カエンジシみたいな父を探しております。ついでにミアレも救います。 作:幽
グリ戦辺り。
感想、評価ありがとうございます。またいただけましたら嬉しいです。
バトル描写ありますが、拙いので、ご容赦を
「・・・・俺たちは、君達と戦うよ。」
「何でだよ!」
ヌーヴォカフェを訪れた二人が答えを示すと、グリーズが吐き捨てる。
「お前達に、グリと戦う理由なんてあるのか!?」
彼女はぐっと拳を握りしめた。
「・・・・少なくとも、セイカ達と、私たちは、同じだろ?同じはずなら、なんで。そんなに、AZのことが好きかよ!?」
自分たちのことではなく、AZたちのことを、MZ団のことを選んだことが腹立たしくて仕方が無い。
夜も更けて、客もいない、静まりかえったそこにグリーズの悲痛な声が響く。
「・・・・グリーズ、いい加減にしなさい。」
グリの言葉に、グリーズは悔しそうに顔を歪める。
「・・・・そこまでいうのなら、戦いましょう。二人で、共に。ですが、勝ちたいという気持ちが強いのは、俺たちの方です。」
静かに告げた彼は、その、燃えるような瞳で二人を睨んだ。
ヌーヴォカフェの近くで、人気の無い真夜中に、グリーズと、グリは。
その、美しい生き物と向かい合う。
ああ、夜の中で、暗闇の中で、それでも、蒼炎と、アイリスの瞳は陰ることも、くすむことも、濁ることも、汚れることも無く、自分たちを見つめている。
かーんと、それぞれのロトムが打ち合う音と共に、ランクアップ戦の開始が承認された。
互いが無言だった。
グリも、グリーズも、何も言いたくなかった。何も聞きたくなかった。
何を言われるのか、怖かったのだ。
グリがゴロンダを出すと同時に、キョウヤはエルレイドを繰り出した。
(タイプ相性、削りきれるか!?)
「かみくだく!」
「インファイト!」
キョウヤのそれにエルレイドはための動作に入る。それとすれ違うように、ゴロンダの技がエルレイドの肩に突き刺さる。
(タイプ一致!削りきれないが!)
苦痛に歪んだ顔をしたエルレイドはそのまま至近距離でのインファイトをゴロンダに打ち込んだ。
それに、ゴロンダは苦痛の声を上げて倒れる。
一体倒れされた、けれど、確実なダメージは与えられた。
(そうして、インファイトを撃った後!)
「カラマネロ!」
「エルレイド、ドレインキッス!」
体力的に削られたエルレイドは疲労のせいか、動きが鈍い。
「つじぎり!」
防御が下がっていたためか、エルレイドはそのまま崩れ落ちる。キョウヤはエルレイドをボールに戻し、アブソルを繰り出した。
「カラマネロ、さいみんじゅつ!」
「アブソル、シザークロス!」
アブソルが素早く、攻撃を繰り出した。
(くそ、広範囲に技を!)
冷静に、強く、彼はどんな場面でも正しく判断を下す。それは才能か、それとも、彼の母の教育か、わからない。
ただ、びりびりとした飢えのような何かが、今、満たされ、それと同時に燃え上がる。
「カエンジシ、ハイパーボイス!」
「アブソル!インファイト!」
指示を出すが、アブソルよりも早くカエンジシの声がアブソルに当たる。それにダメージだけではなく、聴覚もやられたのか、アブソルは頭を軽く振った。
その隙を、グリは見逃さなかった。
「オーバーヒート!」
至近距離で技を食らったアブソルはそのまま倒れ伏した。
キョウヤが次に出したのは、オヤブン個体のガブリアスだった。
ここからだ、とグリは思う。
ヌーヴォカフェで時折見かけたガブリアスは、それこそ気性が荒く、傲慢でふてぶてしい。遠目にバトルを見た時があるが、強いと素直に認められた。
けれど、キョウヤはあっさりとそんなガブリアスを制御していた。
「・・・・付き合い方だね。彼は強くなりたくて、俺は、彼を強くできる。」
相互扶助、かな?
などと冗談交じりに言っていたことを覚えている。
(先手必勝!)
「ハイパーボイス!」
「じしん!」
広範囲で当たるじしんに、カエンジシはそのまま倒れていく。
(強い!)
だが、彼にも勝てる存在がいる。
「ボーマンダ!」
「ドラゴンダイブ!」
「ボーマンダ、よけろ!」
距離が遠く、ドラゴンダイブ自体は避けられた。
(わざわざ来てくれた!)
「つばめがえし!」
ガブリアスの顎に技は命中するが、圧倒的に硬く、ダメージはそこまで期待できない。
ああ、強い!
肩に何かが当たる。ああ、髪紐が切れたのか。
でも、どうでもいい。楽しい!
キョウヤ、きみとの戦いは、とても楽しいんだ!
なら、セイカとバトルするのだって、きっと楽しいはずだ!
熱の中で、ぐるぐると回る思考が、蕩けて、混ざる。
それでも、いつかに、叩き込まれた戦い方が彼のことを突き動かす。
戦局、流れ、攻めるか、守るか、隙を突け!
一瞬の判断で、全てが決まる。
そうだ、あの人の、願う未来のために!
(あの、蒼炎の瞳が、見たいと願った、全ての、ために・・・)
「ガブリアス!」
声が、響く。
「ドラゴンダイブ!」
あおい、ひとみが、おのれのことを、つらぬいて。
「りゅうせいぐん!」
咄嗟にはじき出した答えは、正解だった。
ボーマンダの体に叩き込まれたドラゴンダイブで弾き飛ばされながら、それでも放った流星群はにより、ガブリアスが陥落した。
互いにポケモンを戻し、そうして、グリはバンギラスを繰り出し、キョウヤはフシギバナを繰り出した。
(互いに、重量系!)
だが、勝機はある!
「バンギラス、れいとうパンチ!」
「フシギバナ、ねむりごな!」
己に襲いかかるバンギラスにねむりごながそのまま降り注ぐ、ねむけのせいでふらついたバンギラスだがそのまま振りかぶったこぶしはそのままフシギバナに当たる。
(削りきれない!)
それでも!
「れいとうパンチ!」
「エナジーボール!」
眠気にふらつくバンギラスはそのままフシギバナに拳を叩きつける。それを防ぐようにフシギバナはエナジーボールを放つが、それを抜き去り、フシギバナを倒れた。
彼は息をつき、そうして、ボールを投げた。
「カエンジシ・・・」
無意識のうちに呟いた。ああ、カエンジシ越しに、グリは彼を見る。その、蒼炎を、ただ、見て。
ぐっと歯を食いしばる。
憧憬が、グリを焼く。憧れと、恋しさと、そうして、目の前のそれへの奇妙な渇望。
全てが、グリの愛したもので構成されているような奇妙な感覚。
「じしん!」
「だいちのちから!」
元々ダメージを負っていたバンギラスはそのまま陥落し、そうして、カエンジシもまた相打ちで終わる。
ああ、楽しい!
追い詰められて、ギリギリで、なのに、自分の目的が遠ざかるかも知れないのに。
楽しいと思ってしまう。
(キョウヤ!)
セイカ、君達とのバトルは、楽しい!何もかも忘れて、このままずっと、遊んでいられたらいいのに。
全力のあなたを見る。自分の全てをさらけ出し、それを受入れられている感覚に陥る。
あなたの表情、視線、動作、全てを見て。
(きみたちもまた、おれたちだけを見ている。)
ずっと、誰かのものでしかない君達が、今だけは、今、だけは。
グリたちだけのもので。
そう、なれたのかもしれない。
自分と、彼らなら、もしかしたら。もっと、幼い頃から、こんな風に。
あの日、自分たちを置いていった残光が、この身を焼いている。
泣きたい、苦しい、愛して、愛させて、憎らしい、今更、でも、それでも。
考えたくない、このまま、ずっと戦っていたい!
けれど、もうすぐ、その時間が終わるのだ。
グリは見る、彼を、そうして、隣で戦うグリーズとセイカもまた最後の一匹だと分かる。
互いに出したのは、グリはリザードンであり、そうして、キョウヤは彼がこの街に来て最初に出会った、ワニノコ、いや、オーダイル。
それに憎らしさが増した。
あの少女に出会わなければ、自分たちに早く会っていれば、彼が出すのはそのポケモンでは無かったはずなのに。
互いに、キーストーンに手をかける。
そうして、互いのポケモンがメガシンカをした。
それが、合図だ。
「なんだよ!」
隣で戦っているグリーズの声がした。
「全部今更だろ!今更!セイカ達にこの街を守る理由なんてないだろう!?後から来たくせに!私たちのことも、フラダリ様のことも、何にも知らないくせに!だったら、私たちに勝たせてくれよ!そうしたら、お前達のことだって、私たちが守ってやれる!」
声が、遠くで、聞こえてくる。
「うん、そう思ってた!そうなのかもしれないって!だけど!」
「本当に、それでいいのか!?」
キョウヤの声が繋ぐように聞こえてくる。
「俺たちに譲られた席で、グリはそれに納得できる!?」
それに図星を突かれたような気分で、だからこそ、と吐き捨てた。
「ええ、だから勝ちますよ!でも、一つ聞きたい!」
グリは叫んだ。
「尻拭いなんてする必要があるのですか!?実の子どもだからと言って!きみたちに、その罪を背負うことなんてあるはずがない!」
だから、ああ、守らせて!
憎くて、焦がれて、愛しくて、腹立たしい、これ以上無いほど美しい生きものたちへ。
吐き捨てるように、叫ぶように、愛を請うように、グリは叫ぶ。
ああ、ずっと、もしもを考えてしまう。
もしも、フレア団があんなことにならなければ、もっと違う出会いが。君達と、フラダリ様の側で、世界が美しくなるために生きていけただろうか?
世間の冷たさから、堂々と、君達を守れない程度の自分がグリは嫌いで。
くそったれの、灰色の青春!!全部、燃やそう!リザードン!
それに、彼らは笑う。
メガシンカした、オーダイル越しに、そうして、ギャラドス越しに。
彼らはああ、美しい生き物が、無垢に、無邪気に、楽しそうに笑う。
ねえ、遊ぼうよ!
そう、笑いかけてくれるような気がして。
「ドラゴンダイブ!」
放った言葉と共に、リザードンがオーダイルに突っ込んでいく。
「嫌だね!」
キョウヤの、楽しそうな声が聞こえる。
「グリ達がそう思ってくれてるみたいに、私たちも、あなたたちのことを守りたい!向き合いたいの!」
セイカの、声がする。
リザードンのドラゴンダイブは見事にオーダイルに当たる。それと同時に、キョウヤと、そうして、セイカの背中越しに、太陽が昇る。
(あ・・・・・)
夜が明けた。
隣で、グリーズのメガカエンジシが、メガギャラドスにかえんほうしゃを浴びせている。
火の粉が舞う、光が、辺りに散らばって。
吹いた突風が、彼らの帽子を、高く、空に飛ばした。
それと同時に、彼らの髪が風に触れる、太陽と、火の粉に照らされて。
夜のような、黒の中に、まるで、灯火のように赤い髪が混じっていて。
蒼い炎と、アイリスの瞳が、光の中で自分たちを見つめている。
ああ、どうか、そのまま。
その、蒼い炎よ、燃え尽きないで。ずっとおれを照らしていて。
その、アイリスよ、どうか枯れないで。ずっと、おれに微笑みかけて。
「
セイカと、キョウヤは、笑う。
あの、軽やかで、朗らかで、見るもの全てがそれを愛したくなるような、そんな笑みで自分たちを見つめる。
グリとグリーズが、大好きだから!
「二人を、過去から、解き放つ!」
高らかな声がする。
己達だけの愛をグリとグリーズは受け取る。
「げきりん!」
キョウヤの指示にオーダイルがリザードンに技を打ち込む。
隣で、グリーズのメガカエンジシも倒れた。太陽の中、あの人みたいな赤い髪が風に揺れている。
憎らしい、妬ましい、腹立たしい、なのに、それなのに、愛おしい。
「・・・きれいだなあ。」
美しい生き物たちは、やっぱり、どこまでも、美しいまま、穢れずにそこにいて。
バトルが終わった後、ふらふらとグリとグリーズは歩み寄り、互いを見た。
負けたと、そう思って。
なのに、奇妙に、清々しくて。
向かい側に立っていたセイカとキョウヤが近づいてくる。そうして、セイカは一足先に二人に近づくと、強く抱きしめてくる。
それを、振り払おうとは思わなかった。
暖かい体だった。
「・・・・ありがとう。」
何の礼を言うんだろうか?ぼんやりと、グリは、先ほど見た、蒼と、アイリスの瞳が脳髄で瞬いていて。
「・・・・お父さんのことを、優しい人だと言ってくれて。」
礼を言われることじゃないだろう。自分たちは、ただ、あの日々が全て否定されて欲しくなかっただけで。
自分たちを見上げるセイカの目には涙が溜まっていた。
「この街に来てから、お父さんのことを、ひどく言う人もいて。でも、お母さんは、優しい人だって、そう言って。」
だから、嬉しかったの。
セイカの声がする。泣いている、憎らしく、妬ましく、腹立たしい、されど、どうしようもなく、愛しい、美しい生き物の片割れが。
泣いている。
「なか、ないでください・・・・」
「そうだよ、泣くなよ!」
グリーズがハンカチで涙を拭っている中、キョウヤが拾ってきたらしい帽子をセイカに被せる。
「・・・・俺たちは、よそ者で、それでも、当事者で。でも、ここに来てから、この街が好きになった。君達のことも、君達の入れるコーヒーも、好きになった。だから、全力で向き合いたかったんだ。」
MZ団に出した答え。
彼らに何と言われようと、出来ることがあるのなら、自分たちは出来るだけのことをしたいのだ。
結局、与えるとはそういう話で。
向き合うと決めたとき、出来るのは戦うことだけだったから。
「ねえ、グリ。」
「なんですか?」
「楽しかった?」
俺とセイカは、楽しかったよ!
笑う、笑う、美しい生き物が、自分にそう言って笑いかける。
「・・・・君は、ミアレが好きですか?」
「うん、ポケモンと、人が愉快に暮してる。」
「・・・・お父さんと、お母さんが、いて。それで。」
グリ達がいる街が、私たちは好き!
泣いた後の、涙の残る目で、セイカが笑う。それに、グリは、ぐっと、拳を握る。
「・・・・フラダリ様は、美しい世界を実現しようとして、そうして、おれたちは、それを振り払えない。どうしようもなく、それに執着しているのも事実です。」
信じたいと、フラダリの犯した愚行にも、正義があり、そうして、その優しさを大切にしたい。
それは、愚かだろう。でも、それでも。
グリは、目の前のそれらを見る。
「・・・・それを、大事にしていてよかったと、今、思えています。」
だって、ああ、ほら、彼の残した存在は、こんなにも美しい生き物だったのだから。
こんな生き物が、笑っていられるのなら、生きていられるのなら。
彼らに今、向き合えたこと、そうして、改めて思う。
「おれの入れるコーヒーはおいしかったですか?」
その言葉に、セイカはぱあああと目を輝かせた。
「うん、とっても!」
「俺はクロワッサン気に入ってるなあ。」
「だよね、似た感じにしたいんだけど上手く行かないんだよ!」
「セイカまだ、クロワッサンチャレンジしてるのか?」
「してるよ、それは!」
「そんな簡単にまねできると思わないで欲しいですね。」
笑い声がする。
ああ、幸せだ。ああ、どうしようもなく、その美しい生き物たちが、愛おしい。
(ああ。そうか、間違っていなかった。でも、どうしようもないことあって。)
けれど、ヌーヴォカフェを立ち上げたことは、きっと、間違っていなかった。
(・・・嬉しい。)
「プリズムタワーのこと、ミアレを頼みますよ。」
「できなかったら承知しないからな!」
二人の拳が向けられて、それに、セイカとキョウヤが似たように拳を差し出した。
とんと、軽い音を立てて、ぶつかり合った。
ジガルデが己の前に立つと同時に、それが、グリの、彼の担い手としての資格を失ったのだろうとキョウヤは理解する。
こつりと足音がして、そちらの方を見ると、そこにはフラダリが立っていた。
フラダリは淡々と、グリの願いは我欲に満ちていると告げた。
「・・・・ジガルデの救済を、フレア団の名誉の回復に使おうとしたから?」
「・・・・そうとも言えます。」
「・・・・グリさんたちは、あなたのことを愛しているから。だから、あそこまでしたんですよ。」
咎めるようなセイカの言葉に、フラダリは黙り込む。覚えていないが故に、なにも言えないのだろう。
フラダリが気を取り直して、プリズムタワーのことを告げようとしたとき、セイカが、彼に話しかける。
「あの!」
「はい?」
「ガレット、食べましたか?」
「あ、ああ、ガレットですか、その・・・・」
フラダリは気まずそうにジガルデを見た。
「貰った分はジガルデが食べてしまって・・・・」
その言葉にセイカとキョウヤはジガルデを見た。ジガルデはやべ、というような顔で、後ろに下がる。
「ジガルデ!!」
セイカの怒りに満ちた声に、それはすたこらさっさと逃げ出した。
「待て!あれは、貴方の分じゃ無い!!全部食べちゃうなんて!どれだけ食いしん坊なの!?」
セイカがジガルデの逃げた方向に走っていくのを見て、キョウヤはあーあと息をつく。
「・・・・・さて、それでは。」
「あれ、スルーするんですか?」
「まあ、どうしようもないので。ジガルデの力を発揮するためのセルはもう少し必要です。」
ミアレのことを頼みましたよ。
フラダリのそれに、キョウヤは少しだけ苦笑して、ぐっと帽子を深く被り直した。フラダリから表情は見えなかった。
「・・・・ずっと、そのつもりですよ。俺たちが出来ることなら、出来るだけのことをします。それが、相互扶助って、社会の当たり前なので。」
ニヒルに歪んだ口元が、なにか、とてももの悲しかった。
「・・・・・おい、これはどーいうことや?」
時間は夜。今日も今日とて、MZ団での祝勝会だと部屋に集まっていたのだが。
「それはこっちの台詞!なんでカラスバさんがいるんですか?」
「セイカとキョウヤがAランクにあがったんや!祝いするが俺の役割やからな!」
「いるのがおかしいんですよ!」
「というか、俺がそういうんなら、なんでヌーヴォカフェの奴らがおるんや!?」
そう言って、急遽椅子を増やしたダイニングテーブルで、隣に座らされたグリーズをカラスバが睨んだ。
「私らもお祝いだ。二人とも、うちのコーヒーと、クロワッサンが気に入ってるから届けに来たんだよ!」
「だから、なんでや!」
「二人とも、ゆくゆくはうちのカフェに来るから。」
「は!?それなら、坊ちゃんも、お嬢も、うちに入れるわ!」
「は!?二人とも、MZ団を辞めるわけ無いでしょ!?」
三つ巴の言い合いに、キョウヤが苦笑交じりに遠目に見ている。それに、ピュールが、そっと彼に近づいた。
「・・・あれ。放っておくんですか?」
「俺が入っていったら、どうするかって詰められるし。」
「はあ、セイカとグリさんは、増えた人間の分、何か作るってキッチンに行かれましたし。」
「今のところ、可愛い姉さんと二人っきりで料理してるグリが一人勝ちだねえ。」
「何作るんでしょうか?」
「キッシュとか?」
セイカの料理が気に入っているピュールはそれに素直に微笑んだ。なんだかんだ、毎日MZ団のために昼食を用意しているセイカの料理は気に入っているらしい。
(・・・姉さんとグリ、早く帰ってきてくれないかなあ?)
「「「キョウヤ!!!」」」
「ノーコメで!」
「・・・・賑やかだね、フラエッテ。」
そんな喧噪を遠くで聞いているAZはフラエッテに微笑んだ。
がさりと、Fは懐からとあるものを取り出した。
それは、一つのガレットだ。
セイカには、ジガルデに食べられたと言ったが、そのポケモンは渋々ではあるが、一つだけ、Fに残していたのだ。
カヌス。
その名前を聞いてからずっと、まるで、子守歌のように、誰かの笑い声がする。
軽やかで、愛らしい、たまらなく、ずっと聞いていたい、そんな声。
それと同時に、恐ろしかった。
その声に浸食されるような、何か、知らないものに踏み入れる恐怖。
だから、Fは今までセイカとキョウヤは避け続けた。
遠目に、ミアレを駆け回る、ポケモンのような彼らを遠目に眺めるだけにした。
思い出すのは、路地裏を歩いているとき、聞こえてくる笑い声。
「待ってよ、姉さん!」
「お兄ちゃん、早く!」
丁度、路地裏を歩いていたFに気づかず、彼らは青空の中、日の光の中を、ビルとの間など気にもとめずに、跳び越え駆けていくのを暗がりの中で見た。
いつかに、何かが重なる。
カヌス、待ってよ!
なんだよ、フラダリ、早く来いよ!
日の光の中で、誰か、笑っていて。
ああ、それは、なんて。
くんと香る、バターの匂い、焼き上がった、香ばしい、甘い匂い。
Fは恐る恐る、その菓子を口にした。
ざくりとした噛み応え、けれど、それと同時に、ほろほろと崩れて、甘く、香ばしい。
ああ、なんて。
Fは路地裏で、膝を抱えて、蹲り、啜り泣く。
泣きたくなるほど、懐かしい。
キョウヤ
なんかヌーヴォカフェにうちに来るよなと圧をかけられる。飯を食って二人は帰った。
できることを、できるだけすると決めている。
セイカ
グリと料理できて嬉しい。彼女は、いつまでも、自分を愛してくれる人たちを愛している。
呪われた子どもたち
愛していると飲み込めればそれで納得できた。太陽の中でそれでも己だけ貫いた瞳を永遠に覚えている。
好きな人とご飯を作って話が出来て嬉しい。
カラスバ
双子のランクが上がってうきうきでケーキを買って祝いに行ったらヌーヴォカフェの面子がいて、自分のとこに来させると聞いてバチ切れ
MZ団
うちの子です!!
父
いつかに、同じものを食べた気がする。
犬
食べる気なかったのに、匂いに釣られた。理性でなんとか一個残した。