「ルミナス、ここのこと知ってたの?」
「知ることには知っておったが、大して興味もなかったのでな。放置しておった」
西方のある国
その国で最高の娼館街にて、薄汚い欲望と汚れた金が蠢くこの市場に似つかわしくない少女が二人、外套を羽織り並んで歩いていた。彼女ら────クロエ・オベール、またの名を『仮面の勇者』クロノアと『
「それでクロエよ。今回のオークションに
「うん。ルミナスなら絶対に気にいると思うよ」
警備の兵も勿論いたが、ルミナスの魅了で彼女らは素通りして、先へ歩いた。
そうして少しした頃、二人の少女は歩みを止めた。
そこには、絢爛な装飾が施された扉があった。扉は金やルビーなどの様々の宝石があしらわれ、主催者の富を誇示している。
「・・・・・ここがそうなの?」
「うむ。この国の奴隷市場の元締めよ」
扉の奥には、地下へと続く階段があった。
それを進んだ先、地下の開けた場所にてそのオークションは行われている。
「では、行くぞ」
「うん」
薄暗い道を進む。
通路の両側には美しい絵が描かれているが、それらが気にならないほどに、その道は怨念に塗れていた。ある程度の力を有しているのなら、気づかない方が難しい程に凝縮された無念の意思。
無慈悲にもそれらを一掃して、二人は進んだ。
薄暗い通路には段々と、人影が現れ始めた。
彼らが着ている服は一目で上等なものだと分かる。いや、隠そうともしていないのだ。自らが貴族だということを彼らが隠す訳が無い。
そんな彼らに僅かな嫌悪感や怒りを抱きながらもクロノアは道を進む。そして漸く、会場への門をくぐり、その光景が目に入った。
『────400枚! 金貨400枚が出ました! 金貨400枚以上の方はいらっしゃいますか──!』
古代に作られ今は地下に埋もれた円形闘技場の中心で、あらゆる方向から下卑た視線を受けて震える見目麗しい少女がいた。
『落札! 落札です! トルマー伯爵様が、金貨400枚で藤色の髪の乙女を落札されました!!』
この場で云う商品は『人間』と『魔物』
戦闘用にも、ペットにも、そして愛玩用にも使えるそれらを、ここでは競りにかけて売りさばいている。
そして今ちょうど、本日の最高額が更新された。
「・・・・・・悪趣味」
「じゃな。しかしまあ、これも自然の摂理よな」
二人は客席に座り、オークションを見始める。
ルミナスは近くの従業員にオークション参加の意思を伝えていたが、それが気にならない程に、商品となっている者達への同情と、客と運営者への多大な軽蔑の念が湧き上がってくる。
『では次の商品に写ります。次の商品は雌の
二人が見始めてからも多くの魔物と人が売られ、会場に悲鳴と下衆な嘲笑が渦巻いた。
しかし、最後から二番目の商品になっても未だ、ルミナスは奴隷に値段をつけてはいなかった。単に興味がないだけなのか、美味そうではないと思ったのかは分からない。だが、そこに何らかの意図があることだけは確かだ。
だからクロノアは密かに、でも着実に悪を裁く正義の爪を研ぎ始めた。
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オークションの控室
そこに一人、また一匹と、購入された奴隷たちが戻ってくる。
このオークションで購入された商品達は一度控室に戻され、オークション自体が終わってから購入者に引き渡される。故に、控室には彼らが買われる以前とは比べ物にならないほどに陰鬱とした空気が漂っていた。
今になって漸く、彼らは自分の未来を正しく想像できたのだ。
「立て。出番だ」
そんな中、商品管理を任された男の声がかかり、一人の少女が立ち上がる。彼女以外に未だ『済』の印がリストに付いていない商品はない。彼女で本日のオークションはラストなのだ。
最後の奴隷が、今、会場に向かって歩み始めた。
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『────皆様、いよいよ本日最後の商品となりました。現在の最高額は、黄金髪の元伯爵令嬢で金貨1130枚。最後の商品はこれを上回るのか! いかにっっっ!』
司会の興奮した声が会場に響き、同時に、闘技場の扉が音を立てて開いた。
『では皆様、商品が入場します。本日最後にして最高の商品は彼女────』
彼女の姿が客達の視界に入った瞬間、会場が静寂に包まれる。
「ほぅ、これは───」「これほまでに───」「まあ───」「何とも───」
『──────美しい』
それは亜麻色の髪とクリームイエローの瞳がよく映える、美しい女だった。
『────昨月行われた魔王トルビヨン討伐の中心となった二人組の片割れにして、人の姿に化けて見る者みなを欺いた魔物の少女。その美貌は言うまでもなく、こうして捕まってはいますがその力もまた本物です』
その瞳は何も映しておらず、表情すら欠片も動くことはない。
只々無感情に、彼女は客席を見上げていた。
『一度魔物の姿をご覧に入れましょう!』
司会がそう大々的に呼びかけた。と同時に、それを受けた女の姿が変化していく。
体は影に包まれ変化の途中は見ることが叶わない。しかし、確実にその姿は変容していた。
亜麻色の温かな雰囲気の頭髪は雪のように清純な純白に染まり、クリーム色の柔らかな瞳は晴れ渡った空のような蟹鳥染に色づく。毛質も変化し、艶のある女性的なものから、フサフサとしていながらも絹のように滑らかな毛並みに変化していった。
影が薄まり、会場の光が再度女に集まる。
そこにいたのは先程の女ではなく、白く、小さな、それでも確かな力強さを感じさせる狐だった。
『ご覧いただけましたか、先程の美女がこのように愛らしい小動物に早変わり! この状態でも魔封じの首輪は依然として効果を発揮し、その機能を損なっておりません』
司会を見ていた客が再び目をそちらにやると、先程の少女がまた、何も映さない昏い瞳を携えて立っていた。首と腕には彼女を縛る首輪と手錠がついたままだ。
『このように素早い変化で襲撃への素早い対応も可能です! ・・・・・・・・では、戦闘にもよし愛玩にもよしの優れもの! 皆様、用意はよろしいですか?』
客たちの目が狂気と欲望に染まる。
これまでの奴隷に金を使いすぎた男は崩れ落ち、まだ十分な余裕をもっていたが女は扇子の裏でほくそ笑んだ。それぞれが金を用意し、本日最後のオークションに備える。
『──────本日最後のオークション、金貨450枚からスタートします!!』
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「470枚!」「780枚!」「いや520枚だ!」「800枚!」「650枚!」「900枚ですわ!」「1100枚!」「正気!? なら1400枚です!」「1500枚だ!」
客達が無遠慮に無作法に、私に値段をつけている。
値はつり上がってきていて、もう男爵や子爵程度では手も出せない程だ。最初に私に付けられた金貨150枚、これは前世での1500万円程度に相当する。そこまでして私を得ようとしているのだと思うと、何だか笑えてくる。
「4000枚」
会場がどよめいた。
金貨4000枚、つまりは4億円。それほどまでの値を私に付けたのあの男は誰だったか・・・・・・ああ、思い出した。
ゲープナー伯爵だ。表では清廉潔白な優男で通っているが、裏ではこうして下卑た欲を隠さないクズ。
その顔が笑みに染まるが、直ぐにそれは臍を噛むような表情に塗り替えられる。
「金貨7400枚」
会場に激震が走った。
7400枚を付けたのは、恐らくホガース公爵。
この国の重鎮で国防大臣の任を仰せつかっている男。筋骨隆々の気のいいおじさんの様な風貌だが、その実態は年頃の少女を甚振る事に至上の快楽を見出すゲス野郎。
ああ、私はこいつに買われるのか。
そう確信した。金貨7400枚などこの場にいる大抵の貴族が手を出せない大金だ。その上、買うと言っているのが国で最も位の高い公爵に地位に座る男なのだ。この場の誰も彼に逆らえないし、逆らう馬鹿は即座に斬られるだろう。
ホガース公爵が階段を下り、私に近づいてきた。
顔には隠すつもりもない肉欲と、隠しきれない嗜虐心が浮き出ている。
まあ、いいか。
そう思った。役立たずの私が生きている意味など無いし、この男にいいようにされても私が嬲られるだけ。
私の中にいるあの子達の魂は、特定条件を満たす魂の保存と修復に特化した
そう、何も問題はない
問題は、ない・・・・・はずだ
瞼を閉じる。もう何も見たくなかったから。
耳を塞ぐ。もう何も聞きたくなかったから。
心を殺す。もう何もしたくなかったから。
ホガース公爵が私の首輪についた鎖に手を伸ばした。
首輪で首が締められ、犬のように連れ歩かされるのを予想し、抵抗をやめて身を楽にした。
ああ、やっと、楽になれる
『────星金貨、300枚』
声が響いた。
眼前に一人の女が降り立つ
薄汚い鼠色とは一線を画す輝くような銀髪に、透き通った絹のように滑らかな肌。紅葉のように鮮烈な唐紅と海のように深い紺青の
彼女は正しく、傾城傾国の美女だった。
そればかりか、神々しいオーラを纏う彼女に一瞬、本当に一瞬だが、あの日亡くなった星王を思い出した。彼とは似ても似つかないのに。
そんな彼女を目に入れ、何故こんな場所にいるのかと私は目を疑った。
彼女の存在は聞いたことがあった。神々しいオーラを纏っていながらも、気配は吸血鬼、それも超克を遂げた者のそれ。
それに加えて『ルミナス』という、
彼女の存在は、かつてヴェルダナーヴァに連れられて会いに行ったあの狂人─────彼女の親である『黄昏の王』本人に、聞かされていた。
だが、今はそんなことはどうでもよくなった
彼女以上に、そばに立つ仮面を被ったもう一人の女を見つけ、その歪な
どうしてあなた達は
私を楽にしてくれないんだ
私は素直に壊れることすら
赦されないのか
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「あぁ・・・・・美しい」
その女を視界に入れた瞬間、雷鳴のように鮮烈な衝撃を感じた。
(元はクロエに誘われたから来ただけだったが、感謝せねばなるまい)
クロエは別枠として、これまで見てきた中でも飛び抜けて美しい少女だった。
それほどまでの彼女に低俗なゴリラが這い寄っているのを見ると、無性に腹が立ってくる。
そうして、自分でも無意識のうちにこう口走っていた。
「星金貨300枚」
客席から彼女の眼の前に降り立つ。
彼女は妾の存在に目を見開いて驚愕に顔を染めていた。しかし、妾の隣に降り立ったクロエを目に収めた途端に、先程以上の驚愕と悲壮な感情を顕にした。
『おっ、お客様! 今、なんと・・・・・』
戸惑った表情の司会がそう聞いてくる。
「良いか? もう一度だけ言うてやろう。星金貨300枚じゃ、星金貨300で妾がこの者を買うと言うておる。それとも金貨3万枚と言った方が、分かりやすかったか?」
場内がこれまでにない程の驚きに染まった。
それほどなのだ。
星金貨300枚など一人の奴隷につける値段ではない。
だが、そんなことは妾にはどうでも良かった。
今はただ、先程の顔の理由がしりt「・・・・の、用ですか・・・・」────。
「親殺しの女王が勇者まで連れて、私に一体何の用ですか? 私の魂もそこの勇者の3つ目の魂として押し込むつもりですか?」
そんな致命的な言葉を、彼女は口にした。
すみません。滅茶苦茶短くなりました。
このペースだと最低でも45話までにはメイドにはなっていると思います。
計画性のない更新をしている作者の不手際です。何卒ご容赦を!
それとルミナスとクロエの会話エミュ難しいな!ルミナス単体でもだいぶ難しいのにクロエとの会話となるときっつい!正解がわからん!!
星金貨300はルミナスならそれくらいは持ってそうだなぁと思って設定しました。まあ、後に世界的宗教のトップになるんだし、今も大量の配下から金を巻き上げるくらい出来るだろうからこれくらいは持ってるよね!っていう感じで設定しました。
Q、この時代は古代金貨とかで星金貨はドワーフ王国ができてからじゃないの?
A、作者のガバ・・・・だって古代金貨に星金貨レベルのやつがあるかわかんなかったんだもん。転すら本編で言ったらこれくらいっていう指標だと思って下さい。
(あとがきのあとがき)
前回のラスト部分を大幅に加筆+貴族の生態的に間違っていたので修正しました。詳細は全話の後書きを見ていただきたいです
みんなは魔王と勇者で誰が好き(リムルは除外)
-
ギィ
-
ミリム
-
ラミリス
-
ディーノ
-
ダグリュール
-
ルミナス
-
レオン
-
ルドラ
-
サリオン
-
グランベル
-
クロノア
-
マサユキ
-
クレイマン