カエンジシみたいな父を探しております。ついでにミアレも救います。 作:幽
考えられる限り、一番後味の悪いルート、ポケスペ時空、番外編
短い分、投稿し損なっておりました。
グロい部分が、あるのかな?
ストック分はこれで終わりですので、投稿自体はだいぶゆっくり進行になります。
感想、評価、ありがとうございます。また、いただけましたら嬉しいです。
ジガルデを無理矢理に従えていたフラダリが、少年少女の抗戦により崩れ去る。
ジガルデに対抗していたゼルネアスとイベルタルが繭の形に戻ると同時に、散々に力を消耗したジガルデは形を保てず、セルがばらばらと散っていく。
フラダリが、瓦礫の山に落ちていくのが見えた。それに、今までカルネと戦っていたパキラが彼を助けるためにファイヤローで駆けつけようとする。けれど、それをカルネの、サーナイトが阻んだ。
ファイヤローが攻撃に追撃され、パキラも瓦礫の山に落ちていった。
その時だ。
フラダリの懐で、モンスターボールが開いた。そうして、そこから、普通の固体よりも少しだけ大きなアブソルが飛び出てくる。それは、フラダリと落ちていくはずだったパキラをカルネの方向に突き飛ばした。
「な、アブソル!貴様!」
パキラをカルネが受け止めると同時に、何か、柔らかいものが固いものに叩きつけられるような音がした。
「・・・・アブ、ソル?」
フラダリが、己を見下ろすアブソルを見つめる。
血だまりの中で横たわるフラダリとじっとアブソルが見つめる。
少年は、エックスはその様に茫然としている。近くにいた少年と同じ選ばれた少女であるワイもまた駆け寄ってくる。そうして、今までフラダリの手持ちと戦っていた、その場にいたグリーンやカツラも歩み寄ってくる。
「貴様あ!!」
激高したパキラがカルネの手を振り払い、アブソルに近づこうとする。けれど、アブソルは女に向けて、ためらいもなく、おそらくかえんほうしゃを向ける。
牽制されるように、炎が地面に燃え移り、パキラは立ち止まる。炎で出来た囲いの真ん中でアブソルは静かにフラダリを見下ろした。
「あの、アブソルって・・・」
エックスは何故、フラダリが先ほどの戦いでそのアブソルを出さなかったのか疑問に思う。
「貴様!何故、邪魔をした!?いいや、そうか!また、あの女か!また、あの女のせいで!!」
「あの女?」
カルネがパキラに反応すれば、彼女は激高したように叫んだ。
「ああ、そうだろう!知らないだろうな!そうだ、誰も知らない!私でさえも、フラダリ様が話してくださらなければ・・・・」
四天王達も集まってくる中、皆が、血だまりの中に横たわるフラダリを守る形になっているアブソルを困惑して見つめる。
アブソルはそれを気にした風も無く、フラダリの懐を探る。そうすると、ホロキャスターが転がり出てくる。
それをアブソルがいじくると、映像が飛び出てくる。
『フラダリ!』
それは、男のことを呼ぶ声にしては、あまりにも、朗らかで、そうして、幼くて、楽しげで。
「・・・カヌス?」
フラダリの、掠れた声が辺りに響く。茫然と空を見上げる男は、何故か、迷子のように拙い。
ホロで排出された映像は一人の女の姿を現していた。
長い髪を頭の高い位置で結び、ゆるりと、カエンジシのようなつり目を甘く下げている。
見目だけではない、なんとなく、ハツラツとした、そういった生きるもの特有の美しさを感じる女だった。
『フラダリ、また仕事だろ?途中経過を報告してくれって言ったくせに。一応、留守電残しておくからな?にしても、ホロ?の試作品なんて変わらず太っ腹だな。壊しても文句言わないでくれよ?』
女は、朗々と。きっと、言葉の通り、それは女が残したメッセージなのだろう。
『お前、また根詰めてるんだろ?今日のことも、護衛みたいな形だって気にしてたし。昔からずっと色々してくれてるんだ。この程度、恩返しみたいなものだろ?』
「・・・いや、君には、いつも、君だけは、ずっと、私に、何かをしてくれようと。」
『帰ったら、何か作るな。何がいい?なんでも言ってくれ。』
「・・・君が、作るのなら、なんだって。なんだって、いい。」
『って、フラダリのことだからなんだっていいって言うんだろうな。そうだ、映画でも見るか?いや、今度はちゃんと見るからさ!」
「違う、どうだって。ただ、共にあれば、それで。」
それはなんて、耳をふさぎたくなるようなやりとりだろう。
もう、記録で、何を言っても交わらないやりとりだと分かるのに。フラダリは必死に言葉を紡いで女に思いを届けようとする。その必死さに分かってしまうのだ。
どうして、そんなに、必死に語りかけるのか。
そうして、女はホロに対して目線を合わせたのだろう。しっかりとこちらを向いてにかりと。
それは少しの粗野さと、それと同時に純粋さを感じるような無邪気な笑みで。そのくせ目を細める様は妙に色香の香るようなもので。
わかる、わかる、わかる。
その女は、フラダリのことがとても大事で、フラダリのことを気遣っていて。
どうしようもなく、フラダリという男が好きなのだと。
『帰ったらバトルしような!この頃疲れてたから。少しぐらい遊んだって怒られないよ。なんだって、遊ぼうな?』
フラダリはホロと会話するように言葉を重ねていく。それはとても、胸をかきむしりたくなるほどに、痛々しい。
ぶつりと、ホロが途切れた。
「・・・・うん、遊ぼう。カヌス、一緒に、ずっと、遊ぼう。」
だから、ねえ、カヌス、どこ?
幼い、子どもの、柔らかい、甘ったれな、それ。
アブソルはその声に、微笑んでいた。
何故微笑むのか、エックスには分からない。ただ、その、顔。
流れるような、白い毛並みから垣間見える、その横顔はぞっとするほど美しい笑みだった。まるで、慈悲深い聖女のような、優しく、柔らかで。まるで、己の子どもを見つめる母のような、そんな生々しい人間のような笑みで。
アブソルはそっとフラダリに顔を寄せる。それに、エックスは何か危険信号のようにばちりと衝撃が走る。
「止めろ!!」
叫ぶ声がこだまする。けれど、間に会わない。
アブソルは、フラダリの首に顔を寄せ、戸惑いなく喉笛を噛みちぎった。
噴水のように血が辺りに散らばる。びちゃびちゃと嫌な音を立てて、血がまき散らされる。
「いやああああああああああああああああ!!!」
誰の声だろうか?
パキラだろうか?カルネ?それとも、ワイ?
皆だった気がする、それとも、まったく違う誰かの声だったようにも感じる。
けれど、そんなことを気にもとめずに、エックスは激高するように叫んだ。
「どうして!?」
それにアブソルが、ようやく、人間達の、そうして、それに付き従うポケモン達に顔を向ける。
それは、ある意味で、ひどく美しい生き物に見えた。
人に似た顔立ちは血と肉片で赤く染まり、純白の毛並みを汚している。相当大事にされていたのか、日の光に照らされて白い毛がキラキラと輝いていた。
それは、微笑んでいた。
淡く、優しく、静かに、ただ、微笑んで。
それが、泣きたくなるほど、優しい笑みだから。
そこで今まで戦っていたミュウツーがその場に降り立つ。それと同時にその場にいたものの脳に声が響く。
どうして?そんなこともわからないのか?
「てれ、ぱしー?」
「・・・・ミュウツーがアブソルの思念を伝えているんだ。」
お前達には関係ないだろう。
「関係!?こんなことをして!?目的が果たせないからって殺す必要があるのか!?」
ポケモンが人を殺す。その衝撃的な場面に叫び声のように問いかける。
それにアブソルは今までの穏やかな笑みなど忘れ去ったかのように獣のごとく歯をむき出しにして笑う。
なぜだ!?これは生きれば続けるだろう!永遠と!ただ、美しい世界のために!滅ぼすために生きるだろう!
「それでも!死ぬ必要があったのか!」
当たり前だ!それこそが、フラダリの生きる希望だった!!だが、お前達はそれを否定したのだろう!この子が生きるものを選別したように!貴様らも生きるべきものを選んだ!
アブソルのうなり声に混ざって、叩きつけるような、憎悪の念がその場にいたものたちに伝わる。頭痛のような痛みさえ感じる念だった。
誰がこの子の生きる希望をくじいたのだ!?
「それは、オレたちが・・・」
この子にはそうするしか生きていけなかったのに!?
「でも、それでも、止めなくちゃいけなかった!!」
正しいことをしていると、間違っていると、そう思ったからしてきたことなのに。その、アブソルの憎悪を叩きつけられ怯んでしまう。
そんな、刺すような、感情。
その返答にアブソルは満足したかのように淡く笑い、そうして、刺すような感情を引いていく。
ぴちゃんと、アブソルの顔から赤い雫が垂れていた。
そうだ、それで正しい。そうしなければ、幾億もの命が死んでいた。貴様達は正しいのだ。だが、正しさで人は救えない。故に、この子の幕引きはこれでいい。
また、穏やかで優しいものに変わった念にエックスが叫んだ。
「正しくないなら、どうして止めなかった!自分のトレーナーを!どうして!」
なら、どうして貴様らは私の娘を返してくれなかった!?
ばしりと、また頭痛がするような憎悪の念が叩き込まれる。
「む、すめ?」
そうだ!私が娘のように育てた、可愛いカヌス!いじらしい、愚かな、愛らしい、カヌスを!フラダリの、私の可愛い息子の、愛しい女!それに、お前達は何をした!?
獣の悲痛なうなり声が響く、それと同時に、叩きつけられる憎悪と、胸をかきむしりたくなる悲しみ。
いつの間にか、皆の目から涙がこぼれ落ちる。
恵まれぬものたちへの支援だとフラダリに物資の護衛を頼まれた可愛い娘は、トラックごと谷の奥底に落ちたのだ!それも、フラダリに横恋慕した愚か者と、そうして物資目当てのこそ泥達のせいで!!
叫ぶ声がぐわんと響く。
何も出来なかった!壊れたモンスターボールの中で、私は、私は!死にゆくあの子に、何も出来なかった!あの子は、ずっと、私と、手持ちと、そうしてフラダリのことを呼び続けて!そうして死んだのだ!
ぼたぼたと、涙が零れる。テレパシーによって伝聞された声が、生々しいまでに苦しい声を混ぜて付き付ける。
返してくれ!そうだというのなら!返してくれれば、何もかも赦せた!何もしなかった!何も憎まず!世界は美しいままだったのだ!
エックスは思わず足を一歩、後方に引いた。
アブソルはたたみかけるように叫んだ。
返してくれ!この子と、私の愛しい娘を!フラダリと、カヌスの、愛しい子どもたちを!
返してくれ!!
叫ぶ声に、その念をきいた人間は、フラダリの狂った理由の根源を理解する。
茫然とした人間達の様子に、アブソルは飽き飽きしたようにもの悲しい笑みを浮かべた。
この子は、壊れたよ。だから、私も、全部壊れていいと思った。
そうして、その次に、しんと、静まりかえった念が頭に響く。
壊れて、憎んで、ただ、美しい世界を求めた。そこでなら、カヌスは、私の可愛い娘は、産まれてくるはずだった子どもたちは生きていけたかもしれないと。その夢だけをよすがに。だが、それが叶えられないなら。ここで幕引くことが正しいのだ。
アブソルはそう叫ぶと同時に、近くにいたエックスに飛びかかる。殺意をもって飛びかかったアブソルにミュウツーが何かの技を使ってその胸を貫いた。
「ああ!!」
エックスは、大分炎が燃え尽きかけていたためにアブソルに駆け寄ろうとするが、そのポケモンはそれを振り払い、フラダリによろよろと近づく。
礼を言う、人に作られ、人を憎み。されど、人と歩むことを決めたポケモンよ。
それにミュウツーは微かに頷く。それにアブソルは笑みを深めた。
カエンジシたちには、何も恨まず、幸福になれと伝えてくれ。
エックスが再度駆け寄ろうとするが、それはミュウツーに止められる。
アブソルは血濡れのそれですでに事切れたフラダリに微笑みかける。そうして、彼の頭を包むように蹲った。
・・・・安心しなさい、フラダリ。迷子のお前を迎えに行くこともあったが、あの子が迷子になれば共に迎えに行っただろう?
大丈夫。
優しい声が、頭に響いて。
迎えに行こう。共に、あの子を。
力なくそのまま倒れ込んだアブソルに皆が黙り込む。ぼたぼたと、アブソルの嘆きが頭に響く。
たった一つだけ言えるのは、迷子の子どもは、すでにアブソルと旅立ってしまったことだけだった。
カヌス
最悪ルートではちゃんと正規で恋人同士になり幸せ真っ最中だった。フラダリが初期にしていた支援事業で、強いポケモンの出る地域に護衛として向かった先で事故で亡くなった。フラダリに横恋慕していた女と、物資やらなんやらと奪いたがった外部組織の企みによるものだった。
モンスターボールが落ちた衝撃で壊れてしまい、ポケモンを出せずに事切れた。
誰のことも特別恨んでいない。子どものことは気がついていない。
フラダリ
最悪ルートでは支援事業で、カヌスに護衛のような形で同行を頼み、そのまま死んでしまって発狂した。おまけに、詰めの甘い連中だったせいで理由がすぐに露見して全部理解した。
おまけに、死体から腹に子どもがいたこともあってその考えが加速した。
美しい世界なら、あの子だって、子どもたちだって生きていけたという希望に縋って生きてた。
小さな、赤毛の少年はアブソルと一緒に迷子を捜しに行った。それが一番幸せな終わりなのだ。
セイカ
最悪ルートでは産まれて来れなかった。
キョウヤ
最悪ルートでは産まれて来れなかった。
アブソル
最悪ルートでは目の前で己の娘が苦しんで、死んでいくのを見てしまい。且つ、腹に子どもがいたことを知り発狂。フラダリの好きにさせていたが、目的を遂行できないなら殺してやろうと思っていた。
赤い髪の少年を連れて、迷子を探しに行った。