超越少女は路を示すが旅をするのは俺達だ   作:小沼高希

245 / 245
グレイスフル・デグラデーション 5

二回目、三回目と重力特異点の作成が成功するたび、報道についても控えめになっていった。俺達はマスメディアをそんなに見る方ではないし、この情報が氾濫した社会においてキュレーションの価値はそれなりにちゃんとあるとはいえ、どうしても自分で選んだほうがいいという気分になるのだ。結果としてそれは狭い世界に閉じこもるということの裏返しでもあるのだが、人間が一生を通して見れる世界は限られているので今更である。

 

「うーん」

 

一方で得られたデータを見て色々と悩んでいるのが四辻さんだ。安定した重力特異点を意図的に破壊する実験も行われたが、その被害は予想の範疇だった。いやまあ高価な観測機材が多く失われはしたのですが、もともと消耗品ですからねああいうの。

 

「どのあたりが悩みか聞いていいか?」

 

「以前の地下の爆発のニュートリノの計算があわない」

 

「合わないのはもとからだろ」

 

俺達は四辻さん経由で本当の方程式というか重力特異点の振る舞いを説明できるモデルを持っている。とはいえ向こうの世界とこっちの世界で厳密に物理定数が一致しているという保証もない。特に重力特異点絡みだと色々と問題が起こりやすいのだ。

 

そしてその上で、どうやら向こうからエネルギーが突っ込まれたらしいというのが俺達の結論だ。そしてそれはおそらく構造体が何かしようとしていることの示唆でもある。では何か、と言われるとわからない。それを特定するための情報が足りない。

 

単純な外交ゲームなら協力と裏切りで、裏の裏を読み合うと面倒になって、そして単純に協力を選んだほうが有利、みたいな形になるやつだ。しかし繰り返せるかどうかもわからない、そもそも向こうと取引が成立するかも不透明となれば、何かをすること自体がかなり難しくなる。

 

「違う。私の知っているモデルでも成立しない」

 

「……向こうから突っ込まれるエネルギーの自由度があるのでは?」

 

俺達が知らないパラメーターがある。そしてそれは向こうが決めている。そしてパラメーターが十分あれば好きなフィッティングができる。となれば、俺達の予測と外れている部分はモデルが悪いか向こうが変なことをしているのかのどっちかだと考えるのは大きく外れてはいないだろう。

 

「向こうの信号は知っているから、そこに自由度はない」

 

「ほう」

 

「私のブレイン・マシン・インターフェース向けの接続確認信号と同じ」

 

「そういうことはもっと先に共有しておいてもらえませんかね?」

 

「二時間前に気がついた。そしてその確認をしているのが今。方式は一致している」

 

四辻さんが見せる二つのパターンは確かに同じタイミングである。このあたりの時間の刻みの単位が共通なのだろうな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

虐殺姫は可愛くありたい(作者:クロプトケープ)(オリジナルファンタジー/恋愛)

硝煙まみれの前世から転生したら、生まれ変わった国は絶賛四方から侵略されてました。▼必死で敵をなぎ倒していたら、ついたあだ名は虐殺公女。▼いやひどくない? 私は国を守りたかっただけなんですけど。▼そして今、散々荒らしまくった敵国の皇子と政略結婚させられるらしいです。▼これは、無意味な殺戮を嫌う自称・心優しい虐殺公女が、一度くらい恋してみたいと願うお話。


総合評価:4426/評価:8.54/連載:38話/更新日時:2026年07月25日(土) 18:03 小説情報

TS転生したら人類の敵だった(作者:生しょうゆ)(オリジナル現代/冒険・バトル)

私の名前は伊藤桜。前世の記憶がある女子高生!▼そんな私はある日、自分の家族を惨殺し、この世界に原作があることを知ったのだった。▼この作品はカクヨムにも投稿しています。


総合評価:5444/評価:8.41/連載:29話/更新日時:2026年06月11日(木) 01:42 小説情報

オホーツクの暁鐘 ~アイヌと極寒の諸民族を導き巨大連邦国家を創る~(作者:サウス)(オリジナル歴史/戦記)

あと十数年で「シャクシャインの戦い」が起き、アイヌは松前藩の圧倒的な武力と騙し討ちの前に敗北し、終わりのない搾取が始まってしまう——。▼バブル崩壊で実家の会社が倒産し、氷河期のブラック企業で「経理・総務」として血を吐くような労働の末に過労死した男。▼彼が目を覚ましたのは、1650年代のアイヌモシㇼ(北海道)——小さなコタン(村)の跡継ぎとしてだった。▼歴史知…


総合評価:1359/評価:8.62/連載:57話/更新日時:2026年07月23日(木) 07:15 小説情報

35歳社畜、女子高生に吸血鬼だと宣告される〜みなし残業で覚醒能力を使い潰していた俺、現代異能バトルの世界では最強候補らしいです〜(作者:パラレル・ゲーマー)(オリジナル現代/冒険・バトル)

三十五歳、独身。ブラック気味の会社で働く中堅社員・久我陽介は、ここ数週間、奇妙な体調変化に悩まされていた。▼昼間は異様にだるく、朝日が目に刺さるほどつらい。▼なのに夜になると眠気が消え、頭が冴え、仕事が異常な速度で片付いていく。▼みなし残業制の会社で、その力は当然のように使い潰された。▼三日連続で朝五時まで働いた帰り道、久我はコンビニで店員の指先から流れた血…


総合評価:1017/評価:7.29/連載:56話/更新日時:2026年08月14日(金) 21:48 小説情報

ロマン職は異世界から帰りたい(作者:庶民ザウルス三世)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

これが絶対浪漫の力だ!▼人は夢を見る。▼そして、効率よりも自分の“好き”を信じて、浪漫を追いかける者たちがいる。▼ソロ専、人見知り。▼だけど、クリティカルが決まった時の一撃だけは誰よりも重い。▼そんな趣味全開のロマン職キャラを愛した男は、課金帰りの事故をきっかけに、ゲームで使っていた女性キャラ――ラシア・ラ・シーラとして異世界で目を覚ます。▼しかも、レベルも…


総合評価:6602/評価:8.52/連載:171話/更新日時:2026年08月14日(金) 07:09 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>