超次元なサッカーでドライブシュートを打つ 作:イノウエ・ミウ
同時にコンセプトアートが公開されましたが――
・お嬢様ベータ(可愛い)
・馬と化した白竜(何があった?)
・グレた天馬(マジで何があった?)
など、ツッコミどころがありすぎて爆笑しました(笑)。
フットボールフロンティア予選一回戦、南雲原中VS西ノ宮中。
西ノ宮は雷門中からの助っ人である日向幸太郎と円堂ハルの力で既に3点リードしており、南雲原は窮地に追い込まれていた。
この状況を見て、香澄崎が心配そうな表情で雲明に聞く。
「笹波君、このままだとマズいんじゃないかな?」
「・・・はい、かなりマズいです」
珍しく険しい顔でそう呟く雲明。それを聞いた百道が意見を述べる。
「それなら必殺技を解禁した方が良いのでは?このままだと、点差がどんどん広がってしまいますよ」
「あ、いえ、僕がマズいと言ったのは、点差のことではありません」
「「え?」」
百道と香澄崎が揃って声を上げる。
どういうことだろうと思いながらも、雲明がフィールドに視線を戻したのを見て、自分たちも視線を戻す。
試合は既に再開しており、ハルと日向の攻めを防ごうとする南雲原の面々。
しかし、一部の部員の動きがおかしいところがあった。
「と、止めてみせます!」
先程ふっとばされた未理科が横からボールを奪おうと日向に近づく。
'ギロッ!'
「ヒッ!」
しかし、日向の鋭い眼光に睨まれて、怯えた表情で足を止める。
彼女だけでない。他の面々も積極的に日向からボールを奪おうとせず、ゴールに向かって走る彼を恐怖混じりの顔で見つめていた。
「どうしたんでしょう?皆さん、試合が始まった時よりも動きが鈍くなっている気がします」
「え?」
「百道先輩の言う通りです。今の皆は本来の力を出し切れてないんです」
雲明がそう言っている間にも、日向からパスを受け取ったハルがシュートしてゴールを決める。
『ゴール!今度は円堂ハルが決めました!』
「・・・完全に崩れてますね」
「所詮はその程度の連中だったってことだろ」
動きが鈍くなった南雲原を見て、つまらなそうに呟くハルと日向。
一方、明らかに様子がおかしいディフェンス陣に対して、柳生が怒鳴る。
「お前ら!さっきから何やってるんだ!」
「うっ、だってよぉ・・・」
「こ、怖いです・・・」
怯えた表情で喋る木曽路と亀雄。特に亀雄は顔だけでなく、体全体が震えており、完全に日向とハルに恐怖を抱いているのが分かる。
それは他の皆も同じであり、怯えていないのは、柳生と桜咲と翼のサッカー経験者*13人のみだった。
この光景を見てた雲明が、皆の不調の原因を考察する。
「原因は恐らく、日向幸太郎のプレイでしょう。経験者である桜咲先輩、柳生先輩、翼の3人以外の選手が、彼の凶暴なプレイを前に、ボールに・・・いや、サッカーそのものに恐怖を抱いているんです」
「そんな!どうにかできないの!?」
「・・・・・・」
縋るような香澄崎の言葉に、雲明は何も言い返せない。
こればかりは心の問題。サッカーの上手さや戦術ではどうにかできる問題ではない。
「雲明君、やっぱりあたし・・・!」
「駄目です。忍原先輩は前半このまま待機です」
「でも!このままじゃ負けちゃうよ!」
「今先輩が出ても同じです。ここは耐えてください」
来夏が怪我を押してでも出ようとするが、真剣な表情をしている雲明に止められる。
その間にも試合は進んでおり、翼と桜咲と柳生の3人が必死にゴールを守ろうとするも、ハルと日向の圧倒的な力とテクニックの前には太刀打ちできず、日向のシュートが決まってしまい、更なる追加点を入れられる。
『西ノ宮、これで5点目!日向幸太郎、ハットトリック達成です!』
『この圧倒的な点差、南雲原は既に戦意を喪失してる選手がいてもおかしくありませんね。このまま前半で試合が終わってしまうのでしょうか?』
「僕の力では、止められないのか・・・」
二人の怪物のシュートを全く止めることができず、悲痛な表情で呟く四川堂。
四川堂だけでなく、他の面々も角馬の言う通り戦意を喪失しており、南雲原は完全に勝利を諦め掛けていた。
それを見かねた日向が近くにいた柳生に向けて言った。
「お前ら、悪いことは言わねぇ。この試合、降参しろ」
「なにっ!?」
日向からの降参の提案に、柳生が激情しながら反論する。
「ふざけるな!まだ試合は終わってねぇだろうが!」
「おいおい、状況を見てみろよ。点差は既に5点差、お前らのチームの連中は殆どが諦めムード。これ以上、試合を続けられる状況じゃないだろ」
「ぐっ!」
冷静に状況を判断している日向の言葉に反論できず、柳生は悔しそうな顔をする。
「聞いたぜ。お前らのサッカー部、最近できたばかりらしいじゃねぇか?」
「・・・それがどうしたんだよ?」
「舐めてんのか?」
「なにっ!?」
怒りの表情を見せる柳生とは対照的に、日向は冷めた目で冷酷に告げる。
「フットボールフロンティアは中学少年サッカーの日本一を決める大会だ。お前らのようなお遊びサッカーしかできない連中が参加する大会じゃないんだよ」
「俺たちのサッカーがお遊びだと!?」
「そうだろ。どいつもこいつもドリブルもパスもまともにできない素人ばかり。そんなチームが日本一になれるわけないだろ。夢を見るのも大概にしろ」
「うっ・・・!」
日向の言葉に柳生は何も言い返せない。
無理もない。彼はつい最近まで、日向の言うお遊びサッカーを自ら行い、サッカーを侮辱し続けていたからだ。
雲明に出会う前まで、放課後に野球部と下手なパフォーマンスを行いながらサッカーを侮辱していた柳生。そんな彼にとって、小さい頃から真剣にサッカーと向き合っていた日向の言葉はあまりにも重かった。
故に柳生は何も言い返すことができず、ただ悔しそうに日向の言葉に耳を傾けるしかなかった。
「いい加減、夢から覚めて現実を見ろ。これ以上、恥をかく前にさっさと降参するんだな」
そう言って、自分のポジションに戻ろうとする日向。
直撃、後ろから聞こえた声に足を止める。
「降参しないよ」
そんな言葉が聞こえて、後ろに振り向くと、いつの間にか柳生の隣にいた翼が真剣な表情で日向を見ていた。
「試合はまだ終わってない。審判の笛が鳴るまで、俺たちの戦いは続くんだ」
「・・・何言ってんだ?周りを見てみろ。お前ら以外の連中はすっかり戦意を喪失している。試合なんてできるわけないだろ」
「いいや、まだだ」
そう言うと、翼は暗い顔をしている南雲原の面々に向かって叫んだ。
「皆!!」
翼の大声に、敵味方全員が翼の方に顔を向ける。
周りから視線を向けられる中、翼は笑顔で叫んだ。
「ボールは友達!怖くないよ!」
「翼・・・」
「翼君・・・」
木曽路や亀雄など戦意を喪失しかけている南雲原の面々に翼は言う。
しかし、今の言葉が癪に触ったのか、日向が怒りの感情で声を上げる。
「何がボールは友達だ・・・!本当のサッカーの恐ろしさを知らないくせに、お遊びサッカーで満足してヘラヘラ笑いやがって・・・!俺はそんな脳天気な奴が一番嫌いなんだよ!」
こんな絶望的な状況なのに笑う翼を見て、怒りを滲ませながら、日向は足を振り上げる。
「そんなにボールと友達になりたいのなら、望み通りならせてやるよ!」
日向は渾身のシュートを翼に向けて打った。
自身に向けて打たれたボールに対して、翼は避ける素振りも見せない。
そのままボールは翼の顔面に当たり、その衝撃で翼の体は宙を飛び、背中から倒れた。
『あーと!日向幸太郎の打ったボールが青空翼の顔面に直撃した!』
「翼!!」
「翼君!!」
雲明と来夏が声を上げながら翼の安否を心配する。香澄崎や百道も目を見開いており、フィールドにいる南雲原の選手、更には味方であるはずの西ノ宮の選手たちも、日向の暴挙を見て、驚愕の表情となっていた。
そんな中、柳生が怒りを露わにしながら日向の胸ぐらを掴んだ。
「ふざけるなテメェ!わざと当てやがったな!」
後輩を傷つけられて怒る柳生に対して、日向は小馬鹿にするかのような態度を取る。
「ハッ、俺はただ、ボールと友達になりたいなんてほざく頭のおかしい馬鹿の願いを叶えてやっただけだぜ」
「テメェ・・・!」
悪びれる様子もない日向の態度に、柳生は思わず拳を振り上げて、日向の顔を殴ろうとした。
「やめろ!」
そんな柳生を制止する声が聞こえて、柳生と日向を始め、全員が声がした方に振り向く。
そこには先程まで倒れていたはずの翼が立っていた。顔は赤く腫れて痛々しい様子だが、そんな素振りを見せず堂々とそこに立っていた。
誰もが驚いている中、翼は木曽路たちに向けて笑顔で言った。
「ねっ、全然平気でしょ」
その笑顔を見て唖然とさせられる木曽路たち。人を容易くふっとばしてしまう程の威力があるボールが顔に直撃したのに、何故あんな楽しそうに笑えるのかと理解できなかった。
そんな彼らに向けて翼は言った。
「確かに、サッカーは怖いスポーツかもしれない。顔にボールが当たれば痛いし、タックルをまともにくらえば飛ばされて怪我をする」
「でも、それ以上に楽しいスポーツなんだ!皆で一緒にボールを追いかけて、ゴールを狙ったり守ったりする。時にはミスすることもあるし、上手くいかないこともたくさんある」
「それでも、サッカーは楽しいんだよ!だって、俺たちの傍には、いつだってボールが・・・友達がいるから!」
『・・・・・・』
翼の言葉に場が静まりかえる。
すると、雲明がベンチから立ち上がり、翼の言葉に続くよう叫んだ。
「翼の言う通りです!皆、特訓の日々を思い出してください!」
「皆はいつも必死にボールに向かって、強くなろうと努力してきたはずです!」
「皆の隣には、いつもボールがいた・・・!」
「ボールはいつだって・・・僕たちの友達だったじゃないですか!」
『!?』
雲明の言葉を聞いて、木曽路たちは驚愕の表情を見せる。
同時に、西ノ宮との戦いに向けて行った辛く厳しい特訓の日々が蘇った。
時には怪我をするようなこともあったが、それでも必死にボールに向かって突っ込み、仲間と一緒に練習をしてきた記憶が・・・サッカーへの熱い情熱がそこにあった。
それを思い出した途端、心を蝕んでいた恐怖が消え、あの日の情熱が呼び起こされる。
決意に満ち溢れた彼らの表情を見て、もう大丈夫だと確信した翼は、フィールドの外に出たボールを拾う。
「それ行くよ!ボールは友達!怖くない!」
南雲原のスローインで試合は再開し、翼が投げたボールが木曽路に渡る。
「ボールは友達・・・怖くない!」
その言葉を呟きながら、木曽路は先程の怯えた様子は見せず、いつもの活気溢れる姿でドリブルする。
他の皆も動きが一段と良くなり、それぞれが己の役割を果たそうと動いていた。
「俺たちが日向幸太郎を抑える!お前らは全力で円堂ハルを止めろ!」
「お前にパスは通さねぇぞ!」
「くっ!こいつら・・・!」
桜咲と柳生もまた、足だけでなく全身に力を入れながら日向を徹底的にマークしていた。
先程は直線的ドリブルで桜咲と柳生をそれぞれふっとばした日向だが、体格が自身と変わらない相手が二人同時となると、流石の日向も自由に動きが取れない。
先程までの一方的な試合と違って、南雲原はただ守るだけでなく、目で試合の動きを把握して、お互いに声を掛け合いながら、ハルと日向の猛攻を防いでいた。
「笹波君、皆の動きが・・・!」
「はい、元に戻りました。翼のサッカーへの熱い想いが皆の恐怖を払いました」
明るくなったチームの雰囲気を見て、香澄崎が嬉しそうに笑い、雲明もまた微笑んだ。
試合は膠着状態に落ち着いた。日向とハルはどうにか攻めようとするが、南雲原の全員で守る分厚いディフェンスを前に突破できない。加えて、二人共仲間と認識していないのか西ノ宮の選手にパスを出すという選択肢は頭の中になく、個人の力で突破しようとしているため、攻め手が限られてしまい、その隙を付かれてボールを奪われることも増えてきた。
一向に戦況が変わらない試合に、日向は苛立ちを見せた。
「チッ、連中急に守りの動きが良くなったな」
「・・・どうやら、俺の予想通り、ただのつまらない試合にはならなかったみたいですね」
「フンッ、弱い連中が息を吹き返しただけだ。サッカーの実力までは変わらねぇよ」
「でも、油断はできませんよ。少なくとも、あの10番の選手は他の選手と違う。あいつは俺や幸太郎さんと同じステージにいる選手です」
そう言って、ハルは真剣な表情で翼を見つめる。
「青空翼、か・・・どこまでも真っ直ぐで、ボールを友達と呼ぶほどサッカーへの熱い情熱を持っている(そう、まるであいつみたいに・・・)」
「そんな奴が、よくこれまで表舞台に出てこなかったな。お前、あいつについて聞いたことあるか?」
「いいや、ありません。俺は公式戦が中学のサッカーが初ですし、同年代の選手のことはあまり興味ありませんでしたから。幸太郎さんはどうなんです?」
「俺もないな。あれほどの力を持った選手なら、小学生の頃に全国大会で戦ってもおかしくは――いや、待て」
自身の記憶を辿っていた日向は、突如言葉を止めた。
「翼、だと・・・!?」
次の瞬間、驚愕の表情になりながら、日向は翼の方を見た。
それは彼にとってはほんの小さな。けれども、今も尚彼の中に残り続けている記憶の欠片だった。
「ボールは友達」。キャプ翼と言えば、やはりこの言葉でしょう。
尚、友達を蹴るなよというツッコミは禁句だぜ♪
ヴィクロだと3点で前半が終わりましたが、この小説だと(日向が張り切ったせいで)それ以上の点が取られています。
まぁ、それでも漫画版ヴィクロに比べたらまだマシですけど!何故なら、漫画版だと――おっと、この先は貴方自身の目で確かめましょう。
翼の名前を聞いて、何かを思い出した日向。
ここで、原作『キャプテン翼』とこの世界の翼と日向の相違点を振り返りましょう。
・キャプ翼だと同学年なのに対して、この世界だと一学年が違う(日向が年上)
・二人共、一昨年の全国少年サッカー大会に出場し、日向のチームが優勝したのに対して、翼のチームは翼がロベルトを探すために決勝をボイコットしたので負けた。キャプ翼だと翼の南葛FCが優勝した(その後にロベルトと突然のサヨナラをしたので、翼は最後まで出場した)
・そのため、二人が出会うのは今回が初(大会途中に出会わなかったのかっというツッコミは無しで)
・にも関わらず、日向は翼を知っている素振りを見せた
このことを覚えた上で、次回の更新をお待ちください。
もしも日向にヒロインを付けるなら
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星村ナオ
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赤袖茉莉
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有海崎玲亜
-
梅雨咲多恵
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木下まつの(シグドママ)