転生した狐はメイドになる   作:くまんじゅう

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はい。また滅茶苦茶遅いですね2週間ぶりです、、、、、マジでゴメンナサイ!!!!
また話が急なので注意です。


それと、150000UAありがとナス!開いたらビックリしました。


閑話 聖劇之王(シリウス) ③

 

 

 

 

 

 ポチャン

 ポチャン

 

「・・・ぅん・・・」

 

 ポチャン

 ポチャン

 

 一定の間隔でなり続ける音に眠りを妨げられ、ティリヤは目を覚ました。

 

 ポチャン

 ポチャン

 

「・・・・ここ、は・・」

 

 焦点があってきた瞳に入るのは、石が積まれた重厚な壁。意識を失う前に見ていた賑わった街の景色とは似ても似つかない。

 体を起こし、立ち上がろうとした所で腕と足に違和感があることに気付いた。

 そちらに目を向け───自らのものではない体が目に入った。

 見るからに高価な服装に成長しきっていない柔らかな体躯。そして栗色の頭髪、その特徴に当て嵌まるのは───

 

「───っ! マリーナ!」

 

 マリーナだ。

 急いで無事を確認し、何も以上がないことに安堵する。先程までのティリヤのように眠っているだけのようだった。

 そして足と腕に感じた違和感、その正体は手錠と足枷だった。二年前を思い出すような状態に思わず顔をしかめた。

 

「・・・・これは、誘拐? でも、どうして・・・・・」

「起きたようだな」

「───っっ! だれ!!」

 

 背後から響いた低い声に、慌てて振り返る。

 鉄格子を隔てた向こう側にいたのは複数人の兵士と、仕立ての良い黒い服に身を包んだ初老の男だった。

 男の容姿を語るとすれば、前の世界で言う『イケオジ』が最も適しておると思う。所々黒が混じった灰色の頭髪に緑の瞳。年の頃は40程度だろうか。皺が刻まれた顔は男を老けて見えさせるのではなく、より勇壮に見せている。

 

「・・・あなたは?」

「俺はアルバートという。お前たちを攫い、この牢獄に幽閉した」

「・・・そう」

 

 アルバートと名乗った男の返答を聞いた途端、ティリヤは心の中で男への警戒心を最高にまで引き上げた。

 

 ────この人、強い

 

 男の声音から感じられる力は研ぎ澄まされ、洗練されている。

 恐らく今この場で彼を『洗狂師(エヴァンジェリスト)』で洗脳しようとしても抵抗レジストされるし、その後に待っているのは殺される未来のみだろう。

 頭の隅で怒りが溜まるのを無視して、ティリヤは冷静に判断を下した。

 

「ふむ、貴様は『ティリヤ・セイリオス』か? それとも『マリーナ・セイリオス』か?」

「自分でさらっておいて私達の見分けもつかないの?」

「いやなに。俺は頼まれて貴様らを攫っただけで、聞いていたのは両者の年齢と性別、そして身体的特徴のみだったのでな。見分けなどつかん」

 

 その判断は正解だったようで、男は今までずっと触れていた剣から手を離し、右手を上げて兵士達がとっていた戦闘態勢を解かせた。どうやら交戦の意志はないようだ。

 

「まあ良い。では、数時間後にまた来よう。それまで大人しくしておけ」

 

 兵を一人だけ残し、男が去ってゆく。

 ティリヤはそれを止めず、ただいまだ眠ったままのマリーナが起きるのを待ち続けた。

 

 

 

 

 

 **************

 

 

 

 

 

「ティリヤとマリーナが戻らないだと?」

 

 定期市から帰ったあと、僕───ライシマカスと父母が『学園』についての話をしていたところに、執事長から報告が入った。

 

「はい。影でお嬢様方を護衛していた者共もみな気絶させられるか、命を奪われておりました。これは間違いなく、悪意を持った何者かによる犯行かと」

 

 兵士から報告を受け、それ伝えている執事長は普段の冷静沈着さの中に少し焦りが滲んでいる。そしてそれは報告を受ける父にも言えることだ。

 普段は好々爺然とした態度を見る彼だが、今回は話が違う。明確な怒りの炎がメラメラと彼の瞳で燃えているように見える。

 

「父様、ノウェム様に助力を───」

「ライシマカス、それは不可能だ」

「───っ! なぜです父様!」

 

 こんな時にこそあの人の力を借りたいと思って父に進言したライシマカスは、父の予想外の返答に声を荒げた。

 しかし、ペリクリーズは父である以前にセイリオス領の領主であるのだ。下手な判断はできない。なおかつ、それ以前に───

 

「お前とノウェム様が帰還されてからとある報告を受けてな、それの調査を今はされておられる。そして私達の中に『思念伝達』が使える者はいない」

「・・・クソッ・・・・それで、その報告とは?」

「国内で行方不明者が続出しているという物だ。それも行方不明となった者は大半が実力のある者、というな」

「───っ! それは二人の失踪にも関係があるのではないですか!?」

 

 ティリヤとマリーナの失踪と、同時期に話題に上がる実力者を狙った行方不明事件。この二つが無関係だと。ライシマカスは到底思えなかった。

 

「そんな事は分かっている!」

「でしたら───」

「だからこそ、今は待たねばならないのだ!」

 

 ライシマカスは静かに、しかし確かな決意を持って紡がれたペリクリーズの言葉に瞠目する。

 

「我らが今表立って動けば、誘拐犯を刺激するだけだ。件の行方不明事件と此度の一件が同一犯によるものだとすれば、それ悪手でしか無い」

「ですがっ! 二人を放置するなど!!」

「・・・・・そこは私も危惧したのだがな─────あちらにはティリヤがいるのだぞ? 大抵の敵であれば遅れはとるまい。幸い、ノウェム様は三日以内には戻ると言っておられた。それまでに、我らも捕縛の準備を進めるぞ」

 

「────報告します!!」

 

 その時、兵士の一人が勢い良く部屋に飛び込んできた。

 彼は正に必死という表情で、衝撃的な報告をしてきた。この状況においては最悪とも言える報告を。

 

「領民たちが屋敷に押しかけ、兵に攻撃を加えております! 何者かに操られたかのように、まっすぐこの部屋に向かっているとのことです!!」

 

 

 

 

 

 *******************

 

 

 

 

 

 意識が浮上する。

 

「・・・あっ、起きた?」

 

 眠気に抗って瞼を開けると、そこには仲の良い───と自分は思っている───義姉の姿があった。周囲にも目を向ければ、普段眠りから目覚めている自室とは似ても似つかない無骨な石の壁。

 

「・・・・そう・・・・ティリヤ。誘拐で、あってる?」

「うん」

 

 そう短く答える義姉の姿は、寝起きの時ののほほんとした姿とは似ても似つかないほど凛々しい。しかしそんなものにはもう慣れっこのため、直ぐ声を小さくして言葉を返す。

 

「見張りは?」

「ただの兵士が一人だけ」

「他には?」

「今は別の場所にいるみたいだけど、『スキル』が効かなそうなやつが一人。それと私達につけられてる手錠と足枷、魔法が使えなくなるみたいだけどスキルの方は問題なさそう」

「分かった」

 

 思ったよりも何とかなりそうな状況に思わず口角が上がり、ティリヤと目を合わあせて笑い合う。

 

「それにしても、二人で行動する時の鉄則───私が対人でマリーナが頭脳っていうのは上手く行ったね」

「本当に。まあ、こんな形でお披露目したくはなかったけど」

 

 ノウェムさんに彼女がいない際の行動を叩き込んでもらって良かった。おかげで上手く対処できる。私は鉄格子の外に目を向け、ティリヤに指示を出す。

 

「・・・・じゃあ。あの兵士二人、よろしく」

「おっけー」

 

 そう言った次の瞬間、ティリヤの瞳が怪しげな色に染まる。そして彼女は、そのまま兵士達に話しかけた。

 

「ねえ、兵士さん。一つ質問いい?」

「・・・・・」

「ねえ、答えて」

「・・・・・」

「お願い、兵士さん」

「・・・・・なん、───」

 

 しつこく声を掛けるティリヤに痺れを切らした兵士が返答を返そうと口を開いた瞬間、彼はティリヤの支配下に入った。

 彼女の保有するユニークスキル『洗狂師(エヴァンジェリスト)』の権能『洗魂』は、対象との言葉をかわすことを発動条件とする。無条件にとはいかないものの、それのみで対象の魂を隷属させる凶悪な力・・・らしい。

 私も良く分かってはいないが、ティリヤがこの力を無闇矢鱈に使うことはないだろう。ノウェムさんが関わらない限りは。

 

「じゃあ質問、『ここはどこ?』」

「・・・セイリオス領都西端の貧民街地下にある牢」

「次、『私達を攫った目的は?』」

 

 ティリヤは洗脳しきった兵士にどんどんと質問を重ねる。

 その義務を淡々と熟す姿は先程も思ったように、とても凛々しかった。こういうきっちりした時はカッコイイのに、どうして普段はあんなボケっとしているんだろう?それがただひたすらに不思議だ。

 

「アルバート様によれば、売却」

「そう。結局金か・・・・・・・・・じゃあ、『私たちを解放して。そのあとは・・・・静かに、ここで通常の業務をこなしなさい。それと私達のことは都合がいいように記憶を補完しておくこと』」

「分かりました」

 

 兵士が牢の鍵を開け、私達を縛る手錠を足枷を解放する。

 その間もずっと、ティリヤの瞳は妖しく光っている。

 

「ティリヤ、ここの構造が分からない。それと、発作は大丈夫?」

「この程度なら大丈夫だと思う。けど、もう少し似てたらトラウマで動けなくなってたかも・・・・・じゃあ、『この地下空間の構造を教えて、それと警備体制も』」

 

 その後もティリヤは質問を続けたが、大体を把握した所で問題が発生した。

 

「アルバートが民衆を先導して屋敷に!?」

「ティリヤ、多分それだけじゃない。アルバートって男はティリヤと同系統のスキルを持っているんだと思う」

 

 兵士によると現在、私達をここに誘拐した張本人であるアルバートと云う男が民衆を先導し、屋敷を落とそうとしているらしい。

 通常ではそんなことを穏やかなここの領民が許すわけ無い。しかし兵士によると、『あるもの』が使われ民衆は正気を失い、アルバートによる支配をやりやすくしていたらしい。

 

「今回の定期市は規模が大きいし変な匂いがしてると思ったら、まさか『()()』が使われていたなんて」

 

『魔薬』

 近年、国境付近で見つかった虫系統の魔物から採取できる鱗粉を元にして作られているという、強い興奮作用と陶酔感が特徴の麻薬。

 食べ物に混ぜたり飲料に溶かしたりして使用されるのが一般的だが、最も広い範囲に頒布しようと思えば使われる手段は───煙だ。

 この麻薬の煙はちょうど人の顔あたりの高さに滞留する事が多いため、香のようにして炊けばそれだけで付近の人を狂わせられる。

 

「魔薬は非常に依存性が強く国王陛下直々に使用が禁止されているはず。所有するだけでも厳罰に処されるはずなのに・・・・・一体どうやって領都全体に蔓延させられるほどの量を集めたんでしょうね。それに───」

「───うん。領都全域に使えるくらい莫大な量、相当高い地位にいないと確保できない・・・・・ねえ、マリーナ」

 

 ティリヤが先程の凛々しい姿とは打って変わって、思い詰めるような顔をしてこちらに目を向け、言葉を投げかけてくる。

 

「多分、洗狂師(エヴァンジェリスト)の『共感』なら一人でも正気に戻せれば一気にみんなは元に戻る・・・・・でも、私の力じゃ領民全員なんて無理。確実に大半の人達が間に合わずに廃人になる。ごめん」

 

 それは、力を持つが故の苦悩だった。

 私が事前に精神干渉対策として受けていた薄いティリヤの支配が突破されず、アルバートと云う男に支配されていないことから、恐らく彼より上位に位置すると予測がつく『人を意のままに操る権能』

 

 そんな力を持っていれば、多くの人間は喜んで悪用するだろう。

 

 しかし彼女はその力を持っていながら、好んで使っては来なかった。それは彼女が懸想するノウェムさんがそういった行為を嫌うと云うのも理由の一つとしてはあるだろう。だが、彼女がその権能を使ってこなかった一番の理由。それは───

 

「やっぱり、ティリヤって呆れちゃうくらい優しいよね」

 

 ───優しいのだ。かつて彼女自身が打ち明けた過去を考えれば信じられない程に。

 その、誰かを見捨てることに臆病になっているとも言い換えられるほどの優しさは、時として彼女を蝕む。今だって、本来養子でありセイリオスの家に生まれたわけではないティリヤが関わるはずのなかった人達の為に心を砕いている。

 

 それを『優しさ』と言わず、何と言えようか。

 

「ティリヤ、王都には魔薬に対する特効薬があるって聞いたことがある。だからそこまで気負う必要はないよ」

 

 ()()。魔薬に対する特効薬なんて存在しない。あれは薬を絶って長い時間をかけて体から抜いていくしか治療法が無い。

 しかし、それを今の彼女に伝えるのは酷だ。だから優しい嘘で、彼女が壊れないように絶望的な真実を覆い隠す。彼女は二年前、もう十分に苦しんだのだから。

 

 でも、彼女は常々恩返しがしたいと言っていた。自分を助けてくれたノウェムさんに、そして優しく接してくれた私達に、恩返しをと。

 それをここで持ち出すのは卑怯だと、自分でも分かっている。これは更に彼女を苦しめる、クズの所業だと。でも、私もみんなに助かってほしいんだ。いつも明るい、あの元気な領民たちに。

 

「でも・・・それでも行こう、ティリヤ。私達の───貴族の役目を果たしに」

 

 私の言葉を聞いたティリヤは悩んで、でも直ぐに立ち上がった。覚悟と決意をその目に宿して。

 ・・・・・・・本当に、悪いことをするなあ。

 

「わかったよ、マリーナ・・・・・『ノブレス・オブリージュ』お義父様とお義母様、それにライシマカスだってよく言っているように────貴族の役目を、果たしに行こう」

 

 私達は全力で、外へ向かって駆け出した。

 ・・・・・この騒動で()()を使うことにならなければ良いけど

 

 

 

 

 

 *************

 

 

 

 

 

「予想外に侯爵の抵抗が激しいな」

 

 操られた領民と侯爵家の間で起こっている戦闘を尻目に、黒の燕尾服を着た男───アルバートはそう呟いた。

 眼の前では屋敷の兵隊が陣形を組んで盾を構え、屋敷へ迫る狂った民衆を押し止めていた。その抵抗のせいで、兵士の側は民衆を攻撃していないにも関わらず、屋敷に繋がる二つの門のうち未だ一方しか突破できていないのだ。

 

「まあ良い、直に片がつく」

 

 彼がこのような騒動を起こした目的は二つ。

 一つ、『ティリヤ・セイリオス』及び『マリーナ・セイリオス』の誘拐と依頼人の下への護送。あの依頼人はどうやら少女たちを()()()()として使うようだから今の状態でも特段問題はないだろう。こちらは既に達成したも同然だ。

 そしてもう一つ。こちらが問題だ。

 

「クーデターを起こす第一歩として忠臣と名高い侯爵を一族郎党皆殺し、か」

 

 一つ目とは別の依頼人───セイリオスとは別の侯爵家当主がしてきた依頼はそれだった。

 件の侯爵はどうやら現行の教会とも癒着しているらしく、教会に働きかけセイリオス家を異端認定し、今回の騒動の大義名分を得るつもりらしい。

 

「政治とは面倒な事この上ないな」

 

 しかし此度の一件で面白い収穫があった。

 

「あの娘、俺と同種のスキルを保有しているようだった。あれが誘拐の対象でなければ思う存分語り合えただろうに」

 

 アルバートの保有するユニークスキル『操心者(ドミネーター)

 状態の共有と、意識の誘導を得意とする精神系のスキルだ。完全な洗脳は出来ない不出来なスキルだが、今回のように『魔薬』を使えば精神防御は脆くなり、洗脳程度ならば容易くなる。

 彼はこのスキルを駆使してこの国───テュロス王国の暗部を支配していた。彼の仕事ぶりは、表社会の大物すら彼には頭が上がらないほどだ。

 

 だからこそ、同系統のスキルを保有するであろう少女に興味を持った。

 彼女はどのようなことが出来るのか? 彼女はそれで人を壊したことはあるのか? 自分と同じようにかつては人が信じられなくなったのか? 

 

 その全てを聞き、全てを語り合い、その上で彼女の全てを犯し尽くしたかった。

 あの美しい顔が痛みに喘ぐ様を、絶望に歪む様を、苦痛に歪む様を、懇願して、それでも願いが叶わなかった時の唖然とした表情を見てみたい。

 

 しかし依頼は依頼。

 裏社会で生き残り、頂点に立った者の矜持としてこれだけは反故に出来ない。

 

 それに、依頼人も問題だった。

 侯爵家の娘二人を攫う依頼を出した少女、あれは化け物だった。

 我ら人類を心から───あるのかすら分からないが───下に見て、実験材料としての価値しか見出していない。あの()()()()()()()()()()()()()狂気の少女。

 何故自ら誘拐せずに態々依頼を出したのかが分からない程の強者だった。自分よりも、遥か高みにいる強者だった。

 

 しかし、今考えても仕方のないことだろう。

 今アルバートの脳を占めている事柄はただ一つ───

 

「───ああ、彼女に会いたい」

 

 

 

 

 




予定を変更してシリウスの4話まで投稿したらifストーリー1話上げて原作に行きます。

てかどうして夏休みなのに毎日学校にいかないといけないんでしょう?
あと、筆者は冬に短期ですがボストンとかニューヨークの方に留学することになったのですが、どこかいい観光場所ありますかね?

みんなは魔王と勇者で誰が好き(リムルは除外)

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