星の子 アナザー   作:猫太鼓

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これより先は禁忌 ②

 

苺プロダクション社長、斎藤壱護は、人生で何度目かの胃痛を覚えていた。

いや、今回は「何度目」などという生易しいものではない。これは確実に、過去最大級だ。

 

アイの妊娠と出産――それ自体も、普通の芸能事務所なら即死級のスキャンダルだ。

だが、壱護はそれを乗り切った。

命を削り、胃を溶かし、魂を売り、それでも「家族」として受け止める覚悟を決めた。

 

問題は、その“後”だった。

 

事務所のドアが、静かに、しかし確実な圧力を伴って開いた日。

そこに立っていたのは、十二人。

 

全員、男。

……いや、正確には「え、男なの?」と疑問符がつく者も数名いたが、そんな些細なことはどうでもよかった。

 

彼らは、何も言わず、ただそこに立っているだけだった。

だが空気が、重い。

圧が、違う。

 

「――我々は、アイのマネージャーになる」

 

代表格らしき男がそう言った瞬間、壱護は理解した。

これは断れない。

 

冗談でも、「そんなにいらねーよ」と言ったら終わる。

社会的に、物理的に、魂的に。

 

その瞬間、壱護の脳裏に、天啓のように一つの答えが走った。

 

――使うしかない。全部。

 

 

数日後。

ゴールデンタイムの大型音楽番組。

 

司会者が当たり障りのないトークを振る。

 

「アイちゃん、今日は何か食べてきた?」

 

「えー? 何も食べてないです! レッスン忙しくてー」

 

にこーっと、完璧な笑顔。

その瞬間、後方で十二の影が、同時に一歩前に出かけ――止まる。

 

「……恋人とかいる?」

 

「ないですー! 今は歌が恋人なので!」

 

再び笑顔。

今度は、別方向から空気が軋む。

 

司会者は、理由のわからない冷や汗を拭った。

 

「髪、切った?」

 

「切ってないですよー?」

 

その声を遮るように、女性司会者がマイクを上げた。

 

「準備が整ったようです。ステージへどうぞ」

 

救われた、と司会者は本気で思った。

 

 

ステージに立つアイ。

照明が落ち、静寂が訪れる。

 

その背後――

十二人の男たちが、音もなく配置につく。

 

黄金の光。

星座を象るフォーメーション。

視線を奪う、研ぎ澄まされた動き。

 

そして、イントロ。

 

「それではお聴きください――

アイ with Zodiacで、『アテナ』」

 

歌が始まった瞬間、空気が変わった。

 

アイの声は、まっすぐ天へ伸び、

十二の声がそれを支え、包み、導く。

 

コーラスは荘厳で、振り付けは戦いの舞のようで、

観客は、ただ呆然と見上げるしかなかった。

 

それは歌番組ではなかった。

ライブでも、ショーでもない。

 

――神話の誕生だった。

 

放送終了後、この日の映像はこう呼ばれる。

 

「神話が生まれた日」

 

そして斎藤壱護は、モニター越しにその光景を見ながら、

胃薬を飲み干し、静かに呟いた。

 

「……俺、生き延びたな」

 

それが、彼の精一杯の勝利宣言だった。

 

 

しかしかれらは気づかない。

 

魚座(ピスケス)の野望を ⋯⋯昏くくすぶる欲望を ⋯⋯

 

単独ソロデビューを目指し、静かに

薔薇(デモンローズ)の棘をとぐことを。

 

 

 

 




一話目の黄金達が可哀想なんで続き書きました ⋯⋯
社長も十二人も息子が増えて喜んでます
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