――――それは、その一連の事件の始まりは…真夜中に響いた凄まじい破壊音であった。
最初にそれに気づいたのは他でもない、ロサスの女王アマヤであった。
ボゴン、バギン、ゴギャ。
城全体を震わせる振動と形容しがたい強烈な音に強制的に目覚めさせられた彼女は、ベッドから飛び起きると音のした方へともつれる脚を引きずりながら向かう。
「…ッ…!」
かつての王が書斎として使っていた広間、今では棚に埃まで被っているその部屋の中央の床に、拳ほどの大きさの穴が開いていた。それはまるで何かが物凄い勢いでぶつかり木板を貫いたような跡だった。
アマヤは嫌な予感に頭の中をいっぱいにしながら近づくと、孔を覗き込んだ。
深く、深く、光の届かないほど深いその穴はおそらく、地下室まで続いていることが理解できた。
どくんどくん、口を安易に開けば心臓が飛び出てしまうかもしれないと思えるほど鼓動を高鳴らせながら、今度は上を見る。そこには同じように拳大の大きさの穴が開き、上の階の床と天井を突き破り、夜空の星の光を部屋に差し込ませていた。
「だれか!だれかきてッ!」
部屋の灯りを急いで付けながら叫ぶ彼女。夜の警備兵たちはすっかり平和ボケしていて何処かで居眠りをしていたようだ。アマヤの声に漸く飛び起きて鎧をガシャガシャと鳴らしながら目を擦ると「は、はっ、なにかご用でしょうか…?」などと寝ぼけた声を漏らす。
「地下牢を確認するの!あの人を…マグニフィコを見つけて!」
「はッ、え…?で、でもアイツはもう封印されているでしょう…?」
「いいから!他の人も呼んで…!城の回り…いえ、国全体を探させるの!」
まだ事態を理解できていない兵士だったが地面に空いた穴を見ると、みるみる額から血の気を引かせる。
返事をする余裕もないまままた鎧を引きずり階段を急いで降りる。
アマヤは口元に手を置いて状況を整理しようとした。「まさか…そんなはず、…ありえない…」などと、何度も思考を繰り返してはすぐにやめる。
目覚めたばかりで稼働しない脳をなんとか叩き起こしながらこの事態をまずは受け入れようと努力した。
「…あの男が…帰ってくる…!!」
自分の力だけであの封印を解くとは、彼女にとっても予想外のことであった。
もしもあの男が完全に力を取り戻せば、必ず復讐してくるに違いない。
自分がされたこと、
「…はやく、伝えなければ…!」
アマヤは天井に開いた穴から、輝く眩しい星の光を見上げた。
「アーシャ…!!」