何処にでも現れるおじさんは、僕達を若人と呼ぶ。 作:インチネ・ズィ・マゼタルーノ
書くつもりは無かったのですが、思いついたので置いておきますね。
引き続き、ナニも考えずに感じで下さい。
とうとうやって来たよ。
ここ、黒の心源。
長いようで短かった様な気がするけど、間違いなく濃い旅路だった…
「ねぇフィルマ、フィルマったら!ほら見てコレ、すっごい変な形の石よ!不気味ね、黒の心源に来たみたいだわ!」
「黒の心源に来てるんだよ?そうだね、不気味な石だね。不気味だからあった場所に戻しておいで」
「分かったわ!カイト、これ戻しといて」
「これ…シャーリーが…」
「なに?」
「いや、その…」
「ありがと♪」
止めてあげて、カイトの精一杯の抵抗を無視しないであげて…流れるようにカイトに変な石を押し付けないであげてよ。繊細なんだよ、カイトの心は。
でもねカイト、そろそろ慣れてほしいな。別に僕達に上下なんてないんだから、嫌だって言って良いんだよ。それで気分を悪くする様な人は居ないからね。僕を見てごらんよ、基本的にシャーリーの無茶振りは全部無視してるだろう、君もそうして良いんだ。強い心を鍛えようね。
せっかくだから少し黄昏れてみたんだけど、やっぱり僕達には向いてないや。
「よっすよっすぅ〜!若人共、元気してるか?」
「……!」
「あっおじさん、久しぶりです」
「うおっぶねぇ!?おいおい若人共、最近この鎧の挨拶が過激じゃあねぇの。おい年増!てめぇはすっこんでろ!」
「……!……♪」
こらカンナバルト!おじさんに向かって攻撃しな……別にしてもいっか、どうせ当たんないし。
そう。少し前に判明したんだけどこのおじさん、実は分身で物理攻撃がほとんど効かないんだ。カイトとナンナの分析によると、小さな紬風の様なものなのだとか。
ごめんよ、魔法とかみたいな頭の良さそうな話はよく分からないんだ…頑張って勉強するから、新しい単語と複雑な理論を沢山僕に浴びせるのは止めてね。読み書きすら知らなかった田舎村出身には難しすぎるよ。
さて、僕達がここで何をしていたかと言うと、おじさんを待っていたんだ。
おじさんの正体が分かりそうだからね。あちこちで調べて周ったかいがあったよ。大変だったけど、それだけ価値のある時間だった。
それじゃあナンナ、おじさんの相手は任せたよ。
僕じゃあおじさんに口で勝てないからね、簡単に煙に巻かれる自信があるんだ。カイトはまだダメだし、シャーリーは論外。カンナバルトは喋れない。任せた、ナンナ!
「カンナバルト、そこまでにして下さい。続きは後で」
「なぁ『聖女』ちゃんよぉ、後でも嫌なんだが?」
「改めましてご挨拶を。今代の『聖女』、ナンナと申します」
「おうよろしく、知ってっけどな。そんなかしこまっちゃってどうした若人共?目の前の黒の心源に怖気付いちまったか、んん?」
シャーリーを煽りに行ったおじさんだけど、今は無視。さっき先に約束したからね、今回は全部ナンナに任せて、僕達は話しを振られない限り口を挟まないって。
「いいえ、貴方様に会いに来たのです。黒の心源はその後で十分ですから」
「ほう?なら言ってみな、なんの用だい?」
「…黒の心源からモンスターが溢れ出ない用に張られた、広大な風の攻勢結界。その要を担っているのが、初代『勇者』様一行の1人、『風の槍術士』フロージェ・カンナバルト。長い…とても長い間、私達人類を守る為この場に留まり戦い続けている英雄。それが貴方様ですね?」
なんと驚き、おじさんは本物の英雄らしい。
だってさ、勇者伝説とかおとぎ話だと思うじゃん。僕、調べて初めて史実だって知ったよ。シャーリーもカイトも、僕と同じ様に驚いてたもん。ナンナは半分くらい信じてたらしいよ、勇者パーティに初代『聖女』が居たんだって。それが『聖霊』になって鎧に入ってるカンナバルトなんだってさ。
この前、カンナバルトの本来の姿が見れたんだけど、びっくりするくらい綺麗な人だったよ。
それと、カンナバルトって名前は当時の仲間…おじさんの事を忘れない為に名乗ってるんだって。いや、喋ってないから名乗ってはないけどね。
「あちゃ~…そんな小っ恥ずかしい言われ方されてんのか。でも間違ってんぞ、俺ぁ人類なんて大層なもん守ってるつもりはねぇ。俺が守るのは何時だって仲間達だけだ。それ以外はまぁ…手が届けばな?」
「初代『勇者』様の血を引く存在である私達のリーダー、フィルマさん。貴方様が姿を現したのは、彼の為ですよね」
「おっとまじか、そんな事までバレてんのね?」
これに関しては、僕が1番驚いてるよ。
だって色んな場所で勇者の伝承を調べて周って、最終的にたどり着いたのが出て行った筈の村!しかも自分の家!父さんと母さんはとうの昔に死んじゃって居ないけど、村長さんが家の管理はしてくれていて色んな物が残ってたんだ。
あのつまらない村が、勇者の伝説を守る為の隠れ里だとは思わないじゃん…
まっ、そんな事よりも!
「バレてますね。まぁ、本題はそこではありません。風の槍術士、フロージェ・カンナバルト様。貴方様の身体の元へ案内してください」
「若人が大胆で困っちまうわ、おじさんの身体なんか見ても楽しくないぞ?」
「貴方様が仲間を思う様に、私達も仲間の願いを叶えたいのです。『聖霊』カンナバルト…貴方様は既に気付いていらっしゃいますよね?初代『聖女』クルヌエラが、貴方様に会いたいと言っているのです」
「……!!」
えっへん、と胸を張るカンナバルト…僕達も呼び方変えた方が良いのかな?後で聞いておこう。カンナバルトって、喋らなくても感情が分かりやすいよね。リアクションが大きいから。シャーリーといい勝負してるよ。
そして、おじさんは……
「いや、やめとこうぜ?ほらおじさんはもうおじさんだかうおぃ!?こらクソ鎧が危ねえだろうが!いい年ドコロか風化したババアがガキに甘えてんじゃねぇぞ見苦しいな!バーカバーカ!脳筋のクセして一丁前に聖女名乗りやがって、歴代の『聖女』を見習え酒カス女!」
「……!??」
もしかして、おじさんはカンナバルトがなに言ってるのか分かるのかな?ナンナは最近集中すれば分かるって言っていたけど、それは繋がりがあるからだし…
酒カス?
思い返せばカンナバルトって、飲み物しか口にしないよね。元々飲食は要らないらしいんだけど、なんだかんだで一緒に食卓を囲んでそのノリで。基本的なにか酒精の入った物を持っていた気がするね、特に
確信はしてたけど、おじさんとカンナバルトって仲いいよね。多分勇者パーティって普段からこんな感じだったんだろうなぁって思うよ。…こう元気だとさ、リーダーが苦労するんだ…ご先祖様……
「分かった!分かったから!案内するから止めろバカ!」
「……♪」
歩き出した2人の後を、僕達もついて行く。
結界の外周に沿ってしばらく進むと、地面が盛り上がった丘の様な場所が見えてきた。その上には、風化した小さな祠が建っていた。
察するに、あの祠の中におじさんが居るのだろう。
「はぁ…あんま良いもんじゃねえぞ。見たけりゃ勝手にしな」
「おじさん?」
いつもの様に、おじさんは風に溶けてフッと姿を消した。
カンナバルトはウキウキで祠を調べようとしてるけど、残された僕達は顔を見合わせている。
「どうするみんな、開ける?」
「コレって、そーゆう事よね?」
「悪い気配はしませんが…」
「じゃあ開けるよ」
「……☆」
「「「!??」」」
カイト!どうしてこう、変な方向にばかり思い切りが良いんだ君は!?止めようよ!絶対中にあるのおじさんの死体だよ!好き好んで見るようなもんじゃないってそんなの!
僕達の混乱をよそに、カイトとカンナバルトがバキバキと嫌な音を鳴らしながら祠を開くと中には……
「うわぁ…」
痩せ細り枯れ木と見紛う様な、かろうじて人間だったのが分かる程度。右側の肩から先と膝から先のないミイラが、床に突き立てた槍にもたれ掛かる様に座っていた。
「これが…おじさんの死体…」
「いやまだ死んでねぇから」
「キャア!?」
祠に注目していた僕達の背後から、聞き慣れたおじさんの声がした。止めてよビックリするじゃん。
また分身で出てきたおじさんは、珍しく穏やかな顔で語ってくれる。
「こう見えておじさん、精霊とのハーフなのよ。長らく結界の維持してたせいか、人間成分がほとんど抜けちまってなぁ…俺が人だったって言えんのはもうその身体くらいなもんよ」
「あっ!じゃあバルみたいなモノなのね。それでなんでわざわざ分身で出てくるのよ、本体で動けば良いじゃない。驚かせないでよね!」
「それが出来ねぇの。その身体はもう限界でなぁ〜なんとか残ってるけども、動かすドコロか触るだけでもうボロボロって崩れちまうの。おじさんもう寿命なんだ、わーーーッ!!!?」
おじさんの身体をカンナバルトが思いっ切り抱き締めて…崩壊させてた。
うそでしょ?これ戦犯かな?
逃げていい?
「……、」
「おじさんもうダメかも知れない…若人達よ、幸あれ……」
「お、おじさん!」
「……。」
「あれ?なんか意外と大丈夫そうだわ、やっぱおじさん生きてる」
風の結界も消えてないし、大丈夫そうだね。
カンナバルトの蛮行は見なかった事にして、本題の続きに行こう。ナンナよろしく!
「コホン。話しを戻して、フロージェ・カンナバルト様。私達が今から黒の心源を攻略し、モンスターの氾濫を治めて来ます。そうすれば、貴方様は結界の維持から解放されますよね?」
「まあな、俺はその為にここにいる訳だし、モンスターが出なけりゃする事ねぇな」
「戻ってきたら、私達と一緒に来てください。カンナバルトこと、『聖女』クルヌエラが、絶対に貴方を逃さない。逃げたら殺す。首を洗って待っておけ!と言っていますので」
「……おじさん、もうダメかもしれん」
「……♡」
それじゃ、仲間の望みを叶えるついでに、『魔王』とやらを倒しに行こうか!
僕達みんな死にかけたけど、おじさんも駆け付けてくれて無事に『魔王』を倒したよ。モンスターの氾濫もなくなったし、これでおじさんは自由だね。
……完全に人間を辞めたおじさんが、鎧を捨てた
誰か私の代わりにコレ書いて。
私は謎のおじさんについて悩みながら冒険する王道ファンタジーが読みたいんだ!