私とルドラ達はナスカ王国の王都に到着した。
私は途中、意識を飛ばしていた為に道中の記憶はないのだが、ルシアによると空間転移で精霊の棲家から跳んできたらしい。
壁門を潜り抜け王都に入ると『神獣化』の万能感知によって、喜びや楽しみなどの人々の温かい感情が流れ込んできた。
「うわぁ! 凄い! こんなに発展しているなんて!」
「いい国だろ!」
「ええ!」
大通りをルドラ達と話しながら歩いていると、大通りにいる人々から声がかけられる。
「ルドラ様! お帰りなさい!」「ルシアさま〜またお花のことおしえて〜!」「グリンドさま、また遊んで〜!」「「「「ルドラ様!」」」」「「「「ルシア様!」」」」「「「「グリンド様!」」」」
この様子を見るに、三人は国民に慕われているのだろう。勇者と呼ばれるルドラ達がいい人で人望が厚い証拠だ。
「ルシア、人間の国は何処もこんなに発展しているの?」
「ノウェム。ナスカ王国は人間の国でも恵まれている方です」
「そうか、だからルドラは・・・・・」
ルドラが何故、世界平和なんという荒唐無稽な夢を語るのか理解できた。
確かにこれを見ればこの営みの景色を守りたいと、人々の笑顔を守りたいと思ってしまう。
「それで、ルシア。先程からあの大きなお城から途轍もないオーラが湧き上がっているのですけど・・・・」
「分かるのですか!? ヴェルダナーヴァ様はオーラを完全に隠していて、私でもオーラは感知できないのですが」
そうなのか。さっきから素晴らしい光景の方向に目を逸らして、あのオーラを見ないようにしていたが、皆には見えていないのか。道理で誰も怯えていないわけだ。もし感知できていたら、威圧であんなふうに呑気に笑えはしないだろう。
というか流石は創造主、阿呆みたいなオーラを持っていたラミリスさんと比べても圧倒的なオーラだ。
「今からあそこに向かうんですか? 怖いんですが!」
「はははは! 大丈夫だヴェルダナーヴァは会った途端に殺してくるような奴じゃねぇからな!」
段々と城が近づいてくる。
星王竜ヴェルダナーヴァ。
曰く、この世界を創造した神であり世界最強の竜種兄妹の長兄、スキルや魔法の法則を作った存在。
私はヴェルダナーヴァに殺されないだろうか? 私は転生した存在だから、異分子とか言われて殺されることも相手が創造主なら普通にあり得る。
そうやって不安がっている内に、ナスカ王国の王城に到着した。
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「はじめましてだね、ノウェム。僕はヴェルダナーヴァ、よろしくね」
「は、はい・・・よろしく、お願いします。星王竜様」
私は王城の一室で星王竜ヴェルダナーヴァと対面していた。そばにはルシア達三人がいるが、それでも圧倒的なオーラに対する恐怖は緩和されない。
「ヴェルダナーヴァ様、そんなに怯えさせないで上げてください」
「そんなつもりは無いんだけどね〜」
やっぱり、どれだけフランクな態度で接されていても怖いものは怖い。
私が竜種に勝るとも劣らない位の力をつければ、この恐怖もなくなるのだろうか?
「そうだ。ルシア、ルドラそれにグリンド、三人とも少し部屋の外に出ていてくれないかな。ノウェム君と少し話したいことがあるんだ」
「何故だ? 俺達に話すとまずいことでもあるのか、ヴェルダナーヴァ」
「いや、この子の生まれについて話したくてね」
「・・・・・・・まあ、いいか。頑張れよ、ノウェム」
「ノウェム、ではまた」
ルシア! ルドラ! 待って!!!! お願い! 置いていかないで!!!
そんな必死の願いも虚しく三人は出ていき、部屋には私とヴェルダナーヴァのみが残された。三人が部屋から出た直後にヴェルダナーヴァが指を鳴らし、部屋全体に結界が張られた。結界は今の私では手のつけようがないほどに強固だ。
恐らくわざわざ指を鳴らしてみせたのは、私に結界を張ると示すヴェルダナーヴァなりの気遣いだろう。
「ノウェム君、そんなに怯えないでいいよ」
ヴェルダナーヴァがそう言った途端、ヴェルダナーヴァから淡い光が放たれた。その光に当たると不思議と気分が落ち着き、恐怖が少し和らいだ。
「さて、君がラミリスが言っていた特殊な魔物か」
「ッハイ!」
思わず声が上ずってしまう。
「ラミリスから聞いた話だと君は僕が創ったこの世界とは違う、異世界から転生してきた存在ということだけど、あっているかい?」
「・・・はい」
「う〜ん、どうしようかな。異世界からの転生なんていうことが起こるとは思ってもいなかったから、対応を決めかねているんだよね」
最初、ラミリスさんも魂のみで世界の壁を渡る『異世界からの転生』は不可能なことだと言っていた。しかし、それがまさか創造主すらも想定していない出来事だったとは。
「まあ、良いか。ノウェムくん僕から君に聞きたいことは一つだけだ」
そう言うと、ヴェルダナーヴァは一拍間を置いて
「君はこの世界で何をするつもりだい?」
それは、思わず縮こまってしまうような、ぞっとする程に温かみを孕んでいない冷たい声音だった。
「っ!」
喉に出かかった、言葉が出ない。それは恐怖によるものか、躊躇いによるものか。
背筋に冷たいものが走る。ここで虚言を吐けば、恐らく────死ぬ。恐怖に身を縮め、言葉を震わせながら、これまでのこと全部ひっくるめて私がやりたいことを言う。
「っぁ、ゎた、私は・・・ただ、誰かを・・たすけてっ、・・・・・あげたいっ! ・・・・です」
それから暫く、ヴェルダナーヴァは何も言わなかった。
こちらを見定めているのか、審議を諮っているのか、分からない。
「・・・・・・嘘では、無いようだね。よかった、君が世界に害を為すものじゃなくて。君を消滅させると、ラミリスが悲しむからね」
・・・・・助かった?
認められたのか? ヴェルダナーヴァに。
「・・・・では・・・殺さない?」
「うん。殺さないよ」
「・・・・・・よっ・・・・・よっ、良かった〜〜」
私の言葉には、万感の思いが込められていたと思う。
転生してから感じた、最大の恐怖。それから解放されて、一気に力が抜けてしまった。
「ははっ! そんなに怖かったのかい?」
「そりゃまあ、はい」
「そっか、嘘をついたら消滅させるつもりだったからね。まあいいや、ねえ、君の元いた世界の話を聞かせてくれないかな。どんな文化があったとか、どんな人達がいたのかとかね」
「はい! 喜んで! まず────」
さらっと、とても恐ろしいことを言われた気がするが、その後は割とリラックスして話せたと思う。
ヴェルダナーヴァと元いた世界について話すのは新鮮味があってとても、楽しいものになった。
「───僕が孤独を感じていた空間の他に、そんなにも素晴らしい世界があったなんてね。ありがとう、とても楽しませてもらったよ」
「はい! それは良かったです」
「うん。しかし、異世界か。転生はなくとも、召喚は今後もありうるか・・・・・・」
ヴェルダナーヴァは少し黙って何かを考えてから、私に提案をしてきた。
「ノウェム、君にお願いがあるんだけど、良いかな」
「お願い? ものによりますけど、良いですよ。何でしょうか?」
「君に、”調停者”になってほしいと思っている」
調停者とは何なのだろうか。まず、そこが気になる
「すみません。調停者とは何でしょうか、私はそれを知らなくて」
「? ラミリスから聞いていないのかい?」
「ラミリスさん? 何も聞いていませんが」
そこまで言うとヴェルダナーヴァは「はぁ〜〜〜〜〜」と、呆れたように息を吐き、説明を始めた。
「調停者とは、文字通り世界のバランスを保つ者のことだよ。今はラミリスと、ギィという悪魔が調停者の役割を持っている」
「ラミリスさんが!?」
「てっきり伝えているものだと思っていたけど」
「何一つ! 聞いていません!」
ラミリスさん、そんな役割についてたなんて知らないんですけど!? 情報共有しといてよ!
「それで、君には調停者の中でも取り分け、君のように異世界から来た者達への調停者になってほしいんだ」
「異世界から来た者達への?」
「そう。君のように、異世界からこの世界に来訪する者達が今後も現れるだろう。その時、得た力で世界を危険に晒すような者を排除してほしいんだ」
排除。その言葉が私の心に重しのようにずっしりと乗っかった。
「何故、私に?」
「それを言う前に、ノウェム。君はこの国の人々を見て、どう思った?」
「・・・幸せそうで、あの笑顔を『守りたい』と、思いました」
「うん。僕もそう思う。だけど、彼ら達人間は───脆い。
強いものにはなすすべなく殺される」
「だから、この考えに共感出来る君には”それ”を防ぐ役割を背負ってほしいと、そう思ったんだ」
───壮大な話だ。ヴェルダナーヴァの考えには、酷く共感できる。しかし、ルドラにも負けた私に、そんな大きな役目を背負えるのだろうか。
そんな胸中の不安を見透かしたようにヴェルダナーヴァは言葉を繋ぐ。
「大丈夫、君はこれから長い時間をかけて強くなる。それに、僕も君に稽古をつけてあげるよ」
「理想的ですね・・・・・・・・わかりました。このノウェム、調停者の役、承ります」
こうして私は、世界のバランスを保つ役『調停者』になった
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「それはそれとして、後でラミリスさん問い詰めないと」
「ははっ! 程々にしてあげてね」
「それは勿論」
そうニッコリと笑うノウェムの姿に、ヴェルダナーヴァはラミリスに黙祷を捧げた。
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主人公以外のオリキャラっている?
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ノウェムだけでよろしっ!!
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大量納入で原作を壊せぇぇ!!
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一人くらいならぁ〜