前話の感想の方、誠にごめんなさい。あと書くの愉しかったです。
「──────ルナよ、貴様、妾と共に来い」
『なあ、ノウェム。お前、俺達と一緒に来い!』
「妾と共に、全てとは言えずとも、皆が幸福に暮らせる理想郷を築かぬか?」
『俺達と一緒に、世界平和の夢を実現しねぇか!』
「それに貴様は美しい。その美貌が失われるなど世界の損失であろう」
『それにお前、面白そうだしよ!』
「ルミナス、その理想郷の夢を信じても・・・・・・いえ・・・・・・信じさせて、くれますか?」
「好きに信じるがよい。妾は貴様を手放さぬと約束しようぞ」
ああ、そっか───────ルミナスは違うんだ。
************
ルミナスが眠りから目覚めたのは、何も無いただただ白一色に覆われた空間だった。
その空間の中央にポツンと置かれている場違いに豪奢な天蓋付きのベッド、そこで彼女は眠っていた。拘束具などは何一つとして見当たらず、何の目的でこの空間にいるのかも不明だ。
「ふむ。スキルが使えぬな」
脱出を試みるためスキルを熾そうとしたと同時に気付いた─────スキルが使えない。
いや、使えないのはスキルのみではない。魔法もアーツも、何もかもが使えない。
「この空間が阻害しているのか、或いは────」
何者かが常に彼女を見張っているのか。
何にせよ確かなことは三つある。
一つ、ルミナスに出来ることは皆無ということ。
一つ、ルミナスをこの空間に連れ去った人物は相当な手練れであること。
そして最後、犯人はルミナスに近しい者だということ。
そもそも気づかない筈がないのだ。
ルミナス程の傑物が悪意ある者の接近に、気づかない筈がないのだ。
さすれば自ずと、犯人は絞り込める。
「とすれば犯人は────」
「あれ? 起きちゃいました?」
犯人を口に出す前に、その人物は自らその空間に足を踏み入れた。視界に入ってきた人物はルミナスの予想とは違う容姿をしていた。
吸い込まれてしまいそうな程に深い濡羽色の長い髪に、血のように染まった猩々緋の光のない瞳、柔らかく色白な肌に、頭の上には狐の耳、そして尾骶骨の辺りには尻尾が生えている。耳と尻尾はどちらも髪と同じ美しい濡羽色。
見覚えのない人物だ。
「誰じゃ貴様?」
「もー、酷いです! あんなに熱心に口説いておいて『誰だ』なんて!」
「知らぬな・・・・・いや、巫山戯るのもやめるとするか─────貴様はルナであろう?」
彼女はルミナスの答えを聞き、動揺する素振りを欠片も見せずただ嬉しそうにはしゃぎ、頷いた。
「流石ルミナスですね! これまで何千年も生きてきて見破られたこと無かったのに!」
「これだけ状況証拠が揃えばな」
「そりゃそうですよね。ええ、分かっていましたとも! それで、何か聞きたいことがあると思ったんですけど?」
ルミナスをこの空間に閉じ込めた人物────ルナはこれまで見たことがないほどにテンションが高く、これまで見たことがないほどに不思議がる顔をしていた。
そんな様子の彼女にルミナスは並々ならぬ危機感を抱いた。
今の彼女と話していると、『ルナ』と話しているのではなくもっと別の人物────人の話を聞かない狂人『神祖』トワイライト・バレンタインと話しているような感覚に陥る。
「なぜスキルが使えぬのだ?」
「私の『
彼女の返答には素直に驚愕した。
通常、自らのスキルをこのように赤裸々に語りはしない。それこそ、伝説の
しかし彼女は明け透けにそれを話した。違和感を抱かずにはいられなかった。
「なぜ素直に話す? それを妾に話してメリットなどないであろう?」
「なぜって─────
そこで彼女はルミナスのいるベッドに乗り込み、顔と顔の距離を指一本分もないほどに近づけ、話し始めた。
それらすべての行動をルミナスは察知することはできなかった。いつの間にか、迫られていたのだ。
─────貴方がそれを知った所で、何もできないでしょう?」
それに、と彼女は続け
「ルミナスには私自身を隠したくないんです。
好きな色、人生最大の選択、使える魔法、幼少期の記憶、秘密の場所、苦手な会話、髪型、魔素量、好きな人、戦闘時の行動原理、座右の銘、家族構成、隠された才能、好きな音楽、初対面での態度、身体能力、恐怖、名前の由来、料理の腕前、現在、得意な状況、所属、好きな景色、心残り、魔法の制限、友人、怒る条件、睡眠時間、譲れないもの、信仰、特殊体質、今一番欲しいもの、笑い方、専門分野、戦闘前の準備、好きな動物、人生観、能力の代償、黒歴史、出身地、安心する条件、最も得意な技、呼ばれたい名前、休日の過ごし方、判断力、苦手な状況、信じていること、得意な属性、家、人生最大の挑戦、装飾品、秘密、歌唱力、スキルの構成、精神的支柱、食事量、名前に込められた意味、泣き方、研究内容、好きな本、能力の習得方法、初恋、好きな遊び、戦闘経験、心の支え、金銭感覚、魔法の発動条件、目標、寝相、弱点、絵の才能、守りたいもの、将来の夢、種族、苦手な属性、最後に伝えたい言葉、長所、方向感覚、密かな楽しみ、好きな服、価値観、弟子、性別、秘密の習慣、苦手な食べ物、武器、防具、人生最大の犠牲、怒り方、集中力、好きな香り、夢、戦闘後の習慣、名前の由来、過去、得意な教科、反射的な行動、トラウマ、尊敬する人、利き手、運の良さ、内面の性格、外向きの性格、好きな言葉、苦手な教科、誕生日、交渉力、最大の成功、最大の失敗、好きな魔法、食事の好み、未解放の力、人生最大の喜び、価値観、口癖、記憶力、絶対に守る約束、敵への態度、仲間への態度、学歴、利き目、未来、願い、今一番大切なもの、社交性、裁縫の腕前、能力の成長速度、好きな飲み物、嫌いな物、親しい相手への態度、身体の特徴、恐れるもの、戦闘時の判断基準、師匠、年齢、好きな場所、最大の願望、他者への評価、本人の自己評価、価値観、寝起き、好きな季節、苦手な状況、記憶力、呼ばれたくない名前、役職、指揮能力、統率力、家族観、友情観、恋愛観、死生観、世界観、倫理観、信念、夢、野望、人生の目的、旅の目的、故郷、日課、朝の習慣、夜の習慣、癖、口調、涙を流す理由、笑顔になる理由、怒りを覚える理由、感動した出来事、後悔していること、自慢できること、コンプレックス、失恋経験、尊敬する人物、ライバル、恩人、幼馴染、師弟関係、好きな食べ物、好きな天気、好きな時間帯、好きな映画、好きな香り、好きな武器、得意な武器、苦手な武器、扱える技術、扱えない技術、読める文字、書ける文字、話せる言語、理解できる文化、知識量、観察力、忍耐力、精神力、カリスマ性、身体能力の限界、魔法適性、魔法研究、能力の由来、才能の由来、努力したこと、諦めたこと、守れなかった約束、大切な約束、忘れたくない記憶、忘れたい記憶、人生最大の恐怖、人生最大の悲しみ、人生最大の幸せ、人生最大の驚き、人生最大の感謝、人生最大の影響を受けた出来事、人生最大の影響を受けた人物、物語上の役割、キャラクターの象徴、テーマ、象徴する概念、印象的な仕草、特徴的な表情、戦闘時の癖、普段の癖、無意識の行動、好きな会話、嫌いな会話、自分への評価、周囲からの評価、最後に残すもの、最後に残す言葉────
狂ったように、愛おしそうに、顔を朱に染め頬に手を添え、彼女は一息でそう告げた。
そして最後に、熱に浮かされたように
─────そういった私の全てを知って、理解してほしいですんです」
そう、言い切った。
眼前にある光の宿っていない彼女の瞳はこちらを見ているようで、こちらを見ていない。
「だから、何でも答えちゃいます♡」
何でも無いようにルミナスから離れて自然な笑みを浮かべて言い放った彼女に、言いようもない嫌悪感と危機感を抱く。このような兆候は────狂う兆候は全く無かった筈だ。
「あと、疑問に思っているであろう箇所を一つ。場所だけ言えばこの空間は大陸の南方に位置する『魔塔』の中に展開されています。元々の所有者達を全員殺しちゃったので、貴方と暮らす場所としては丁度良かったんですよね〜」
他に質問はありますかと、心底嬉しそうに楽しそうに言う彼女に気になった事をもう一つ質問する。
「クロエはどうしたのじゃ?」
「二人っきりの時に他の女の話を出すのは減点ですよ。でも、クロエ? ・・・・ああ、クロノアのことですか! そんな可愛い名前だったんですね〜♪ 今は三公の方たちといるんじゃないですかね?」
ぷー、と頬を膨らませてそう言う彼女は本気で怒っているという雰囲気ではなかったが、突発的に何かをしでかすか分からない危うさがあった。
「あの子も連れてきますか? 貴方がそうしたいなら、ちょっとイヤですけどあの子なら許しちゃいます♪」
それだけ言って、ルナはルミナスの前から姿を消した。
ルナが消えた後もルミナスは何も出来ず、ただずっとどうにか脱出方法がないかと考えを巡らせることしか出来なかった。
****************
それが起こったのはヴェルドラの襲撃の後、ルナさんがルミナスに『バレンタイン』の名を与えられ、メイドになってから数日が経ったある日のことだった。
その日、何の前触れもなく、ノウェムとルミナスは忽然と姿を消した。
捜査は難航していて、数日がたっても手がかりは一つも得られないまま。三公はルナさんが犯人だと決め、殺意をみなぎらせている。
そんなある日、今日も今日とて二人を探そうと身支度を済ませた、丁度その時だった。
「久し振り、クロノア────いえ、クロエ・オベールちゃん」
背後───先程まで眠っていたベッドの方から、思わずゾッとしてしまうような声が響いてきた。
伝えていない筈の本当の名前を知っている。それだけでは説明がつかないほどの悍ましさを、その声は秘めていた。
「っ・・・ルナ、さん」
「クロエちゃん? ─────あぁ、寂しかったの!? ゴメンね一人にしちゃってぇ!」
私が言葉に詰まったのを見て、突然そう取り乱し始めた彼女に思考を揺さぶられる。
この人、こんな人だったか? 彼女の中で、決定的な何かが壊れてしまったんじゃないだろうか?
「そうだよねぇ寂しかったよねぇ、ごめんなさい・・・・・・・でも、もう大丈夫、これからはずっと、ずぅーとずぅーと、一緒だから」
「───っ! 何を!?」
ルナさんの背後に黒い渦が出現したと同時、彼女がこちらの腕を掴み、引きずり込んでくる。抵抗しようにも、ルナさんに触れられた途端にスキルや魔法が使えなくなり、何も出来なくなった。これでは『
抵抗も虚しく、体の全てが渦に飲み込まれていき、最後には─────
「っ、せん、せ────」
─────最後には、何も残らなかった。
****************
あの時、ルミナスは私を手放さないと言ってくれた
あの言葉はとてもカリスマがあったけれど、それ以上に、その言葉自体が嬉しくて嬉しくて、もう二度と、私も手放したくなくなったの
だから、これも仕方のないこと
クロエちゃんは本当は要らなかったんだけど、ルミナスが欲しいなら良いの
ルミナスがいて、クロエがいて、もう何も要らない
私初めて知ったんだ
心から大切な人がいると、胸が踊って、かすれて見えた世界が極彩色に色づいて、ずぅーと一緒にいたくなって、ずぅーと痛くなるんだね
ああ、なんて愛おしいの
貴方のためなら全てを捨てられる
愛して愛して愛して止まないの
貴方への思いが膨らんで膨らんで膨らんで
もうどうにかなってしまいそう
愛してる、好きです、あなたを誰よりも愛しています、あなたのことしか考えられません、あなたなしの人生なんて考えられません、あなたは私の唯一の存在です、あなたを失うことだけは耐えられません、あなたの隣は私の居場所です、あなたの全てを知りたいです、あなたの心を私だけで満たしたいです、あなたをずっと見つめていたいです、あなたの一番になりたいです、あなたを誰にも渡したくありません、あなたの幸せを私の手で守りたいです、あなたのことを想う気持ちは誰にも負けません、あなたに出会った瞬間から心を奪われました、もうあなたなしでは生きられないほど大切です、あなたの全てを受け止めたいです、あなたの記憶に永遠に残りたいです、あなたの心に私だけを刻みたいです、あなたが笑ってくれるなら何でもできます、あなたのためならどんなことでも耐えられます、あなたを一生愛し続けます、あなたのそばにいることだけが私の願いです、あなたの運命になりたいです、あなたと結ばれた絆を誰にも壊されたくありません、あなたの愛を独り占めしたいです、あなたを想うこの気持ちは止められません、あなたが私の世界の全てです、最後まであなたを愛し抜きます、あなたを見つけた日から、私の世界はあなたで満たされました、あなたがいない未来なんて意味がありません、あなたの心の奥深くまで、私だけを置いてほしい、あなたを愛するために生きている気がします、この想いだけは誰にも奪わせません
あの日、貴方に見つけられたあの日
私は貴方に全てを捧げると誓いました
真の愛を誓うのに仲人なんていらないわ
もう何もいらない
貴方だけで、いえ
貴方だけがいいの
ああ、大好き
この幸せを守るためなら、何をしても許される
邪魔する者は全員■■
■■、■■、■■、■■、殺す、■■、■■、■■、■■、■■、■■、殺す、■■、■■、■■、■■、■■、殺す、■■、■■、■■、■■、■■、■■、■■、■■、■■、■■、■■、■■、■■、殺す、■■、■■、■■、■■、■■、■■、■■、殺す、■■、■■、■■、■■、■■、■■、殺す、■■、■■、■■、■■、殺す、■■、■■、■■、■■、殺す、■■、■■、■■、■■、殺す、■■、■■、■■、■■、■■、■■、■■、殺す
これから何をしよっかな
一緒に眠って、一緒に話して、一緒に研究して
ああ、楽しみ♪
あれ?
外に幾つか気配を感じる
ラミリスさんに、ギィに、ヴェルザードに、ミリムちゃんに、ルドラに、ヴェルグリンド
みんなどうしたの?
え、何をしてるのか?
暮らしてるんだよ。好きな人と、一緒に
ミリムちゃん、そんなに泣いてどうしたの?
ご飯作る? 一緒に眠る? それとも遊ぶ?
ヴェルザードもどうしたの?
そんなに声を荒げて、貴方らしくもない
ギィもそんなに怖い顔して
また誰かが禁忌を犯したの?
ルドラもどうし────
・・・・・・
あれ、貴方ほんとにルドラ? そんな魂だっけ?
ヴェルグリンドも何言ってるの?
私は私だよ? 何も変わってない
ああ、
ルシアが死んだときに獲得したんです
気づいてませんでした?
ラミリスさんも、
・・・・・・・・・
何言ってるんですか?
そんなに変わってないと思いますけど
ほんとに皆どうしたの?
ん?
どうして停止世界が─────
ほんとに何するんですか!
・・・・・・・
答えて! って、・・・・あれ?
失楽世界が
どうして──────
そして狐は
最後に
とても
めでたしめでたし。
全然めでたくねえよ
作者はこの話を書くにあたって曇らせやヤンデレの勉強のためにスイッチ版が出るまで情報を絶ってた「魔法少女ノ魔女裁判」をプレイしたんですが、まだクリアしていませんけど楽しすぎるかつ鬱になりそうでヤバいです。
このルートでは誰も幸せになりません。奈落之神も知徳之王も手に入れてません。
クロエの時間旅行すら静寂に無効化されているため、ノウェムが死ぬまでにクロエが死んだら本当の意味で彼女は死にます。
それとルミナスは最後まで「ノウェム」という名前を知らず、ルナとして記憶しています。彼女は最後まで本当の名前を伝えられませんでした。
次回から原作に入ります。
みんなは魔王と勇者で誰が好き(リムルは除外)
-
ギィ
-
ミリム
-
ラミリス
-
ディーノ
-
ダグリュール
-
ルミナス
-
レオン
-
ルドラ
-
サリオン
-
グランベル
-
クロノア
-
マサユキ
-
クレイマン