超次元なサッカーでドライブシュートを打つ   作:イノウエ・ミウ

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ようやく主人公の出番です。まぁ、前半は日向サイドの話ですが。


邂逅

フットボールフロンティア予選、南雲原中VS西ノ宮中の試合が今日始まろうとしてる中、一隻の船が長崎の港に向かっていた。

その船の甲板の上で、黒いパーカーを着た円堂ハルは空を飛んでいる鴎に向けて手を伸ばす。当然、その手は空を飛ぶ鴎に届くはずはない。

 

「こんな所にいたのか」

 

「幸太郎さん」

 

何回か手を伸ばしていると、頭に帽子を被った私服姿の日向幸太郎がやって来て、ハルの隣に並び立って話し掛ける。

 

「船ってのは初めて乗るが、どうも揺れて落ち着かないな」

 

「そうですか?風は気持ちいいですし、色んな形の島が見れるので楽しいですよ」

 

「俺たちは景色を楽しむために来たんじゃないんだぞ。分かってんのか?今回の遠征の目的」

 

「分かってますよ。今から行く長崎の西ノ宮中からフットボールフロンティア予選大会の助っ人を要請されて、その助っ人選手に俺と幸太郎さんが選ばれた、ですよね」

 

雷門中のエースストライカーである二人は、今年のフットボールフロンティアから追加された『帰属校・助っ人システム』により、西ノ宮中からの要請で派遣されたのだ。

そのため、現在二人は東京から長崎に向かっていた。昨日は新幹線で本州の最西端まで移動し、今日は船に乗って長崎まで移動する予定だ。

ちなみに、最初の試合は今日この後すぐにあり、合流後すぐ試合することになっている。

 

「分かってるならいい・・・そう言えば、お前はどうして、今回の遠征に参加しようと思ったんだ?」

 

サッカーがつまらないと思っているにも関わらず、今回の遠征に積極的だったハルの態度を思い出しながら日向が聞く。

すると、ハルは困ったように笑いながら参加した理由を言う。

 

「ぶっちゃけ、母様怖いんですよ」

 

「へー、お前にも怖い物があるんだな。まぁ、気持ちは分かるぜ。この間、呼び出しくらった時のお前の母ちゃん、マジでおっかなかったからな。俺の母ちゃんを怒らせた時と同じくらいにな」

 

「ハハッ、やっぱり母様は、どこの家でも怖いんですね」

 

そう言って、笑って見せたハルだが、少し言いずらそうな雰囲気で言葉を続ける。

 

「まぁ、他にも理由はあったんですけど・・・」

 

「どうした?」

 

「・・・怒らないで聞いてくれますか?」

 

「俺が怒る前提かよ・・・努力はする。お前の母ちゃんからも次はないって警告されてるからな」

 

以前自分の発言が原因で殴られたからなのか、話しても怒らないかと聞いてくるハル。

日向もそのことで夏美から厳重注意を受けたので、怒らないよう努めながらハルの言葉を聞こうとした。

 

「最近、サッカーをやっても全然楽しくないんです。だから、気分転換には丁度いいって思ったんです」

 

こんなこと、サッカーに情熱を注いでいる日向が聞いたら前のように怒るだろう。そう思いながら、ハルは日向の返事を待つ。

しかし、日向は怒りの感情を向けることはなく、真剣な表情でハルに向かって言う。

 

「それならお前、どうしてサッカーなんかしてるんだ?」

 

「え?」

 

「前にも言っただろ。サッカーがつまらないなら、サッカーを辞めろ。つまらないものを無理にやる必要はないだろ」

 

予想外の言葉に一瞬驚いたハルだが、すぐさま暗い顔で言葉を返した。

 

「・・・無理ですよ。だって、俺は円堂ハル。サッカーをやるために産まれてきた存在ですから」

 

「自分は伝説のサッカー選手の息子だからってか?・・・くだらないな」

 

「え?」

 

またもや呆けた顔をするハルに向かって日向は言う。

 

「血筋とか運命とか、そんなモンに縛られてんじゃねぇよ。お前の人生はお前の物だ。なら、お前が進みたいと思う道を進めばいいだろ。立ち塞がる奴を全てなぎ倒してな」

 

「幸太郎さん・・・」

 

真っ直ぐな日向の言葉を聞いて、ハルは何も言えずにいた。

 

「もし、お前がこれからもサッカーをするなら、自分が何の目的で、どんなサッカーがしたいのか。それくらいは持っておけ。空っぽのままサッカーをされたんじゃ、一緒に戦ってるこっちが迷惑だ。何より・・・サッカーをしてるお前自身が虚しくなるぜ」

 

そう言うと、日向は船の中に戻ろうとハルに背中を向けて歩き出した。

その背に向かってハルは聞いた。

 

「・・・一つ聞かせてください。幸太郎さんのサッカーは、どういうサッカーなんですか?」

 

日向は立ち止まり、顔をハルの方に向けながら、いつも自分が掲げているサッカーを答えた。

 

「俺のサッカーは、今も昔も変わらねぇ・・・どんなことをしても勝つサッカーだ!」

 

そう答えると、日向は船の中に戻り、ハルは一人甲板に残った。

やがて船は港に着いて、二人は船を降りた。

 

「ようやく着いたな。船旅は新鮮だったが時間が掛かるから体が鈍るな・・・ハル、今日の試合会場がどこにあるか分かるか?」

 

「待ってください。少し調べますね」

 

ハルはスマホを取り出すと、地図アプリから目的地を探し出す。

その間、無言の時間が続いたが、ふと日向がハルに向けて言った。

 

「ハル、これだけは言っておくぞ」

 

「なんですか?」

 

「お前がつまらないと思っているサッカーをやり続けるのはお前の勝手だ。だが、サッカーがつまらないから、試合で手を抜くような真似は絶対にするなよ。もし、そんな下らん理由で手を抜いたら、今度は拳で済ますと思うなよ。俺のタイガードライブをお前の顔面にぶち当てるからな」

 

「・・・肝に免じておきます。幸太郎さんの拳をまた食らうのは嫌ですから」

 

日向の忠告に対して、困ったように笑うハルだった。

 

 

 

 

長崎・市民サッカースタジアム。今日ここではフットボールフロンティア予選の試合が行われようとしていた。

 

「遂にこの日が来ましたね」

 

試合を行う南雲原中サッカー部の面々は、気合い十分と言った様子でスタジアムの前にいた。

 

「流石フットボールフロンティア。予選だってのに、会場の外からでも熱気が伝わるぜ」

 

「うぅ、僕にできるかな・・・」

 

「大丈夫よ!気楽に、気楽に!」

 

桜咲が会場の熱気を静かに感じ取り、それに当てられて不安になる亀雄を来夏が励ます。

各々が初戦に向けて意気込む中、雲明が翼がいないことに気づいた。

 

「ところで、翼はどこに?」

 

「あれ?ついさっきまで一緒にいたのに・・・」

 

来夏が辺りを見渡すが、翼の姿は何処にも見当たらない。

すると、亀雄がおずおずと言った様子で口を開いた。

 

「あのー、翼君なら先程スタジアムを見て回ると言って、ドリブルしながら行っちゃいました」

 

『えぇーーーーーー!!?』

 

あまりにも自由人過ぎる翼の行動に驚きの声を上げる一同。

すぐさま桜咲が亀雄に詰め寄った。

 

「なんで止めなかったんだよ!」

 

「す、すみません!あっという間に行っちゃったから、止める暇もなくて・・・」

 

「仕方ありません。先に中に入ってましょう」

 

やれやれと言った様子で雲明は歩き出して、周りも彼の後に続いた。

一方、翼は亀雄が言ってた通り、ドリブルしながらスタジアム周辺を見ていた。

 

「今日はここで戦うんだってさ。凄く楽しみだね。君もそう思うよな?」

 

いつも通りボールに語りかけながらドリブルしていると、前から二人の少年が歩いてきて、彼らとすれ違う。

 

「!?」

 

その少年たちとすれ違った瞬間、翼は己の体にビリッと雷に撃たれたかのような刺激を感じた。

すぐさま振り返って、翼とは正反対の方向に向かって歩いている二人の背中を見るが、彼らはそのまま遠ざかっていく。

 

「何だったんだ?今の・・・」

 

彼らとすれ違った瞬間に感じたあの感覚はいったい何だったのか。

その答えが出ないまま、翼は仲間たちと合流するのであった。

 

 

 

 

「今の、変わった奴でしたね」

 

一方、ハル達も先程サッカーボールでドリブルしてた翼が気になったのか、彼に関する会話をしてた。

 

「ボールでドリブルしながら町を回る、か・・・お前、あれやったことあるか?」

 

「俺でもあんなことしないですよ。でも・・・あいつ、かなりできるかもしれませんよ」

 

「なんでそう思うんだ?」

 

「こんな道端で、人もたくさん歩いている状況で、あいつは上手く人を避けながらドリブルしてたんですよ。中々できることじゃありません」

 

「それ相応の力はあるということか・・・」

 

「もしかしたら、今日一緒に戦うチームの選手。もしくは、相手チームの選手かもしれませんね」

 

「・・・相手チームだとしたら、多少は楽しめそうだな」

 

自分の知らない未知なる強敵との邂逅の可能性。そんな期待を抱いて、日向は僅かに口元を緩ませた。

そうしてる間に、二人は長崎・市民サッカースタジアムに辿り着き、西ノ宮の助っ人であることをスタッフに伝えて中へ入る。

サッカーグラウンドに向かうべく廊下を歩いていると、複数の人物が自分たちと同じくグラウンドに向かっているのを見つけた。

こんな所に一般の観客がいるわけないので、恐らく相手チームの選手だろうか。そんなことを思いながら、ハルはフードから僅かに顔を覗かせた。

すると、緑色の髪をした鼻の赤い少年と目が合った気がした。少年も目を見開きながらこちらを見ていた。

そんな少年の心情を知りもしないハルは、視線を戻して、日向と一緒にグラウンドの中へ入っていった。

この時の日向とハルは知りもしなかった。青空翼と笹波雲明、この二人との出会いが、彼らのサッカー人生を大きく変える出来事になることを。

 

 

 

 

試合開始直前、両チーム試合に向けて準備を進めていたが、南雲原のベンチは不穏な空気に包まれていた。

理由は勿論、向かうのチームにいる二人の選手の存在だろう。

 

「円堂ハルに日向幸太郎・・・」

 

「まさか、あの二人が出てくるなんて・・・」

 

桜咲と四川堂が呟きながら、西ノ宮のベンチにいるハルと日向を見る。

彼らは西ノ宮のユニフォームに着替えており、西ノ宮のミーティングに参加することはせず、個人でアップを始めていた。

『帰属校・助っ人システム』の存在は南雲原も知っており、西ノ宮が勝つために助っ人を頼むかもしれないという噂は聞いていた。しかし、その助っ人が王者雷門を代表する二人のエースストライカーであることは、流石に予想できなかった。

試合開始直前のまさかのサプライズに、南雲原の面々は不安に包まれていた。

そんな中、キャプテンの雲明は冷静になりながら、皆に向かって言う。

 

「落ち着いてください。確かに、円堂ハルと日向幸太郎の助っ人はこちらも予想外でした。正直、あの二人がいる西ノ宮を相手に、こちらが勝てる可能性は殆どありません」

 

「しかし、ゼロではありません。相手が助っ人を頼るサッカーで戦うのなら、こちらはそれに対抗できる戦い方をするまでです」

 

そう言うと、雲明は周りを見渡して、勝つための指示を出す。

 

「今から前半の指示を出します。各自従うように」

 

「了解だボス。それで、作戦は?」

 

部員たちは雲明の方を見ながら彼の言葉に耳を傾ける。

桜咲が代表して内容を聞くと、雲明は堂々とした様子で答えた。

 

「皆には前半・・・必殺技を使わないで戦ってもらいます!」

 

『えぇーーーーーー!!?』

 

雲明の作戦を聞いた翼達は、その衝撃的な内容に驚きの声を上げるのであった。

南雲原中対西ノ宮中の試合開始まで後5分。




今日の『燃えてヒーロー』:日向幸太郎、円堂ハル


日向小次郎同様、幸太郎もまたユニフォームの袖を肩まで捲るスタイルとなっております。当然、西ノ宮のユニフォームでも同じようなスタイルです。
余談ですが、イナイレのキャラで日向小次郎と同じユニフォームの着方をするキャラっていたっけ?ライデン(相撲部の方じゃないです)くらいしか思いつかん。

もしも日向にヒロインを付けるなら

  • 星村ナオ
  • 赤袖茉莉
  • 有海崎玲亜
  • 梅雨咲多恵
  • 木下まつの(シグドママ)
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