TS娘が幼馴染と恋愛できるわけないじゃん   作:GNTNTN

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同衾なんてできるわけないじゃん

 適当に夕食を済ませた凪砂とれな子は、もう一度ゲームでもと思ったが、寝泊まりに関して問題があることを思い出した。

 

「問題が一つございます。ベッドが一つしかございません」

「じゃあ私はソファーでいいよ」

「流石にそれは……れな子がベッドで寝なよ」

 

 客をソファーで寝かせるのは、色々とどうなのかと。躊躇ってしまうし、しっかり寝れない気がして凪砂の眉が八の字になる。

 

「こんなちんちくりんを悪い環境で寝かせられるわけないでしょ」

「む、じゃあ何さ。俺に女の子を雑に寝かせて自分はぬくぬくベッドで寝ろって? 無理だが?」

 

 半目で溜め息を吐くれな子がベッドを凪砂に譲ろうとしてくる。

 れな子からすれば、よくわからないが凪砂を気に入ってるらしい紗月に『凪砂をベッドではなくソファーで寝かせた』と話が伝わった場合に後が怖かった。

 

「俺はお前をベッドで寝かせたい。お前は俺をベッドで寝かせたい。

 それなら答えは一つっきゃない! これで決めよう!」

 

 どうせ話し合いで決着は付かないのだろう。

 それならばと凪砂はゲームのコントローラーの持ち手の部分を掴み日曜朝のヒーロー番組に出てくる変身アイテムのような持ち方をしてれな子に勝負を挑んできた。

 

「何か今日テンション高いなこいつ……話聞こうか?」

 

 無理矢理テンションを高めて乗り切ろうとしている凪砂に圧されて困惑しつつもコントローラーを手にとって挑戦に応じる。

 先程とはゲームを変えて勝ち負けがハッキリしやすいアクションゲームにしたのだが──。

 

「ほれほれほれ、しばらくやってないとか言って下手っぴの言い訳でもしようって言うんじゃないよね」

(やばい。バレてる!)

「んなわけ……んなわけ……!」

 

 最初は拮抗していたが、徐々に凪砂の操作するキャラが追い詰められていく。

 凪砂も練習は重ねたものの、今の身体に適応しきれていない部分が実力に差を生んでいた。

 

「よし、とりあえず一勝」

「ぐぬぬ……デュースにしない?」

「シンプルに情けない! 一回でも勝ってから言え!」

「負けてるので黙ります……」

 

 二回先取と決めていたのに凪砂は一度負けてしまい、もう後がない。

 どちらがベッドで寝るかということより、純粋に一度でも負けたことが悔しかった。

 

「っっしゃぁおらぁ!」

「まだ一戦あるから! 次は勝つ……! 私の人権のためにも!」

「ソファーで寝ようとしてるのに?」

「こっちにはこっちの事情があんの!」

 

 ソファーで寝ることはもちろん嫌だが、それ以上に紗月の方が怖い。

 ただその一心でれな子は次のゲームに挑む。

 

「ぐ、ぎ、ぎ……!」

「こすい! というか、戦法が塩!」

 

 れな子がデュースを飲まなかったせいで、お互いにもう後がない。

 勝つプレイングというより、負けないプレイングにシフトしてしまい、制限時間まで残り僅かになってしまう。

 二人とも現役女子高生がしてはいけない顔にりながら限界の戦いを繰り広げている。

 

「引き分け!? もう一戦やって決めるよ!」

 

 流石に半端な決着では納得がいかない。

 れな子はすぐさま再戦を選ぼうとするが、彼女の肩に人の重さというには軽すぎる体重が掛かる。

 まさかと思い、れな子が隣に目を向けると

 

「ちょっと、こんなタイミングで寝ないでよ……」

「……ぅん」

「全くもう」

 

 呆れたれな子はコントローラーをテーブルの上に置いて、肩を揺すっても全く起きる気配のない凪砂をベッドの上に寝かせるために持ち上げる。

 

「軽っ! 内臓とか骨とかホントにあんの!?」

 

 本人が数値として体重を口にしていたとはいえ、あまりの軽さにれな子は叫んでしまう。

 それほどに凪砂の体重は軽い。体育の授業でペアストレッチをした紗月が心配するのも当然である。

 

「お風呂どうすんの?」

「……んー」

「着替えくらいしなってば! 唯一着れる制服がシワになっちゃうでしょうが!」

 

 さっきまでの負けず嫌いはどこへやら。それほどまでに眠たいらしい。

 全力で揺らすと、流石に効いたのか凪砂は寝惚け眼のまま着替えを取りに棚の前まで行き、そのまま制服を脱ぎ始めた。

 

「あっ、ちょっ! まだ私が居るってのに!」

「……こんな身体見ても面白くない」

 

 自分が女の身体を見ることには抵抗がある癖に、自分の身体を見られることは構わないらしい。

 れな子は両手で顔を覆うが、見てはいけないとわかっていても指の隙間からチラチラと覗いてしまう。

 

「うおっ……」

 

 途中うっかり凪砂のあるかどうかで言えばないのだが、無いというにはある山が見えたれな子は声を漏らしてしまう。

 

「れな子も着替えるなら着てないジャージとかシャツあるからそれ着て……俺はもう無理寝るおやすみ」

「お、おやすみ」

 

 言うだけ言ってれな子に未開封のジャージとワイシャツを渡してきた凪砂はベッドの上に倒れてすぐに寝入ってしまった。

 流石にれな子ですら男の時の凪砂の服はオーバーサイズになってしまうのだが、そこは仕方がない。

 

「……しっかしまぁ……私が男なら──」

 

 眠っている凪砂の姿は彫刻のように脆そうで端正で作り物みたいに寝顔だった。

 真唯程ではないとはいえ、顔の良い女がブカブカになっているワイシャツ一枚に身を包んで寝ている。

 

 これは、良くない。

 

「──って! 本当に良くない! お風呂借りよう……」

 

 悶々としながらも風呂に入ってから着替えたれな子は身を清めた筈なのに悶々としたまま、渡された服に着替えてから凪砂の様子を見にベッドまで戻ってきてしまった。

 

(私に打ち明けてくれたり、こんな無防備に寝てるって考えると相当信頼を寄せられてるのはわかるんだけど、どうにかしてあげたい気持ちとどうにもできない現実っていうのはあるもんなんだなぁ)

 

 れな子は観察しつつも寝相のせいか崩れた凪砂の前髪を手で払って整える。

 誰でもない自分を頼ってくれると約束してくれたことは嬉しいが、反面その約束を重たく感じてしまうこともある。

 

(……折衷案、折衷案だから! そういうやましい? アレはないんだからね!)

 

 誰に対しての言い訳かれな子にもわからない言い訳をしながら、凪砂が小柄すぎるせいでかなりスペースの空いているベッドで横になる。

 中断となってしまったが、賭けの対象になっていたベッドで寝る権利が起きたら勝手に決められていたとなれば、凪砂も良い顔はしない。

 そういうことにした。

 

(って、寝れるかぁぁぁ!!!)

 

 電気も消して十分ほど目を閉じたが至近距離で、寝相でもぞもぞと動く音や寝息と言った凪砂が存在する証がれな子の心を乱して睡眠を妨害してくる。

 布団を並べて寝たりするくらいはもう慣れきってしまっているれな子だが、これはまた話が違う。

 

 その日、心臓がバクバクと響いてロクに眠れなかったと後にれな子は懺悔することになるのはまた別の話。




次回も多分れな子のターンになる気がするので、次元の超越を0コストで使用してる可能性があります。
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