IS? え、ここ緋弾のアリアの世界じゃないの?   作:竹箒

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第三話 せめて古紙回収に出せ

あの混沌とした自己紹介の後は何事もなく、無事にIS学園初日の一時限目が終了した。

初めての授業だったので少しばかり緊張していたが、特に詰まる箇所もなく授業を乗り越えることが出来た。

 

授業が終わったということは当然休み時間に入るということなのだが周りの女子たちはお互いを牽制しあっているのか誰もこちらに近づいてこない。……つまり周りから「話しかけてくれないかな……」という視線が俺ともう一人の男子生徒に突き刺さっているのだ。しかもチラリと廊下側に目を向けてみると、窓には俺たちを一目見ようとずらりと女子たちが並んでいた…。

 

まるで見世物みたいだと内心あきれていると前方からもう一人の男性操縦者である織斑一夏が歩いてきていた。

 

「お互いに大変だな…。えっと遠山だよな。知ってるかもしれないけど俺は織斑一夏だ。一夏でいいぞ」

 

やっぱり一夏もこの視線にはだいぶ参っていたみたいだ。顔には疲労の痕跡が見えている。

 

「おう、一夏だな。こっちこそよろしく。改めて遠山カナタだ。俺もカナタでいいぞ」

 

二人しかいない男性操縦者だ、俺も一夏とは良好な関係は築いておきたい。挨拶を返したのだが一夏はポカンとした表情を浮かべていた。案の定俺の顔を見て驚いているみたいだ。

 

「ああ、この顔は気にすんな。女みたいな顔してるがこれでもれっきとした男だ。……惚れるなよ?」

「バ、バカなこと言うなよ!……すまん、近くで見ると想像以上でな…、とにかく!男は俺たち二人しかいないんだ仲良くやろうぜ」

 

一夏の表情が面白かったから、ついからかってみたがどうやらカラッとした気持ちのいい奴みたいだ。

 

「すまん、ついな。こっちこそ仲良くしてくれれば嬉しい」

 

笑いながら謝罪すると一夏も苦笑しながら仕方ないとばかりに手を差し出してきたので俺も手を差し出し握り返す。

 

ヒソヒソ……

 

「握手した!握手してるぅ!!」

「イケメン王子×ワイルドお姫様!」

「イチカナ?カナイチ?」

 

……クラスの女子たちからものすごい風評被害が発生している気がする…!握手しただけなんだがな…、どうやらこのクラスにはご腐人(誤字にあらず)たちがずいぶん多いようで。

 

「…なあ、一夏よ」

「…言うな、カナタ」

 

俺と一夏の目が死んでいるのがわかる。俺は仕事柄慣れているが一夏はとにかく災難だった。

 

「少しいいか?」

 

ん?背後から声を掛けられ振り向いてみるとそこには長い黒髪をポニーテールにした女子がいた。一夏の方を見てみると少し驚いたような表情をしている。知り合い何だろうか。

 

「もしかして、箒か?」

「!…お、覚えていたか。少し話したいことがあってな」

 

へー、やっぱり一夏の知り合いだったか。覚えていたってことは数年ぶりの再会ってことなんだろうか。邪魔しちゃ悪いし彼女に譲るか。

 

「一夏に用だったか、俺のことはいいから付き合ってやれよ。久しぶりの再会かなんかだろ?」

「む、すまない。それならお言葉に甘えて少し借りるぞ。…いいか?一夏」

「おう、悪いなカナタ。ちょっと話してくる」

 

いってら~、手を振りながら見送っていると二人は教室を出て行った。

 

……教室から出てくの?俺を置いて?

 

ジー……

 

クラスの視線が俺一人に集中し始める。

 

……引き止めとけばよかったかもしれない。

 

居心地の悪さを感じながら俺は次の授業が始まるのを待っているのだった。

 

__________________________________________

 

あの後、5分ほど視線の圧に耐えると休み時間の終了を告げるチャイムの音が教室に鳴り響き、ようやく俺は女子の視線から解放されることとなった。

 

二時間目はIS基礎という教科でいわゆるISの基本的な構造やISを使う上での注意点などの授業らしい。

 

「ーーーーで、あるからして、ISの基本的な運用はーーーー」

 

IS基礎の担当は山田先生で黒板に授業内容を板書しながら説明を読み上げていく。

 

……やっぱりこうして授業として説明されるとISの知識が不足しているのを強く感じる。IS自体は国や軍が管理しているということもあって俺たち武偵にはあまり関係がない話だった。武偵の仕事にISが出張ることなんて普通はないからな。勉強を後回しにしていたツケがここで効いてきてる。

 

……そう考えるとISに追いかけらた経験のあるらしいキンジ兄さんはホントに何者なんだろうか。ISに生身で立ち向かったりしたらしいし…、それが出来ないから最強の兵器なんて言われてるんじゃないのか?

 

益体もないことを考えつつも事前にもらった参考書を読んでいたおかげか今のところ理解が出来ないという事もなく授業を行っているとふと一夏が顔を真っ青にしながらあたりを見渡している様子が目に入る。何やってるんだあいつ?

 

「織斑くん、何か分からないところがありますか?」

 

山田先生も一夏の様子に気が付いたのか心配そうな顔で一夏にわからないところがないか尋ねている。しかし声をかけられた一夏は青い顔をさらに真っ青にしている。

 

……まさかあいつ。

 

「あ、えっと……」

「分からないところがあったらなんでも訊いて下さいね。なにせ私は先生ですから」

 

山田先生が胸を張って一夏に尋ねているが、先生多分そいつわからないってレベルじゃ…。

 

一夏はついに決心したようで山田先生の問いかけに返答をした。

 

「先生!」

「はい、織斑君。どうしましたか?」

「ほとんど全部わかりません!!」

 

瞬間、クラスの時が止まった。

 

「え…?ぜ、全部…ですか?」

「は、はい…、全部……です…」

 

流石の返答に山田先生も困惑してる…。当たり前だ、バカ…、全部ってなんだ全部って。

 

「え、えっと……織斑くん以外で、今の段階で分からないっていう人はどれくらい居ますか?」

 

山田先生が一夏の返答を受けて他の生徒たちに確認をとっているがもちろん誰も手を挙げることはなかった。当たり前である、だってこの授業の内容って基礎の基礎、ほとんど目次みたいなもんだし。

 

「と、遠山君は大丈夫ですか?」

 

もしやと思い山田先生はもう一人の男性操縦者である俺に話を振ってくるが。

 

「はい、今のところは特に問題はないです」

 

俺がそう返すと露骨に胸を撫でおろし、ホッとした表情をする。

 

「よ、よかったです。もしわからないところがあったら聞いてくださいね」

 

山田先生がホッとしたのも束の間、教室の隅で授業の補助を行っていた織斑先生から殺気が飛んでくる。流石はブリュンヒルデ。武偵高の教師陣にも負けず劣らずの気配である。超怖い。

 

「……織斑、入学前に渡された参考書は読んだか?」

 

質問されている当の本人は織斑先生の殺気に気づいていないのかのんきな顔で何のことかと考えている。

 

参考書って入学が決定したときに渡されたあの凶器として使えそうなくらい分厚い「必読」って書かれた本のことだよな。まさかあいつ読んでないのか?確かに読むのが億劫になるのは分かるけどISに関しちゃ俺たちは素人以下なんだからそれじゃ不味いだろ…。

 

俺が一夏の行動にあきれているとようやく参考書のことを思い出したのか手をポンと叩き、織斑先生の質問に答えた。

 

「古い電話帳と間違えて捨てました」

 

――ドガァン!!

 

瞬間、一夏の後頭部に叩き込まれる出席簿。うん、何も擁護出来ん。流石にアホすぎる。

 

「必読と書いてあっただろうが馬鹿者」

 

おっしゃる通りで、武偵高ならそのまま蘭豹による体罰フルコースが始まるレベルのやらかしなのでこれで許してくれる織斑先生は優しいと思います。

 

「この後再発行してやるから一週間以内で覚えろ。いいな」

「い、いやあの厚さを一週間はちょっと…ってヒィ!!」

 

ブオン!

 

一夏の前をものすごい勢いで出席簿が通り過ぎていく。

 

「やれと言っている」

「ハイ…ワカリマシタ」

 

かわいそうだが俺はフォローしないからな。

 

「ISはその機動性、攻撃力、制圧力と過去の兵器を遥かに凌ぐ。そういった『兵器』を深く知らずに扱えば必ず事故が起こる。そうしないための基礎知識と訓練だ。理解が出来なくても覚えろ。そして守れ。規則とはそういうものだ」

 

正論だ。俺も帯銃している身だ、操作を一歩間違えれば簡単に人は死ぬ。だからこそ俺たちは日々訓練し知識をアップデートし続けるのだ。

 

「貴様らは『望んでここにいる訳じゃない』と思っているな」

 

織斑先生はこちらを見て言葉を続ける。

 

「望む望まざるに関わらず、人は集団の中で生きなくてはならない。それすら放棄するなら、まず人であることを辞めることだな」

 

……言いたいことは分かりますけど愚痴の一つや二つは出ても仕方なくないでしょうか。

 

__________________________________________

 

二時間目が終了すると一夏が席を飛び出し、俺のもとへ飛び込んでくる。

 

「カナタ!助け「断る」ってオイ!」

 

泣きついてきた一夏を食い気味に切り捨ててやると一夏はそのまま倒れこみorzの姿勢で落ち込む。

 

「いや、自業自得だろ。必読ってデカデカと表紙に書かれてるんだから捨てるなよ」

「うう、おっしゃる通りです…。」

 

百歩譲って捨てるまではいいが再発行してもらえよ、どうしたって必要になるんだから。

 

落ち込む一夏をあきれた目で見降ろしていると視界の端に金色の髪が映った。

 

「ちょっと、よろしくて?」

「「うん?」」

 

俺と一夏が二人して声の主の方向に目を向けると金髪の巻き髪の女子がこちらを見て不快そうに眉を潜めた。

 

「まあ!なんですの、そのお返事は。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

 

…なんだ、こいつは?いきなり声を掛けてきたかと思ったらこの態度。喧嘩を売りに来たのだろうか。

 

「…悪い、あんたの事は知らなくてね」

「ああ、ごめん俺も君のことは知らない」

 

俺と一夏が金髪女子のことを知らないと返すとその返答が気に食わなかったのか金髪女子はヒステリックに声を上げた。

 

「まあ!わたくしを知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補生にして、貴族、そして入試主席のこのわたくしを!?」

 

うわぁ…、これってあれか、今流行りの女尊男卑ってやつか。関わりたくねぇ…。

 

「へぇ、オルコットさんか。俺は織斑一夏。よろしく」

「ふん!わたくしに声を掛けられているのですからそれ相応の態度というものがあるでしょう!」

 

ええ…、お前から話しかけてきたんじゃん。もう帰れよ。一夏も、よーこんな気さくに挨拶できるな…。

 

「あなたもですわよ!なにを自分は関係ないような顔をしているのですか!これだから男は…!」

「……悪かったな、こちとら武偵でな。お貴族様相手なんて慣れてなくてね。もうそろそろ休み時間も終わる、席に着いたらどうだ?」

 

対応するのも面倒だったので適当に聞き流しオルコットを席まで誘導する。こいつって貴族なのかよ…。神崎先輩とは大違いだな。あの人は手が出るスピードは早いがちゃんと、人を見て判断するし虚勢じゃない本物のプライドがある人だしな。

 

オルコットとのファーストコンタクトが終わると授業再開のチャイムが鳴り始める。オルコットはまだ言いたいことがありそうだったがドアが開き、織斑先生が入ってくるのを確認すると渋々と自分の席に戻っていった。

 

「はあ、災難だったな一夏」

「まあ、学校が始まったばかりで気が立ってたんだろ。俺も席に戻るわ、じゃあなカナタ」

 

そう言って一夏は自分の席に戻っていく。

 

オルコットのあの様子だとまた突っかかって来そうだなぁ…。

 

「はあ、憂鬱だ…」

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