメキメキと実力を伸ばしている。

 そんな事を考えている私の傍らでは、納得のいってなさそうな奈南が頬を膨らませて喚き始めた。

 

「だーかーらー! ノウェムってこの世界でどれくらい強いのかって、いつも聞いてるじゃないですか! もう数年も経つんですよ! いい加減教えて下さい!」

「そうは言ってもね〜。まあでも、人間の中じゃ最強に近いかもね」

「いつも聞いておいてなんですけど、貴方よりも強い”人間”がいるなんて信じられないんですけど!?」

 

 まだ私は彼女に正体を話していない、これから先に話す気もない。

 正体に関わる話をすると否が応でも距離感は変わる。彼女とは今の師弟関係のような距離感がちょうどいい。例え彼女が推定前世の姪だとしても、調停者として異世界人の彼女に深く関わるのは私の方針に反する。一人で生きていける様になるまで彼女に指導しているのは彼女の親たる兄への恩返し、つまりは義理のようなものだ。他の異世界人にここまで世話を焼くつもりはない。

 

「そういえば、最近街が少し物々しいですよね」

「・・・? 奈南は聞いていないの?」

「えっ?」

 

 奈南が一度落ち着いてから切り出した話に思わず面食らう。まさか街に住んでいて知らないとは・・・・・

 

「最近この国の王様が何かを欲しがったとかで、何処かに攻め込むらしいの。だから街には今は軍がいる。軍が待機している東の広場には近づかないほうがいいよ」

「全然知らなかった・・・・・・因みに、何を王様は欲しがったんですかね?」

「さあ? 鉱脈とかじゃない?」

 

 本当に私は軍が何処に攻めるのかは知らない。最近は少し前にヴェルグリンドに会った時に教えてもらった『並列存在』を使った新しい術式を完成させるのに忙しかったのだ。態々軍のことを調べる暇なんてなかった。

 それに、人間同士の戦争ならギィが把握していない訳が無い。彼から要請が来たら別だが、私が人間同士の戦争に介入することは基本的には無い。調停者としての使命が彼と私では違うのだ。

 

「まあいっか・・・・・・ノウェム、ご飯行きましょう!」

「急だね。それで何処に行くの?」

「最近良いお店を見つけたんですよ! 奢るので行きましょう!」

「別に奢らなくていいですよ。じゃあ行きましょうか」

 

 色々と難しく考えたが、取り敢えず今は奈南がお勧めするご飯に集中しようと思う。

 

 

 

 

 *********************

 

 

 

 

 

 その日、私は数日前から家を空け、私が消滅させて最近復活したらしいヴェルドラの魔素溜まりから生まれたという魔物────暴風大妖禍(カリュブディス)を見に来ていた。

 

「う〜ん。特別強いってわけじゃないけど、下手な人間の国なら余裕で滅ぼせそうだね。奈南がやったとしても、倒すのはまだ厳しいかな〜」

 

 この暴風大妖禍(カリュブディス)という魔物は上澄みの上澄みからしたら雑魚だが、一般の人々からしたらとんでもない厄災だろう。

 そういえば、ヴェルドラから生まれたという話だったが竜種に進化した私にとっては新しく出来た甥っ子か姪っ子にあたるのだろうか? 

 

「取り敢えず、奈南にしてる位の力で相手してみようかな」

 

 せっかくだし、久しぶりに獣形態になって戦ってみようと思う。私の獣形態はサイズが変更可能だが、通常時は5メートル位の白い狐だ。獣形態での戦闘を練習する機会はあまりないので有効活用させてもらおう。

 

 私の肉体が人間から狐の姿に戻っていく。狐に戻りきった時には思っていたよりも違和感は少なかった。やはり今の私はこれが真の姿なのだろう。人間形態も人獣形態もどちらも違和感はないが、やはりこの姿が一番しっくりくる。

 

「じゃあ、テストしようか!」

 

そう啖呵を切って、私は暴風大妖禍(カリュブディス)が放つ鱗と空泳巨大鮫(メガロドン)の嵐に身を投じた。

 

 

 ************************

 

 

 ノウェムが暴風大妖禍と戦い始めた頃、奈南は拠点にしている宿屋兼食事処で女将と宿の看板娘の二人と話し込んでいた。

 

「へえ〜、ノウェムって私塾なんてやってるんだ」

「なんだい、知らなかったのかい? あんなにお世話になってるのに」

「そうなんですよ。私、ノウェムのことはすっごく強いってことくらいしか知らなくて」

 

 数日前、奈南はノウェムの素性を殆ど知らないことに気がついた。彼女にはこの世界に転移して右も左も分からなかった時に助けてもらってから一方的に世話になってばかりだ。何一つ恩返しなんてできていないし、家の場所すら知らない。現在彼女は用事があるとかで数日間街から離れているが、何をしているのかも教えてくれなかった。その時に思ったのだ、『私ってノウェムの何を知っているんだろう』と。

 

「あの人はね〜、時々お菓子をくれる優しい人! 魔法を習ってる時に巫山戯るとすっごく怒るけど・・・・・」

「そりゃあ魔法は危険だからね、怒られるのは当然だよ」

「お母さん! もう反省したってば!」

 

 彼女は真面目なんだろう。二人の会話からもそれは分かる。奈南が通っていた学校でも適当な先生はとことん適当だったし、真面目な先生は真摯に生徒に向き合ってくれた。言動こそ適当なところがあるものの、奈南にとってノウェムはとても良い師匠だ。それを思えば、彼女が真面目なことは自明の理だろう。

 

「そういえば・・・・・」

「どうしたんですか?」

 

 突然、女将が何か思い出したような声を上げた。

 

「いやね、前に何回かあの人が子ども連れてるの見たことがあんのよ」

「本当ですか!? 子供がいるとは聞いていましたけどあったことなくて・・・・どんな子でした!?」

「確か・・・・・桃色の髪の10歳くらいの女の子だったかな。こいつより少し小さいくらいの。それと、なんかトカゲみたいのを連れてたねえ」

 

 そう言って女将は自らの娘を指差す。彼女は今年で丁度9歳になり、背丈は130cmあるかないかだ。それだけ小さい看板娘よりも更に小さいのなら年齢もそう変わらないのだろう。そして、ノウェム自身が話したペットのドラゴンもいるという話とも一致している。

 つまり、彼女はそんな小さな子の子育てと並行して奈南の面倒も見ていたことになる。そう考えると、途端に彼女に対して申し訳なさが胸中に溢れてきた。

 

「そっか・・・・・すみません、今度あの人にお礼のプレゼントを送ろうと思うんですけど、何がいいですかね?」

「プレゼント! いいじゃないか! どんな物がいいとかあるかい? できる限り協力するよ!」

「お花! お花がいいと思う!」

「ありがとうございます! そうですね──────」

 

『女三人寄れば姦しい』とはよく言ったもので、奈南達は時間を忘れて話し込んでいた。

 そして辺りが暗くなり女将が夕食の支度に入った頃、外からガヤガヤとした喧騒が響いてきた。どうしたのかと外に出てみると、街の西側に位置するこの宿屋からでも分かるほどの人だかりが東の広場にできているのが僅かに見えた。

 

「なんだろう、あれ?」

「祭り? でもそんな予定なかったはず・・・・・それに東の広場ってことは」

 

 脳裏にノウェムの『軍が待機している東の広場には近づかないほうがいいよ』という言葉がよぎった。

 何故、軍がこの街に来たのだ? このあたりには私が転移した森くらいしかなかったはずだ。

 嫌な予感はどんどんと大きく広がって、私の心に不安の影を落としていく。その影は私の体を独りでに動かし始めた。

 

「ちょっと広場の様子を見てくるよ」

「えっ、夕食は!? お母さんが今作ってるよ!?」

「戻ったら食べるって伝えておいて──!!」

 

 人でごった返した大通りを避け、広場に向かって屋根伝いで一直線に向かう。近づくにつれて広場で何が起きているのかも聞こえ始めたし、見え始めた。どうやら軍が何かの決起会をしているようだ。それを見物しに人々も集まっていたのだ。

 

「でも一体何を? このあたりにあるものなんか──────」

 

 不思議に思っていると突如としてざわめきが収まり、一際強力な気配を纏った男が壇上に上がって声を張った。

 

「これより!! 我々は竜の娘を手中に収め、その力を我らが王に献上する!! あの化物がいない今が好機なのだ!! 決行は明日!! 皆、心してかかれ!!!」

 

 男の声に軍の兵士達が規律の取れた反応をする。しかし、私の頭の中はそんなことは認識せず、様々な疑問が渦巻いて堂々巡りになっていた。

 

 竜の娘とは一体誰のことだ? あの化物とは誰のことだ? 

 態々軍が動くほどだなんて、どれほどの力をその子は持っているんだ? 

 その子はノウェムよりも強いのだろうか? 

 彼らをどうにかして止めたほうがいいんじゃないか? しかしどうやって? 

 

 その疑問は宿屋に帰っても、女将の夕食を食べても、部屋のベッドに入っても何故か消えない。嫌な予感がどうしても拭えない。

 

 結局、眠れたのは夜もすっかり更けて朝になるかという時間帯で、見た夢は────生きてきた中で最悪の悪夢だった。

 

 




奈南は魔物を倒したり宿屋の手伝いをしたりして日銭を稼いでいます

カリュブディスがこんな前からいたのか分かりませんが、数百年周期で復活するという話だったので(作者のガバとも言う)

因みに今のノウェムの存在値は+α含めて単純計算で約2億となりました。存在値の量という面だけで見ると魔加五重って化け物なんですよね、これがない場合のノウェムの存在値は九曜含めて7294万2467となり大幅に減少するんですよ。それでもヴェルグリンドと同じくらいはあるんですが,,,,

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ステータス
 
名前:ノウェム
存在値∶3294万2467(+魔加五重)(+九曜)──2億0471万2335
種族:最上位聖魔霊──星閻竜狐
庇護∶星閻の庇護
称号:嚆矢の異世界人、調停者、審判者、真なる魔王
魔法:<元素魔法><物理魔法><精霊魔法><上位精霊召喚><上位悪魔召喚><陰陽術><神聖魔法><核撃魔法><魔厭術><竜種魔法>
固有スキル:『万能変化』『万能感知』『竜霊覇気』『無限再生』
アルティメットスキル:『閻福之王ヘカテー』・・・思考加速、詠唱破棄、術理創造、法則支配、世界宣告、静寂、虚喰、胃袋
『虚飾之王アルコン』・・・霊知、隠匿、悪壊、属性変換、空間支配、物質創造、時空間操作
『知識之王ラファエル』・・・思考加速、解析鑑定、並列演算、詠唱破棄、森羅万象、多重結界、思念支配、統合分離、並列存在
『怨嗟之王イブリース』・・・魔加五重、激怒、鎮怒、死魔、失楽世界
耐性:『痛覚無効』『物理攻撃無効』『状態異常無効』『自然影響無効』『精神攻撃無効』『聖魔攻撃耐性』
保有武器:[九曜グラハ]

閑話として異世界人の話を2話書こうと思っていて、1話は決まっているんですが、あと1話が決まっていません。読みたい異世界人の話に投票お願いします。

  • 奴隷になり、買ったノウェムを信仰した少女
  • 日曜朝の変身ヒロインに憧れた少年
  • 手に入れた力に溺れた青年
  • 歓楽街で女帝と呼ばれた艶女
  • 聖女だったが転移後は魔女と呼ばれた少女
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