超次元なサッカーでドライブシュートを打つ   作:イノウエ・ミウ

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イナイレクロスで公開されたあのコンセプトアートに、誰もが度肝抜かされたと思います。いや、ホント、やりやがったな公式!


遂にキャプ翼で有名なあのシュートが大空へ羽ばたきます。


TAKE(テイク) OFF(オフ)!!

前半を終えて、西ノ宮のベンチに戻った日向とハルを西ノ宮中の監督は笑顔で出迎えた。

 

「いやー、素晴らしい!流石は雷門の『サッカーモンスター』に『猛虎』!円堂ハルさん、日向幸太郎さん、ありがとうございます!」

 

こちらにゴマをするかのような態度で接する監督に対して、日向やハルは特に反応を示さない。雷門にいると、こちらにゴマをする相手と何回も接するため、今更されたところで嬉しくもないし、鬱陶しいとも思わない。

 

「後は我々に任せて、ゆっくり休んでください」

 

「は?」

 

しかし、次の監督の言葉に日向は反応し、思わず呆けた声を出した。

ハルもまた、困惑した様子で口を開く。

 

「え?後半俺たちはベンチに下がれってことですか?」

 

「はい!我が校の勝利はこれで確定しました!後はゆっくり休んでいただければ――」

 

「何言ってんだ?後半も出るに決まってんだろ」

 

西ノ宮の監督の言葉を遮って、日向が後半も出ると宣言する。

その言葉を聞いて、嫌そうな顔をしたのが西ノ宮の選手たちだ。

無理もないだろう。前半あれだけ大暴れしておきながら後半も出るというのだ。

ただでさえ、前半は殆ど日向とハルの二人だけで南雲原と戦っており、彼らは完全に蚊帳の外だった。その上、後半も出られると、自分たちは蚊帳の外どころか存在意義すら無くなる。

このチームは西ノ宮中サッカー部なのに、それを他校の選手に好き勝手され、良い気分になる者などいないだろう。

監督も選手たちの不満たっぷりの様子を見て、慌てながら日向とハルをベンチに下げようとする。

 

「いえいえ!遥々東京からお越しいただいて疲れているでしょうし!」

 

「俺は全然疲れてねぇよ。どうしても下げたいのなら、ハルだけ下げさせろ。俺は後半も出る・・・やられっぱなしでたまるかよ・・・!」

 

闘志を剥き出しに喋る日向の眼光に一瞬たじろぐが、すぐに反論しようとした。

すると、西ノ宮のマネージャー・・・南雲原中の生徒会長、千乃姫花の妹がおずおずと口を開いた。

 

「あのー、監督。私も下げるのは止めた方がいいかと思います・・・」

 

「何を言っているんだね君は!?」

 

「ヒッ!だ、だって、南雲原はわざと抵抗していないように見えたんです。特にあの10番の選手、途中から明らかに動きが変わりましたよね。最後は危なくゴールを決められそうになりましたし・・・」

 

監督の激しい剣幕にビクッとなりながらも自分の意見を言うマネージャー。

それでも監督は交代の意を曲げようとしない。

 

「あんなのはただの偶然!弱小チームの悪足掻きに過ぎません!現にお二人相手に殆ど何もできなかったではありませんか!最後のだって、結局は入らなかったわけですし、お二人の力が勝ってた(・・・・)証拠――」

 

「!?」

 

次の瞬間、監督の胸ぐらが突如日向に掴まれ、彼の顔面の近くまで引っ張られてた。

何事かと誰もが日向に目を向けると、胸ぐらを掴んでいる日向が静かに、けれども激しい怒気を含ませながら言った。

 

「俺たちが勝ってただと?テメェ・・・さっきの試合の一体何を見てたら、そんなふざけた言葉が出てくるんだ!」

 

「ヒッ!」

 

「そこまでです幸太郎さん。他校に暴力はマズいです」

 

直感的に危ないと感じ、すぐさまハルが胸ぐらを掴んでいる日向の腕を掴み、冷静に彼を諭す。

冷静な後輩の様子に怒りが抜けたのか、日向は掴んでいた手を離すと、どうでもいいと言わんばかりの様子で言った。

 

「・・・チッ、分かったよ。お望み通り、俺たちは下がってやるよ。後はお前らでやるんだな」

 

そう言うと、日向は後ろに振り返り、そのままベンチに向かう。ハルも監督に一礼すると、日向の後を付いていった。

その後ろ姿を西ノ宮の選手たちは敵意丸出しに見つめるが、これ以上自分たちのサッカーが汚されることはないと安堵しながら、後半に臨むのであった。

 

 

 

 

「どうにか収まったみたいですね」

 

西ノ宮のベンチの方を見ながら雲明が呟いた。

先程の様子は南雲原の面々も見ており、日向が相手チームの監督の胸ぐらを掴んだ時は何事かとハラハラしていた。

 

「流石『猛虎』。キレ方もおっかないですね」

 

「ただうるせぇだけだろ」

 

木曽路が顔を顰める横で、桜咲がどうでもよさげに呟く。

ひとまず何事も無かったようなので、こっちはこっちで後半に向けた作戦会議に移ろうと雲明が部員たちに向けて口を開いた。

 

「さて、ひとまず前半までの状況を整理しましょう。点差は0対5と西ノ宮が圧倒的にリード。向こうのチームは既に勝ったと思い込み、円堂ハルと日向幸太郎を下げることにしました・・・狙い通りです」

 

『!?』

 

狙い通りと言った雲明の言葉に、試合前に彼の狙いを説明された翼を除く部員全員が驚愕の表情となる。

すぐさま木曽路が困惑した様子で反論する。

 

「いやいや!狙い通りって5点差だぜ!全然こっちがピンチじゃんか!」

 

「そうですね。では、その5点は誰が取りましたか?」

 

「それは、円堂ハルと日向幸太郎だが――まさか!?」

 

雲明の問いかけに桜咲が答えかけたところで、雲明の意図に気づいた様子を見せる。

 

「今の南雲原が勝つためには、あの二人を下げさせる必要があります。その方法は、あの二人がいなくても、自分たちの力だけで勝てると思わせることです」

 

「だから前半は必殺技を使わなかったのか。俺たちが必殺技も使えない弱小チームだと相手に思わせるために」

 

「その通りです。もっとも、仮に必殺技を使ったとしても、あの二人相手には通じなかったでしょう」

 

二人でそんな会話をしていると、来夏が状況をイマイチ掴めていない様子で口を開いた。

 

「えーと、話が見えて来ないんだけど・・・あの二人がベンチに下がっても、こっちが点を取ったら、また戻ってくるんじゃないの?いくら相手が油断しても、流石にそれくらいは考えているんじゃ・・・」

 

「それは違います忍原先輩。サッカーは一度ベンチに下げた選手をもう一度フィールドに出すことができません」

 

「つまり、この試合円堂ハルと日向幸太郎は二度フィールドに立つことができないってことだ」

 

雲明と桜咲の説明を聞いて、来夏も理解したのか納得した様子で頷いた。

 

「向こうのチームは完全に僕らのことを侮っています。故にこれは絶好のチャンスです。相手が油断している今、後半で点を取って逆転します。まぁ、どっかの誰かが、予め手加減しろと忠告したにも関わらず、最後に本気を出したせいで、若干危ないところでしたが・・・」

 

そう言って、どっかの誰かこと翼の方をジト目で見つめると、翼は乾いた笑いで口を開いた。

 

「アハハ、意識はしてたんだけど、あの二人を相手に手加減したら、前半もっと点を取られていたよ。それに・・・俺たちのサッカーがお遊びだなんて言われて、黙っているわけにはいかないからね」

 

「・・・まぁ、正直僕も日向幸太郎のあの言葉を聞いた時は、試合中フィールドに殴り込んで物申したかったのですが・・・それは後半のプレイで証明してやりましょう」

 

「あぁ!俺たちのサッカーをお遊びって言ったことを否定させてやる!」

 

柳生が気合い十分な様子を見せる横で、木曽路が不安な表情で雲明に聞く。

 

「けどよ、あの二人が下がったとはいえ、向こうとの点差は5点差だぜ。本当になんとかなるのか?」

 

「そこは攻めるしかありません!とにかく攻めまくる!」

 

「適当かよ!?確かに、これしか方法はないけどさぁ!」

 

雲明の雑過ぎる作戦に木曽路がツッコミを入れる。

それを聞いてた翼は、後半の動きについて一人考えていた。

 

「(確かに、あの二人が下がったところで、こっちのピンチであることには変わりない。前半を戦って分かったけど、西ノ宮も決して弱い相手ではない。後半だけで5点の差を覆すのは難しい)」

 

「(けど、ついこの間完成させたばかりのあのシュートなら、短い時間で大量の点を取ることは可能だ。本当はもっと先の強豪校相手に使いたかったけど・・・チームの勝利には変えられない!)」

 

翼は意を決した顔で、桜咲に話し掛けた。

 

「桜咲先輩、後半開始の笛が鳴ったら、俺にボールを渡してくれますか?」

 

「何だと?」

 

「まずは1点、俺が相手ゴールにぶち込みます」

 

翼のゴール宣言に桜咲や他の部員たちが困惑する中、雲明だけは何かを察した様子で口を開いた。

 

「翼、まさかあのシュートを使うつもり?あれは、予選を突破してから解禁するはずじゃ・・・」

 

「フットボールフロンティアは、負けたら終わりのトーナメント式だ。今ここで勝たなければ、俺たちの夢はそこで終わりだ。切り札は取っておくものではあるけど、使い所を誤ったら意味はないよ」

 

「・・・それが、今だと?」

 

雲明の言葉に翼はコクリと頷く。

しばらく考えていた雲明だが、納得したかのように頷いた。

 

「・・・分かった。桜咲先輩、翼の言う通りにしてください」

 

「よく分かんねぇけど・・・了解だ。お前らを信じるぜ」

 

桜咲もキャプテンである雲明の指示に従うことを決めた。

そろそろ後半が始まり、両チームがフィールドに戻る中、翼は前半よりも雰囲気が明るくなった西ノ宮イレブンを見つめる。

 

「(西ノ宮中・・・前半の君たちは明らかに調子が悪かった。きっと、助っ人頼りのサッカーをしていたことが気に入らなかったんだね。けど、そんなサッカーをしてまで、この試合に勝ちたいという強い想いも感じた)」

 

「(だけど、負けられないのはこっちも同じだ!だから、後半は俺も全力で行かせてもらう!)」

 

翼は闘志を高ぶらせながらフィールドに向かった。

 

「(行くぞ西ノ宮中!俺のドライブシュート、まず初めにくらうのは君たちだ!)」

 

 

 

 

『いよいよ後半がスタートします!西ノ宮は前半に5得点を決めた円堂ハルと日向幸太郎を下げるようです!』

 

『これは既に勝ちを確信したということでしょうか?』

 

『一方の南雲原は、前半負傷した忍原が戻って来ました!』

 

『選手は11人に戻りましたが、この圧倒的な点差、果たして逆転できるのでしょうか?』

 

ピー!

 

後半開始の笛が鳴り、南雲原のボールでスタートする。

宣言通り桜咲からボールを受け取ると、翼は急に加速して、FWをドリブルで抜き去った。

 

「(このシュートは、ゴールが見えた瞬間に打て。ロベルトのノートにそう書いてあった)」

 

ロベルトのノートの内容を思い出しながらドリブルする翼の視線に、相手チームのゴールが目に映った。

 

「(見えた!相手のゴール!)」

 

次の瞬間、まだ相手のゴールとそれなりに距離があるにも関わらず、翼は足を振り上げてシュートの体勢に入った。

 

『青空!西ノ宮の陣内をまだ少しだけしか攻めていないのに、早くもシュート体勢に入りました!』

 

「ロングシュートか!?皆!シュートコースを塞げ!」

 

西ノ宮の司令塔、金星が翼がロングシュートを打つのに気づいて、DFに指示を出す。

DFがシュートコースを塞ごうと翼の前に立つが、それでも翼はシュートを打とうと足を振り上げた。

 

「(行くよロベルト。俺のドライブシュート――)」

 

TAKE(テイク) OFF(オフ)だ!!」

 

叫び声と共に打たれたボールが、鋭い縦回転を掛けながら、青空へ打ち上げられる。

予想外のロングシュートに、西ノ宮のDF陣は驚愕の表情で自分たちの頭上を通るボールを目で追う。

 

『青空!渾身の力を込めたロングシュートを打ちました!』

 

『ボールは空高く飛び上がって、物凄いスピードでゴールに向かっていきます!しかし、この高さでは、ゴールの頭上を超えてしまうのではないでしょうか?』

 

角馬の懸念通り、翼がシュートしたボールは、流星のようなスピードでゴールに向かっているが、高さが非常に高く、このまま突き進んでもゴールの頭上を超えるのは明らかだった。

日向もこれは入らないと思い、つまらなそうに言った。

 

「フンッ、勢いよく打ったはいいが、シュートミスか。いくら威力があっても、ゴールに入らないんじゃ意味は――」

 

「いいえ、このシュートは・・・落ちます

 

日向の言葉を遮る形で、真剣な表情でハルが言った瞬間、空中を飛んでたボールは突如急降下して――

 

バシュ!!

 

ゴールネットに突き刺さった。

 

『は、入った!!ゴールの頭上を超えるかと思われたボールですが、突然急降下してゴールネットに突き刺さりました!後半開始して僅か1分!南雲原、初の得点です!』

 

「「「なにぃ!?」」」

 

後半の開始直後にいきなり1点を入れられ、西ノ宮の選手は驚きの声を上げる。

南雲原側も目の前に起きた出来事が信じられなくて唖然としている中、それを起こした張本人が安堵した様子を見せた。

 

「入った・・・」

 

「凄いよ翼君!」

 

「やるじゃねぇか!」

 

我に返った来夏と桜咲が翼の下に駆け寄り、彼を褒め称える。

 

「翼君、いつの間にあんなシュートを覚えたんですね」

 

「毎日夜遅くまで特訓してました。僕も初めて見た時は驚きましたよ」

 

香澄崎が目を見開いたまま驚き、その隣で雲明も初めて翼の『ドライブシュート』を見た時のことを思い返していた。

一方、西ノ宮のベンチでは日向とハルが冷静に会話していた。

 

「驚いたぜ。まさかあの距離から決めるなんてな」

 

「はい。しかもあれは、ただのロングシュートじゃありません」

 

そう言って、ハルが翼のシュートについて解説する。

 

「ドライブシュート、ボールに強い縦回転をかけて、打ち上げたボールをゴール手前で落として決めるシュート。本来ならループシュートやワンバウンドシュートと変わらない、必殺技とは言えない普通のシュート技の一つです」

 

「ですが、あのシュートは回転の鋭さや打ったボールのスピードが普通のドライブシュートよりも上です。それに、あの距離からゴールを直接狙えたことを考えると、かなり遠くからでも狙い打つことが可能です」

 

「あれはもう、『ドライブシュート』という一つの必殺技だと思った方がいいでしょう」

 

ハルの説明を聞いた日向が彼に問い掛ける。

 

「俺のタイガードライブとあいつのドライブシュート、どっちが上だと思う?」

 

「・・・威力だけなら、いい勝負になりますが、不規則な位置に落ちるボールのスピードを考えたら・・・ドライブシュートの方が並のキーパーでは取れないと思います」

 

「・・・そうか」

 

自分のシュートが下と言われても、日向は反論せず、黙ってフィールドを見つめる。

しかし、その瞳には燃え上がるような闘志が宿っていた。

 

『さぁ、今度は西ノ宮のボールから試合再開です!』

 

「紛れだ!あんなロングシュート、紛れに決まっている!こっちはまだ4点もあるんだ!いつも通りのサッカーをするぞ!」

 

司令塔の金星がメンバーを鼓舞し、FWの糸居にパスを出す。

パスを受け取った糸居は、そのままドリブルするが、そんな彼の下に翼が迫ってきた。

 

'ギロッ'

 

「うっ!」

 

翼の獲物を狙う鷹のような鋭い眼光に怯んでしまう糸居。

 

「貰った!」

 

「しまった!」

 

その隙に柳生のスライディングでボールを奪われた。

 

「翼!」

 

翼は柳生からボールを受け取った瞬間、西ノ宮のゴールの方に振り向いたと同時にシュートを放った。

 

「もう一発!ドライブシュートだ!」

 

猛スピードで急降下するボールに、西ノ宮のGK好街は必殺技を出すどころかボールにすら反応できず、翼が打ったボールは空中に鋭い弧を描きながら、またもやゴールネットを突き刺した。

 

『入った!青空翼!またもや超ロングシュートを決めました!』

 

『素晴らしいシュートです!まるで、青空から翼を広げて、獲物を捕らえようと急降下する鷹のようです!』

 

『後半僅か5分、青空のドライブシュートが2本決まり、得点は2対5と徐々に南雲原が追いついて来ています!』

 

『前半5点取られた時は、西ノ宮の勝ちかと思っていましたが、これはまだまだ分かりませんね』

 

僅かな時間の間に繰り出された二回連続のミラクルシュートに、スタジアムが盛り上がりを見せる中、翼は冷静に呟いた。

 

「後4点」




今日の『燃えてヒーロー』:青空翼


<オマケ>
イナヴィク風『ドライブシュート』解説
・『ドライブシュート』(ロングシュート)
強力なドライブ回転を纏ったボールが大空に飛び上がり、
相手ゴールに向かって急降下するシュート。

もしも日向にヒロインを付けるなら

  • 星村ナオ
  • 赤袖茉莉
  • 有海崎玲亜
  • 梅雨咲多恵
  • 木下まつの(シグドママ)
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