-Ruin-   作:Croissant

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 ゲリラ的投稿2
 


二時間目:キセキの価値は?
前編


 ——“向こう”の世界にパイパーと名の悪魔がいた——

 

 

 ハーメルンの笛吹き悪魔パイパーといえばプロのGSでも恐怖するという恐るべき存在であり、一個が数億円もする精霊石を二,三個纏めて使用したとしても退散させるのがやっとで、如何なる手錬れであろうと餌食になる他なしと恐怖されていたという。

 

 一体その悪魔の何がプロGSらを恐れさせていたのかというと、それはそいつが持つ笛の音にあった。

 

 全く持って気が抜けるチャルメラによく似た音色のそれであったが、喩えどんな人間(含むハーフバンパイア)であろうと最後まで曲を聞き終えると、何と年齢を吸い取られてしまうというもの。

 つまり、どんな手練でも何も知らない単なる子供にされてしまうのだ。

 

 実はそれでもダウングレードされており、失われていた全盛期の力を取り戻したとしたら、関東一円の人間を一瞬で子供にしてしまうことすら可能というのだから、それはそれは恐るべきものであったのだろう。

 

 尤も、過去形で語っている事から解かるように件の悪魔は既に退治されている。

 

 詳しい過程は語られていないが、横島忠夫の雇い主その人がガチで殴り倒してしまったそうだ。

 

 

 で、

 

 何故そんな話を楓が思い出したのかというと……

 

 

 『いや、記憶喪失には一回なった事あるんだけどさ、そん時はすっぱり記憶がすっ飛んでたんだけど、

  今回のはあの悪魔ン時みたいにピンポイントで記憶が消えてるから関係あるのかなって思っただけだよ。

  でも関係ないだろーなぁ……あいつ死んでるし。

  つーか異世界にまで飛ばせる訳ないし』

 

 

 という傍で聞けばヨタ話にしか思えない話を昨日横島としたからである。

 

 ピンポイントで…というのは、その悪魔は件の能力で大人までの記憶を経験ごと持って行って子供にしてしまうからだそうだ。

 今その話を思い出しても怖気がする。

 何とも恐ろしい能力を持っていたものだ。

 

 

 さて、そんな楓は妹分たちよりも早く寮を出、わりと空いている通学路をゆっくりと歩いている。

 早起きは苦手という訳ではないが、久しぶりに妹分たちと分かれて一人でいる所為か人通りの少なさを強く感じているのかもしれない。

 

 尤も、“一人”であって“独り”ではない。何時も一緒にいる連中と偶々離れているだけ。

 それでも土日の修業時と同様に、騒がしさや気の置けなさがないと妙に寂しさが浮いてくるのが面白い。

 

 偶に皆と離れ、空いた通学路を一人歩くのも良いかもしれないでござるなぁ…等と思いつつ学校へと向っていた楓であったが、ふと世界樹が目に入って昨日の事を思い出していたのである。

 

 

 「しかし…<悪魔>、でござるか。

  そんなものまで実在していたとは……」

 

 

 いやはや、世界は広いでござるなぁ…と笑みが浮かんだ。

 

 

 別に世間知らずと言い切るほど世間を知らない訳ではないが、それでも知らない世界の何と広い事か。

 

 日本とは別の国があるとかいう話では無く、別の“裏”の世界というモノがあり、魔法使いが存在していて実際に魔法戦争等の過去もあったと言う。

 

 尚且つそれとは別次元にも横島がいた世界があり、そこでは魔法では無く霊力が普通に存在していて、霊能者がそこらにいて妖怪や悪魔と戦っているのだという。

 

 “裏”というものに接した事が無いとは言わない。自分とて忍なのだし。

 

 だが、そういったものと壁を隔てた“裏”。

 <魔法界>という存在は十余年ほどしか生きていない上に山奥で暮らしていた楓が知る由も無かった事であり、異世界に至っては論外だ。

 それだけならまだしも、何と横島のいた異世界ではそこらに神様だとか魔王だとかがいるのだという。魔法があるという話だけでもファンタジーなのにそこまで吹っ飛んでいたら笑うしかない。

 

 そしてそれらの存在を知ったのは、何と昨日の事である。

 

 普通なら夢と現実の狭間で悩み苦しむ事であろう(特に横島がいたという異世界)が、幸いにもというか頭が柔らかいというか、はたまた単におバカなのか楓は比較的あっさりとその“現実”を受け入れていた。

 

 何しろ楓は平和主義者であるのだが武闘派の側面も持っている。

 

 新たなる“裏”は新たなる戦いへの道でもある。

 その事に僅かな怯えにも似た感情が全く無いという訳では無いが、それより何より期待感の方が強いのだろう。

 

 だから、今までとは全く違うであろう相手との戦い…それを待ち望んでいる子供じみた胸の高鳴りも手伝ってか、機密保持という理由での勧誘も快く受けたのである。

 

 尤も、戦いと離れている時の楓は何時もの彼女だ。

 

 類稀なる運動能力を有しているというのに、中等部の超弱小クラブである散歩部に入って、毎日のように無駄に広い麻帆良内をてくてく歩き回って散策を続ける日々。

 それに対して不満を全く持っていない穏やかな彼女のまま。

 

 正に −鞘に収められている銘刀−

 …いや、彼女は忍なので忍刀か? それが彼女を称するに値する言葉なのかもしれない。

 

 

 「ふむ…」

 

 

 何時もの通学路。

 何時もの学校。

 何時もの空気。

 

 だが、こうして新しい環境に入ったという気持ちを持って見れば別のもののようにも見える。

 

 気が付けば色んな角度から校舎を眺めている自分がいた。

 

 いつ何時、ここを戦場にせねばならないかも解からないので、今まで以上に入念な下見を…という建て前を持って、今まで以上に親しさを感じている校舎のぐるりを眺めて楽しんでいる自分が——

 

 

 「あはは…やはり拙者は子供でござるなぁ…」

 

 

 こんな事くらいで舞い上がってるでござるよ…と、風に靡いた髪をかき上げつつ教室へと向ってゆく。

 

 今日からやる事が増える。

 手間が増すというのに、何故か彼女の心は弾んでいた。

 

 今日の放課後からしてまずやる事がある。

 

 “彼”とこれからの仕事の打ち合わせをする事、そしてその為にこの街を案内するという任務があるのだ。

 

 

 何となく弾む胸は、サラシで押さえた胸が物理的に…というのではないだろう。

 

 

 異世界からの来訪者、横島忠夫。

 

 彼に会い、また広い世界の話を、

 御伽噺のような異世界の話を聞く……その事が楽しくて堪らないという自分も知ってしまったのだから。

 

 

 ふと気が付くと時間はチャイムが鳴るギリギリ手前。何となく放課後に思いを馳せていた所為だろう。

 計算していた以上に時間をとってしまい、その事に軽く反省。

 

 というか、何時もの登校時間より遅くなってどーするでござる? とちょっと自己嫌悪していたり。

 流石にHRに間に合わないという程でもないが、それでも自然と足は速くなる。

 

 微風のようにしなやかに廊下を進み、

 涼風が如くゆるやかに教室へと向う。

 

 気配を消してはいないが、目立つ事も無く歩いてゆけるのは流石と言えよう。

 

 

 

 が、

 

 

 

 

 「オハヨーでござる」

 

 

 機嫌の良さは余り隠し切れていない楓が教室のドアを開け、中に一歩入ると…

 

 

 ざ わ ……

 

 

 教室の空気が、撓んだ。

 

 

 「え…?」

 

 

 流石の楓も硬直してしまう。

 

 決して目立たない方ではないが、ここまで視線が集中した事はそうないからだ。

 

 

 「楓姉…」

 

 「ぬ?」

 

 

 下方からの声に眼を向けてみれば、寮の同室の双子で妹分である鳴滝姉妹の妹の方、左右に髪をシニョンで纏めている鳴滝史伽が自分を見つめていた。

 

 それもヘンな目で。

 

 

 「昨日は何だか遅かったし、妙に浮れてたけど…こういう事だったんだ…」

 

 「は?」

 

 

 何やら頬を赤くしたミョーな上目遣いでチラリチラリと自分を見つめてくる一見幼女の言葉。楓は訳が解からない。

 

 

 「いや〜…長瀬さんにも春が来てたってコトだよねぇ〜……

  で? 馴れ初めは? ドコまでいってんの?

  ホレホレ、オネーさんに言ってみんさい」

 

 「へ?」

 

 

 妙にテンションを上げ、メガネ怪人と謳われ(?)ている早乙女ハルナが実に嬉しそーに話しかけてくる。

 無論、楓はサッパリサッパリだ。

 

 

 「あ、あの〜〜……

  一体、何の話でござるか?」

 

 

 首を傾げつつどこかニヤ付く級友らに問い掛けると、自分と同じく成績がズンドコに悪いバカレンジャーの一人である佐々木まき絵がやはりニヤ付きながら黒板を指差した。

 

 と…

 

 

 「な…っ?!!」

 

 

 

 −オトナな彼女は彼氏のお陰?!−

 

 

 

 何という事でしょう。そんな見出しの付いた報道部の号外が黒板の隅に貼り付けられているではありませんか。

 

 件の号外には写真週刊誌宜しく望遠気味にフォーカスされている写真が掲載されており、申し訳程度のプライバシー保護の黒線が顔にかかってはいるのであるが、一目で中等部と解かる制服と、その長身と特徴的な髪型によってこの少女が何者であろうかは一目瞭然だ。

 

 「いやぁ〜…びっくりしたよ〜…

  あんなに仲睦まじく歩いてるもんだからさぁ」

 

 等とデジカメとレコーダーを手にニヤリとする少女、報道部の朝倉和美が何時の間にやら後に立っていた。

 

 説明する訳にもいかず、かと言って否定材料も少なすぎる。

 

 何せ単なる道案内…の筈なのであるが、どういうわけか写真に映っている自分の顔は見た事も無いような笑顔を醸し出しているのだから。

 おまけにその顔は、僅かではあるが赤いときている。

 

 これでは否定すればする程泥沼になってしまうではないか。

 

 油断も隙も無いテンションが異様に高いクラス…その事をスッパリと忘れていた楓は、この場を誤魔化す言葉を思いつけず、ここ麻帆良学園に来て初めて内心で慌てふためくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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                  ■二時間目:キセキの価値は?(前)

 

 

 

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 「あははは……災難だったな」

 

 「そう思うなら少しは助けて欲しかったでござるよ…」

 

 

 恐ろしい質問攻撃に耐えに耐え、担任であるネギが何故かHR前に出て行ってしまったのを良い事に、彼女もインタビュー攻撃を回避する為に一時間目の授業開始まで教室から逃亡していた。

 

 が、そこは思春期のじょしちゅーがくせー。

 異性関係に対しての好奇心に満ち満ち溢れた年頃だ。

 

 授業中だろうが関係ないらしく、小さく折りたたまれた質問の手紙が飛礫宜しくあちらこちらから飛んで来る。

 そして案の定、一時間目終了と同時に和美を先頭に皆が駆け寄って来るではないか。

 

 こりゃ堪らんと煙玉を使用してまたも逃亡し、二時間目と共に帰還するもやはり一時間目同様に質問飛礫が飛来する。

 叩き落しても良いし無視しても良いと思われるだろうが、その場合は教師に見つかって理不尽な説教を喰らう可能性だってあるのだ。魔法教師ばかりが教科担当をしている訳ではないので味方をしてくれるとは限らないし、何よりこの学校にいる魔法教師の数も知らないし。

 

 けっこーな精神疲労でぐったりさんな楓であったが、そんな彼女の心情など知った事かと言わんばかりに二時間目終了のチャイムと共にまた和美らは攻めて来た。

 

 このままでは埒が明かないし、言って良い事と悪い事の境界線をまだ理解し切れていない事もあって、仕方なくまたしても逃亡し、屋上に撤退して三時間目のチャイムを待つ事となってしまったのだ。

 

 

 昨日からペースが乱れっぱなしの彼女は、和美らから逃げるのに珍しく(というかこの地に来て初めて)気疲れを起こしていた。

 担任のネギ少年をからかっていた時等は気にもならなかったが、いざ追いかけられる側となるとこうまで疲労するものかと今更ながら件のコドモ先生に同情してたりする。

 

 言うまでもない事であるが素人の少女らから逃げ切る事は楓の能力からすれば難しくも何ともない事だ。

 それでここまで疲弊するとは修行が足りないのでは? という説もなくはないのだが、クラスメイト共はこーいった事にはやたらしつっこい上、超人が如く無駄に高い能力を発揮するとキている。

 

 そこに来て自分の妹分二人が混ざっていた。

 

 あの二人はこっちの行動範囲をほぼ全て知っている為、下手に逃げまわっても先回りされてしまうのである。

 

 しかしそれでも移動速度で勝る楓。

 幸いにも屋上は捜索範囲から外れていたのか、途中で出会った龍宮真名からおやつのサンドイッチ(因みに甘いフルーツサンド)を分けてもらって何とか落ち着きを取り戻していた。

 

 場所は校舎の屋上。

 人気が少なく、人心地つけるには最適である。

 

 

 ……まぁ、時折吸血鬼の少女が昼寝してたりなんかするが楓はそんな事を知る由も無い。

 

 

 ペタンと座り込んでいる楓の直横で、面白そうに笑いつつカフェラテが入った紙コップを傾けている真名。

 彼女は相変わらずギターケースを肩に掛けており、何気なく腰を下している風に見えてはいるがその仕種には隙がない。

 

 お互い、内に秘めている年齢度外視の実力を感じ取っているからか、逆に気が置けない関係を続けられている。

 

 これは信頼し合った関係という意味合いが強く、決して二人が実力者同士なので隙を窺って攻撃する…という事ではない。ではないのだが…面と向かって勝負する方が楽しいというニュアンスも見え隠れするのは仕方のない事なのだろうか。

 

 とは言っても、完全に気を緩ませているわけではないし、そうかと思えば警戒を解いていない訳でもない。ただ単に脱力しているのみ。

 いつでも緊急行動に移れるのは修業の賜物だろうが、それでも緊張感は無く穏やかな空気が漂うのみ。

 

 

 ややこしいがこれが二人の間というものが上手くいっている証なのだろう。

 

 

 そんな大人っぽい外見と空気を持っている二人であるが、それとは裏腹にこの二人はかなり甘党で特に和風デザートには眼が無かったりする。

 その辺も気が合うのかもしれない。

 

 

 「そういえば…お前も“裏”に関わってきたらしいな」

 

 

 カフェラテを少しだけ口に含んでから、本当に何気なく問い掛ける真名。

 午後の天気を問い掛ける様な何気なさだ。

 

 内心、楓は僅かに緊張したもののやはり肝が太いのか笑顔は変わらない。

 

 

 「“裏”…とは何の話でござる?」

 

 

 首を僅かに傾け、不思議そうな顔をするのも流石だ。

 

 そんな彼女の肝の太さ…いや演技の上手さが面白かったのだろう。くくく…と含んだ笑いを零し、真名は面白そうに楓の顔を真っ直ぐに見つめ、

 

 

 「学園長から話は通ってるよ。

  私も“そっち側”さ。信じていい」

 

 

 と肩を竦め、初めてギターケースを肩から外して壁に立てかけた。

 

 −信じていい−とは真名の言葉を信じろという事であり、友として信じろという事。

 ギターケースを身から離したのはその証拠だ。

 尤も、証拠を見せるまでも無く真名が友として信じろとというのだから、楓はそのまま信じているが。

 

 ぱっと見は何の変化も無い楓の笑顔であるが、真名の言葉でやっと“本物の笑顔”に戻し、緊張を完全に解いてから了承の意を見せる。

 

 

 「成る程…そちらも裏の裏に関わっていたでござるか。気付かなかったでござるよ」

 

 

 こうなると日本茶で団子といきたいところであるが、ここにあるのはフルーツサンドと予備のサンドイッチであるハムサンド、そして砂糖が多めの激甘なカフェラテのみ。

 嫌ではないが興が足りないというもの。

 まぁ、甘味同好の士としても知られている真名の選んだ逸品であるから文句は無いが。

 

 

 「裏の裏ねぇ…それはまた言いえて妙というか…」

 

 

 確かに二人とも裏に関わっているが、魔法界が絡むと更に“別の裏”という世界がもれなく付いてくる。

 真名は以前から身を置いていたのであるが、楓は今回から。それでも楓の実力は今直ぐにでも実戦に耐えられるほど。

 

 気を凝縮して分身し、同時攻撃に入れる少女など魔法界でも相当珍しいのだ。少なくとも真名とて本気にならないと勝てる気はしない。よくもまぁ今まで裏に関わらず生きていたものである。

 

 

 『ま、関わってきたら関わってきたで面白いのだがな…』

 

 

 と内心、奇妙な笑みも浮かべている。

 楓はそんな真名の心中に気付いているのかいないのか何時もの笑顔のまま。

 

 笑顔でもって表情を読ませない少女に、真名は苦笑して紙コップを傾ける。

 

 

 「で? あの男は何者なんだ?」

 

 「はて、あの男?」

 

 

 今日は何回彼の事を聞かれただろう。

 またその話かとゲンナリしつつ何処までも惚ける楓。

 無論、真名を相手に誤魔化し切れる訳も無く、微笑んだままじっと見つめている彼女に数秒と待たず降参し肩を竦ませる。

 

 それでも学園長らとの“約定”もあるので異世界人という事だけを伏せて説明をした。

 

 

 「まぁ一応、拙者のパートナーでござるよ」

 

 

 と、極簡素に。

 

 

 「ほぉ…」

 

 

 感心するかのように眼を見張る真名。

 真意は兎も角、納得はしてもらえた…と思う。

 

 何せ嘘は言っていないのだし。

 本当でもないが…

 

 彼の実力はサッパリ解からないのであるし、“仕事”の打ち合わせ等は今日行うのだ。

 

 

 楓の眼から見ても彼のその実力は推し量れない。

 どーしよーもなく素人のようで、圧倒的に実力者のよう。事実相反する気配が彼の実力を覆い隠しているのだ。

 

 普通は能力を補い合える者同志を組ませるものなのであるが、彼はその性癖により他の者と組ませる事は色んな意味で危険である。

 

 

 彼が唯一食指を動かさなかったのは今現在解かっている中では男性教諭と楓のみ。

 女性教諭(特に美形)を前にすれば脊髄反射で行動し、静止の言葉を述べる前に性犯罪ギリギリの行為(つーかズバリ犯罪)をかましてしまう。

 

 

 では男性教師と組ませるのが良いのでは? という話になるのだが、それだと彼のモチベーションが上がらない上、教師らの方も余りに突飛な行動をかます彼に勝手が解からなくてヘマをする可能性だってあるのだし。

 

 となると今のところ何故か息が合っている自分が組まされる可能性が一番高いのでは? と、楓はそう思っている。

 

 まぁ、実際に学園長はその気ビンビンだったのだが…

 

 

 そんな楓の横で、顎に指をやって何やら考えていた真名は頭を上げて口を開いた。

 

 

 「という事は、その男は魔法使いなのか?」

 

 「は? いや彼は魔法使いではござらんよ?」

 

 

 真名の質問に唐突に何を言い出すのかという顔をするが、彼女の方も楓の返答に『はて?』と首を傾げている。

 

 

 「じゃあ普通に仕事のパートナーという事か?」

 

 「普通に…とは、どういう意味でござる?」

 

 

 ああ、それは聞いていないのかと納得をし、真名は掻い摘んだ説明をしてやった。

 

 彼女ら<魔法界>に関わる者から言えばパートナーとは魔法使いとその従者の事で、契約を交わした相手…魔法使いから魔力を与えられて身体機能を強化し、魔法使いを守って呪文行使を助ける存在である。

 

 楓は突拍子も無い体術の使い手であり、氣の密度を操って戦える実力者ではあるが何の魔力も無い少女である。

 だからパートナーと聞けば彼女の方が従者だと思うだろう。

 

 

 「そーいえば…横島殿の戦闘スタイルは一体どんなものなのでござろう……」

 

 

 気配を消していた楓に気付き、一種異様なまでの不死身さを持っている彼。

 “氣”によく似て全く質が異なる霊力の使い手であり、それを用いて戦う…らしい。

 

 今解かっているのはそれだけしかない。

 

 前衛要員にしては動きに切れが無いし、後衛にしては頑丈過ぎる。となると考えられるのは諜報要員か? しかし、昨日見ていたのであるがその足運びは一般人のそれ。

 “向こう”ではこれが普通といわれれば納得するしかないのであるが、楓には彼の戦い方は全く想像もできなかった。

 

 

 「何だ? お前も知らないのか?」

 

 「仕方ないでござるよ。会ったのは昨日が初めて故…」

 

 

 呆れたような真名の声であるが、楓に出来る事は苦笑のみ。

 

 しかし、改めて考えてみれば初めて会った相手をなんでこんなに自分は信じているのだろう?

 実質、会ってまだ二日と経っていないのに彼に背中を任せる気でいるのだ。それは彼女でなくとも苦笑する。

 

 そんな楓の様に肩を竦めてもう一度カップに唇を当てた真名であったが、

 

 

 

 カチャ…ギィ…

 

 

 

 

 と唐突に屋上のドアが開いた時に驚いて紙コップを投げ捨ててギターケースに手を掛けた。

 

 これは楓も同様で、やや焦りつつ袂…というかブレザーの中…に手を入れ、クナイを引き抜いて身構える。

 

 

 何せ幾ら和んでいたとはいえ、押し隠さねばならない程実力のある二人だ。飽く迄も気を抜いているだけで気を配る事を忘れていた訳ではないのだ。

 だから周囲の気配を探る事を止めるような真似もしていなかった。

 

 にも拘らず、ここまで接近に気付かなかったのだ。

 それは確かに焦りもするだろう。

 

 隠れる場所も見当たらない位置であるから楓は投擲の準備をし、真名はいつでも抜き撃ちができるように身構え、その人物の次の動きを待っていると…

 

 やがてドアが完全に開かれ、そこに見知らぬ男が姿を現した。

 

 

 「あれ? 楓ちゃん」

 「へ? よ、横島…殿?」

 

 

 ……主に真名には、だが。

 

 

 「な、に…?」

 

 

 真名がよく見れば号外に映っていた男そっくり。

 つーか、その本人だ。

 

 彼女達の目の前には、今さっきまで話をしていた当人の、

 この二人にすら全く気配を気取られずに屋上までやって来ていた、何故か青い作業着に身を包んだ件の横島忠夫の姿があった。

 

 話をしていた当の本人がやってきた事に焦っている楓は兎も角、屋上に上がってきていた足音も無く、自分にすら気配を全く察知させなかった事に真名は驚きを隠せないでいた。

 

 

 

 例え——

 

 横島という青年が屋上に行く理由の大半が覗きであった為、ウッカリ気配を消す癖が付いていたり、

 “勘”だけで覗きに気付ける雇い主の眼を掻い潜る内に神技に昇華していた隠行だとしても……

 

 

 

 

              ****** ****** ******

 

 

 

 「用務員?!」

 

 

 学園長から言われた仕事を聞き、何故か小豆色の小汚いジャージの上下を着、『臭』とかかれたタオルを首から掛けて見せた横島。

 用務員とくれば“この姿”はデフォだろうと言わんばかりに。

 下ひた笑みを浮かべつつ『この加藤(よこっち)めにお任せを……』とか『鬼畜道其の壱』とか言い出しそうだ。間違いなく極悪性犯罪者であるが。

 

 

 「タイーホしてほしいのかの?」

 

 「じ、冗談っスよ」

 

 

 一瞬で衣装を元のTシャツとジーンズに戻す。言うまでも無くタネは解からない。

 早変わりの妙と褒めてやれば良いのだろうか判断に困るところだ。

 

 尤も、近衛としてみればこんなジョークをかましてくれる彼は好ましくて堪らなかったりする。頭の固い人間はちょっと苦手なのだから。

 

 

 ここで帰る日まで雇われる事にした横島であったが、流石に無職では生きていけない。

 

 学校に入学してもいいぞい…という申し出もあったのだが、何が悲しゅうて今更高校に通わねばないらないのかと言う理由で却下。

 尚且つ入学するとしても教師ら全員一致の意見で男子校なのだ。横島にとっては死刑宣告も同じだったし。

 

 

 まぁ、学校生活と魔法(彼から言えば全てオカルトという括りであるが)関係とを両立できるほど自分は器用では無いし、オカルト全般がオープンの世界から来たので何時集団の中でボロを出してしまうか解からないというもっともらしい理由も一応は付け足してはいるが。

 

 更に言えば、そんな地獄に通わせれば余計にフラストレーションが溜まってしまい、暴走した挙句に性犯罪に走りかねない。

 悲しいほど自分を良く知っている横島は正確にそんな未来を予見していた(その事を学園長に告げると『確かにのう…』と即行で納得されて落ち込んでたりする)。

 

 

 かと言ってヒモとして自堕落に住まわしてくれるほど学園長らも甘くは無いし、横島も期待はしていない。

 

 となると仕事をせねばならない訳であるが、土地勘がゼロなので職の幅も狭くなってしまう。

 どうしたものかと学園長に相談すると、

 

 

 「用務員はどうかの?」

 

 

 と言ってくれたのである。

 それが初めに横島がウッカリ仮装してしまった理由だ。

 

 無論、あの仮装通りの行動をとれば完璧且つ徹底的に性犯罪者だ。痴漢行為で初の死刑が執行されかねない程に。

 

 尤も、そんな画期的な死刑の例になる必要もないくらいこの男はチキンである。

 

 何だかんだで女の子をそういった行為で泣かす事は論外中の論外の話なので、素でンな事できる訳ゃないのだ。

 

 相手の年齢がストライクゾーン内であり、且つ相思相愛に加え同意の上でのイメージプレイというのならまだしも……

 

 

 それは兎も角として、再度同じ質問。

 ついでに言葉の前に女子校の(、、、、)という単語を付け足して投げかけた学園長に対し、

 

 

 「女子()の用務員?!

  超OKです! 天地が南北になっても拒否する理由はありませぬ!!」

 

 

 と、横島は洗剤のCMを彷彿とさせる輝く笑顔でその申し出を了承した。

 

 コトが女関係の話である所為だろう。無声であるなら第三者が目にしてもイロんな意味で感動してしまいかねない素晴らしい脊髄反射である。

 

 神の領域速度で頭を下げて契約書にサインし、母印まで押してしまう始末。

 流石は過去にウッカリと死の修行にサインしてしまった男は格が違った。

 女に誑かされて ものごっつ痛い目を見る典型的な男の姿だと言えよう。

 

 

 だが、横島のその気色も即行で拭い去られてしまう事となる。

 

 横島は何度も確認を取られ、更にその書類のコピーをもとられ、そのコピーの注意項目を読まされてからようやく事の重さに気が付いた。

 

 用務員として働く先は、女子“高”ではなく女子“校”で、尚且つ“女子中等部”だったのだから。

 電話販売等の口頭詐欺の手口に引っかかったに等しいのだが、自分から進んで間違えたのだからどーしよーもない。

 

 更にこれを拒否した時の罰則は、なんと男子校の用務員就任だ。

 

 地獄の二者択一であった——

 

 

 何せ女子中学生という微妙すぎる時期は横島にとってはストライクゾーンに入ってきたクセに顔面を直撃する殺人魔球(バッティング・インフェルノ)の様なもの。

 受けるには痛すぎるし、見送るには惜し過ぎる。

 そんな年齢の少女らの身近にいれば甘ったるい地獄で悶え苦しむ未来があ〜ん♪と口を開けて待っている。

 

 それでも甘酸っぱさから甘みを抜いた男子校(それもド汗臭い男子高校生)用務員生活は御免である。

 

 二者択一の地獄。どっちをとっても地獄には変わりが無い。

 

 

 だから彼は、“酸っぱいだけの地獄”よりも僅かでも潤い(女教師)のあるであろう“甘酸っぱい地獄”を選んだのだ。

 “漢”らしいといえば“漢”らしいのだが……

 

 こんな選択をさせるオニのような学園長は、同じ助平ぇ魂を持つ者同士のシンパシーを敏感に察知して彼の本質に気付いたのかもしれない。

 

 兎も角、横島は(表向き)用務員としてここ麻帆良学園中等部に就職できたのであった。

 

 

 

 

 

 ——その横島は今、両膝を付いて蹲るように打ちひしがれていた。

 

 

 

 前にいるのは楓と真名の二人。

 

 

 彼の心から溢れ出るのは嘆きの声。

 

 

 はらはらと零れる涙は心の痛み。

 

 

 彼のオーラからは絶望に程近い挫折が色濃く滲み出していた。

 

 

 精神的に図太過ぎるこの男をここまで嘆かせるとは一体如何なる悲劇が襲い掛かったというのだろうか?

 

 

 その悲しみの大元は彼の前にいる二人の少女——

 

 今の横島より身長があり、“向こう”にいた同僚の巫女の女子高時代よりスタイルが良いときている。

 

 彼の目測によれば89.9cm。20cmもの差があるウエストから比較しても正に“ふぁんたすちっく”で“ぐ〜れいとぉ”だ。

 ハーフである事も解かるし、黒髪ストレートロングのクールビューティーさも相俟って美少女ポイント(?)も高い。

 

 これだけなら『眼福っ!!』と手を合わせて拝むのだろうが、世の中そう良い事ばかりでは無い。

 

 

 「何でや……

 

  何で二人ともそんなカラダしとって中学生なんじゃ〜〜〜っっっ!!」

 

 

 そんな血涙モノの悲劇が彼を苛んでいたのである。

 

 

 ——何の事は無い。

 

 前日に楓に対して食指が動かなかったのは、彼の本能が楓の実年齢を敏感に察知しストッパーを掛けていただけだったのだ。

 

 確かに楓は中学生っぽいデザインのブレザー姿ではあったが、ここに来て早々の横島は(楓のスタイルの良さも手伝って)それを中等部の制服としては見られなかったのである。

 まぁ、初見で彼女らを中学生だと見破る事は難しいのだが。

 

 ぶっちゃければ、昨日話をしている時とか、楓が醸し出すちよっとした仕種の中に可愛らしさを見出して萌えたりしたのだが、その事もダメージ拡大に拍車を掛けていたりする。

 女子中学生に萌えてしまった…というのは、彼のジャスティス(ロリ否定)にはかなりの痛手なのだろう。

 

 そんな横島の苦悶を見、

 

 

 「あは、あはははははは………」

 

 

 真名は珍しく大笑いし、

 

 

 「あはは…」

 

 

 楓も面白そうに笑っている。

 

 二人してこんな笑いをするのは珍しい事だったりする。

 

 

 「くくく……楓よ」

 

 「ふふ…なんでござる?」

 

 

 真名はチラリと楽しげな眼差しを横島に送り、異様に似合ったウインクを楓に見せた。

 

 

 「実に面白そうな男と組んだみたいだな」

 

 「少なくとも、退屈だけはしないみたいでござるよ」

 

 

 楓もそれを受け、一層眼を細めて微笑みを見せている。

 

 そんな二人の女っぽい仕種が余計に横島を追い込んでゆくのであるが…そんな事は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

              ****** ****** ******

 

 

 

 

 

 「ははぁ…それで用務員に」

 

 「そーなんだよな……ああ、ここだここ。パイプの接続部が腐食しちまってる」

 

 

 横島は楓と話をしつつ、排水管の修繕を行っていた。

 

 普通、こういった事は専門の業者が行うものであり、横島のようなド素人が行うものではない。

 だが悲しいかな丁稚としてこき使われていた頃の記憶は身に染み付いているのだろう、『やって』と言われば“出来てしまう”のだ。それもプロレベルで。

 

 屋上から下まで溜まった水を流す排水パイプ。

 その程度の修理等、彼からしてみれば食玩のプラモより簡単な作業なのである。

 

 

 「それでさっきの女の子…真名ちゃんだっけ? 彼女も同じ…」

 

 「そうでござるよ。

  元々“裏”でそれなりに実力をもっていたようでござったが……

  まさか魔法の世界にまで絡んでいたとは…」

 

 「物騒な話だなぁ……」

 

 

 会話しつつも手は止まらない。

 

 楓も手伝うでござると横島に申し出たのであるが、スカート穿いてるんだからと泣きながら土下座して懇願し、どうにかこうにか止めてもらっていた。

 手伝ってくれるのは嬉しいのであるが、やたら短いスカートの中が見えてしまう可能性が高いし、横島の習性上、覗いてしまったりする可能性も激高い。それでは即行でテンパってしまうからである。

 

 尤もその直後、『中が気になるのならスカートを脱いで手伝うでござるよ?』と冗談をかまされ、コンクリートの壁にヘッドバットかまし続けて平静さを無理矢理保った所為で彼の仕事が増えてしまったのは甚だ余談である。

 

 

 ドスケベな癖に妙に純情で変なモラルが高く、正直者である横島。

 

 そんな横島にあたたかい眼差しを送っている事に楓自身も気付いていない。

 何がそうさせているのかも。

 

 真名はそんな楓の様子に気付いたからこそ、野暮な真似はよしておくとするよ…と転がっている紙コップを拾ってこの場を後にしたというのに。

 

 

 中に詰まりそうな木の葉等のゴミを溝から掻き出し、ブラシで擦ってから腐食した吸い口を引き抜いて溝の水分を丁寧に拭き取って乾かし、これまた丁寧に防水パテを塗りこんでゆく。

 まるで専門業者のように手早く丁寧だ。慣れとは恐ろしい。本人は嬉しくもないだろうが。

 

 横島は真面目な顔をすれば実はけっこう良い顔をする。

 そんな彼の横顔を何だか無言で見つめていた事に気付いた楓は少し焦ってしまった。

 

 彼は別に気にもしていないようである…というか、春風の舞う屋上でミニスカートな制服を着た楓がしゃがんでいるので己のジャスティス(ロリ否定心)を守る為に必死こいて集中しているだけだったりするのだが。

 

 

 「それで…記憶は戻ったでござるか?」

 

 

 お互いを僅かにでも意識してしまった気まずさからか少し間を置いてしまい、その沈黙を誤魔化すかのように楓が問い掛けた。

 言ってしまってから『しまった!』と思ったのであるが、

 

 

 「いんや全然。

  二十七歳だったっちゅー記憶というか、経験の“枠”みたいなモンはやっぱあるんだけど……

  その間の記憶がサッパリサッパリ」

 

 

 当の本人はあっけらかんとしていた。

 

 二十七の彼がどんな生き方をしていたのか不明であるが、記憶喪失である事を気にもしていないのは謎のままである。

 慣れている…といえばそれまでであるが、横島自身がそれ以外の要因を感じてもいた。

 

 

 −思い出してもしょうがない−

 

 

 何故かそんな思いを持っている気がしてならないのだ。

 

 

 「帰る事を……その…諦めたでござるか?」

 

 

 追い討ち掛けてどーするでござる?! と心の中で自分をサンドバックにして憤るが、言ってしまったものはしょうがない。

 

 記憶を失っているという苦痛がどんなモノか理解できる筈もないが、本人は苦痛を感じている筈。

 いくら焦っているとはいえ、そんな事を平気で問い掛けてしまう自分の迂闊さに腹が立ってしまう。

 

 けれどもそんな楓の葛藤など知る由も無い横島は、速乾性の防水パテのはみ出した部分を熟練の技で削ぎ取りつつ、

 

 

 「いんや」

 

 

 と全く気にもしていない軽い口調でそう返してきた。

 

 

 「そう…で、ござるか…」

 

 

 −安堵した−という想いが湧いた事には気付いたのであるが、そこに又も妙な焦りが浮かんでいる。それが自分でも理解しがたく何故だか歯痒くて堪らない。

 

 楓は無意識にブレザーの裾をいじっていた。

 

 

 「諦めてはいないけど、なんちゅーか…帰る事が出来ても帰れないよーな……」

 

 「は?」

 

 

 煮え切らない言葉を吐く横島に、楓は頭を上げて彼の顔を見る。

 そして、その行動によって自分が俯いていた事を知ってまた焦る。

 

 

 「いや、その、上手く言えないんだけど……

  帰る方法を見つけられても、それは“向こう”に帰るっちゅーか…行く?

  そんな感覚なんだよなぁ」

 

 「???」

 

 

 楓には横島が何を言わんとしているのか全く解からない。

 尤も、横島にしても何が言いたいのかよく解からないのだが。

 

 

 ただ解かっている事は、自分という“存在”が“ここ”に、この世界に定着しかかっているという事。

 

 本来、異世界の存在である自分がこの世界の存在として再構成されているような気がしているのだ。

 

 気がしている…とはいっても、それは心の奥から沸いてくる奇怪な確信だ。その事はまだ誰にも言っていないのであるが。

 

 どう説明したものかと首を捻りつつも黙々と作業をこなしてゆく横島。

 

 

 そしてその背を見つめ続けている楓——

 

 

 三時間目の授業開始の鐘が鳴っても楓はその音色に耳を貸さず、横島が作業を終えるまでずっとそばに居続け、

 意外にも最後まで真面目に仕事を続けている彼の背中から、何故だか眼を離す事ができなかった。

 

 

 

 

 


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