超次元なサッカーでドライブシュートを打つ   作:イノウエ・ミウ

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幸太郎とハル

4月、辺り一面に桜が咲き誇り、中学校では新入生たちが新しい日常に期待を寄せながら入学する季節。

雷門中もまた、憧れの雷門サッカー部に入ろうと、新入生で溢れかえっていた。

 

「今年もかなりの数が集まったな」

 

サッカーコートには既に大勢の入部希望者が並び立っており、そんな彼らをコートの外から眺めながら呟く雷門中サッカー部キャプテンの連。

その隣にいるエースストライカーの日向も、入部希望者の方に視線を向けながら口を開く。

 

「集まるだけじゃ意味はない。この中からどれだけ生き残れる奴がいるかだ」

 

「大半は入部テストで落ちるし、入部できたとしても二軍か三軍。一軍に入れる奴となると、かなり限られてきそうだな。去年も一年でレギュラーになったのは幸太郎だけだったからな」

 

そんな会話をしながら、入部希望者の中に有力な選手がいないか見定める連と日向。

 

「日向さん!」

 

すると、日向の名前が呼ばれて、振り向くと小柄な少年が立っていた。

雷門の制服を着ているが、サッカー部内では見たことがないため、連が少年が何者なのか聞こうと話し掛ける。

 

「君、入部希望者か?それなら、あっちのサッカーコートに並んで――」

 

「お前はタケル!沢木タケルなのか!?」

 

「え?」

 

隣にいた日向が知り合いかのような反応をしたので、目を丸くする連。

その通りだったのか、少年が何処か嬉しそうな様子で日向に話し掛ける。

 

「はい!お久しぶりです、日向さん!」

 

「お前も雷門に入ったんだな!元気にやってたか?」

 

「勿論です!日向さんが卒業した後も、きちんとチームを率いてました!」

 

親しげに話す日向とタケルと呼ばれた少年を見て、この状況をまだ理解できていない連が日向に問う。

 

「知り合いなのか?」

 

「あぁ、こいつは沢木タケル。俺が小学校の頃に所属してたクラブチームの後輩だ」

 

「初めまして!この度日向さんがいる雷門中サッカー部に入部することになりました沢木タケルです!よろしくお願いします!」

 

「お前が入部してくれたら百人力だぜ!入部テストは厳しいが、お前なら合格できると信じてるぜ」

 

「はい!それでは日向さん、入部テストでまたお会いましょう!」

 

そう言うと、タケルは入部希望者が並ぶ列に入っていった。

 

「幸太郎、分かっていると思うが・・・」

 

「心配しなくても、元チームメイトだからといって贔屓するつもりはねぇよ。まっ、あいつにそんなモン必要ないけどな」

 

「お前がそこまで言う程の選手か。どれ程の実力か楽しみだな・・・楽しみと言えば、俺も一人気になる奴がいるんだ」

 

そう言うと、連はサッカーコートに並び立つ一人の人物を見た。

 

「円堂ハル。あの円堂守の息子で、父親譲りの凄まじいサッカーセンスを兼ね備えた天才だ」

 

「天才、か。恵まれた環境で育った天賦の才能の持ち主というわけか・・・」

 

そう呟きながら、日向は円堂ハルに視線を向ける。

確かに、彼が放つオーラは他の選手とは比べ物にならない程の濃いオーラだ。彼のプレイをまだ見てないが、間違いなく彼は強い選手であると、日向はその肌で感じ取っていた。

しかし・・・

 

「(随分と退屈そうな顔しやがって・・・気に入らねぇな)」

 

コートに並び立つハルの表情は、何処か退屈そうな顔をしていた。

その顔が日向にとっては気に入らなかった。怪我で半年間まともにサッカーができなかった彼にとって、普通にサッカーができるのに、サッカーをする楽しさを微塵も感じていなさそうなハルの表情がどうも気に障る。

どれだけ見つめてもハルの顔が変わることはなく、入部テストが始まるその時まで日向の苛立ちが収まることはなかった。

 

 

 

 

入部テストが始まり、各々が己の実力を知らしめようと奮起する。

テスト内容は一軍との混合チームによる練習試合。彼らは実践を通して、入部希望者たちの実力を測っていた。

沢木タケルも雷門のレベルに圧倒されながらも、試合で活躍しようと奮起していた。

 

「(流石雷門中、選手一人一人のレベルが他と桁違いだ!だけど、僕にだって一昨年の全国大会で優勝したチームの一員としての意地がある!)」

 

己を鼓舞させて、タケルは相手チームの選手を止めようとする。

 

「そこだ!キラースライド!」

 

日向も使用するディフェンス技『キラースライド』で相手からボールを奪う。

二人が所属してたクラブチームでは、『キラースライド』がディフェンス技の主流であり、複数人で『キラースライド』を使って、相手からボールを奪う'キラースライド部隊'が作られた程だ。

 

「日向さん!」

 

ボールを奪ったタケルは、相手のディフェンスの穴をついて、最前線にいる日向へパスを繋いだ。

 

「ナイスパスだタケル!(小学校の頃よりもパスの精度が上がっていやがる。タケルの奴、俺が卒業した後も練習を怠っていなかったようだな)」

 

成長した後輩の活躍に嬉しく思いながら、日向はシュートを打とうとした。

 

「行くぜ!タイガ――っ!?」

 

次の瞬間、彼のシュートの隙をついて、円堂ハルがスライディングでボールを奪った。

ハルはそのままドリブルで相手を抜きながらゴールに突き進む。

 

「止める!」

 

そんな彼の前にタケルがハルを止めようと迫る。

しかし、ハルはボールを蹴り上げて、ヒールリフトでタケルを抜き去った。

 

「なにぃ!?」

 

タケルが頭上を見上げた時には、ボールは既にハルの足下に戻り、そのままドリブルでDFも突破する。

そして、ゴールが見えたところで、ハルはシュートを打とうと足を振り上げる。

 

「ひとつ――っ!?」

 

その時、最前線にいたはずの日向がディフェンスまで戻って来て、スライディングでハルからボールを奪った。ハルも視覚外からのスライディングには反応できず、日向の強烈なスライディングに飛ばされる。

ボールを奪った日向は、コートに倒れているハルに向かって言った。

 

「舐めるなよ後輩。FWだからといって、守りをしないと思ったら大間違いだぜ」

 

「・・・やりますね。先輩」

 

日向の言葉を受けたハルは、不敵な笑みを浮かべながら立ち上がる。そのハルを日向は鋭い視線で見つめる。

しばらく見つめていた二人だが、特に言葉を交わすことなく試合を続ける。

やがて入部テストは終わり、合格者及び所属チームの発表に移る。

大勢いた入部希望者の内の大半が不合格となり、合格しても二軍か三軍が殆ど。

そんな中、一軍で合格したのは、円堂ハルと沢木タケルの二名のみだった。

 

 

 

 

「――っとまぁ、入部テストはこんな感じだったな」

 

「幸太郎君とハル君、凄かったよね。途中から二人の一騎打ちみたいになってたよね。後、タケル君のフォローも何気に凄かったね」

 

「実際二人のやり取りが凄すぎて、他の選手の実力が霞んでた気がしてならないんだけどな」

 

日向の入学から入部テストまでの出来事を振り返りながら、連と星村は会話を続ける。

あの後も日向とハルの激闘は何度も続き、後半は最早二人の一騎打ちと化してた。そんな中、中盤から日向や他の選手をサポートし、ハルを除いて唯一、一軍の座を勝ち取ったタケルの実力は凄まじく、星村も彼のことを高く評価してた。

 

「だけどあの二人、相性は最悪だよね。試合でも同じポジションなのに、殆ど一人で点を決めるし」

 

「というよりかは、幸太郎が一方的に嫌っているだけだと思うけどな。何せ、あんなことをしでかしたくらいだからな」

 

思い出すは、U-15スプリング杯で北陽学園に勝利した直後のことだ。

試合が終わって、雷門の控え室に戻ろうとしてる最中、ふとハルが連に向かって言った。

 

『サッカーってさ、つまんなくない?』

 

その言葉を言った直後、自身の頬に強い衝撃が走り、体がふっとばされて地面に叩きつけられた。

頬を手に当て、その部分に痛みを感じた瞬間、ハルは理解した。自分は殴られたのだと。

ふと顔を上げると、そこには野神や嵐に押さえられながら、こちらに憤怒の表情を向けている日向の姿が目に映った。恐らく、自分を殴ったのはこの人なのだろう。

 

『ふざけるな!なら、なんでテメェはフィールドに立ってるんだ!』

 

『俺たち雷門は勝つために、いつだって本気でサッカーしてるんだ!それなのに、お前はサッカーがつまらないだと!?馬鹿にしてんのか!』

 

『そんな気持ちでサッカーをするくらいなら、サッカーなんて止めちまえ!』

 

怒りを露わにしながら叫ぶ日向に、ハルは勿論、連や他の選手たちも何も言えずにいた。

 

「あの時は驚いたな。幸太郎君がハル君を殴って、一時期大騒ぎだったよね。幸太郎君が退部になるかもしれないってね」

 

「暴力行為は確かに大問題だ。だが、ハルの発言に問題があったのも事実だ。だからこそ、理事長も幸太郎への厳重注意だけで済ませたんだろう」

 

雷門中の理事長であり、ハルの母親でもある円堂夏美。自分の息子が殴られて、普通なら殴った日向に対して退部などの厳しい処分を下してもおかしくないが、直前の息子の発言に彼女も思うところがあったのか、厳重注意だけで済ましたのだ。

 

「とは言え、幸太郎が怒るのも無理はないか。あいつは半年の間、怪我でサッカーができなかった。サッカーがしたくてもできないことの辛さを雷門の誰よりも理解してる」

 

「・・・そうだよね。だから、満足にサッカーができるハル君がサッカーをつまらないなんて言ったことが許せなかったんだよね・・・」

 

サッカーをしたいのに、怪我でできない辛さを知ってる日向にとって、サッカーができるのに、それをつまらないと言うハルの言葉は絶対に許せるものではない。

 

「あれから二人は喧嘩とかしてないの?」

 

「今のところは落ち着いているよ。だけど、今のままだと、いつかまた同じことを繰り返すことになるかもしれないな」

 

「どうにか仲直りできないかな?同じFWだし、実力も同じくらいだから、お互いの欠点を補い合えば、いいパートナーになれると思うんだけどなぁ」

 

「そうだな。同じFWでも幸太郎はパワーで圧倒するタイプで、対するハルはテクニックで翻弄するタイプ。どちらも個人中心で戦うが故に隙もある。その隙を補い合えば雷門は更に強くなれる。だけど、幸太郎のサッカーとハルのサッカーは、同じように見えても本質は全然違う」

 

「違うって・・・どういうこと?」

 

星村が疑問符を浮かべる中、連は二人のサッカーについて己の見解を述べる。

 

「二人のサッカーの違い・・・それはサッカーに賭ける想いの大きさだ」

 

「幸太郎のサッカーは、どんなことをしても勝つサッカーだ。あいつは勝利のためなら相手を傷つけることも厭わない。それぐらい、あいつはサッカーに情熱を注いでいる。それこそ、自分の人生を全て賭けて」

 

「だけど、ハルのサッカーは、その情熱さを大きく欠けている。理由は俺にも分からないが、常に恵まれた環境でサッカーをしてきたからこそ、サッカーの楽しさが見出せずにいる。そんな気がするんだ」

 

サッカーへの情熱、雷門の誰よりも持っている日向、それとは真逆で皆無のハル。

 

「厳しい環境で育ったからこそ、サッカーの情熱が人一倍強い幸太郎、恵まれた環境で育ったからこそ、サッカーに情熱を注ぐことができないハル。真逆の環境故に、あの二人が分かり合えることは、俺たちが思う以上に難しいかもしれないな」

 

育った環境の相違や価値観、それをどうにかしない限り、日向とハルが分かり合えるのは難しいと連は弱気に語るのであった。

その直後、チームメイトの鬼門から呼び掛けられる。

 

「キャプテーン!理事長がキャプテンのこと呼んでるみたいですよ!」

 

「理事長から?何だろうな・・・分かった、すぐに行く」

 

連は「じゃあ、俺はこれで」と星村に一言掛けると、理事長の円堂夏美がいる理事長室に向かった。

そこで聞かされたのは、とある中学校への遠征に関する指令だった。

 

『雷門中のサッカー部員、日向幸太郎と円堂ハル。両二名をフットボールフロンティア地区予選九州・沖縄グループの参加校、西ノ宮中からの『帰属校・助っ人システム』要請に応じ、同学校への遠征を命じる』




今日の『燃えてヒーロー』:円堂ハル


ようやくハルと日向を絡ませることができました。真面目な話、サッカーつまらないってほざくハルを日向がキレないはずないんですよね。日向小次郎でも殴ると思います。


日向の弟分であるオリキャラの沢木タケルも登場です。モチーフは日向小次郎の名パートナーでお馴染み沢田タケシです。『キャプテン翼』だと小次郎とタケシは二つ歳が違いますが、幸太郎とタケルは一歳差となっております。


現段階での王者雷門のポジションはこんな感じです。
FW:野神、日向、ハル
MF:嵐、連、星村
DF:赤袖、遠野、紫雨、鬼門
GK:暖冬屋

控え:天宮司、春日、海老原、タケル、シグドママ(後に加入)

ヴィクロとの変更点として、ドリブル技が豊富な嵐がMF(本来ならFW)、ディフェンス技を持っている赤袖がDF(本来ならMF)に移っており、ディフェンス技を一つも持ってない天宮司が控え(本来ならDF)に降格しています。
また、本来なら控えに一年の梅雨咲多恵がいますが、この世界だとタケルに変わって控えから外されました(二軍行き)。アンケートでヒロイン候補に上がってたのに・・・

もしも日向にヒロインを付けるなら

  • 星村ナオ
  • 赤袖茉莉
  • 有海崎玲亜
  • 梅雨咲多恵
  • 木下まつの(シグドママ)
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