-Ruin-   作:Croissant

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後編

 

 人は恐怖に駆られると尋常では無い力が出せるという——

 

 火事場のクソ力というのがそれに相当するのだが、今彼女が凄まじい速度で駆けていられるのは一重にその底力のお陰である。

 

 

 「待て——っ!!」

 

 

 背後から投げつけられた声にビクンっと過剰に反応し、慌てて振り返ったのだがその追跡者の姿が目に入り、何者であるかが理解できると途端にその怯えが薄まってゆく。

 

 

 声の主はカワイイ魔法使いと彼女自身が称した子供とひよっこ剣士、それによく解からない少女という妙な三人組。

 

 小脇に抱えた木乃香お嬢さまの関係者である。

 

 

 そう、“アレ”ではないのだ。

 

 

 追っ手の“普通さ”に彼女はホッと胸を撫で下ろしていた。

 

 

 しかし——

 

 

 

 

 「 ど こ さ 行 っ た ぁ あ あ 〜〜 っ ?

 

        あ っ ち か ぁ あ あ 〜〜 っ ? 」

 

 

 

 

 その魔界の沼から響いてくる様なおどろとおどろしい声に腰から怖気が駆け上がって来て、自然足が速くなった。

 主に性的な恐怖から。

 

 

 マズイ!!

 ナニがマズイって、捕まったら確実に貞操の危機だ。

 

 いや、その程度で済めば良い方だろう。

 何と言うか……ヒトとして無くしてはいけないナニかを永遠に失いそうなのだ。

 

 失うのが乙女やらナニやらで済むとゆーのなら御の字だろう。

 だが、その程度ではないはずだ。

 

 

 もーなんと言うか……女の終わりというか、物体と化されてしまうというか……

 兎に角、想像の限界を遥かに超えたとんでもない目に遭わされるに違いないのだ。主にエロい意味で。

 

 

 「ひぃいい〜〜〜〜っ!!!」

 

 

 だから逃げる。必死に逃げる。

 己の全てをかけて駆けに駆けて駆けまくっていた。

 

 

 「 そ っ ち か ぁ あ あ あ あ 〜〜〜〜 っ ? 」

 

 

 地獄の底から響いてくるような声に、そのサルの<式>を身に纏った女性……千草は心の奥から怯えまくっていた。

 

 それでも挫けかけた心を最後の力で奮い立たせ、『逃げなあかん逃げなあかん逃げなあかん逃げなあかん逃げなあかん……』とぶつぶつ呟きつつ必死に足を動かしている。

 

 

 

 

 

 「……何やら酷く怯えていて手が付けられないようでござるな」

 

 「う〜む…脅しすぎたか?」

 

 「まぁ、フツーなら誰だって嬲り尽くされると思うでござろうな。拙者とてそう思うでござるよ。

  それにその姿は……」

 

 「何か変か?」

 

 

 そう問い返す横島。

 

 直に飛び出したものだからあの時のままの浴衣姿で、握り締めていたバンダナをキッチリ額に巻きなおしており、それだけなら別にどうという事は無いだろう。

 

 

 が、横島は人目について余計な混乱を生まないようにと余計な気を使って楓から頭巾を借りて顔をスッポリと覆い隠し、例のバンダナを何故かその上から巻きなおしているのだ。

 その上、何故だか知らないが懐中電灯を腰に一つぶら下げている。その青っぽい光がまた鬼火のように見えて恐ろしさに拍車を掛けていた。恰も幽霊兵士が如く。

 

 

 はっきり言って、見紛う事無き怪人である。

 

 

 「贔屓目に見ても変質者でござるよ?

  おまけにその気配……普通の婦女子ならば捕らえられれば最後、陵辱は必至。そう捉えるでござろうなぁ……

  あの逃げ足の底力はそれに対する恐怖から出ているのでござろう」

 

 

 でなければ楓や横島の足から逃れられるわけが無い。

 

 

 「失礼な!! このオレがめったにそんな酷い事をするわけが無いだろう?!」

 

 「……すると、時たまならするという事でござるか」

 

 「揚げ足とるの禁止!!」

 

 

 敵の襲来によって何時もの空気とノリを取り戻していた二人は、怒涛の勢いで障害物を飛び越え、地を蹴り空を駆けて千草の後を追っていた。

 

 二人してノリツッコミを当たり前の様に行える距離に心地良さを感じ、それを味わいつつ——

 

 

 状況は最悪であるというのに、楓は不思議と感謝してもいいような気がしていた。

 

 

 『まぁ……それでも木乃香殿を攫った事を許すつもりはないでござるが……』

 

 

 楓は近衛と横島から凡その話を聞いている。

 

 同級生であり、大切な友人である木乃香をくだらぬ諍いに巻き込もうとする動きがある……と。

 

 確かに楓とて忍の端くれであるから、そのややこしい裏の考えも解からぬ訳ではない。

 ——訳ではないのであるが、飽く迄もそれは西の一部の言い分であり、そんな勝手な言い草に耳を傾ける義理は彼女には無い。

 

 背を向けて必死に逃亡しているのは単に自分の友人を害する犯罪者にすぎないのだ。

 

 

 楓のその眼が針のように光り、瞬間的にその右手の指の間に団子の串が四本現れる。

 ひゅ…っと風を切る音も軽く投擲された串であったが、充分に氣が乗った串のその勢いは凄まじく、サルの着ぐるみの肩や太股の部分を見事に抉り取っていった。

 

 

 「ひゃあああ————っ!!??」

 

 

 その抉られた部分から力が抜けたのか、足を滑らせて千草は転がってしまう。

 

 それでも完全に運から見放された訳ではないらしく、一応の目的地である嵐山駅には到着していた。

 

 

 「く、くぅうう……っ」

 

 

 千草は力を振り絞って木乃香を抱えて改札口を飛び越えて構内と逃げ込んでゆく。

 

 そして後を追って二つの影が駅へと飛び込み、ネギ達もそれに遅れて改札を飛び越えて行った。

 

 

 その逃走劇まだ終わりを見せないようである。

 

 

 

 

 

 

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                ■七時間目:猿の湧く所為 (後)

 

 

 

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 「く……っ どこに隠れやがった?」

 

 

 不思議な事に、駅の中に入った途端、横島はサルの着ぐるみ……千草を完全に見失っていた。

 

 何と横島Eyeという裏技をもってしても霊波が何かに惑わされて追尾できないのである。

 

 

 「これは……気配が察知し難くされているようでござるな。

  しかしそうなると何かのカラクリが……」

 

 

 その事に気付いた楓が辺りに眼を配ると、駅の構内のあちこちに妙な符が貼り付けられているのが目に入った。

 

 いや、駅名のプレートの上にもペタリと人払いの符が貼られているのであるが、それ以外にもベタベタと惑わしの符の様なものが多量に貼られているのだ。

 

 だがそれらをよく見ると、人払いの符は丁寧に真っ直ぐ貼られているのであるが惑わし符の方はかなり歪な角度で貼り付けられているのが解かる。

 それらから如何に彼女が慌しく作業を行ったかが見て取れた。

 

 よほど変質者(横島)が怖かったのだろう。

 

 

 「おのれチョコザイな……」

 

 

 だが逆に横島はこーゆー抵抗にあうと燃えるのだ。正しく変態。

 

 それにこの程度で慌てふためく人間ではない。

 

 何せこの横島忠夫。存在自体が反則であり、雇い主の教育によって『卑怯でけっこーメリケン粉』を地でいく男なのだ。

 

 こんな事もあろうかと……と呟きつつ、横島は懐から歪な人型に切られた符を取り出した。

 

 その符には穴が穿かれており、楓はそれを見てその符が式符で、先程自分がしとめたものである事を理解する。

 

 

 はたして彼はその符でナニをしようというのか?

 

 

 横島はニヤリと底意地の悪そうな笑みを浮かべると、その符を掴んだまま右手を袂に隠してなにやら氣を収束し始めた。

 

 興味深げに見守っていた楓であったが、直にその収束してゆく波動に眼を見張る事となる。

 

 ギョッとするとはこの事だ。

 

 確かに今まで楓は横島の氣の収束を何度も目の当たりにしているし、本気になった“栄光の手”もさっき改めて目にする事ができた。

 

 だが、今行われているこれは氣の収束度が桁違いなのである。

 

 一体何をしているのかさっぱり解からなかったのだが、そんな無言の時も僅か数秒。

 懐から右手を出した時、楓は更に驚かされてしまう破目となった。

 

 

 「ウキ?」

 

 

 何と横島のその右手にはサルが握られていたのだ。

 

 

 「な…っ?! それは……」

 

 

 そう——先程、楓自身が仕留めたはずのサルの式が元の姿で横島の手の中にいた。

 ご丁寧にも楓が串で開けたであろう腹の穴の位置にはバンソーコーが×の字に貼られてたりする。

 

 

 「さぁ、あの眼鏡ちゃんの式神よ。このオレをあのねーちゃんのいるところに導くのだ!!」

 

 

 何だか偉そうにそう言って横島はサルを放す。

 状況がサッパリ解かっていないサルであったが、独り(一匹)だけ取り残されている事に気付くと慌てて駆け出してゆく。首に何時の間にやら猿回し宜しく縄が括られているが。

 それでも頑張って主を目指しているのか、列車の方に向って駆けていた。

 

 

 「そっちか」

 

 

 ニヤリとして後を追う横島。

 

 式返しというものは、その式でもってそのまま返す事も出来る。

 横島は反則の技で持って先程の式を『治』『療』し、それを行ったのだ。

 

 <式>というペーパーゴーレムであるからして、『修』『復』でもよい気がしないでもないが、横島的に言えば式も“生きている”のだから『治』『療』なのだろう(だからバンソーコーが腹にあった)。

 “珠”の使用にはイメージが大事なのだから、目的はアレであるが、彼は本気で<式>を『治』『療』しようと念じたのだろう。

 その辺りに横島の人の良さが滲み出ている。

 

 尤も、楓がそんな事を知る由もなく、一瞬で他人の式を組みなおして式返しを行った……と思われる横島の技量に只々驚くのみ。

 

 

 そんな二人が駆けて行く先で、一本の車両が動き出そうとしていた。

 

 

 

 

 

        ******      ******      ******

 

 

 

 

 

 「ぜー…ぜー…ぜー…」

 

 

 満身創痍とはこの事であろう。

 

 着ぐるみのあちこちには楓によって穿かれた穴があり、下に着込まれているのだろう衣服や地肌がその穴から露出している。

 何せいくら<式>とはいえ着ぐるみは着ぐるみ。まだ花冷えもあろうこの季節でも、全力疾走なんぞすれば流石に汗だくだ。

 穴によって肌が冷やされてはいるが、そのお陰で中途半端に汗が冷えて気色が悪い事この上も無い。

 

 呼吸を荒げたまま、ふと脇に寝かせてある木乃香に眼を落とす。

 

 いや、苦労は散々したのであるが作戦自体は成功している。

 護衛どもを出し抜き、ターゲットである木乃香お嬢さまを奪取できたのだから、やったでーと胸を張っても良いだろう。

 

 

 にも拘らず素直に喜べないのはなぜだろう?

 

 何というか……余計な苦労まで背負い込まされた気になってくるのは……?

 

 

 

 タ、タン……っ

 

 

 

 どびくぅっ!!

 

 

 線路を走る音に混じって何かに後方の車両に飛び降りられた音が聞えたような気がして、目にも哀れなほど千草はうろたえた。

 

 カタンカタンと音を立てて走り続ける列車の音に混ざり、確かに別の音が聞えたのだ。

 

 

 そしてその恐怖を煽るかのように何かが駆けてくる音。

 

 

 「ひ…ま、まさか……」

 

 

 ペタリと座り込んで思わず後ずさる千草。

 

 タタタと駆け寄って来る確かな足音に生理的な恐怖が蘇って身体が小刻みにカタカタと震えてしまう。

 

 その事を情け無いと思う前に、本能が恐怖を訴えているのだ。

 

 

 『立たな……立って逃げな……』

 

 

 と座席の角に手を掛けて立とうとするも、器用だったはずの丸っこい着ぐるみの手がズルリズルリと滑って上手く立てない。

 

 半泣きで焦って立とうとする様は、B級ホラーで殺人鬼に追い詰められた一般ピーポォーのそれを彷彿とさせられる。

 

 

 「ひぃ…」

 

 

 と、小さくなって怯えた千草の視線の向こうで、

 

 この車両のドアが遂に開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガラ……ッ!!

 

 

 「待て——っ!!」

 「このか——っ!!」

 「お嬢様——っ!!」

 

 

 しかしてそこから現れたのは、大切な親友である木乃香を奪回すべくここまで追ってきた明日菜とネギ、そして幼馴染である刹那達の三人であった。

 

 

 「……なんや……あなた達どすか……」

 

 

 千草は心底胸を撫で下ろしたという。

 

 

 

 

 

          ******      ******      ******

 

 

 

 

 

 

 

 「甘ぁあい……」

 

 

 ニタリと笑った横島は、そのまま列車の屋根の上を駆けていた。

 

 唐突に何を言うでござるか? と首を傾げる楓を他所に、彼は器用にパンタグラフを避けつつ、風の抵抗を物ともせずに只ひたすら女を求め……もとい、木乃香を救出すべく屋根を駆けている。

 

 

 言うまでも無く彼の脳裏に浮かんでいるのは捕らえた女術者を尋問するビジョン。

 

 ここでの詳細はマズ過ぎるので控えるが、そりゃあもう蜘蛛の糸ならぬ荒縄で雁字搦めにされた千草は、あーんな事やそーんな事をされていたりする。

 その結果は、小鳥のように囀る牝一匹……てな具合だ。

 

 ぶっちゃけ単なる妄想であるが、相手が不埒な敵であるのだからある程度以上の行為をしたってバチは当たるまい……という自分勝手な欲望が魂を焦がし欲望を滾らせているのだ。

 

 まぁ、本気の本気で相手をそういう目に遭わせるというのなら横島の力をもってすれば逆に簡単な事だったりする。

 だが実際にはヘタレである事もあってそこまで非人道的な行為はできまい。そこら辺は実に彼らしいと言えるが。

 

 楓はというと、そんな彼の事をある程度以上理解できてはいても、横島の煩悩の深さにまで何となく気付いているので今一つ信じ切れていなかったりする。

 だから彼が無理矢理コトに及べば止める気満々である。尋問自体には賛成であるが。

 

 

 ただ、楓は横島が行うかもしれない非人道的行為を止めようとしているのは、誘拐犯である千草に女として同情しているからではなく、その行為を行った後で自己嫌悪に陥るであろう横島を心配しての事。

 

 彼女とて裏の世界を知る者。

 大切な友人を“利用”しようとする輩にまで配る気遣いは持ち合わせていないのである。

 

 

 そんなズレた思惑と思いやりを抱えたまま、二人は車両から車両へと屋根の上を駆けていた。

 

 当然の様にここには障害らしい障害は無く、急に高さが変わる送電線にさえ気をつけていれば左程難しくなく駆ける事ができている。

 

 

 「んん……? あのボウズも乗って来てるぞ」

 

 「ほぅ? 思ったより早いでござるな」

 

 

 前方の車両。

 直前の車両に寄り集まっている五つの気配。

 

 その中の三つはネギと明日菜、そして刹那である。

 となると残りは千草と木乃香であろう。

 

 当然の様に横島の笑みは深くなった。主に歪みで。

 

 

 「ふはははは……追い詰めたぞ、眼鏡ちゃん」

 

 「……見紛う事無き悪者でござるな……」

 

 

 何だかまたテンションが上がった横島には、ある程度以上慣れたはずの楓でも流石に縦線を顔に浮かべてしまう。

 

 しかしそんな楓の眼差しなど何のその。

 眼の前に置かれた肉塊に飛び掛る飢えた獣宜しく、横島は無意味に跳躍してその車両の窓へと飛び込……

 

 

 ゴビュ——ッ

 

 「ぶはぁっ?!」

 

 「横島殿?!」

 

 

 ……もうとした矢先、唐突に窓の隙間から水が噴出し、正面から衝突した彼は吹っ飛ばされてしまう。

 

 

 ごんっ

 

 「ぶっ?!」

 

 

 独楽の様にキリキリ宙を舞い、後の車両の角で頭を打つ横島。その一発で意識は簡単に刈り取られていた。

 

 コメディ映画のようなアクションに一瞬呆気にとられた楓であったが、そこはそれ忍の端くれである彼女。直に気を取り直して後方に飛び、最後尾から線路に落下しかかっていた横島の足に縄を巻きつけて思いっきり繰り寄せる。

 

 

 ごすっ

 

 「おごっ!!」

 

 「あ……」

 

 

 だがそこは転んでも只では起きない男、横島忠夫だ。

 足を引っ張ってもらった勢いによって最後尾の車両の窓で顔面を打つというお約束も忘れていない。

 

 更には顔面を強打するという事で意識を取り戻すというリアクションまでやってのけたではないか。正にお笑い心を見失わない“漢”である。

 

 

 「うごごご……」

 

 「ああ……も、申し訳ござらぬ。横島殿っ」

 

 「あ、ああ……いや、な、何のこれしき……」

 

 

 ズリズリと縄を引っ張って屋根の上に上げてもらい、己の失態を謝罪する楓に対し、無理に笑顔を作って親指を立てる横島。

 だくだくと零れる鼻血が痛々しいが、ギャグ体質故か左程のダメージでは無い。

 

 痛い事は痛いのだが、この程度なら職場でしょっちゅう喰らっていたのだし。主に自業自得で。

 それに彼女は自分を助けようとしてくれただけで、顔面強打は単なる事故である。だから楓が気に病む必要は無いのだ。

 

 

 それに今現在は八つ当たりの対象がいてくださるのだし。

 

 

 「オノレ…西の眼鏡ちゃんめ……一回や二回で済むとは思うなよ……」

 

 

 何の回数? 等と問い掛けてはいけない。

 

 

 楓はというと、何だか気遣ってもらった事を自覚してしまったのかそのエロい呪詛の声は聞えていないようだ。なんとも運が良い(悪い?)少女である。

 

 

 そんなラブコメちっく(?)な匂いをわずかに漂わせた時、何故か水で満たされている前の車両にも動きがあった。

 

 

 

 −斬空閃!!−

 

 

 

 「何だ?」

 

 「……む?」

 

 

 電車の揺れとは違った衝撃が屋根にも伝わり、車両全体がぶるると身震いを起こす。

 と同時に、前の方の車両内部で泡の様なものが弾け、最前部まで水が雪崩れ込んでいるのが見えた。

 

 

 「あのボウズが何かやったのか?」

 

 

 鼻血をキレイに拭った横島が首を傾げつつ立ち上がる。

 それに合わせるかのように列車は減速を始め、金属を擦り合わせる音を立てて車両はゆるりと駅に停車してゆく。

 

 体感での移動時間は大した事は無かったのだが、もう京都駅だ。

 

 

 「わ——っ」

 

 「キャー」

 

 

 ドアが開いた瞬間、中に充満していた水が流れ出し、ネギ達もその水と共に流れ出る。

 

 

 ゲホゲホと水を吐いているのは千草。

 着ぐるみである分、水に沈み易かったのだろう。

 

 全員、全身濡れ鼠であるが、刹那は既に体勢を整え、剣に手をかけ直にでも斬り掛かれるよう身構えている。

 

 

 「み、見たかそこのデカザル女。

  いやがらせはあきらめて大人しくお嬢さまを返すがいい」

 

 

 投降の勧告であるが、そんな物を受け入れるつもりが僅かでもあるのならこんな暴挙には出まい。

 

 

 「ハァハァ……なかなかやりますなぁ。

  しかし、このかお嬢さまは返しまへんえ」

 

 

 その敵である女性の口から語られた『このかお嬢さま』という言葉に訳の解かっていなネギと明日菜が戸惑いを見せた隙に、千草は濡れたホームを蹴って三人から遠ざかる。

 

 

 「あ、待てっ!!」

 

 

 刹那は左手の愛刀−夕凪−を握る手に力を込め、素早く立ち上がって千草を追い、その背をネギと明日菜が追いかけた。

 

 濡れて着ぐるみも重くなったであろうが、スタート時間とコンパスが違う所為もあってかなかなか追いつけない。

 それでも三人は必死になって駆ける。

 

 

 刹那はネギらに関西呪術協会の中にあった不穏な動きや、木乃香を利用しようとしている裏の動きを語って聞かせた。

 

 説明を聞いて憤慨する明日菜らの声を耳に通しつつ、刹那は自分の迂闊さに唇を噛む。

 

 彼女も、そして木乃香の祖父たる近衛も状況判断が甘かったと言わざるをえない。

 裏でかなりキナ臭い動きを見せていたとはいえ、魔法の秘匿という認識があった所為でまさか修学旅行中に誘拐に及ぶとは思っても見なかったのである。

 

 

 確かに関西呪術協会は元々裏の仕事などを請け負っていた組織で、目的の為に手段を選ばない強行策に出る可能性もあった。

 刹那が習い憶えている剣術……神鳴流は、関西呪術協会の護衛として付く事もある。だからそういった事を知っていたはずなのに……

 

 慙愧の念をも噛み締めつつ、地を蹴る足の動きを更に強めて行った。

 

 

 まぁ、実際にはその可能性を見逃していなかった近衛はちゃんと横島という鬼札と楓という補佐を用意してあるのだが、刹那にはそれは語られていないのだ。

 

 理由は色々あるが、木乃香の件で異様に気負っている刹那に急に信じて一緒に行動しろというのは無理があるし、性根がどれだけ良かろうと普段の行動が行動なので確実に足並みが整わない事は目に見えていた。

 だからもうちょっと間を置いて……という気遣いが裏目に出ていた。それが平和ボケといえばそれまでなのだが。

 

 

 

 

 あまり無茶な逃亡をし過ぎた所為か、着ぐるみはもう限界に来ていた。

 

 仕方なく千草は式を符に戻し、階段の上で子供らを待ち構える。

 

 お陰で何とか追いつく事に成功した三人は、千草が新幹線内にいた売り子である事に驚きつつも、木乃香を奪回すべく無謀にもそのまま突っ込んで行く。

 

 

 当然、こんな暴挙に出ている千草に対応手段が無い訳があるまいに。

 

 

 「お札さん お札さん

  ウチを逃しておくれやす」

 

 

 ボウンッ!!

 

 

 駅前の長い階段のど真ん中に、突如として“劫火”が出現した。

 

 その形、真上から見れば『大』の文字。

 

 飛びかかった刹那はその大の文字の股の間に突き進む形で炎に巻き込まれようとしていた。

 

 

 「うあっ!!」

 

 「桜咲さん!!」

 

 

 だが間一髪で明日菜が引き摺り戻し、事無きを得る。

 

 

 高さといい、火力といい、二人のか弱い少女ではどう足掻いても超えられるとは思えない。

 千草はやっと余裕を取り戻し、笑みを浮かべられるようになった。

 

 

 「ホホホ……

  並の術者ではその炎は越えられまへんえ」

 

 

 ほなさいならと言い残し、その場を去ろうとする千草。

 少女らの背後でそうはさせじと子供教師が風の魔法でその炎を吹き飛ばさんと詠唱を始めたの瞬間。

 

 

 

 

 

 

 「ほほぅ? だったら火ぃ『消』したらええんやな?」

 

 

 

 

 

 

 「は?」

 

 

 突如として投げかけられた声に千草の足が止まる。

 

 驚いて振り返った千草が見たものは、呪符でもって出現させた炎の壁が消え去る瞬間。

 

 電灯のスイッチをパチリと切ったかのように、符術【京都大文字焼き】が消滅したのである。

 

 ほんの一瞬の間で、並の術者ではどうする事も出来ないはずだった炎の壁が消え去リ、何事も無かったかのような階段の風景がそこに広がっていた。

 

 

 「な……っ なぁっ?!」

 

 

 ハッとして子供らに眼を向けるが、その子供らも呆気にとられているようで動いた様子は無い。

 いやそれ以前に何の力の波動も感じられなかった。

 

 となると第三者がここに来たという事に……

 

 

 

 

 

 「ふっふっふっ……

  追 い 詰 め た ぞ 眼 鏡 ち ゃ ん 」

 

 

 

 

 

 人気が無い所為か異様に響くその声にギクリと硬直する千草。

 

 見とうない。見とうない……と思いつつも首が勝手に動いてしまう。

 ギリギリとゼンマイ仕掛けのように首が回り、カラクリ人形の目のように何となく不自然に眼が“それ”に向いてしまい、

 

 

 「あ…………ヒィイイイ〜〜〜〜っ!!!」

 

 

 何だかよく解からない駅前のモニュメントの上、

 風に浴衣をはためかせた所為でトランクスまでバッチリ見せている、覆面で顔を隠して懐中電灯を腰からぶら下げている謎の男……

 

 つい今さっき、自分を穢そうとした恐るべき存在を、

 

 さっきとは違い、バッチリ視力が回復している千草は、360度どの方位から見ても完璧かつ徹底的な変態怪人を、

 

 

 ハッキリクッキリと目に焼き付けてしまった。

 

 

 

 

 

        ******      ******      ******

 

 

 

 

 

 「へ、変態……っ」

 

 

 流石の明日菜もその姿に引いてしまう。

 

 いや術を使うとか、魔法を使うとかいう輩に対しても多少の怯えというものは持ち合わせていた。

 それを持ち前の根性で無視し、或いは振り切って、足を踏ん張っていたのだ。

 

 だが、上に立っているそれは明らかに“別物”だ。

 

 生理的な怖気をそこに感じてしまうのも無理も無い。

 

 

 「誰が変態じゃ!!

  オレは単にあの眼鏡のおねいちゃんに口で表現するのも身悶えするくらい恥ずかしい行為をしたいだけの好青年だ!!」

 

 「ドコが好青年よ!! アンタみたいのを世間一般で変態っていうのよ!!」

 

 「しゃらっぷ!!」

 

 

 その何だか泣き声に近い怪人の声によってネギも再起動を果たし、刹那と明日菜の前に出で庇うように立ちはだかる。

 

 

 「む……?」

 

 

 その子供の男前な行為には何だか微笑ましいものを感じないでもないが、何だかとってもコンチクショーなモノも感じてもいる怪人……あ、いや横島。

 何せネギは確実に将来を約束されたイメケン顔である。横島的に言えば無理もなかろう。

 

 

 「へ、変な事はさせませんよ!!

  あなた方が誰であろうと、アスナさんや刹那さん、このかさんは僕の大切な生徒で……大事な友達です!!」

 

 

 だから守ってみせると魔力を高め、ギンっと横島と千草を健気にも睨みつけていた。

 

 その眼差しを真正面から受け、横島は内心、

 

 

 『うお〜〜……言ってる事はごっつ好ましいのに、ものごっつ腹立つんは何故?!』

 

 

 と地団駄踏んでいたのであるが、そこは大人。

 外見的には全く不動心を見せ付けつつ意味も無く胸を張り、勢いだけで強気なセリフを口走った。

 

 

 「ふふふ……このオレが“じょしちゅーがくせー”なんぞほしがるとでも思ったか?!

  舐めるな小僧!!!」

 

 

 ビシィ!! とネギを指差してポーズを極める。

 姿が姿なので全然様にならない事は言うまでも無い。

 

 

 「?! このかお嬢さまの魔力を狙った輩ではないというのか?!」

 

 

 刹那はどうせ変態を装っているだけと思っていたので驚きを見せていた。

 

 

 だが、ここにズレがある。

 

 

 確かに千草やネギ等の常識から言えば木乃香は凄まじい魔力を秘めた逸材である。

 

 が、この変た……もとい、横島の“非常識な常識”から言えば木乃香の魔力量など左程珍しいものではなかったのだ。

 

 よって、

 

 

 「ハッ!! この程度の魔力を持つ女の子などオレの周囲には掃いて捨てるほどおつたわ!!

  大体“魔力”なんぞオレが求めると思うてか?!」

 

 

 と彼は声高らかにそう言い放った。

 

 ただ、その対象は大体は神族だったり魔族だったりするし、殆ど決戦兵鬼と言っても過言ではなかった蜂や蝶や蛍の化身らもその範疇である。何せ彼女らのペットですらA級GSの百倍近い霊力をもっていたのであるから比べる方がどうかしているのだ。

 まぁ、彼もその彼女らのペットだった時期があるのだから自分の位置と等しく思うのも無理は無いという説もあるが。

 

 

 それに——横島は魔力が欲しくて女を求めるような腐った人間ではない。絶対に。

 

 女を求めたら力が付いて来た……というのがパターンだったのだから。

 

 

 「「な……っ?!」」

 

 

 そんな裏事情を知る訳も無い人間……特に千草と刹那は彼の言葉に驚いていた。

 

 木乃香の力の大きさは以前から関西の本拠地でも噂だけとはいえ相当上っていたのであるが、そんな物はどうでもいいと言い切られた上、身の回りに沢山いると言われたのだから。

 

 

 「じ、じゃあアナタは何が目的なんですか!?」

 

 

 皆の思いを代弁するかのようにネギが叫んだ。

 

 その言葉を待っていたかのように、横島は(無意味に)胸を張って千草を指し示す。

 

 

 「決まっているだろう? あのねーちゃんだ!!

  例えどんな力を秘めていようと“じょしちゅーがくせー”なんぞに興味は無いっっ!!」

 

 

 ええ、ございませんともさ!!! と千草を指差して言い切るその姿の力強さは凄まじかった。

 

 それが単に自己弁護だという事に気付く者が出ないほどに……

 

 

 

 

 

 

        ******      ******      ******

 

 

 

 

 

 後頭部にでっかい汗を垂らしつつ、楓は物陰から様子を窺っていた。

 

 隠れる必要は無いと思われるかもしれないが、ここまで手の込んだ誘拐をする輩なのだから、二手三手と用意を整えている可能性がある。

 だから楓ちゃんはヤバイ手が使われないよう見張っててくれ。そう横島に言われれば納得して従う他無かったのだ。

 

 とはいえ、こんなセリフの応酬を見てしまうとセクハラを妨害されるのを防ぐ為に遠ざけられたとしか思えない。

 それでも彼が自分を説得してきた時の言葉も納得できてしまうし……

 

 

 『うう〜〜む……卑怯と見るか慧眼と見るか、未だ判断が難しいでござるな……』

 

 

 と悩む事しかできないのが現状である。

 

 

 そんな彼女の目の先では横島が高笑いを上げながら千草に飛び掛からんとしているシーンが見えていた。

 

 瞬間、楓の額にビキリッと音を立てて血管が浮かびあがる。

 

 後でオシオキでござる……等と呟いた楓の右手。

 何時の間にか握り締めていたクナイが軋んでいた。

 そこまで怒る必要があるのか? と問われれば返答に困るのだが、幸いにもそんな質問を投げかけてくる者はそこにはいない。

 

 物陰ツッコミの達人になりかかっている友人はまだホテルの中であるし。

 

 それでも楓は横島に言われた通り、周囲に気を配り続けていた。

 敵の援軍が出て来なければ覚えておくでござるよ……等と本末転倒な事を考えながら……

 

 

 

 当たり前と言えば当たり前であるが、横島の怪奇な行動によって意識の全てが彼に向けられている為、千草はネギ達の動きに気を配りきれなかった。

 よってその隙にネギは仮契約カードの力を使って明日菜の底上げを余裕で行えている。

 

 

 「契約執行 180秒間!!

  ネギの従者 『神楽坂 明日菜』!!」

 

 

 カードによって繋がれているネギから注ぎ込まれた魔力が明日菜の身体に行き渡り、その身体が魔力によって淡く光った。

 元々の身体能力が一般人からかけ離れている明日菜だ。魔力によって底上げされた能力は計り知れない。

 

 

 「さ、桜咲さん 行くよ!!」

 

 「え……あ、はいっ!」

 

 

 その明日菜の勢いによって気を取り直し、刹那も木乃香を奪回せんと階段を駆け上がってゆく。

 

 

 「木乃香は攫われるし、変態は出てくるし……さっきの火だって下手したら火傷しちゃうじゃない!!

  なんで私の周りでこんなフジョーリな事ばっか起きんのよ!!」

 

 

 と憤慨頻りである。

 

 千草から言えば『あんなんと一緒にせんといて!!』であろうが、友人を着ぐるみに攫われた明日菜から言えば五十歩百歩であろう。

 

 

 「そこのバカ猿女——ッ!!

  このかを返しなさ——い!!」

 

 

 自分の符術をアッサリと退けて襲い掛かってくる第三者の恐怖によって千草は反応が遅れていたのであるが、明日菜の怒りの波動によって何とか再起動を果たし、既に用意してあった符を発動させる。

 

 

 それと同時にネギもカモに促され、懐からカードを取り出すと、

 

 

 「アスナさん!! パートナーだけが使える専用アイテムを出します!!

  アスナさんのはEnsis(ハマノ)Exorcizans(ツルギ)!!

  武器だと思います!! 受け取ってください!!」

 

 「ぶ、武器!? そんなのがあるの?

  よ、よーし、頂戴、ネギ!!」

 

 

 明日菜にそう断りを入れてからそのカードの力を発動させた。

 

 

 「Exerceas potentiam 神楽坂明日菜!!」

 

 

 カードに宿っている力がネギに紡がれたワードによって発動し、明日菜の手の中へとその力が収束し、具現してゆく。

 

 その力の波動は、流石の明日菜も期待を持ってしまうほど。

 

 

 横島も何やら強そうな力を感じ、戦闘(?)中だというのに思わず少女のその手の中に現れた得物に目を奪われた。

 

 

 Ensis(ハマノ)Exorcizans(ツルギ)とは、

 MINISTRA MAGI ASUNAと銘打たれたアーティファクトの逸品。

 

 ……その形状は正に……

 

 

 −ハリセン−

 

 

 であった。

 

 

 「な、何コレー?!

  ただのハリセンじゃないのー!!」

 

 「あ、あれー?

  おかしいなー……」

 

 

 当然のように文句を言う明日菜に、ネギもただ慌てるばかり。

 

 そんな明日菜の持つアーティファクトに何やら強いシンパシーを感じている横島であった。

 

 

 

 

 「神楽坂さん!」

 

 

 だからと言って状況が止まるわけもなく、明日菜より先んじていた刹那の声に促され、彼女はそのままヤケで突っ込んでゆく。

 

 

 『ええ——いっ 行っちまえ姐さん!!』

 

 「も——っ!! しょ——がないわねっ!!」

 

 

 と彼女の肩に乗っているカモが煽り、その後押しを受けて明日菜は大きく振りかぶって千草に踊りかかった。

 

 何せ物がハリセンだ。おもいっきり張り飛ばした所で死にはすまい。

 彼女が自分のド外れた腕力を計算に入れていないことは言うまでもないが。

 

 

 だが、そんな余計な心配は無用である。

 

 

 ズシンッ

 

 

 唐突に質量のあるモノが出現し、迫り来る刹那の刃と明日菜のハリセンを受け止めたのである。

 

 

 「クマーッ」

 

 「ウキッ」

 

 

 いきなり出現したモノ……それは刹那の剣を爪先で受けたクマと、

 明日菜のハリセンを白刃取り……しようとして失敗して頭で受けたサルの巨大な式であった。

 

 

 「うわった…!?

  何コレ? 動いた!? 着ぐるみじゃなかったの!?」

 

 「さっき言った呪符使いの善鬼護鬼です!!」

 

 

 「え? ソレが?」

 

 

 突如として使用された式符に驚く明日菜にそう説明する刹那であったが、横島的には彼女のセリフに首を傾げざるを得ない。

 

 いや、彼とてGSという特殊職の端くれ。

 いい加減にしてほしいくらい超一級の式神使いとは仕事を一緒に……というか押し付けられた事だってある。

 

 しかし悲しいかな、式神使いとの出会いからして既にトップクラスで、式神といえばその超一級で名門中の名門の式神使いの大家が伝え続けている専用の式神、<十二神将>がデフォルトなのだ。

 尚且つ、それに次いで目にしているのは夜叉丸というこれまたトップクラスの式神。

 

 当然、横島は善鬼護鬼とかいうのだから、ヴァ○ュラ・オーンとかしそーな外見だと予想していた。

 

 だから目の前にいる善鬼護鬼を名乗る式神が出現したのだからなど、そりゃ力が抜けようというもの。

 独学で式神を生み出した根暗学生の方が(外見的には)スゴかったという気さえしてしまう程。思い出すと何だか尻に痛みが走るが。

 

 

 「 が お ー っ 」

 

 「んでもってオレにはコレかい」

 

 

 横島の方にも当然の様に式神が襲い掛かってくる。

 

 その形状は何だかユーモラスなライオンの巨大ぬいぐるみで、たてがみの部分が何だかモコモコしていてドーナツっぽい。

 しかしそんな見た目とは裏腹に、その力は本物のライオンより強かったりする。

 

 それでもゲート前での戦いの時の襲撃者が使っていた式神の方がずっと強そうだった。

 

 

 ——いや、それでも油断は禁物だ。その事で雇い主にも散々怒られていた事。

 

 外見はアレであるが、ひょっとしたら名前の通り、善鬼護鬼の名に恥じないパワーを……

 

 

 ズシャッ!!

 

 「あれ?」

 

 

 ——持っていなかった。

 

 何せ“栄光の手”による爪の一薙ぎで還してしまったし。

 

 

 「弱っ?!

  なんだこりゃ。式の練り具合が最低じゃねぇか。ひょっとして姉ちゃんは素人か?」

 

 

 余りの呆気なさに思わずそうもらしてしまい、ふと少女らに眼を向ける。

 

 

 ボッ!!

 

 

 明日菜と対峙していたサルもハリセンの一撃で還されているではないか。

 

 

 「あんな素人のハリセンで還るっつー事は……

  な〜んだ弱いと思ったらやっぱり素人か」

 

 

 というか、横島の栄光の手の能力と少女の能力がド外れているだけである。

 

 

 「んなっ?! ウチの獅鬼と猿鬼がこんなあっさりと……」

 

 

 横島は……いや、ここにいる者全員が気付いていない事であるが、明日菜はマジックキャンセラーという稀少能力を有している。

 だから一撃で式符という“術”が還されてしまったのである。

 彼の霊能力は言わずもがなだ。

 

 

 そんな事を知る訳も無い横島は、勝手に(十二神将や夜叉丸と比べて)霊力の収束度が低い式神を見て千草を素人だと判断していた。

 千草にしてみれば世界トップレベルの式神使いと一緒にされたら堪らないだろう。

 

 で、当の彼女はというと、目の前で起こされた理不尽さに呆然とするのみ。

 

 

 「さてと……眼鏡ちゃん?」

 

 ドびくぅっ!!

 

 

 頭巾によって隠されているが、間違いなくその布の下で横島はニタリと笑っているだろう。

 

 

 「火傷する前に大人しくする事をオススメしちゃうぞ? で、なきゃあ……」

 

 

 カッシャカッシャと剣呑そうな音をわざと出させ、霊波の爪を蠢かせて脅す。

 

 

 「ちょっち痛いよぉ〜……? 慣れたらキモチいいかもしんねーけど……」

 

 

 「ひぃっ!?」

 

 

 ぶっちゃければ降伏勧告である。であるのだが……そーゆー事を言われて降伏する事等できようか?

 降伏すればどのようなエロゲ的な陵辱行為が待っているか解かったものではないのである。

 

 

 とは言うものの、千草は逃げ様も無いほど追い詰められていた。

 

 何せ今、明日菜に倒された<猿鬼>にしても、横島に倒された<獅鬼>にしても弱い部類の式神では無いのである。

 見た目はナニだが、呪符使いを守る為に生み出したボディーガードなので、善鬼護鬼の名を持つそれらが弱い訳が無いのだ。

 

 にも拘らず怪人……はともかく、少女の一撃によって還されている。

 

 それで心が折れそうになっているのも、まぁ、当然と言えよう。

 

 

 慌てふためいている千草は兎も角、明日菜は素早く刹那と相手を代え、自分はクマのぬいぐるみを模した式を相手にしだす。

 

 そして刹那は素早く千草の元へと駆け出した。

 

 何せ例の怪しげな怪人がそこにいるのだ。敵意は無いと言われてハイそーですかと信じるわけにもいかないのである。

 

 

 「このかお嬢さまを返せ——っ!!」

 

 

 使命感より何より、自分の想いを持って地を蹴った。

 

 相手は既に座り込んでおり、怪人ににじり寄られて隙だらけなのだ。虚を突く以前にそのまま打ち倒せそうである。

 

 

 しかし——

 

 

 

 「え〜〜い」

 

 

 ものごっつ気が抜ける掛け声と共に、刹那に刃が迫った。

 

 一瞬、躊躇したもののそこは剣士。下から掬い上げるように剣を振って刃を打ち止める事に成功する。

 

 金属が打ち合う、ガキンっという重い音を立て、双方は衝撃によってふっ飛ばされた。

 

 衝撃は同等であったろうに、おもいきりゴロゴロ転がってゆく襲撃者。

 

 

 「きゃあああああ」

 

 

 という悲鳴も気が抜ける。

 

 

 刹那はその剣筋から襲撃者が神鳴流の使い手である事を理解し、冷たい汗が出るのを感じていた。

 

 が……

 

 

 「どうも〜〜〜

  神鳴流です〜〜〜

  おはつに〜〜〜」

 

 

 気の抜ける言葉使いそのままに、襲撃者はフリフリのロリータファッションに身を包んだ少女だった。

 

 

 「え……? お……お前が神鳴流剣士?」

 

 

 流石に面食らったのだろう、刹那は言葉を失っている。

 

 

 「はい〜〜〜♪

  月詠いいます〜〜

 

  見たとこ、あなたは神鳴流の先輩さんみたいですけど、護衛に雇われたからには本気でいかせてもらいますわ〜〜」

 

 

 刹那の混乱などどこ吹く風。

 月詠と名乗った少女剣士は、ちゃっかりと可愛い帽子を被ったままそう言ってチョコンと頭を下げた。

 

 時間さえ深夜でなければ似合っていたかもしれないが、今は夜であり、尚且つ彼女の両の手には長刀と小太刀が握られている。剣呑な事この上も無い。

 

 

 こんなのが神鳴流か……とぼやきも入るが気を抜くわけにもいかない。何せ自分の一撃を止められた上、手に伝わった衝撃は本物だったのだから。

 

 しかし、

 

 

 「つ、月詠はん!! ほんな小娘や相手にせんと、こっちの変態をたのみます!!」

 

 「え〜〜〜〜?」

 

 「え〜〜? やあらしまへんっ!!

  こっちの方が難物なんどす!!」

 

 「誰が乾物じゃ!!」

 

 

 干しワカメの様に聞こえたアホは置いといて、千草にとっては刹那より何より目の前の横島の方が脅威。というかバケモンである。

 

 だからせっかく応援に駆けつけた月詠に対して怪人迎撃を命じてしまうのも仕方の無い話だろう。

 

 しかし月詠としてはそんな胡散臭い怪人の相手なんかより、目の前にいる神鳴流剣士という使い手と死合いたい。

 何せこれほどの獲物とはそう滅多に出会えたりしないのだから。

 

 

 「っ…シッ!!」

 

 

 だが、それを好機と見た刹那が月詠に斬りかかった。

 

 のた〜〜っとした月詠であるが、刹那が思っていたより反応が早く、意外にも今一歩の踏み込みが浅くされてしまう。

 だがその距離はそれほど不利ではない。

 何せ刹那は神鳴流の伝統通りに野太刀を使用しているので、踏み込みすぎると月詠の間合いに入ってしまうのである。

 

 

 「はう〜〜〜 これやったら行けませ〜〜ん♪」

 

 

 それでもよほど楽しいのだろう。

 月詠は千草の援護に行けないと嬉々として言い放ち、刹那との死の舞踏に酔い痴れてゆく。純粋に刹那と戦い……死合いたいのだろう。

 

 そんな少女剣士に対して眼をナルト状態にグルグル回して混乱しつつ叱咤を続ける千草。

 斯かる状況でそんな隙はいただけない。

 

 

 「…Ras tel ma scir magister…」

 

 

 ボソリと聞こえた声に慌てて振り返るも一歩遅い。

 

 

 「風の精霊11人!! 縛鎖となりて敵を捕らえろ!!」

 

 

 そう、ここには魔法攻撃ができる少年がいたのである。

 

 

 「ああ、しもた!! ガキを忘れとった−!!」

 

 「もう遅いです!!

  SAGITTA-MAGICA. AER CAPTURAE!!」

 

 その矢の数、呼び出した精霊の数と同じく11本。

 それらが弧を描きつつ景気良く千草を捕らえんと襲い掛かっていった。

 

 慌てた千草は手近にあったものを盾にして我が身を守る。

 

 

 「あひぃっ!! お助けー!!」

 

 

 AER CAPTURAE——『戒めの風矢』なのだから殺傷能力は無い。しかし千草がそんな事を知る由もなく襲い掛かる魔法の矢に対して恐怖感から咄嗟にとった行動だった。

 

 

 

 

 

 「え?」

 

 「……あ」

 

 

 手近にいた者……即ち、

 

 

 「うっわ〜〜〜〜っ!!!

  し、縛るんはええけど、縛られるんはイヤ〜〜〜〜っ!!!」

 

 

 横島だった。

 

 

 ギュルギュルギュル……ときつめに身体にまとわり付いてくる魔法の力。

 その力によって横島はぐるぐる巻きに縛り付けられてしまったのである。

 

 

 「はぁ、はぁはぁ……た、助かったんどすか……?

  あは、あははははは、あはははははははははは!!

  助かったんや!! ウチは助かったんや!!」

 

 

 ありがとーっ ボウヤーっ!! てなノリでネギに対して涙すら流して無上の感謝と愛の念を送る千草。

 尤も、横島を魔法で縛り付けた当のお手柄少年としてはどう反応して良いやら解からないが。

 

 

 「あ、え、え〜〜と……」

 

 「うふふ……ほんま、ボウヤには感謝しますえ? でも、それはそれ、これはこれどす。

  お嬢さまは頂いていきますわ」

 

 

 余裕を取り戻した千草は恩人(ネギ)に対して実に恩知らずな事をほざき、木乃香を抱え直す。

 ネギがはっとして周りを見ると、明日菜はクマとの戦いで苦戦しており、刹那も月詠に手間取っている。

 足止めをしてくれそうなものはいない(変態さんはネギが動きを奪ってしまってるし)。

 

 こうなったら僕が魔法で……と呪文を紡ごうとすると、

 

 

 「おっと、下手な事したらお嬢さまに当たりますえ?」

 

 

 木乃香を盾にするではないか。

 

 どうやら横島を盾にして助かった事で人質を利用する事を思いついたらしい。

 

 

 「な…っ?! 木乃香さんをはなしてください!!

  卑怯ですよ!!」

 

 

 当然ながら抗議を入れるもそれは追い詰められた遠吠えだ。

 敗残者の言い訳に過ぎない。

 

 

 「ふふん? 甘ちゃんやな。人質が多少怪我するくらい気にせず打ち抜けばえーもんを」

 

 

 そう言ってせせら笑う千草。

 

 だが、いくら気を抜けたとしても油断し過ぎるのはいただけない。

 

 

 「そうか? ンなことしやがったらオレがヌっころすぞ?」

 

 「う…く……っ そういうたらまだ兄さんがおりましたな」

 

 

 ごく身近にその声を聞き、恐る恐る振り返る。

 

 やっぱり拘束されたままなので内心ものすごい安堵の溜息を吐く千草。

 

 

 「そ、そんな姿で何を言わはるんどす? 今のアンタに何ができる言うつもりどすか?」

 

 

 それでもなけなしの勇気を振り絞ってそう虚勢を張るが、内心はドキドキだ。

 何せどーやっても不安が拭い去れないのだから。

 

 

 「ふ……この程度の戒めが何だっちゅーんだ?

  この程度の戒め、このオレが初めて喰らったとでも思うたか?

  自慢じゃねーが鎖で縛られた挙句に海に蹴落とされた経験のあるオレからすれば……」

 

 

 人はそれを自業自得と言う。

 

 それは兎も角、そんな事をほざきつつ霊力を高めてゆく横島。

 何せ彼のお得意は反則である。“ある技”を使用すれば直に『脱』け出せるのだし。

 

 ただ、“珠”の生成法が“以前と違う”だけである。

 

 

 「な、何を……?」

 

 

 急に巻き起こる不可思議な力に、気を張っただけの気持ちが萎えかけてしまう。

 

 いや、仮にも千草は呪符使いなので“霊気”は知っていた。

 そして横島から発せられるのは間違いなくその霊気を伴った代物である。

 

 だが決定的に違う事がある。

 

 それは“質”だ。

 

 霊気とは生きているものや意識を持ったもの、そして生きていたモノがもつ波動の様なもの。

 しかし横島から発せられているものは似て異なるものなのだ。

 

 魂が持っているモノから酌み出される力。霊力。

 横島ら霊能力者はその霊力を駆使して魔法と同等の奇跡を起こしているのである。

 

 そして“この世界”しか知らない千草は、流石に気と魔力の中間のようなエネルギーにはお目にかかった事が無い。

 

 

 その戸惑いは決定的な隙を生んでしまった。

 

 

 「退けぇっっ!!!」

 

 

 千草の意識が逸れた事を見止めると、乾坤一擲と言っても良い程の気合でもって刹那は太刀を振るう。

 当然ながら斬り結んでいた月詠には、腕はともかく“氣”合では圧勝している。

 

 その一撃で月詠の二刀でのガードごと彼女を吹き飛ばし、背後を振り返りもせず千草に迫る。

 

 

 「このか——っ!!」

 

 

 その勢いを受けたか、明日菜もハマノツルギでもってクマ式の頭を吹き飛ばし、やはり突拍子も無い脚力でもって千草に迫った。

 

 

 「FLANS!! 」

 

 

 そしてネギも、

 

 

 「EXARMATIO!!」

 

 

 隙を逃したりしない。

 

 

 「なぁ〜〜〜ッ!?」

 

 

 武装解除の呪文が発動し、正しく風花のように千草……と木乃香の衣服が弾け飛ぶ。

 

 

 それでも千草は何とか体勢を立て直し、術を使おうとするも、

 

 

 スパーンッ!!

 

 「あた——っ!?」

 

 

 明日菜のハリセ……いや、ハマノツルギによって<守りの護符>をぶち抜かれて失敗。

 頭部を強打されたことと、護符が効かなかった事で意味を失ってしまう。

 

 こうなったら必殺の呪符でもって……と奥の手を出そうとしたその瞬間、

 

 

 秘剣——

 百花繚乱!!

 

 

 怒りに燃える刹那の剣が、その符と共に千草を弾き飛ばしてしまった。

 

 

 「あぷろぺら——っ へぶっ!!」

 

 

 奇声を上げてすっ飛び、壁まで叩きつけられてしまう。

 

 捉えて千草の背後を洗おうとの判断の為であろう、刹那の剣には殺傷能力はなかった。それと護符の残りがあったお陰であろう、千草には怪我そのものはなかった。だが、ダメージが全くない訳ではない。

 

 呪符も切れたし、何より足元はふらついていてとてもじゃないが戦いなど続けられようも無い。

 

 それに……

 

 

 

 

 「……ち…し……も」

 

 

 

 

 「はぁはぁ……な、なに……?」

 

 

 異様な気配を感じ、息を荒げ、胸を隠したまま辺りを見回す千草。

 

 

 そして、見た——

 

 

 「ひ……っ?!」

 

 

 

 「チチ尻ふともも……」

 

 

 

 頭巾の奥で眼をギュピーンギュピーンと輝かせるバケモ……いや、横島という怪人を。

 

 

 「 尻 乳 太 股 ぉ お お —— っ ! ! 」

 

 

 「あひぃ——っ!!!」

 

 

 ばぎんっ!!

 

 

 ガラスを叩き壊すような鈍い音が響き、ついに横島の自由を奪っていたネギの魔法が木っ端微塵に弾け飛んだ。

 

 

 「なっ?!」

 

 

 眼を見張って驚くネギ。

 

 ついこの前、彼は真祖の吸血鬼と死闘を演じた折、彼女の従者が装備していた結界解除プログラムによって戒めを解かれた事がある。

 だが、今の現象は全くの別物だ。

 

 

 怪人は、何と力ずくで戒めを内から破壊したのである。

 

 

 それは煩悩の集中によってなせる業。

 つーか、霊能力に目覚めた当初の出力でも彼は試合用の結界をアッサリぶち抜いた経験があるのだ。

 この程度の戒めなど、彼の言うように大した事は無いのかもしれない。

 

 

 まぁ、力ずくで魔法をぶち壊されたシーンなど至近距離で見たら堪ったものではないが。

 

 現に千草はまたしてもペタンと座り込んで幼女のように震えてたりする。

 

 

 だが横島のボルテージが上がったのも無理はなかろう。

 何せ“向こう”でも絶対に起こってはならない事が発生したのだ。

 

 

 —色っぽいねーちゃんの全裸になるシーンが目の前で発生した—

 

 

 二十七歳という落ち着きを持った歳であろうと、ちぐはぐな理性を“抱えてしまっている”今の横島の煩悩パワーなら『大人の思慮』などというフタなんぞカップ麺のフタほどの力も無い。

 

 

 そして手負いの飢えたヒグマにも勝る怖いヤツが今、獲物を見つけちゃったのだ。

 

 

 「フー……フー……」

 

 「あ、ひゃ……ひぃ……」

 

 

 正に野獣とエサ。

 

 逃げようにも腰が抜け切っていて、立つより前に粗相が先といった按配。

 

 その構図、毛刈りされた かよわい子羊が血に飢えた手負いの赤カブトと出遭ったようなもの。ぶっちゃけどうしようもない。

 

 大魔神 横っちの前では彼女程度なんぞ単なる小娘という事か。

 

 危うし千草。

 心身共の貞操は風前の灯だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やれやれ……結局こうなってしまうでござるか……」

 

 

 しかし、その救いは意外なところからやって来た。

 

 「Acta(あくた) est(えすと) fabula(ふぁ〜ぶら).!!」

 

 

 慣れない言葉使いで実にたどたどしくはあったが、その<呪>が紡がれた瞬間、横島のバンダナに縫い込まれている刺繍が赤く輝き、

 

 

 「へ?

  あ、あ゛あ゛〜〜〜〜っ へぶっ!!」

 

 

 横島の気力が全て奪われ、すっ転んで顔面から地面にぶっ倒れてしまう。

 

 

 ボゥン!!

 

 「わぁっ!?」

 

 「きゃっ?! な、何なの?!」

 

 「く…っ?!」

 

 

 唐突な横島の転倒に全員が呆気にとられた瞬間、ネギたちの近くに煙玉が炸裂し、皆の視界が奪われる。

 その隙に飛び出して来た影が倒れた横島をかっ攫うとその場を離れて飛び去っていった。

 

 

 視界を完全に遮った煙幕が晴れた時、後に残ったのは——

 

 ネギと明日菜、剣を握り締めたまま様子を窺っている刹那。

 何者かに当身を食らって眼を回す千草と、眼鏡を捜しまわっている月詠。

 

 そして、刹那の腕の中で無事を確認する事ができた木乃香……の六名のみ。

 

 

 「え、え〜〜と……これって……」

 

 「ま、まぁ、何にせよ、このかは助かったわけ……なのかな?」

 

 「……そ、そうだ! お嬢さま!! このちゃんっ!!!」

 

 

 慌てて刹那の腕の中で意識を失い続けている木乃香にネギと明日菜は急いで駆け寄っていった。

 

 

 

 

 

 

 ——木乃香誘拐事件“第一夜”は、こうして未遂に終わったのである。

 

 

 

 

 




 再修正版の七時間目、終了です。お疲れさまでした。

 千草の貞操は無事に済みましたが、ホントはもうちょっとピンチにするルートでした。止めましたが。
 以前にも書いたんですが、この夜の話、削ってはいけないシーンと何とか削ってもいいシーンがあるので仕分けで散々悩んだ話でした。
 何せ話の元サイズは其々が100kbを軽〜く超えてましたしね。

 横っち大活躍でしたらネギが弱体化しますから、是か非でも戦わせなきゃいけませんでしたし、かと言って闘わせすぎると旅行が中止になりかねませんし、ネギが頑張りを見せないと刹那が彼を信用してくれません。
 文を直して直して……こーゆー話になってしまいました。

 次は“あの子”が出る話。
 そんな訳で続きは見てのお帰りです。
 ではでは〜

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