転生した狐はメイドになる   作:くまんじゅう

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テスト前半戦が終わったので書きました。後半戦頑張ってきます


虫食いの記憶

 

 

 赤、赫、朱、緋、紅

 

 鮮烈なその色が視界を覆う

 ルナさんが男に細剣を振り抜いた次の瞬間、会場のいたる所でそれは発生した

 

 ───見えなかった。

 

 剣筋が少しも追えなかった

 そこに、絶対的なまでの根本からの力の差を感じた。

 けれど、それが異常なまでの技術の上で成り立っていることだけは理解できて、

 

「終わりました」

 

 そう、何も無かったかのように声をかけてくる彼女の異質さに、少しだけ怖気が立つ。

 

「ふむ・・・・今のは貴様のスキルか?」

「ええ、感覚を強制的に共有させるスキルです」

「なるほどな・・・・・して、貴様はこれからどうするのだ?」

「・・・・・・・・どうしましょうか」

 

 二人が話しているのに、態々ここまで赴いた目的を思い出す。

 

「少しいい?」

「───? 何ですか、勇者さん?」

「良かったら、私達と一緒に来ない?」

 

 私がそう聞いたのが心底以外だったようで彼女は首を傾げた。

 

「なぜ、貴方達に剣を向けた私を?」

「貴方が強いから。私はもっと力が必要なの。だから、私を鍛えてほしい」

「力・・・・・ですか。貴方は十分強いと思いますが。それこそ、魔王と対等な関係を築ける程には」

「ほお、気付いておったのか」

「貴方は分かりやすいですよ。容姿に加えて気配も特徴的ですから」

 

 話が脱線する。

 自然とそうなるのか、意図してなのか。それでも気にしていられない。

 

「お願い。助けたい人がいるの」

「・・・・嘘では、ないようですね」

「それ以前に、商会が壊滅したとはいえ壊滅前既に主は妾が買っておったのだ。貴様に拒否権はないぞ?」

 

「そういえば、そうでしたね─────

 

 

 

 

 それから彼女は少し黙ってからこう言った。

 

 

 

 

 ─────ええ、いいでしょう。しばらくは貴方達と共にいることにします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 一先ずは、安心かな

 

 

 

 

 

 

 

 

 ****************

 

 

 

 

 

 

 

 

 剣の刃が迫る。

 それは洗練された剣技で無駄がない。

 しかし────

 

「間合いをもっと丁寧に管理しなさい」

「っ、はい!」

 

 間合いの計算が足りない、と云うよりも拙い。まだまだ粗削りだ。

 

 再度、鉄の刃が私の命を絶たんと迫る。

 しかし────

 

「間合いに気を取られすぎ。剣筋が疎か」

 

 修正した結果、更に悪くなる。

 これは仕方がないことだ。解析系のスキルでも持っていない限り、相手の気の遠くなるような修練の果てにある()()をトレースするなど不可能で、自分がどれだけ上手くできたと思っても必ずどこかに穴がある。

 

「まず単純に速さが足りません。それではいつか文字通り置いて行かれる・・・・・ですが、剣筋は美しいし巧いです。その強みを活かしなさい」

「──っ、やあぁ!」

 

 

 

 

 

 私はあの時の勇者─────クロエに剣の稽古を付けていた。

 

 ひと目見た時には分かっていたが、彼女は勇者の卵を持ってはいるがそれが未だ孵化していないようだ。それであの強さだというのだから、将来はギィに対抗できるくらい強くなるだろう・・・・・・もっとも、卵を孵化させられたらという話だが。

 これまで、勇者の卵を保有している人間は何人も見てきた。彼らは皆才気に溢れ、正義感も十分に持っている、そんな子たちだった──────だが、彼らでも卵の孵化に成功したのは片手の指に収まる程度。

 

 その壁を超えられるか、そこが真なる勇者への一番の難所だ。

 

 まあ、そこは彼女自身が頑張るしか無い。もう一つの魂の力を借りれば幾らかやりやすくはなるだろうが、自分ですることをこの子は望んでいる。だから稽古を付けているのだ。

 

「そろそろ終わりにしましょうか。これ以上は明日に差し障ります」

「・・・・わかり、ました」

「では、これで」

 

 ここにきた日に与えられた自室に向かう。

 ここでの私の扱いは食客となっているようで、基本自由にしていられる。

 だから、私は特段変わらない日々を享受していた。

 稽古を付けて、彼女たちと話して、ご飯を頂いて、尾裂の術のメンテと異世界人の観察をして、稽古を付けて────その繰り返し。

 

「はぁ・・・・・これからどうするか、ねぇ・・・・・・・・」

 

 いつしか、眠ることがなくなった。

 この世界にやって来た時にはもう聖魔霊になったから睡眠を取る必要はなくなっていたが、私は毎晩眠るようにしていた。それは眠るのが好きだったというのも、元々の習慣というのもそうだったが、人の心を忘れないようにするためでもあった。

 長い時間眠らずにいると、何だかおかしくなってしまいそうだったから。それは精霊の棲家にいたときも、ルドラやルシアたちといたときも、奈南といたときも変わらなかった。

 

 けれどルミナスとクロエの二人に出会う前、それこそ1000年かそれ以上に昔から、睡眠を取ることがなくなった。

 

 きっかけは多分、()を見るからだったと思う。

 眠る時には大抵”夢”をみる。それは個人個人で違うだろうが、私もそこまで変わったものは見ていなかったと思う。

 だけど何時しか、私はあの子達の夢を見るようになった。

 

 それはこの世界に来る前のあの子達が家族と暮らしているものだったり、あの子達同士が語り合い笑い合っているものだったりした。

 

 それを見る度に、彼らのそんな未来を見殺しにしてきてしまった罪悪感に胸が締め付けられた。

 

 それはあの子達が怨嗟の声を漏らして死んでいく光景だったり、あの子達の死体の山の上で踊る私の姿だったり、向こう側に私を引きずり込もうとしていたり、あの子達が私を責め立てている光景だったりだった。

 

 それを見る度、あの子達がこんな事をすると容易に想像できてしまっている自分に嫌気が差して、あの子達の足元へ死に続く道を舗装している自分に殺意を抱いた。

 

 そんな私を見抜いていたのか私のことを嫌っていたのか、死後にこの世界へ還ることを選んだ子も大勢いた。

 あの子達の旅路を邪魔しないよう、基本的に【尾裂の術】で発生する並列存在は万が一見られてもいいように狐形態な上、そもそも見られないように『隠匿』を纏わせている。彼らが死にそうになっていたら影から助けていたが、助けれなかったことの方が多かった。そんな彼らに、狐の私が元の世界への帰還を望むか聞くのが一番多いパターンだったと思う。

 そうして看取った47020人のあの子達の内12492人が、元の世界へ帰ることを望まなかった。

 

 

 そんな彼らの(悪夢)を見るようになって、私は眠るのをやめた。

 

 

 自室につき、使わないベッドに倒れ込んだ。

 窓からは夕焼けの茜色が差し込み、蝋燭の光も灯っていない部屋を薄暗く、不気味な色に染めている。

 

「私、元は何がしたかったんだっけ・・・・・・・・・・『記憶之書』」

 

 長命な者達は基本的に過去のことを覚えていない。

 例に漏れず、私も昔の事がだいぶ朧気になってきている。一部何らかの代償として捧げた記憶もあるから、それも思い出せはしない。追慕之王(ヘルマニビス)の権能『記憶之書』には私がこれまで見聞きした事の全てが記録されているが、それを読んでみても、覚えがないものも多くなった。一部何らかの代償として捧げた記憶もあるから、それも

 他と比べればだいぶマシだが、ルシア達との記憶ももう薄れてきている。

 

「・・・・・・・・ルシアは、どんな声だったっけ?」

 

 パラパラと実体化した『記憶之書』を読み流し、やりたかった事の記述を探す。この世界に生まれ落ちてからの記憶、つまりは約6700年分。軽く読んでみても、その殆どがあの子達と一緒にいるか一人で旅をしていた。

 そういえば、ミリムとは30年置きに会って料理を振る舞ったり近況を話し合っていたが、最近はなんだか気を遣ってくれることが多かった気がする。

 どうやら娘にすら不調を見抜かれていたらしい。本当はいつも天真爛漫に笑っていてほしかったというのに。

 

 そうやってしばらく経った頃に漸く、あの頃について書かれた部分にさし当たった。

 読み返せば、この頃の記憶は他と比べて随分とすんなり思い出される。

 

「・・・・・・・思えば、今よりもずっと弱かったし未熟だったあの頃、あの五人で過ごした騒がしい毎日が一番楽しかったなぁ。ルドラとはいつも喧嘩して、ルシアとは研究して、グリンドさんも混ぜて女子会して、ヴェルダナーヴァとは訓練して・・・・・・・・・そんな日々が、一番楽しかった」

 

 もう戻れないあの日々を思い出したら、どんどんと心は沈んでいって、何もする気が起きなくなってくる。

 もう動きたくない、何も見たくない。もう、死を見たくない。

 

 ────ついこの前あれだけの人を切り刻んでおいて? よく言うね

 

『霊廟』に入れず胃袋にそのまま保管しているこの世界の魂たちが、ドクンと脈動する錯覚を覚える。

 ルシアたちを滅ぼした国を除いて8個の国を、その国に住む人々ごと滅ぼし、灰にした。

 何一つ痕跡が残らないよう徹底的に滅ぼしたのは、ギィからの依頼という面もあったが8つの国は腐敗しているのが多かったし、全てが無視できないほどの禁忌を犯していたからだ。

 しかし禁忌を犯した罪人以上に、その国に住んでいただけで何の罪もない人の方が多かった。そんな彼らすら、連帯責任だと言わんばかりに消し炭にした。

 

 そうやって得たのが、今私の中にある6789381個の魂たちだ。

 

「ははっ、ここまで罪を犯した分際で何を禁忌だとか宣うんだ、か────────

 

 思い出す

 あの時、奴隷として捕まった時

 ずっとずっと呟いていた言葉を

 

 ────────ああ、そっか。私ずっと、ずっと・・・・・・・・・・死にたかったんだっけ」

 

 あの子達の魂を抱えたまま身勝手に死ぬなんて赦さないけど、少しくらい、感傷に浸るぐらいは許されると思う。だってずっと、6700年、頑張って来たんだから

 

「最初にこれを感じたのは・・・・・たぶん、ルシアが死んだときだったなぁ。次が子竜で、その次が奈南だったっけ」

 

 親しくなった人は、生きてほしかった人はみんな、私を残して死んでいく

 寿命で亡くなったのなら良かった。そんな人は何人もいた

 でも、その前に死んだ人が、殺された人が多すぎた

 

 

 

 ああ、本当に──────

 

 

 

 

 

「もう、歩き疲れたよ・・・・ははっ、は、っはは・・・・・ハハッ♪」

 

 

 

 

 

 ──────お願いだから、誰か、だれか──────

 

 

 

 

 

「アハハッッ♪ 6000年は、長すぎましたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────ころしてください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・おねがい、します・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







短い!!それに重い!!けど自責の念を募らせてる女の子かわいい!!!
書いてて良かったーーー!!!!


あれ、私書いてることまじヤバくね?

あっ、今度魔法科の映画見てきます、楽しみ〜〜

***************************

ステータス
 
名前:ノウェム
存在値∶6579万3570(+魔加五重)(+九曜)──3億6896万7850
種族:最上位聖魔霊──星閻竜狐ネビュラール
庇護∶星閻の庇護
称号:嚆矢の異世界人、調停者、審判者、真なる魔王、異邦の衡裁
魔法:<元素魔法><物理魔法><精霊魔法><上位精霊召喚><上位悪魔召喚><陰陽術><神聖魔法><核撃魔法><魔厭術><竜種魔法>
固有スキル:『万能変化』『万能感知』『竜霊覇気』『無限再生』
アルティメットスキル:『閻福之王ヘカテー』・・・思考加速、詠唱破棄、術理創造、法則支配、世界宣告、静寂、虚喰、胃袋
『虚飾之王アルコン』・・・霊知、隠匿、悪壊、属性変換、空間支配、物質創造、時空間操作
『知識之王ラファエル』・・・思考加速、解析鑑定、並列演算、詠唱破棄、森羅万象、多重結界、思念支配、統合分離、並列存在
『怨嗟之王イブリース』・・・魔加五重、激怒、鎮怒、死魔、失楽世界
『巧緻之王プロメテウス』・・・思考加速、森羅万象、詠唱破棄、並列演算、精密統御、天炎
『聖劇之王シリウス』・・・洗魂、共感、慈雨、桃源侵舞
『追慕之王ヘルマニビス』・・・追憶具現、霊廟、真実の羽、記憶之書、能力保存、能力返還
耐性:『痛覚無効』『物理攻撃無効』『状態異常無効』『自然影響無効』『精神攻撃無効』『聖魔攻撃耐性』
保有武器:[九曜グラハ][聖火の長剣ウェスタ]・・・他多数
保有魂数:{異世界人・・・34528}{他・・・6789381}
常用能力:『霊廟』『魔加五重』【尾裂の術】

みんなは魔王と勇者で誰が好き(リムルは除外)

  • ギィ
  • ミリム
  • ラミリス
  • ディーノ
  • ダグリュール
  • ルミナス
  • レオン
  • ルドラ
  • サリオン
  • グランベル
  • クロノア
  • マサユキ
  • クレイマン
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