転生した狐はメイドになる   作:くまんじゅう

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狐vs勇者

 扉の向こうにいるこの狐が、恐らく試練なのだろう

 

「つまりこいつを倒せばいいってことか・・・・・・・・!? っ避けろ!!」

 

 様子を伺っていると唐突に悪寒を感じ、大きくその場から飛び退いた。

 それと同時に自分たちが立っていた場所は蒼く禍々しい炎で埋め尽くされた。

 

(二人とも回避できたみたいだな。あいつ、炎を放つときに予備動作が無く、空中から突然炎を出しやがった! というより何だ、あの蒼い炎。当たったら相当不味いな。しかし───)

 

「───面白くなってきた。二人とも手を出すんじゃねえぞ!」

「ええ、分かったわ。ルドラ」

「はい。兄様、頑張ってください!」

 

 

「ギャオオ────────ォォォンン!!!」

 

 狐が咆哮すると同時にその巨体の周囲に様々な魔法陣が現れ、その全てが一斉にルドラへと向かって放たれた。

 

「甘ぇっ!!」

 

 ルドラはその隙間を縫うようにして目にも止まらぬ早さで狐の下へ接近し、剣を振り抜く。

 今度は狐が大きく後ろへと飛ぶ。

 

「ギャオ!!」

 

 またもや狐が吠えたかと思うと、ルドラの身体が見えない何かに縛られたかのように動かせなくなった。

 

「っ!! なんだこいつは!」

 

 初めて食らう攻撃に戸惑っていると、その巨体に似合わずすばしっこい狐がいつの間にか眼の前まで移動し、前足を振り上げ───ルドラを試練の部屋の壁まで吹き飛ばした。

 

「「ルドラ! (兄様!)」」

 

 声がかかった少し後、舞い上がった土煙が晴れルドラが瓦礫の中から現れた。

 

「大丈夫だ! じゃあ次は、こっちの番だ!」

 

「ギャオオ────────ォォォンン!!!」

 

 狐はそんなこと関係ないと言わんばかりにまたもや咆哮し、魔法を行使する。無数に放たれた魔法は次々にルドラを襲うがルドラは被弾覚悟で突撃し、飛ぶ斬撃を放つ。しかし、その斬撃は狐に当たることなく中空を切った。

 

「瞬間移動・・・短距離転移か。こりゃ、長くなりそうだ」

 

 

 **********************

 

 

 なんなのコイツ!? はやっ!? 

 

 この勇者さんの視点だと私が優勢に戦っているように見えるかもしれないが、実際のところ超ギリギリの所で踏みとどまっているため、崖の上でタップダンスを踊っているようなものである。ノウェムが5年間の間にラミリスにお願いして何度か上位精霊と戦わせてもらっていなかったら、恐らく初撃で決着がついていたのだろう。

 

『さっきから勇者の動きがぼんやりとしか追えない!! 

 よそ見した次の瞬間に眼の前に来るって何!? 怖すぎでしょ! 

 思わず金縛りの術最大強度でやっちゃったじゃないか! それも直ぐに抜け出すし!』

 

 魔素倍化は奥の手中の奥の手にしているため、まだラミリスにもノウェムは見せていない。それを使うのを躊躇って先程から膠着状態に陥っていた。

 

 ルドラは先程、ノウェムが短距離転移をしたと推測していたが、それは正解でもあり不正解でもある。ノウェムが先程使ったのは陰陽術の『身代わり』と呼ばれる術であり、その効果は受けたダメージを形代に転移すること。そのダメージ転移の通路を逆流して形代を設置した場所に移り、あたかも転移したかのように見せたのだ。

 

 互角に見える戦いは、そんな果てしない技巧と小技の上に成り立っていた。

 そして、その戦いの決着は偏に経験の差と意思の力によって訪れる。

 

 

 ******************

 

 

 互角の戦い。

 両者の均衡が崩れたのはノウェムが勢い余って憤慨者の魔素倍化を使ってしまったことを起因とした。

 

「っっ!!? 何だ! 圧力が、強くなった!?」

「兄様! 解析鑑定が終了しました! その魔物はユニークスキル憤慨者を所持しています! 今、威圧が増したのは憤慨者の権能・魔素倍化を使い、魔素量が倍増したからです!」

「何だそれ! 反則じゃねえか!!」

「大丈夫です! 兄様。魔素倍化は発動した時点の魔素量を基準として魔素が倍増しています! まだ勝機はあります!」

「なるほどな・・・じゃあ、最後のひと踏ん張りだ!」

 

《告。英雄の資質を確認しました。ユニークスキル『英雄覇道』を獲得・・・成功しました》

 

 ノウェムが展開する先程までとは比べ物にならない魔法と陰陽術。それらに向かって、スキルを獲得したと同時にルドラが勢いよく踏み込む。このスキルは特別、戦闘で強くなる物ではない。ただ運が良くなるのみだ。すなわち────

 

(っ! 更に早い!? 対処できなっ)

 

「ヤバっ!!!」

「終わりだっ!」

 

 ルドラが放つ圧倒的な剣技によってノウェムが地に沈む。

 そう、すなわちこの結果はルドラ本人が実力で掴んだのだ。

 

「ごめん・・・なさ・・・ラ・・ミ・・リス・・・・・さ・・・・・・・ん」

 

 ******************

 

「よっしゃ!! 勝ったぞ!」

「ええ、おめでとうルドラ」

「素晴らしい戦いでした、兄様。しかし・・・この魔物・・・」

「やっぱりそうよね、ルシア」

「ん? どうかしたのか?」

「この魔物、最後に言葉を───」

 

 ルドラたちが疑問を口にした次の瞬間、狐から眩い光が放たれた。

 

「ルドラ下がっ・・・・・て?」

「兄様! 次は・・私・・・・達・・・・・・が」

 

 咄嗟にルドラを守るようにして前にたったヴェルグリンドとルシア。しかしヴェルグリンドは唖然と呆け、ルシアは驚愕に目を見開いたまま動かない。もしや、先程の光に精神攻撃が乗っていたのかとルドラが慌てて二人の奥を見るとそこには───

 

「子供?」

 

 黒い髪を持ち、身体にあったサイズの着物を身に纏う狐の耳と尻尾を生やした幼女の姿があった。

 




感想や誤字報告など頂けたら嬉しいです。

誰のメイドになるかというアンケートですがルミナスとラミリスが非常に多く、どちらの話が面白いかや、展開的に良いか、書いていて楽しいか等を考えた結果、ノウェムはルミナスのメイドとなることに決定しました。沢山のご回答ありがとうございました。

主人公以外のオリキャラっている?

  • ノウェムだけでよろしっ!!
  • 大量納入で原作を壊せぇぇ!!
  • 一人くらいならぁ〜
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