転生した狐はメイドになる   作:くまんじゅう

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紅い霧

 その言葉を聞いたとき、クロノアの驚きはどれほどだっただろう。

 

 彼女は愛しい人を救うため、何千何万とループを続けている。

 しかし、今回のループではこれまでと違い、彼女の愛する人が死んでいない状態からのループであり、これが特異点になると思い行動していた。

 今回彼女がルミナスを連れてこのオークションに訪れたのも、その一環だった。

 

 クロノアが知る限り、これまでのループでルミナスの傍には常にはルナと呼ばれている人物がいた。

 

 彼女はルミナスに仕えていたが、その力はルミナスを凌駕していた。

 クロノアの中にいるヒナタ・サカグチも、何度か彼女と手合わせをしたことがあったが、かすり傷すら与えられた試しがないし、疲れた様子も見たことがない。元いた時代の魔王二人と同時に戦った時ですら彼らを子供扱いしていたのだから、彼女の底が見えない。

 

 それに、彼女はルミナスに仕えながらも忠誠を捧げていなかった。

 彼女に仕えている理由を聞いてもはぐらかされるばかりだし、もっと重要な何かのために仕方なくルミナスに仕えているという感じだった。ルミナスもそれを薄々感じていたようで、二人の間に真の情はなかったと思う。

 

 理不尽な力を持つ不審人物、それがクロノアにとってのルナという人物だった。

 

 これまでのループでは、クロノアがルミナスに出会ったとき既に彼女らは出会っており、共に行動していたので態々捜す必要などなかった。しかし、この世界線ではルミナスの傍にルナはいなかった。上手く行きそうな今回のループで不審な彼女を態々近くに招く行為に躊躇いもあった。

 

 それでも、圧倒的な強さを持つ彼女の力を借りたくて、今回のループでは所在不明の彼女を捜していた。

 

 そうして彼女の手がかりを見つけ、ルミナスを連れてオークションに向かい──────彼女の言葉に絶句した。

 

『親殺しの女王が勇者まで連れて、私に一体何の用ですか? 私の魂もそこの勇者の3つ目の魂として押し込むつもりですか?』

 

 

 未だ私の事を知らない筈の彼女は、ルミナスに『女王』という言葉を放った。これは元から彼女を吸血鬼の真祖だと知らないと出ない発言だ。

 それだけでなく彼女はひと目見ただけで、私の中に私自身とヒナタの魂が共在していると見抜いた。

 

 ───異常事態だ

 

 彼女を仲間にしようとしてこのオークションを訪れたのに、彼女からは今にもルミナスを殺さんとする意思をひしひしと感じる。

 彼女の力が私の知るそれと相違なければ、ルミナスと私が共に抗っても勝てる見込みは無い。

 

 

 本当に、まずいことになった。

 

 

 

 

 

 

 *************************

 

 

 

 

 

 

「ああ、答えなくていいですよ」

 

 吸血鬼の真祖に疑問を放った後、そんな言葉が口をついて出た。

 

 ダメだ

 今の私は冷静じゃない

 抑えろ

 彼女を殺すのはマズイだろ

 

 そんな思考とは裏腹に、体は勝手に動き出す。

 人間に紛れ込むために抑えていた魔素の制限を緩めたと同時、纏わり付いていた魔封じの首輪と手錠が自然と崩壊した。耐えられなかったようだ。

 それを見たオークションの司会や運営が腰を抜かし、蜂の巣をつついたように騒いでいるが、どうでもいい。あれらが死のうが、ここに居る誰が死のうが、大した問題にはならない。

 

【尾裂の術】がバグを起こしたのか、どちらもこの世界のものではない魂の筈なのに、一つの体に押し込められたそれらを私は見たことがない。術は後でメンテナンスをする必要があるだろう。

 

 だがその前に、禁忌を犯したこの女を始末しなければいけない。そうしなければ、怒りが収まらない。

 勇者を見て生じた絶望が、今は底なしの怒りに転じている。

 元の世界でやりたいことがあったのに、大事な人達がいたのに、無理やりにこの世界に連れてこられた憐れな者達。

 

 それが異世界人なのだ

 

 そんな子たち二人の魂を無理やり一人の体に押し込むなど、あってはならない。

 赦される筈が無い。

 相手が例え関わりのあった彼の子供であっても、消滅させなければいけない。

 

 

 

 胃袋から武器を取り出した。

 

 かつて私に恋をした異世界人が、己のスキルを限界まで燃やし命を賭して鍛え上げた武器。

 夢魔を始めとした命を吸い取る魔の者に苦しみを与える事に異常なまでの力を発揮する剣であり、月の処女神の名を冠する細剣。

 

 銘を『月神の細剣(アルテミス)

 

 さらなる高みに至る可能性を始めから捨て去ることで誕生した瞬間から伝説級(レジェンド)に至った、弱者を狩るのための剣である。

 

 

 

 そうして、禁忌を犯したこの女を─────吸血鬼の女王ルミナス・バレンタインを粉微塵にしようと、剣を振り抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・どうして、邪魔を?」

 

 

 振り抜いた剣を、ルミナスの被害者であるはずの勇者自身が防いでいる。

 

 緩めたとはいえ魔素を制限し、人間でいう聖人の範疇に収まっているとはいえ、手加減無しで放った一撃を受け止めたせいで腕が震えている。

 そんな彼女が憐れで、剣を引き一度距離をとった。

 

「──っ、話を・・・・しましょう!」

 

 この期に及んで何をぬかしているのだ、この子は。君自身が彼女の被害者だろう。

 この女に操られているのだろうか? そんな様子は見られないのだが・・・・・・まあ、関係ない。この女を殺せば済む話だ。

 

「話しなd──────」

「貴様、何故あの男のことを知っておるのじゃ?」

 

 勇者の誘いを断ろうとしたと同時、勇者の後ろから奴が問いを投げかけてきた。

 気になるだろう。彼女自身が滅ぼした男のことを、まだ百年も生きていないような外見の私が知っている理由が。だが、

 

「言う必要がありますか? こんな非道を行うような貴方に」

「非道?」

 

 ああ、怒りが湧いてくるのを感じる。

 言わなければ分からないのだろうか? 

 性根まで親に似たのか? 

 

「貴方がやったのでしょう? 一つの体に2つの魂を封じ込める実験。殺した親の研究を引き継ぎでもしましたか?」

 

 彼女の親である『神祖』は最初ヴェルダナーヴァに連れられて会いに行った時は、カリスマを持ち、とんでもないことを彼がしでかしたとしてもどこか憎めないような、そんな人物だった。しかし永い時が経ち、いつからか彼は非道に手を染めるようになった。

 

 性格が変わった後の神祖に対しては、厄介なことを次々としでかしてくれる面倒な奴という印象が強かった。奴のせいで何度人類が滅びかけて、それを防ぐために何度奔走する羽目になったかは考えたくも無いほどだ。

 そんな彼が滅ぼされたと聞いた時は、最も溺愛していた子に殺されたと聞いて可哀想だと思いはしたが、遂にか、という感想が真っ先に出た。

 

 そんなどうしようもない、『クソトカゲを凌駕する程の天災』と言っても足り無い男

 それが神祖だった。

 

 その彼を殺した子、それが眼の前のルミナス・バレンタインだ。彼がヴェルダナーヴァより与えられた『()()()()』という名を譲るほどに愛した子。

 彼女ならば、彼の研究を引き継いでいてもおかしくは無い。

 そう思ってその言葉を彼女に放った。

 

 しかし、それを聞いた彼女は何を言っているんだとでも言いたげな無表情でこう言った。

 

「妾ではない」

「・・・・あ?」

 

 

 

 

 

 

「妾はクロエにそのような実験などしておらぬ。彼女に魂が2つあるのに、妾は関与しておらん。それに、妾にそのような濡れ衣を着せて最初から疑ってかかるなど、何様のつもりじゃ?」

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・は? 

 

 こいつは何を言っている? 

 

 濡れ衣? 

 お前以外に誰がそんなことが出来るというんだ

 魂の操作など世界の頂点達でも出来るのは両手の指に収まる程度だろう

 それが出来るであろう者の中で、やる可能性があるのはお前しかいないだろう? 

 

「・・・・・・・・まだ、嘘を」

(くど)い」

 

 柄が壊れるのではないかと思うほどに月神の細剣(アルテミス)を握り込む。

 

 お前がやったので無いのなら、一体誰がそんな残酷なことをしたんだ。

 考えうる中で一番可能性が高いのがこれなんだ。

 

 そうでないのなら、彼女たちが嘘を吐いているとしか・・・・・・・・・・・・・・嘘? 

 

「・・・・・そうだ、あれがあった」

 

 追慕之王(ヘルマニビス)の権能『真実の羽』

 使用者が意図した質問に答えた対象の言葉の真偽が分かる。ただそれだけの権能。

 使用者の意図した内容に対してのみに反応するため、言葉を弄しての誤魔化しが効かないのが最大の強みだが、エジプト神話に出てくるそれとは比べるべくもない。

 しかしそれが、この場においては何より有り難かった。

 

「最後にもう一度だけ聴きます」

 

『真実の羽』を熾す

 嘘偽りは通用しない

 これですべてが分かる

 

「あなたが、そこの勇者の中にある二つの魂を弄び、今の状態に彼女たちを縛り付けているのですか?」

 

 彼女の返答を待つ。

 しかし待つまでもなく、彼女は直ぐに口を開いた。

 

「だから言っておろう。妾はそんなことしておらん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────天秤は真実に傾いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 **************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう、ですか・・・・・」

 

 それだけ言って、彼女はしばらく口を噤んだ。

 

 戦闘の音が止み、音の最大の発生源であった彼女が静かになったからか周囲の喧騒がよく聞こえる。客達の逃げ惑う音、事態を収めようと右往左往する運営共。そして、この隙に逃げ出そうとする奴隷たち。

 そんな音の中で、一際甲高いカチッという音が鳴り響いた。

 音源に目を向ければ、彼女が先程どこからか取り出した悍ましい気配がする細剣を鞘に納めていた。

 

「一方的に疑い、剰え剣を向けてしまい、誠に申し訳ありませんでした」

 

 そう、彼女は俯いていた顔を上げ、ルミナスと私に向かって正面から謝罪した。

 話し合いはルミナスに任せると前もって決めてあるので、彼女に返答を任せることにする。

 

 それに正直、私の心は安堵でいっぱいだった。

 

 まさか、手心を加えていないルナさんの攻撃があそこまで重いとは思っていなかった。

 多分、本気で斬りかかられていたら防ぎきれなかったし、あれが連撃だったら尚の事だ。

 それにヒナタに感謝しないといけない。彼女が教えてくれた技術がなければ、受け止めることも威力を少しだが流すこともできなかっただろう。

 

 彼女は今まで戦ったどんな敵よりも強かった。

 本当に、危なかった。

 どうして彼女が疑うのをやめたのかは分からないが、それでも矛を収めてくれたのは僥倖だった。

 

「で、なぜ奴のことを知っておったのじゃ?」

「・・・・私も彼には昔、散々な目に遭わされましたから」

 

 あちらも話がだいぶまとまったようだ。

 ルナさんが複雑そうな表情でルミナスと話していた。

 

「あなたにも、申し訳ありません」

 

 私が戻ってきた事に気づいた彼女がこちらに話しかけてくる。

 

「痛かったでしょう? 手加減せずに攻撃してしまったものですから」

「ううん、大丈夫」

「いえ、何かお詫びをしないと・・・・」

 

 ルナさんが申し訳なさそうに声をかけてきたが、そうも言っていられないことに気付いた。

 オークションの会場から客達や運営の人間が逃げているのだ。今回ここにきた目的が彼女とはいえ、こんな悪意の掃き溜めを見過ごすことは出来ない。

 

「それより、このオークションをどうにかしないと」

 

 私がそう言うとルナさんは少し考え込んで、数瞬のうちに私に向かって声をかけた。

 

「・・・・・・・・オークションがなくなればいいのですか?」

「────? ・・・・うん。最悪主催者たちだけでも一掃しないと」

「では、謝罪代わりと言っては何なのですが、それは私が引き受けましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *****************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっきまで動いていたのは自暴自棄になっていたのがただ単に怒りに転じていただけで、正直、まだ心は沈んだまま。

 もう何もしたくないし、何も見たくない、何も聞きたくない。

 

 何一つ変わっていないが、それでも彼女たちを一方的に疑い攻撃してしまったことだけは確か。だから、誠意を込めて対応しなければいけない。

 そう思ってルミナスと話していたが、謝罪後、やはり彼女は真っ先に何故か私が彼女の親のことを知っていたのかを聞いてきた。

 

 それに答えて、またいくらか問答を終えたあたりで、勇者の彼女が戻ってきて、オークションの話になった。正直、このオークションについて私が知っていることはあまりない。精々が組織規模と私を世話していた奴らの名前くらいだ。

 だけど、これが忌むべきものだとは当然分かっている。ハルキに裏切られてここに売られてから、色んな子たちが絶望に突き落とされて行く様をずっと見てきた。

 

 勇者の彼女と、私が見捨てた奴隷の子達への()()として。

 そして、疲れたなんていう()()()()()()()()()()()()()()()()()と、()()()()()()()()()()()()()()への罰として。

 

 けじめをつけよう

 

 ならまず、対象はこの国の人間全員でいいかな。

 

「───『共感』」

 

 聖劇之王(シリウス)の権能『共感』

 効果は感情の共有だが、応用して対象の記憶と感情にパスを作ることにする。

 そうして集まった情報を知識之王(ラファエル)を中心に処理して、このオークションに関わった者と関わっていないものに、そして情状酌量の余地がある者と無い者に選別する。

 結局、情状酌量の余地無しと判断した者は3257人に上った。

 

「───『洗魂』」

 

 選別し、情状酌量の余地なしと判断した者に聖劇之王の権能『洗魂』を使用する。

 この権能の効果は感覚及び状態の共有。『共感』と似ているが、こちらの方がよりこの場に適した使い方ができる。

 

 

「・・・・・・・彼でいいですかね」

 

 

 会場の裏手に変わらずいた、奴隷の私を世話をずっとしてくれていた男に目をつけ、彼の方に向かって歩き始める。彼は情状酌量の余地なしと判断されていた。

 月神の細剣を抜く。

 近づく私に気付いた男は、すべてを悟ったような顔で話しかけてきた。

 

「よぉ。殺しにでもきたか?」

「はい」

「ハッ、そうかよ・・・・・・・・で、何があったんだ? いつにも増して辛気臭い面してるぞ」

「何も。ただ、壊れることは許されていなかったんだと、改めて実感しただけですから」

 

 私がそう言うと、彼は不敵に笑った。それは私を馬鹿にしてのものなのか、どうしてなのかは分からない。

 

「最後に、言い残すことは?」

「そうだな・・・・・・・いや、やめだ・・・・ないぜ」

「そうですか。では・・・・・・・・・お休みなさい」

 

 

 

 ──────月神の細剣(アルテミス)を振り抜いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、国中で一斉に、紅い霧が確認された

 その霧はまるで、そこにいた人と入れ替わるように突然現れたという

 

 

 

 




難産で遅れた上に文が滅茶苦茶だし、展開も急だ、、、、、、、、、、申し訳ありません!!!(迫真

というかはい。書いてて思いましたけどやっぱキャラのエミュはめっちゃムズいし聖劇之王は凶悪ですね!まじ今回の話は最後の問答とラストシーンを書きたいがためだけに書きました。

はい。もう書くことがありません。
では適当にユーチューブの履歴で一番初めにきた音楽の題名だけ貼って後書き終わります


可不ちゃんのカレーうどん狂騒曲




追記

ちょっと気に入らなかったので改変しました

「効果は感情の共有だが、本質的には対象の記憶と感情にパスを作ることだ。」→「効果は感情の共有だが、応用して対象の記憶と感情にパスを作ることにする。」

みんなは魔王と勇者で誰が好き(リムルは除外)

  • ギィ
  • ミリム
  • ラミリス
  • ディーノ
  • ダグリュール
  • ルミナス
  • レオン
  • ルドラ
  • サリオン
  • グランベル
  • クロノア
  • マサユキ
  • クレイマン
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