超次元なサッカーでドライブシュートを打つ   作:イノウエ・ミウ

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第2章もいよいよラストです。


試合を終えて

『試合終了!得点は6対5で南雲原の勝利です!』

 

『前半で5点取られた時は、もう駄目かと思っていましたが、まさかの大逆転でしたね。特に注目すべき点は、なんと言っても青空選手のドライブシュートでしょう。後半開始早々に2点決めて、最後のゴールも彼が決めました。正に、南雲原のエースストライカーと言える働きぶりでした』

 

『そのエースを有した南雲原の今後が楽しみです』

 

ワー!!

 

南雲原のまさかの逆転劇に、スタジアムから歓声が響き渡る。

 

「いっただきー!!」

 

「初戦突破か・・・」

 

「うおおおおおお!!やったぜ!」

 

「は、はい、嘘みたいです・・・」

 

喜びのあまりジャンプしながら笑う来夏、冷静でありながらも何処か嬉しそうな様子の桜咲、大声を上げて喜ぶ柳生と彼に肩を組まれて驚きながらも喜ぶ亀雄。

公式戦初めての勝利に、南雲原の面々は喜び合っていた。

 

「(勝ったよ、ロベルト・・・)」

 

翼もまた、曇一つない青空を見上げ、師匠であるロベルトのことを思い浮かべながら微笑んだ。

ふと視線をベンチの方に向けると、雲明が翼を見つめていた。

 

グッ!

 

翼が雲明に向けて親指を立ててサムズアップすると、雲明もサムズアップで返した。

一方、喜び合う南雲原の面々を日向とハルは西ノ宮のベンチから見つめていた。

 

「負けちゃいましたね」

 

「・・・負けたのは俺たち抜きで戦った西ノ宮だ。俺自身が負けたわけじゃない」

 

「幸太郎さん、相当な負けず嫌いですね。それにしても・・・」

 

あくまでチームの負けであり、自分は負けてないと言う日向に苦笑いしながら、ハルは勝利を喜び合う南雲原の面々を見つめる。

 

「南雲原中・・・面白いチームですね。特に、ベンチで指示を出していた彼。そして、前半に俺を抜いたあの10番の選手」

 

「珍しいな。お前が特定の選手に興味を持つとはな」

 

「そりゃ興味を持ちますよ。公式戦で抜かれたのは初めてですから・・・」

 

そう呟くハルの表情は、何処か嬉しそうだった。

 

「こんな気持ちは久しぶりです。サッカーをやって・・・少しだけ楽しいと思えたのは・・・」

 

「青空翼・・・どうやら俺たちは、奴に一つ借りを作ったみたいだな」

 

そう言うと、日向は歩き出した。

 

「どこに行くんですか?」

 

ハルが後ろから聞くと、日向は立ち止まって、首をハルの方に向けながら答えた。

 

「決まってんだろ。あいつらに挨拶しに行くんだよ」

 

 

 

 

「よう、お前ら」

 

勝利を喜び合う翼たちに突如声が掛けられ、全員が振り向くと、前半に南雲原から5点もゴールを決めた日向とハルがそこにいた。

先程まで戦っていた敵チームの選手に南雲原の面々が警戒する中、雲明が前に出て対応する。

 

「驚いたぜ。まさかあんな戦法で勝つとはな」

 

「卑怯とは言わせませんよ」

 

「そんなことを言うつもりはない。あれは向こうのチームのレベルが低かったのと監督が無能だっただけだ。敵との力量を見極められず、お遊びサッカーで満足した結果だ」

 

「・・・仮にも助っ人を頼まれたチームに随分と質素ですね」

 

既に日向は向こうのベンチで落ち込んでいる西ノ宮の面々など眼中になく、ぞんざいに扱われる西ノ宮イレブンに哀れみを抱きながらも、雲明は前半に日向が言ったとある発言について問い掛ける。

 

「前半、僕たちのサッカーをお遊びだと愚弄したそうですね?」

 

「事実だろ」

 

「なっ!テメェ・・・!」

 

尚もお遊びと愚弄する日向に噛みつこうとした柳生を手で制止させながら、雲明は日向の言葉を待つ。

 

「・・・けど、後半のお前らの戦いを見て、少しだけ認識を改めてやるよ。お前らはお遊びのサッカーの中でも、多少マシなサッカーもするってな」

 

「多少マシですか・・・南雲原が本気のサッカーになるのには、まだまだ強くなる必要があるみたいですね」

 

そう呟く雲明をよそに、日向は視線を翼の方に向ける。

 

「青空翼だな」

 

「・・・そうです」

 

「俺はお前を知っている。二年前、全国少年サッカー大会の決勝で俺たち埼玉代表のチームと戦う時に、お前はチームにいなかったみたいだな」

 

「!? そ、それは・・・」

 

「別にそのことに関して、今更どうこう言うつもりはない。こうしてお前と戦って、お前が強い相手を前に逃げ出す臆病者でないことは分かった。そして、俺と互角に戦える選手であることもな・・・」

 

そう言うと、日向は翼に指を刺して宣言した。

 

「いいか翼!必ず本戦まで勝ち上がってこい!そして、決勝トーナメントで戦うことになったら、王者雷門のストライカーとして、全力でお前とお前ら南雲原を迎え撃ってやるよ!」

 

日向の力強い宣戦布告に対して、翼もまた力強く言葉を返す。

 

「望むところだ!俺たちは必ず勝つ!勝って、絶対に優勝するんだ!」

 

翼の言葉を聞いて、満足そうに微笑んだ日向は、隣にいるハルに声を掛ける。

 

「お前からは、何か言わなくていいか?」

 

「そうですね・・・」

 

そう言いながら、ハルは前に出ると、雲明に向かって言った。

 

「ねぇ、君はどうして試合に出ないの?」

 

「え?」

 

「君はかなり高いレベルでサッカーを知っている。今日の試合で大活躍した()と同じくらい。なのに、なんで?」

 

予想外の質問に雲明は戸惑いを見せる。

事情を知っている南雲原の面々が心配そうな顔で見守る中、雲明はハルの質問に答えた。

 

「僕はサッカーができないんだ。病気でサッカーをやることを禁じられている」

 

「!?」

 

日向が一瞬驚いた顔でこちらも見た。

彼も去年まで怪我でサッカーができなかった身であるため、同じくサッカーができない雲明に対して、何か思うことがあったのだろう。

一方、質問をしたハル自身は、特に反応を示さず、興味無さそうに言葉を続ける。

 

「そうなんだ。それで、いつ治るの?」

 

「・・・・・・」

 

その質問に対して、沈黙で返す雲明。

その意味を理解したハルは、笑顔でこう聞いた。

 

「それじゃあさぁ、なんで無理にサッカーやるの?サッカーじゃなくても、楽しいことはいっぱいある。できることをすればいいじゃん」

 

その言葉を聞いて、南雲原の面々は険しい顔でハルを睨んだ。

彼らにとっては、サッカーに対して真剣に向き合ってきた雲明にとって失礼極まりない物言いであり、侮辱されているとしか思えない発言だった。

しかし、雲明本人は怒りの感情を見せず、冷静にハルの言葉を受け止めていると、日向がハルの頭に拳骨をお見舞いした。

 

「痛っ!」

 

「・・・お前の母ちゃんから言われてな。もし、お前が向こうの連中に迷惑や不快な想いをさせたら、拳骨一発だけなら許すってな」

 

そう言って、日向は痛みで頭を押さえているハルの首を自身の腕で締めた。

 

「ちょ、幸太郎さん!く、首が締まる!」

 

「デリカシーのない後輩へのお仕置きだ馬鹿野郎」

 

ハルが日向の腕を掴んで必死に引き剥がそうとするが、日向の腕力は力強く、ハルの力では引き剥がすことができなかった。

日向は腕でハルの首を締めたまま、雲明たちの方に顔を向ける。

 

「悪かったな。うちの後輩が変な空気にさせたみたいで」

 

「いえ、大丈夫です・・・」

 

「そうか。なら、俺たちは行くぜ」

 

そう言って、日向たちはこの場から去ろうとした。

 

「ま、待ってください!」

 

その背中を雲明は慌てた様子で呼び止めた。最後にハルに聞きたいことがあったからだ。

日向が足を止めて、こちらに振り向いたのを確認すると、雲明はハルに問い掛ける。

 

「サッカーが凄く上手くて、皆からも尊敬されるプレイができる。それって、どんな気持ち?」

 

質問を受けたハルは、少し悩んだ顔をしつつも、すぐ笑顔になって答えた。

 

「サッカーができるからって、何でも無いよ。サッカーが普通の人より少し上手い、ただそれだけだよ。望んでやってるわけでも――いたたたたた!!」

 

「質問はもういいか?」

 

「あ、はい」

 

失言しかけたハルの首を再度締めながらそう言ってきた日向に対して、思わず呆けた返事をしてしまう雲明。

それを見た日向は、ハルを連れてここから立ち去った。

その道中、日向はハルにだけ聞こえる声で言った。

 

「サッカーができないってのは、お前の想像以上に辛いことなんだよ」

 

「え?」

 

「お前は味わうな。俺やあいつのような気持ちをな」

 

真剣な表情で言ってきた日向に、ハルは何も言い返すことができなかった。

一方、残された南雲原には先程のハルの発言もあって、モヤッとした空気が流れていた。

そんな中、翼がふと口を開いた。

 

「・・・初めて彼のプレイを見た時、違和感を感じたんだ。そして、今日彼と戦って分かったよ」

 

翼の呟きに皆が翼に視線を向ける中、翼は自身が感じたハルの印象について語り出した。

 

「円堂ハルはサッカーを楽しめてないんだ。相手を抜いた時もゴールを決めた時も、彼が喜ぶことはなかった。彼にとってサッカーは、勝って当たり前のつまらないスポーツ。そう思ってしまうほど、円堂ハルのプレイは孤独だった」

 

「僕も同じことを感じたよ。プレイこそ凄まじいものだったけど、円堂ハルは純粋にサッカーを楽しんでいるように思えなかった」

 

「・・・円堂ハルは、ありえたかもしれない俺だと思うんだ」

 

そう言いながら、自身とハルの境遇とその違いについて翼は語る。

 

「俺にはサッカーボールの他に、尊敬できる師匠と俺と対等に戦えるパートナーがいた。でも、彼の周りには、自分に付いてこれる仲間や寄り添ってくれる人がいなかったと思うんだ。ただ一人、孤独でサッカーをし続けて、いつしかサッカーそのものを楽しいと思えなくなってしまった」

 

「親の偉大さと天性の才能を持った故に、孤独になった天才ということですか」

 

「『サッカーモンスター』か・・・俺もロベルト達がいなかったら、あんな風になっていたのかな・・・」

 

そう呟く翼の顔は何処か悲しそうな顔をしていた。

それはハルの孤独に対する同情なのか、それともありえたかもしれない自分の姿に対する恐怖なのか、翼自身にも分からなかった。

 

「気にすんなって」

 

ふと木曽路がそんなことを言ってきて、翼と雲明は彼の方に顔を向ける。

 

「もしもとか、かもしれなかったとか、そんな可能性の話をしても意味ないだろ。今ここにいるのは、南雲原中サッカー部の青空翼だろ。なら、そのままの翼でいれば良いんだよ」

 

「ソジ君・・・」

 

「雲明もだ。できることをやるんじゃなくて、自分のやりたいことをやる。その方が幸せだろ?だから、お前は何も間違ってないよ」

 

「木曽路・・・」

 

木曽路の言葉を聞いて、心のつかえが取れたかのような顔になる翼と雲明。

 

「そうだね。可能性の話をするより、今はこれからの事を考えよう」

 

「1回戦を無事突破して、サッカー部を存続させることができた僕たちの次の目標は2回戦の突破。きっとこの先、想像を絶する戦いが僕らを待ち受けていると思う」

 

「望むところさ」

 

そう言って、翼は曇一つない青空を見上げる。

 

「次も必ず勝とう雲明君。このフットボールフロンティアで勝ち続けて、円堂ハルと日向幸太郎がいる雷門中に俺たちは挑む」

 

「そして、彼らにも勝って、俺たちは日本一になるんだ!」

 

拳を高く突き上げて、青空に向かって宣言する翼。雲明や木曽路たちも晴れ晴れとした笑顔で見守る。

一回戦を突破した彼らは、次なる目標に向けて突き進むのであった。




今日の『燃えてヒーロー』:青空翼、笹波雲明、日向幸太郎、円堂ハル


・次章予告

「北陽学園、『パーフェクトサッカーの北陽』と呼ばれ、千密な戦略で勝利を収める九州屈指の強豪校です」

「連携必殺シュート『春雷』。完成させなければ、南雲原の勝利はありえません」

「君のドライブシュート、全力で打ってくれ!」

「ねぇ、君さぁ・・・北陽(うち)に来なよ」

「俺の仲間を侮辱するな!」

次章、第3章『戦術サッカーを攻略せよ!』


イナズマイレブン今日の格言
「お前の人生はお前の物だ。なら、お前が進みたいと思う道を進めばいいだろ」


ようやく第2章が終わりました!日向の過去から西ノ宮戦まで結構長かったです。
次回からは北陽戦です。翼と泣き虫ストライカーの彼との関わりにも注目です。


アンケートの方も終了します。結果ですが、本編で出番があった星村や人気キャラの赤袖に対抗するかのように、まさかのシグドママ上位はビックリしました。
だけど、よくよく考えたら、このイナズマイレブンという作品自体、五条さんや壁山という婦女子受けしないキャラが人気投票で一位になる作品なので、オタク受けしないシグドママが上位に入ってもおかしくはないと納得した自分もいます(笑)。
ちなみに、仮にもしも日向にヒロインを付けるなら、女子メンバーの中で唯一交流がある星村になるかもしれません。ただ、星村はヴィクロの描写的にハルとくっつきそうなんだよなぁ・・・
アンケートも次回更新するので、そちらも楽しみにしてください。

もしも日向にヒロインを付けるなら

  • 星村ナオ
  • 赤袖茉莉
  • 有海崎玲亜
  • 梅雨咲多恵
  • 木下まつの(シグドママ)
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