IS? え、ここ緋弾のアリアの世界じゃないの?   作:竹箒

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第二話 自己紹介って何話せばいいか迷う

俺が試験会場にてISを動かしてしまってから早数日。一人目に続き、ISを男性が動かしてしまったということで一躍時の人となってしまった俺はというと今は政府が用意してくれたホテルにいた。ホテルには武装した護衛たちが複数人配置され鼠一匹通さないとばかりの気合の入れようだった。

 

「はあ…、疲れた。いくら男性操縦者が希少だって言ったって飯を食べるのにも毒見と必要って…、しかも後ろで護衛の人がずっとこっち見てるし」

 

俺はここ数日の過剰なまでの対応に辟易としていた。部屋を出ようものなら問答無用で護衛が複数人付くし、食べるものはすべて毒見済みのものを食べなければいけない。今だって部屋に仕掛けられている監視用のカメラや盗聴器が俺のことを見続けている。

 

「IS学園か…」

 

あの試験後、俺は大混乱のなか二人目が現れたということを確認しに来た政府の人たちに連れられ男性操縦者の保護という形の軟禁を食らっている。理由としては各研究所が俺の身柄を確保し、研究材料として拉致や誘拐といった行動を起こすかもしれないというものだが正直、ここにいる護衛じゃ足りないような気もしないでもないが……。

 

とにかく、政府はこのままだと俺の身が危ないということで一人目と同じく国からの干渉を受けることのない安全地帯である『IS学園』へと俺を入学させることを決定したらしい。

 

IS学園とは文字通り、ISにおける操縦の訓練や整備を専門に学ぶ世界で唯一のIS専門学校である。入試倍率は200倍を超えることも珍しくない学校である。

 

そんなIS学園にはあらゆる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉が許されない。という国際規約があり、それを盾に俺たちに対する干渉をシャットアウトしようということなのだろう。ちなみに当たり前のことだがIS学園は女子高である。ISを動かせるのが女性しかいない以上当たり前のことだった。

 

希少な男性操縦者を守る手段がそれしかないとはいえ女子高に男子を生徒として入学させるなよ…、しかもHSS持ちを……。

 

「IS学園への入学自体はもう変えることは出来ない。自衛の名目で何とか武偵免許の保持は許可が下りたとはいえなにが起こるかわからないし出来れば面倒ごとには巻き込まれたくはないけど…」

 

無理だろうなぁ…、どう考えてもテロや誘拐事件なんかは起きるだろう。国際規約とはいえ裏の連中には関係ない話だし、各国だって規約に抵触しない範囲ならがっつり接触してくるだろう。そんな中で何も起こらないと考えるほど平和ボケはしていないのだ。そもそも武偵がそんな考えなら生き残れない。

 

「なにより遠山の血が流れてる俺がが平和に過ごせるはずもない……」

 

キンジ兄さんを見てみろ。ハイジャックに始まり、死んだり生き返ったり、果てには異世界人とのバトルなんてことに巻き込まれてるんだ弟の俺が平和に過ごせるはずもなかった。

 

「はあ…、憂鬱だ。」

 

この先、自分の身に降りかかってくるであろう苦難に辟易としながらも俺はホテルでIS学園入学までの数日間を過ごすのであった。

 

__________________________________________

 

 

side 一夏

 

(ヤバい、視線がキツい……)

 

世界で初めてISを動かせる男性となってしまった俺こと、織斑一夏は冷や汗を背中にびっしょりとかきながら、周りからの刺すような好奇の視線から少しでも逃れるために背中を丸めながら時が過ぎるのを待っていた。

 

「あれが……」

「一人目の……」

「結構イケメン…」

 

ヒソヒソ……

 

背中に向けられる視線のほかにも周りの女子たちから聞こえるヒソヒソとした声にさらに居心地の悪さが加速していくのを感じる。

 

(いやいや、いくら男性の操縦者が珍しいって言ったって俺は上野のパンダじゃねーんだぞ…!だ、だれか…、誰でも良い!!この空気を何とかしてくれ!!)

 

そんな風に時間が過ぎるのを待っているとガラガラという音とともに教室のドアが開かれ、教員らしき女性が教室に入ってきた。

 

「皆さん、揃ってますねー。それじゃあSHRを始めますよー」

 

教卓に上がりにこりと微笑む女性。先生だろうか、よ、よかった…。これで視線も…?

 

「わたしは皆さんの副担任になりました山田真耶といいます。それでは皆さん、一年間よろしくお願いしますね」

 

「「「……………………」」」

 

あ、あの…?先生が自己紹介してますけど…?こっち見てないでなにか反応してくれよ。先生も明らかに困ってるぞ。

 

「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。出席番号順にお願いしますね」

 

自己紹介が始まったみたいだが相変わらず俺の背中に感じる視線の圧は一切和らぐことはない。自己紹介してるやつの話聞いてやれよぉ!俺じゃなくてさあ!

 

「……君!織斑君!織斑一夏君!」

 

「は、はい!?」

 

ぼ、ボーっとしてて話を聴いてなかった!!顔を上げると山田先生が泣きそうな顔で俺の名前を呼んでいた。

 

「あの、大声出しちゃってごめんなさい。でも『あ』から今『お』なんだよね。だからごめんね?自己紹介してくれるかな?だ、ダメかな?」

 

「い、イヤそんなに謝らなくて大丈夫です!自己紹介ですよね!?、し、しますから!落ち着いてください!」

 

山田先生ものすごい腰の低い先生だな、話を聴いてなかった俺が悪いけど申し訳ないな。

 

立ち上がり自己紹介をしようとすると一斉に俺に集中する視線、ちょっと待てみんな目を皿にして俺のことを見てくる。

 

「えー…えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします……」

 

周りの視線が痛い…、じ、自己紹介ってこれ以上何を言えばいいんだ!?え、えっと、とにかく何か言わないとまずい…!

 

「えー…っと……」

 

女子たちは何か言おうとするたびに興味津々な様子を隠そうともせずにこちらを見てくる。そんな状況に俺は腹を括り、ついに言葉を発した。

 

「—————以上です!!」

 

ズルッ……!

 

皆のずっこける様子を幻視した俺は焦り始める。

 

「あ、あれ?ダメだったか?」

 

焦っている俺は背後に迫る黒い影に気づくことが出来ず脳天に強烈な一撃をもらうことになってしまった。

 

ズパァン!!

 

「うぎゃあ!?」

「何をしている馬鹿者、マトモに自己紹介も出来んのか貴様は」

 

そこに立っていたのは俺の姉である織斑千冬であった。手には出席簿を構えておりご丁寧に角から煙が上がっていた。角で人を叩くな!!

 

「げぇっ!関羽!?」

 

ズパァン!!

 

思わず口走った言葉のせいで二度目の出席簿アタックが俺の頭に突き刺さった…。い、痛え……。

 

「誰が三国志の武将か、馬鹿者」

 

頭を押さえ撃沈する俺を放置して山田先生が千冬姉に声をかける。

 

「あ、織斑先生。もう会議は終わったんですか?」

「ああ、山田君。クラスの挨拶を押し付けてしまって悪かった。」

 

千冬姉は山田先生となにか話しているようだが俺はそれどころじゃなかった。

 

「ち、千冬姉…、何でここに」

 

俺が何でこんなところに姉がいるのかと疑問を口に出そうとすると、千冬姉は出席簿を構えながら。

 

「ここでは織斑先生と呼べ。わかったな織斑」

「は、はい…、織斑先生……」

 

凶器を構えながら脅すのは卑怯じゃないだろうか。とはいえ先生ということはもしかしてこのIS学園で働いてるってことなのか!?

 

千冬姉は俺を放置し、教卓の前まで足を進めると勢いよくこちらを振り返り声を張り上げた。

 

「諸君、私が担任の織斑千冬だ。私の仕事はこれから一年をかけて君たちを使い物になる操縦者に育て上げることだ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」

 

どこの軍隊でしょうかお姉さま。流石にもう少し言い方というものがあるんじゃないだろうか。ほら、クラスのみんながドン引きして…。

 

「「「「「「「「「キャアアアアァァァ!!!!!!!」」」」」」」」

 

「キャ――――――! 千冬様、本物の千冬様よ!」

「ずっとファンでした!」

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです! 北九州から!!」

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」

「私、お姉様のためなら死ねます!」

 

ええ…?何でみんなそんなにテンション高いの…?

 

「……毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か? 私のクラスにだけ馬鹿者を集中させてるのか?」

 

この状態を目の当たりにして千冬姉が流石に疲れた様子でこめかみに手を当てる。

 

うん、お仕事お疲れ様です。

 

女子たちのテンションはとどまるところを知らないらしくどんどんヒートアップしていく。

 

「きゃあああああああああっ! お姉様! もっと叱って! 罵って!!」

「でも時には優しくして!」

「そしてつけあがらないように躾をして~!」

 

ついに千冬姉の堪忍袋の緒が切れたのかバシン!!という音とともに出席簿が教卓にたたきつけられる。

 

「静かにせんか!!貴様ら!!」

 

千冬姉の怒声によってクラスがようやく沈静化していく…。すると次に目を付けられるのはさっき怒られたばかりの俺なわけで…。

 

「で? 挨拶も満足にできんのか、お前は」

「い、いやあ。千冬姉、俺は…」

 

スパァーン!

 

「織斑先生と呼べと言っている」

「……はい、織斑先生…」

 

くそぅ…、何も殴らなくたって……。

 

「え……?織斑くんって、千冬様と知り合い……?」

「もしかして姉弟だったりして?」

「それじゃあ世界で唯一男でISを扱えるっていうのもそれが関係して……?」

 

俺と千冬姉のやり取りにクラスがまたざわめきだしたとき、千冬姉から声が発された。

 

「静かにしろ!まだ、話は終わっていない!!……よし、諸君らには追加で伝えておくことがある。先日発見された二人目の男性操縦者だがこのクラスに入ることとなった。混乱を防ぐためあとからの合流としていた。これからクラスに入ってもらい自己紹介を行う、くれぐれも先ほどのようなバカ騒ぎはしないように。さもなくば……、わかるな?」

 

二人目の男性操縦者という単語でまたクラスがざわつきつつあったが流石は千冬姉、速攻で黙らせた。千冬姉の無言の脅しにクラスの女子たちもコクコクと首を振っていた。

 

「よし、それでは入ってこい!!」

 

__________________________________________

 

教室の中からなんか聞こえてる…。

 

さっきから女子の黄色い悲鳴やら織斑先生の怒声やらすごい不安何だけどホントに大丈夫かここ…。織斑先生には「私が呼んだら入ってくるように。それまでここで待っていろ」って言われたから教室の外で待機してるけど教室入るのがすごい憂鬱なんだが。

 

『よし、それでは入ってこい!!』

 

お、織斑先生が呼んでる。さっさと入っておこう。俺まで頭にヒビを入れられるのは勘弁願いたい。ここは武偵高じゃないんだ。

 

ガラガラと扉を開けクラスへと入っていく。クラス中の視線が俺に集まっているのを感じる。明らかに俺の容姿を見て困惑しているんだろう。……確かにこれはキツイものがある。教室内からも若干聞こえてたけどこんな空気だったら自己紹介に失敗しても仕方ないんじゃないだろうか。

 

「遠山、自己紹介をしろ」

「はい、織斑先生」

 

クラスの方に向き直り俺は自己紹介を行っていく。失敗したら頭蓋骨が陥没することがさっき分かったから考えておいてよかった。

 

「皆さん初めまして、遠山カナタといいます。先日の一斉検査にてISの適性が見つかりこのIS学園に入学することになりました。こんな見た目ですがれっきとした男です。ここに来る前までは武偵をしていました。趣味は読書です。皆さんこれからよろしくお願いします」

 

事前に考えていた自己紹介をクラスのみんなに披露すると見事にポカンと口を開けていた。

 

「ふん、面白みのない自己紹介だ。遠山の席はあそこの空いている席だ、着席しろ」

「えぇ…、面白い自己紹介って何ですか。……わかりました」

 

皆がフリーズしているうちに織斑先生から指定された席へと向かっていく。席に着くとどうやら隣の席の娘はほかの皆より一足先にフリーズから戻ってきたらしく挨拶をしてくれた。

 

「よろしく~、私は布仏本音だよ~。ねえねえ、かなたんってホントに男の子なの~?」

「へ?……かなたんって俺のことか?」

「そうだよ~、カナタだからかなたん。呼んでもいいかな?」

「まあ、かまわないけど…、質問の答えだけど間違いなく男で合ってるよ。こんな見た目だから信じられないのも仕方ないけどな」

 

そう言いながら髪をとかすと我ながら見惚れるほどに艶やかな髪がさらりと流れる。

 

それにしても、なんというか不思議な娘だ。ポワワ~ンとしているというかのほほんとしているというか。隣に座っても緊張もしないからヒス的にもかなり付き合いやすそうな娘だった。女子生徒しかいないんだ。隣の席の子と位は仲良くしたい。彼女のことは心の中でのほほんさんと呼ぼう。流石に声に出すのはキモ過ぎるし。

 

俺とのほほんさんが軽く挨拶程度の雑談を行っていると教卓の織斑先生がパンパンと手を鳴らしながら授業再開を告げた。

 

「さて、これで一旦自己紹介は打ち切る。残りのものは休み時間にでも行っておけ。それではこれより授業を開始する。それでは――」

 

雑談を打ち切り、俺ものほほんさんも織斑先生の指示に従い教科書を用意して授業の準備を進めていく。

 

そうして俺のIS学園における初日がスタートしていくのだった。

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