墓参り
「『リムル=テンペスト』ですか?」
「うん、ノウェムさん。ルミナスにも言ったんだけど────」
そこで聞いたのは、遥か遠くの未来でのお話。
荒唐無稽だし頭がおかしくなったのかと思ったが彼女の歪な魂と、彼女のうちに宿る厄介な『破滅の意志』を思い出し、真剣に話を聞いた。正直消滅させないようにあれの相手をするのは面倒だから暴れてほしくはないのだ。
「なるほど、クロエが眠ってヒナタに代わる。そして三百年後には聖櫃に封印ですか・・・」
彼女が話す未来は、驚きの連続だった。
しかし彼女はその未来を変えたくないようで、私にも協力を願ったというわけらしかった。
「それと、ノウェムさんにはその時リムルさんとファルムス王国軍が戦うのを邪魔しないで欲しいの」
「それもまた、未来を変えないため?」
「うん、誓ってくれる?」
まあ、これぐらいならば良いだろう。
調停者としての役目と重複しない限り、彼女の願いは叶えよう。
「ええ、ルミナス様にかけて誓いましょう」
「ありがとう!」
「・・・・・・それで、そんなに大切な人なんですか? そのリムルというスライムは」
「過去と未来の記憶がないどの時間軸でも、私はリムルさんを好きになった。だから、この思いだけは誰にも負けないよ」
そう、はにかむ彼女の顔は正に恋する乙女そのもので、こっちが恥ずかしくなってくる。
「重いですね」
「うん。だけど、ノウェムさんがルミナスに向けてる視線もいつもこれくらいはあると思うよ?」
「そうなんですか!?!」
クロノアが放った言葉に一気に顔が熱くなったように感じ、思わず頬を揉んでしまう。
恥ずかしかったは恥ずかしかったのだが、それ以上にこんな穏やかな日々が続けばいいと、そう思った。
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「・・・・・すごい街道・・・・・結界まで」
ガヤガヤと魔物や人間が行き交う街道上で、白いローブを纏った少女がそう呟いた。
数年前にこの場所を訪れた際は辺り一帯全てが森林で、道と呼べるものなど獣道くらいしか無かったというのに、現在は石畳造りの文句のつけようがない立派な『街道』として整備され、少女が通ってきたブルムンド王国方面は既に完成されていた。
その上、街道上には魔物の侵入を防ぐためであろう結界が設置され、安全な旅路を約束している。
少女───ノウェムは街道を歩き、ミリムからお勧めされたた上にクロノアの件もあるためルミナスから調査してこいと命じられた街へと足を運んでいたのだ。ミリムからの推薦とルミナスからの命令だけが理由ではなくもう一つの理由もあるのだが、今は置いておこう。
街に入るため警備詰所を自由組合発行の身分証明書を提示して抜けると、そこには街道など目ではないほどに賑わい、活気づいた街が目に入った。
「ここが・・・・
そう、ここが『
ノウェムの瞳にはまだ発展途上ながらも街をより良くしようと仕事に精を出す『魔物』とその街を物珍しそうに眺め、魔物たちと楽しそうに話す人間の姿が入っている。
この光景に彼女はある種の感動を覚えた。
万に近くなってきた年数を生きてきて初めて見た光景なのだ。魔物と人間が争い合うのではなく笑い合い共存している姿は。これまでも小規模なものなら少しはあった。しかしこれほどまでに大規模なものは初めて目にした。
「確かにいい街ですね」
ノウェムは上機嫌に街に飛び込んだ。
**************
「あっ! シュナ様、おはようございます!」
「おはようございます、みなさん」
その日、薄桃色の髪に白磁のような二本の角を持つ鬼人────シュナは主のいない魔国連邦の街なかを歩いていた。
魔国連邦の盟主『リムル=テンペスト』は現在、彼の肉体もとになった人物『シズエ・イザワ』の教え子たちを死の運命から救うため人間の国『イングラシア王国』に旅立って未だ帰ってきていない。そのことに一抹の寂しさを覚えつつも、主が帰ってきた際に落胆されないよう日々の努めに勤しんでいた。
そんなある日、ふと思い立って街を見て回ることにしたのだ。
見回りなどではなく、ただ単に主と共に作ってきたこの国、そしてこの街を改めて見てみたくなったのだ。
こうして落ち着いて見て回ると、やはり良い街だとつくづく思う。
活気に溢れ、大きな諍いもなく、日々を穏やかに過ごしている。これを幸福と言わずに何と言えようか。
幸せな空気に包まれ、ふと空を見上げた。
鮮やかな群青色が広がる空には真っ白な入道雲が天に向かってもくもくと伸びている。穏やかな夏の一日を象徴するかのような、そんな気持ちの良い空だった。
そんな天気に思わず声がもれ────
「「いい天気ですねえ」」
────重なった。
驚いてそちらに目をやれば、あちらも目を丸くしてこちらに目を向けている少女の姿が視界に写った。
黒い髪に同じく黒い狐の耳、真っ白なローブで隠れているが盛り上がっている部分が見て取れるため同色の尻尾がそこに存在しているのだろうと想像できる。また、驚きに見開いている真っ赤な瞳と白い肌が特徴的だ。
そして─────手に持った焼肉の串。
どうやら観光中の魔人の少女らしかった。
「「ふふっ♪ ────!」」
まったく同じ感想がまったく同じタイミングで漏れ出たことに思わず苦笑し────また重なった。
そのことに少女とまた数秒見つめ合い、もう堪え切れないとばかりにどちらからともなく笑い声が響いた。
「あはっ! ごめんなさっ、まさかこんなのが被るなんて!」
「こちらこそ、ふふっ、珍しいこともあるのですね」
二人はしばらくの間笑い合い、笑いが収まってきた所でまだ互いに相手について何も知らないことに気がついた。
そのことにシュナは慌てて名乗る。
「申し遅れました。わたくしはシュナです。よろしくお願いします」
「私はルナ、こちらこそよろしくね」
ルナと名乗った少女とシュナはその後も幾つか話をした。
特段難しいことはなく、ただ平和を喜び、安寧を楽しむ会話をずっとしていた。
「ああ、そうだ─────」
そんな中、ルナが何か思い出したようにシュナに問いかけた。
「─────シュナさん、シズエ・イザワのお墓ってどこにあるか分かる?」
───────────
魔国連邦を見渡せる丘の上、木陰に佇む石が積み上げられただけの質素なお墓に膝をついて手を合わせる。
ここに彼女───井沢静江が眠っている。
「お知り合い、だったのですか?」
先程知り合い、私をここへ連れてきてくれた鬼人の少女────シュナがそう聞いてくる。
「一時期、一緒に旅をしていたんです」
知り合い、まあそう言える関係性だっただろう。
シズのことは彼女がレオンによってこの世界に召喚された瞬間からずっと見てきた。
しかしクロノアと旅をするようになってからは、彼女には【尾裂の術】の並列存在を付けなかった。クロノアはいざという時の保護用の並列存在がいらない程に強かったからだ。
「この子が『爆炎の支配者』と呼ばれるずっと前でしたけど」
でも、クロノアとシズが旅をしていた間のほんの一時期だけ、共に旅をしたことがあった。
クロノアがそうしたいと言い、ルミナス様からも許可をもらえたため少しだけ彼女の旅について行ったのだ。
それに私の並列存在が異世界人の子供たちを見守るためイングラシア王国の自由学園でBクラスの担任教師をしているが、彼女はその同僚でSクラスの担任だった。
「別れ際に『また会おうね』って言ったんですけど、先立たれちゃいました」
彼女の死に目に立ち会えなかったことを、別に悔やんではいないのだ。
こんな事例は異世界人にはよくあることだし、彼女の場合は遺志を誰かに継いでもらえたというから、かなり幸福な部類なのだから。
「まあ、こういうのは慣れていますから、気にしないでください」
そう背後に佇むシュナに立ち上がりながら言う。
この子は見るからに優しい子だから、気を遣ってしまうだろうから。
「では、行きましょうか」
シュナは慰めの言葉などは一言も口にせず、ただそれだけ言って街への道を先導してくれた。やっぱり気を使ってくれたのだ。
その気遣いが今はありがたかった。
*************
あの後、シュナに街を案内してもらった。
どうやら彼女は魔国連邦の要職に就いているようで色んな人から慕われているのが良く分かった。だって、彼女を目にした人々が皆いい笑顔で好意的に接しているのだ。アイドル的存在と言っても過言ではないだろう。
「すごい人気ですね」
「ありがとうございます、ですがリムル様と比べればまだまだです」
そうして中央都市リムルを堪能しているうちに、日が暮れて夕日の茜色が街を照らし始めてくる。
夜の街並みが顔をのぞかせる中、私達は変わらず街を歩いていた。温泉に連れて行ってくれるとのことで私は結構楽しみにしている。この世界に前世のようなデカい風呂は無いのだ。
鼻歌を歌って歩いていると小さな笑い声が前方から聞こえ、少し前を歩く彼女の後ろ姿を見上げ、そこでようやく、彼女と街なかで会ってからずっと感じていた既視感の正体に気付いた。
ああ、そっか
この子はルシアに似てるんだ
違うところも勿論あるけれど、気遣いの仕方も、良い教育を受けてきたのが分かる高貴な振る舞いも、言葉遣いも、優しさも、似ていた。
「ねえ、シュナさん」
そんな彼女には、死んで欲しく無いと思った。
「受け取ってください、今日一日付き合ってもらったお礼です」
「これは、
そう言って、手の中にある受け取ったものをシュナは覗き込んだ。
「ただの『御守り』ですよ」
彼女の言った通り、シュナにあげたのは単なる御守りだ。
そこまで特別な効果はない。ただ彼女の身に危険が迫った時、一度だけ防御結界を張る簡単な魔厭術が刻み込まれた御守り。効果が発動されれば術式は自動的に破棄されるようになっているから技術を盗用される心配もない。
「その模様は私が作ったものの殆どに刻んでいる証です。それが刻印されていれば私が作ったと思ってくれて大丈夫ですよ」
刻んである模様は今はミリムが持っているフィリアにも九曜にも刻んである共通の紋だ。竜と狐が球を囲んでいる模様になっていて、竜は勿論ヴェルダナーヴァ、狐は私は、球はルシアや人間を表している。
そういえば、これを考えたのもルシアと一緒にだったなあ。
「そうでしたか。ありがとうございます、ルナ様。大切にいたしますね」
そう言って微笑む彼女は、もうすぐこの街に降りかかる悲劇のことなど何一つ知らない。
一週間後、西方聖教会の腐敗の一部であるレイヒム大司教とファルムス王国国王エドマリスが率いる連合軍の先遣隊がこの街を襲撃する。
「ええ、そうしてください」
ああ、でもやっぱり
「・・・・精神系のスキルを使う若い女を見かけたら、注意して」
「?・・・・それはいったい────!」
街の外へ足を向ける。
もう十分調査もしたし、ミリムの楽しんだ。だから、ここで帰ろう。
「ルナ様、温泉は────」
「また今度にします。では、さよなら」
振り返らず、そのまま私は中央都市リムルを後にした。
恐らく、次にここに来るとしたらファルムス王国先遣隊の襲撃が終わった後だろう。
その時にどれだけの犠牲が出るのかは分からない。けれど、できるだけ死ぬ人が少なければと願わずにはいられなかった。
51話目で漸く原作ですよ、マジどうしてこうなった!?
そういえば、ノウェムの並列存在は自由学園の教師をしていると本文に書いたのですが、アニメ一期のOADで出てきた校外学習の話書きます?
それと改めて書きますが、ノウェムの異世界人に対するスタンスは基本は監視で助力も制裁もしません。ですが彼女の手違いなどで酷すぎる扱いを受けたも者や彼女が気に入った者に対しては深く関わり、本気で殺したいようなやつであれば魂を二度と復元できないよう完全に破壊します。
ノウェムは自由学園の教師だけど、アニメ一期OADの校外学習の話書く?たぶんリムルやティス先生と少し話すだけで殆ど変わらない
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書け
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どうでも良いから本編書け