TS娘が幼馴染と恋愛できるわけないじゃん   作:GNTNTN

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同級生とバイトなんてできるわけないじゃん

 転校初日の放課後はれな子が「服に関しては宿題にさせてください」と深々と頭を下げるという情けなくもあるが宿題にしてでも協力してくれるという形でお開きとなった。

 

「いらっしゃいませー」

 

 本当はすぐに帰りたい凪砂だったが、記憶の無い準備期間中にしっかりアルバイトを決めていたらしく、初日から欠勤するわけにはいかず、妙に可愛らしいフリフリとしたデザインの制服に身を包んでドーナツ屋でのバイトに励んでいた。

 

「休憩の時間ね。バックヤードの説明するから着いてきて」

「はーい」

(き、気まずぅ! なんでよりにもよって同級生居るんだよ!)

 

 なんの偶然か、出勤してみればクラスメイトの琴紗月も同じドーナツ屋でアルバイトだとは思いもしなかった。

 内心穏やかではないが、紗月が居るお陰で気を抜かずに女子高生の皮を被れている。

 

 入れ替りの他のスタッフに簡単な引き継ぎをしてから二人でバックヤードに向かうと紗月からバックヤードでのルールを簡単の説明を受けた。

 

「──土日にお弁当とか持ってくるなら冷蔵庫とかレンジとか使っていいから」

「はい。ありがとうございます」

「じゃあ、こっから一時間休憩ね。で、悪いんだけど、ちょっと聞きたいことがあるから、適当なところに座って」

「え? 何か怒られるようなことしました?」

 

 クラスメイトかつ同じ場所で働く以上交流は深めておきたいとは思っていたが、急に怒られる時の会話の導入に目を丸くする。

 

「そういうのじゃないから、ちょっとした質問するだけ」

「は、はぁ……」

 

 落ち着いていてクール系の美人という印象に引っ張られていて、少し紗月のことが読めないでいる凪砂だが、初日とはいえ付きっきりで面倒を見てくれていたこともあってか嫌いにはなれない。

 

「あなた、お兄さんか弟さん居たりする?」

「いや、居ないですけど……?」

 

 知り合いの誰かに同姓の人間でも居たのだろうか。

 紗月の質問に凪砂が素直に答えると、期待が裏切られたような、探していた何かが見つからなかったような。そんな目をしていた。

 

「そう、なら良いわ」

「えっと……それだけですか?」

「もう一つ聞かせてほしいのだけど」

 

 凪砂はなんでそう聞かれたのかわからず怪訝そうにしやがらも心の中ではあるんかい。とツッコミを入れる。

 少しくらい静かに休ませてほしいのだが、女子高生の皮を剥がせない以上は、肩肘を張り詰めたままの休憩時間は休憩時間であってないようなモノではある。

 

「本島は甘織とはどういう関係なの?」

「幼稚園くらいから小学校卒業までは一緒で、それ以降はゲーム仲間って感じですかね」

「ふーん……小学校卒業まで、ね」

 

 紗月がどうしてこんなことを聞いているかというと、過去に出会ったとある人物について凪砂が知っていそうな気がして、引っ掛かるモノがあるが、この場ではそういうことにしておく。

 

「変なことを聞いてしまったわね。上がったらちょっとだけならドーナツを奢ってあげる」

「良いんですか!? ありがとうございます!」

 

 何だかんだで男はチョロいモノで、初恋の相手でなくとも美少女からドーナツを奢られるだけで喜んでしまうのだった。

 美少女がくれたという付加価値が付いたドーナツのためにその日のアルバイトは頑張ることができた。

 

「つっかれたぁ……!」

 

 アルバイトを終えた凪砂は帰宅早々、通学鞄をソファーに投げ、紗月に奢ってもらったドーナツを冷蔵庫に入れてからカーペットの上で大の字で寝転がった。

 事情を知っているれな子の前ではともかくとして、教室の中はもちろん同じ学校の生徒が見ているかもしれない通学路等の場所では女子高生として振る舞う必要がある。

 

 全くもって理屈はわからないが、男子が女子になってしまったなどと、余程のことでなければ信じてもらえない上に下手を打てばここからの人生が終わりかねない尾びれがつく可能性だってある。

 

(しかし、まぁ……れな子のやつ、大分垢抜けてたな……遥奈ちゃん頑張ったんだなぁ)

 

 今になって落ち着いて成長したれな子の姿を思い返すと、中学時代には顔を会わせておらず、何となく陰キャ方面への進化をしているのだろうと想像していたのだが、それはおしゃれ好きな彼女の妹が頑張ったのだろうという事も察しがついてしまった。

 

(遥奈ちゃんと言えば……あの子にもいずれ事情を説明しなきゃなんだろうけど……憂鬱だ……)

 

 れな子に色々協力してもらうにしても、遥奈にも何も伝えずに。というのは難しいだろう。

 そもそも服選びに遥奈を連れてくる可能性もあり、絶対にそこで一悶着起きる予感がしている。

 

「初日からこんなんでクラスに馴染めるのかな」

 

 れな子とだけ話しているわけにはいかないが、れな子が側にいた方がありがたいため、あの王塚真唯のグループに入れた方が良いのだが、あまりにも目立ち過ぎる上にもう一つ問題があった。

 

「流石にあんな美少女に囲まれてっていうのは嬉しいやら緊張するやら……これも慣れないとな」

 

 別に普通に女子とだって話せるが、女子として話すのとはまたわけが違うのだろう。

 同性の友達になったとしても、男子同士のそれとはまた違ってくる。

 

 急に性別が変わってしまうというのは思っていた以上に人の精神を磨り減らしてしまうものだった。

 

「……気晴らしにゲームでもやるか」

 

 夕飯をどうするかとか、れな子以外にも紗月とはアルバイトのこともあるので上手くやらないといけないとか、そういうことは放り投げてゲームのコントローラーに手を伸ばす。

 

「アレ、なんか変だな」

 

 女になってしまってから握った記憶のないコントローラーが変化していることはなく、変化があるとすれば、それは勿論──

 

「あっ! 手が小さくなってるから!」

 

 凪砂自身の身体の大きさは男の時より小さくなってしまっているせいで、今までは普通に使えていたコントローラーの大きさが相対的に変化してしまった。

 今までは身体の一部の様に手に馴染んでいたはずのコントローラーがそうでなくなってしまったことは由々しき事態である。

 

「い、いや、こっから慣れればいいじゃんか!」

 

 三度の飯も昼寝も娯楽も同等に好み、れな子とボイスチャットで煽り合うことすら楽しんでいるのに、ゲームが下手くそになったとしたら彼女に煽られることは避けられない。

 ゲームを起動して一人用の練習モードを選択することにすら手が小さくなってしまった影響で四苦八苦しながら操作をしていく。

 今まではボタンを押すのに前以上に指を可動させないと届かないため、シンプルに感覚のズレを矯正する瞬間が隙になってしまう。

 

「ま、負けてたまるかよ……!」

 

 ゲーマーとしての魂という名の意地っ張りが発動してしまい、結局その日は紗月からもらったドーナツにすら手を着けずに夜更かしをしてしまい、明日の朝食になった。




12/20は声優さんの方の誕生日でしたね。頭回ってなさ過ぎる状態で書いちゃダメですね。
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