それと前話のここ好き、というか透明文字を見ていただけましたか?あれは作者が大好きな作品の好きなキャラのオマージュです。
「なあ、知ってるか」
「あ? なんだよ急に」
西方のある国、その貧民街の路地裏
国の中でも最底辺の掃き溜めに、男達がいた
「近頃、あの奴隷市場でオークションが開催されるんだとよ」
「あ〜、そういやそんなことボスが言ってたな。それがどうした?」
男たちは一目でまともな職に就いていないと分かるような風貌の破落戸だった。
彼らの足元にはいいように弄ばれ、もう声も上げなくなった十四歳ぐらいの少女────だったものが転がっている。
「そこにな、売られるんだってよ!」
「・・・何がだ?」
彼女は彼らに望まぬままに花を散らされ、尊厳を踏みにじられ、正気を失った。
もう立ち直ることも、正気を取り戻すこともないだろう。
「ボスの奥方様なんて目じゃないって、専らの噂の女だよ!」
「奥方様、か・・・・・確かに珍しいが、興奮することか?」
男たちはそれを気にした素振りなど欠片も見せず、会話に花を咲かせている。
その光景を見つめる人影を、致命的にも見落としながら。
「それがなぁ、そいつ正体は狐の魔物なんだってよぉ!」
「そりゃぁまた。で、顔はどんなもんだ?」
人影が蠢く。
男たちの会話に、漸く見つけたと言わんばかりの気配を漂わせながら。
「それがまた、美しいったらないらしいぜ・・・・・何でも一国の王も今回のオークションに出向くとか」
「へぇ・・・・・いい味がしそうなだぁ!」
路地裏に音が響きわたる。
呼吸音、水音、話し声など、様々な音が反響し、カツカツという靴音を掻き消す。
「なあ、そのオークションってのは、どこd「──────その話、詳しく聞いてみたいな」──────なッ!!」
声と同時に、片方の男の首に長剣が添えられた。
剣の主の声音は年頃の少女のようだったが、その声色には隠しきれない怒りと興味、そして侮蔑の感情が乗せられていた。
剣を添えられていない方の男は命に危険が迫ってはいなかったが、それでも突然現れた女に恐怖を感じていた。そして仲間の命を今にも刈り取らんとする女を、声を出せぬ程に焦りながらも注視した。
仮面を被った女だった。
黒い長髪を後ろで一つにまとめ、いわゆるモノトーンと呼ばれる白と黒で構成された服を着ていた。年の頃は十六歳前後だろうか。まだそれほど歳を重ねていないだろう小さな体躯は、見た目と裏腹に異常なまでの力強さを感じさせた。
そして何より特徴的なのはその仮面。
全体に波状の模様がが掘られ、中心には赤い点が装飾として施されている。
そんな、人の顔を模したような不気味な仮面だった。
「かっ、仮面の勇者?!」
男は直ぐにその存在に見当がついた。
二十年程前に活動を始めたという勇者が、丁度目の前にいる女と同じ特徴を持っていると聞いたことがあった。
(冗談じゃねえ! 勇者なんかと張り合えるかってんだ!!)
「さっきの話、詳しく聞かせてもらえる?」
「話す! 話すよ!! だから剣を降ろしてくれ!!」
「・・・・・・分かった」
男は会話の余地がある様子の勇者に安堵し、知る限りのことを話した。
四日後に娼館街の地下で奴隷オークションが開催されること
これまでもそのオークションは度々開催されてきたこと
自分たちのボスが手に入れた似顔絵付きの商品表の中に件の女がいたこと
かなり大きなオークションで国の最上位貴族が関わっていること
「・・・・・・そう。そんなオークションがあったなんて、これまで一度も────」
「な、なぁ勇者さんよぉ、知っている事は全部話した!! だからここは見逃してくれねぇか?」
「・・・うん、本当に全部話したみたいだね・・・・・・・・・・・・・・でも、そこの女の子とこれとは話が別」
仮面の勇者がそう言ったのを最後に、男の意識は落ちた。
次に目覚めたときには既に牢獄だった。現行犯で、更には勇者に捉えられたのだ。そうやって、もう二度と出られないだろうことを悟り、男は恥も外聞も気にせずに泣き叫んだ。
『ねえルミナス、少し来てほしいところがあるんだけど』
**********************
地下に位置するオークション会場の更に地下
奴隷たちの収容所にて数名が商品の状態を観察していた。
彼らは運営側の人間で、目の前に並べられているのは大切な商品。それもこの区画に保管されている商品達はどれも一級品だ。彼らは丁重に、淡々と観察を続けていた。
「────おいおい、やめてくれよ・・・・おい、こいつ壊れちまってるぞ!」
響くのはペンが紙を擦る音と時折聞こえる鎖の音だけ。そんな静かな空間に、何かに気付いて焦った様子の男の声が響いた。
「どうした!」
「こいつ、壊れてやがる。さっきから何かとブツブツ呟いて・・・・」
「どいつだ! ・・・・・・・・・・・・あぁ、こいつか。なら問題ない」
そう言って検品員たちが群がり始めた檻の中には、一人の少女が鎖で繋がれていた。
「……ロベル……アリス…………カズヤ……花子…………イシュメイル…………ミユ……こういち……ソフィー…………グスタフ……ユカ…………ハオ……リナ……」
足枷がなく腕のみを繋がれているところを見るに、それらが要らないと判断される程に、抵抗の意思をなくしてしまっているらしい。それにしてはゴタゴタした趣味の悪い装飾の首輪が着いているのが気になるが。
「そういえばお前はこの区画は初めてだったか・・・・・・・・こいつはこんな風に心を壊していつも何かにブツブツと呟いちゃいるが、言われた命令には素直に従う。見た目も従順さも合わせて、商品としては最高だ」
「へぇ〜、そうなんすか」
「ああ。付け加えるとするなら、こいつは今回のオークションの最後に売り出される商品で、最高の商品でもある」
少女は非常に美しい容姿をしていた。これが世界最高の職人の手によって精巧に作られた人形だと言われれば、素直に信じてしまいそうになるくらいには。
「じゃあ、この首輪って?」
「それは『魔封じの首輪』だ。なんでも元は凄腕の魔法使いだったらしくてな、万が一を防ぐためらしい・・・・・こんなんだから、必要ないとは思うんだがなぁ」
魔法使いとしての腕が良い人はそれだけで引く手数多なこの時代。魔法使いの中でも”凄腕”と称されるう腕前を持つのならば、それは絶対の成功の保証。そんな女がこんな所で鎖に繋がれてるのには違和感がある。
「・・・・こいつって、何でこんな状態になっちまってるんですか?」
「ああ、それな。一緒に旅をしていた仲間が借金をして財産狙いでこいつを裏切った上に、そいつに売り払われたらしい。それも銀貨20枚でな。恐らく相当こいつのことが嫌いだったんだろうよ」
「・・・ひどいもんっすね」
その時、ジャラッと、少女が繋がれた鎖から金属と金属がぶつかり合う音がした。
「……マクシム…………カタリナ……ハリド……メイ…………ジョナス……アイ…………レン……ファティマ…………パオロ……ルーシア…………シュウ……」
しかしその音が続くことはなく、また少女はブツブツと口を開き始めた。
「────あっ、焦ったああぁぁあぁ!」
「ああ、忘れてた。こいつの前で仲間のことを話すのは厳禁なんだった・・・・・これは俺の失態だな」
「いやいや先輩、元はと言えば俺が悪いんすから────」
彼らは少女の検品も終え、出入り口に引き返してゆく。部屋中から彼らに敵意が向けられ、隙あらば彼らを殺そうと意気込む中、たった一つの檻だけがそれらからは切り離され、永遠に音の反響が起きていた。
「…………ドミトリー……エカテリーナ…………ケンジ……サクラ…………レオポルド……イヴ…………タクミ……リオ…………バシュール……」
「……シャルロット…………ヒロト……アヤ…………オスカー……ノラ…………イーサン……マリア…………カイ……ユイ…………アジズ…………美咲…………ナオキ……陽菜…………トーマス……ジュリア…………悠真……アンナ…………エンリケ……レイナ…………ハンス……」
「……キラ…………リョウ……ミラ…………アベル……ナディア…………ウェイ……エミ…………ルカ……リリ…………ユウト…………サーシャ…………ミカエル……カレン…………フィン……ナツミ…………ダイスケ……ローザ…………ガブリエル……アリーナ…………シン…………チカ…………タリク……セリナ…………ルーカス……ミーナ…………ケイスケ……ノエル…………アントニオ……アイリ…………ユージ…………リサ…………ノエ……ユナ…………セルゲイ……ティナ…………ジン……モナ…………バルトロメオ……クレア…………レン……」
「……ミオ…………タケル……結衣…………ヨハン…………アルト……ミレナ…………ソウマ……カナデ………………美月…………蓮…………ヴァルター……エリカ…………ハルキ……ミオリ…………ネイサン……ユズハ…………キリト……サナ…………ロイド……結菜………………セレス……タクヤ…………イリス……ユウナ…………咲良…………ベルナール……リツカ…………コウガ……ヒナノ…………アルヴィン……直哉…………ミサト…………レイジ……アスカ…………ノクト…………悠斗……陽葵…………クラウス……リリカ…………シオン……優斗……ユメ…………ダリウス……ナギサ…………ハヤト……カホ…………エドガー……スズネ…………トウマ……ミハル…………ゼイン……美咲………………レオン……マホ…………シュン……アカネ…………バルト……ユキナ…………カイル……リオナ…………アーサン……ミツキ…………ユウ……サエ…………クロード…………フェリス……ナオ…………カナタ……ユイナ…………オルフェ……サツキ…………ジーク……ミユキ…………レイ……コトネ…………セツナ……ハルナ…………グレン…………隼人…………ルーファス……ミナト…………トオル……アイナ…………ガルド……チヒロ…………ユウセイ……アオイ…………ディルク……ミレイ…………ソラ……ヒヨリ…………バン…………リオン……ナツキ…………コウ……リツ…………アルベルト……ミオナ…………シグルド……ユラ…………タク……ノノカ…………レイジロウ……ミズキ…………ティリヤ………………」
「…………………………奈南…………」
************************
────どうして、こうなってるんだっけ?
牢に繋がれ首輪を嵌められ、今の私はまるで犬のような有様だった。
────いつから、こうしていたんだっけ?
光の差し込まない薄暗い地下では、時間感覚がズレていってもうどれだけの時間ここで過ごしたのか確かな時間は覚えていない。ただ、一年は経っていないと思う。
────わたしはだれに、売られるんだろう?
奴隷として捕まってから、随分と醜態を晒していた気がする。でも、容姿と魔法だけは目に止まったようで、愛玩目的か戦闘目的の奴隷として売られる予定らしい。
────また、裏切られたんだっけ?
────また、裏切ったんだっけ?
どうだったかは、よく覚えていない。
嘘つき。はっきり覚えてるくせに
今も【尾裂の術】が正常に起動しているのは分かるから、何も心配はしていない。
嘘つき。本当は不安で仕方ないくせに
奈南が死んでから、何人のあの子たちを看取ったんだっけ? 加速度的に全体数が増えていたのは覚えてるけど。
嘘つき。47019人、誰一人忘れるなんて出来てないでしょ
奈南が死んでから、どれくらい経ったんだっけ? よく覚えていない、思い出せない。
嘘つき。6548年と11ヶ月と17日、確り覚えてるでしょ
もう、何も気にならなくなったな。
嘘つき。今も耳元で鳴り響いてるでしょ、聴こえてるでしょ。気付いていない振りなんて赦さない。誰が許したとしても、この声が鳴り止むことは決してない。
『信じてたのに』
『ふざけるな』
『貴方の存在自体が不愉快です』
『どうしてお前だけ生きてるんだ』
『裏切り者』
『失せろ』
『絶対に許さない』
『どこまでも哀れなピエロなんですね』
『いい加減にしろ』
『よくもあの子を』
『お前が殺したんだ』
『殺してやる』
『最低』
『貴方、何のために生まれてきたの?』
『死ねばいいのに』
『二度と面みせんじゃねえ』
『おかしいでしょ』
『良かった、貴方なんかに殺されなくて』
ねえ、貴方にはこっちの方がよっぽど辛かったでしょ。嘘つきさん。
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ああ、五月蝿いな
もう、黙ってくれよ
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『なっ、なんで!! どうして!! ハルキ!!!』
屈強な傭兵集団と陰気な魔術師集団に、全身を拘束される。それを指示した男──────共に旅をしていた哀れな異世界人のハルキに、自分でもこんな声が出たのかと思うほどに恐ろしい声音で叫ぶ。
『この世界に来て、てめえに助けられてからずっと考えてた。どうすればお前が惨めに死んでくれるか。でも途中でやめたよ・・・・・・・・・だってお前、強すぎるんだよ』
この世界に降り立った異世界人の直ぐ側に【尾裂の術】によって発生する並列存在は、やろうと思えば五感を本体の私と共有することが出来る。それを使って見つけたのが彼だった。強力なスキルを持っているくせに、他の異世界人と違いその使用方法を理解できず、魔物でもないただの猿に殺されそうになっていた。
そんな様子の彼の元に、普段は【尾裂の術】に組み込まれている『隠匿』の効果で異世界人には存在すら欠片も見せないのに、何故か私は気まぐれに本体で向かった。奈南や他数名のときと同じように。
そして助けて、彼に頼まれて共に旅をして、魔王を倒した。
『魔王を討伐に行った時も、ダメージの殆どをお前が与えて、僕は脇役だった。主人公は俺のはずなのに。何なんだよ、一人で三重霊子崩壊を四つ展開とか、ふざけてるだろ』
『あぁでも、コイツ・・・・・
その魔王は余りにも凶暴で、その振る舞いは流石に目に余るものだった。故に滅ぼさないといけなかったので、彼の頼みは丁度良かったのだ。そうして魔王を倒して少しした頃、彼に誘われて立ち寄った村で、拘束を受けた。
『・・・・・そう言えば、昔同じようにして殺したやつがいたなぁ。あのイジメから僕を自分勝手に助けたあの生意気でいけ好かない女。僕一人であんな奴ら殺れたっていうのに。そういや、あいつを殺したことがバレかけて逃げてた時に召喚されたんだっけ? だけどまあ、本当に──────』
理由に心当たりなど欠片もなくて、只々困惑していた。いつでも拘束は解けるのだが、まず彼がこんな蛮行に走った理由を知りたかった。
心当たり、心当たり、心当たり・・・・・・・・・・・・一つだけある事を思い出す。彼にはどこか見覚えがあった。目に焼き付いていた筈なのに、今はもう忘れてしまっていたのだ。
『──────あいつもお前も、僕を見下しやがって』
ああ、思い出した
こいつの顔は、確かに昔の記憶に残っていた
そうだ。こいつだ
こいつが私を──────
──────菊月千夜を、殺したんだった
全力ルビ振り祭が終わったー!!!!
よっしゃ!!!!!
今回の話は所々で結構遊んでます。
『聖劇之王シリウス』・・・洗魂、共感、慈雨、桃源侵舞
『追慕之王ヘルマニビス』・・・追憶具現、霊廟、真実の羽、記憶之書、能力保存、能力返還
最後の部分を大幅に加筆しました(ラストシーン)
+
貴族の生態的に間違っていたので修正しました(クロエの登場シーン)
「四日後に貧民街の地下で奴隷オークションが開催されること」→「四日後に娼館街の地下で奴隷オークションが開催されること」
+
ちょっとミスを見つけたのでステータス欄を修正しました
保有魂数:{異世界人・・・47020}{他・・・6784509}→保有魂数:{異世界人・・・34528}{他・・・6784509}
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ステータス
名前:ノウェム
存在値∶6579万3570(+魔加五重)(+九曜)──3億6896万7850
種族:最上位聖魔霊──星閻竜狐ネビュラール
庇護∶星閻の庇護
称号:嚆矢の異世界人、調停者、審判者、真なる魔王、異邦の衡裁
魔法:<元素魔法><物理魔法><精霊魔法><上位精霊召喚><上位悪魔召喚><陰陽術><神聖魔法><核撃魔法><魔厭術><竜種魔法>
固有スキル:『万能変化』『万能感知』『竜霊覇気』『無限再生』
アルティメットスキル:『閻福之王ヘカテー』・・・思考加速、詠唱破棄、術理創造、法則支配、世界宣告、静寂、虚喰、胃袋
『虚飾之王アルコン』・・・霊知、隠匿、悪壊、属性変換、空間支配、物質創造、時空間操作
『知識之王ラファエル』・・・思考加速、解析鑑定、並列演算、詠唱破棄、森羅万象、多重結界、思念支配、統合分離、並列存在
『怨嗟之王イブリース』・・・魔加五重、激怒、鎮怒、死魔、失楽世界
『巧緻之王プロメテウス』・・・思考加速、森羅万象、詠唱破棄、並列演算、精密統御、天炎
『聖劇之王シリウス』・・・洗魂、共感、慈雨、桃源侵舞
『追慕之王ヘルマニビス』・・・追憶具現、霊廟、真実の羽、記憶之書、能力保存、能力返還
耐性:『痛覚無効』『物理攻撃無効』『状態異常無効』『自然影響無効』『精神攻撃無効』『聖魔攻撃耐性』
保有武器:[九曜グラハ]・・・他多数
保有魂数:{異世界人・・・34528}{他・・・6786124}
常用能力:『霊廟』『魔加五重』【尾裂の術】
閑話として異世界人の話を2話書こうと思っていて、1話は決まっているんですが、あと1話が決まっていません。読みたい異世界人の話に投票お願いします。
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奴隷になり、買ったノウェムを信仰した少女
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日曜朝の変身ヒロインに憧れた少年
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手に入れた力に溺れた青年
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歓楽街で女帝と呼ばれた艶女
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聖女だったが転移後は魔女と呼ばれた少女