超次元なサッカーでドライブシュートを打つ 作:イノウエ・ミウ
もしも世界編なら、シュナイダーやディアスなどジュニアユース編で登場するライバルも登場させたいです。
前半が終わり、南雲原はベンチで後半に向けた作戦を立てる。
「おい、雲明!なんでまだ春雷を使わないんだ!こっちは1点取られてんだぞ!」
前半で1点取られて尚も『春雷』を使うなと指示する雲明に桜咲が反論する。
「まだ打ってはいけない理由があるんです。必殺技は必殺である状態で打つんです」
「なら、せめてその必殺の状態がいつ来るのか教えろよ!」
「それは分かりません!」
「はぁ!?」
雲明の返答に桜咲は驚きの声を上げる。他の部員たちも雲明の作戦に不満を抱いている。
そんな中、翼は雲明の言葉を聞いて、師であるロベルトのことを思い出した。
「(必殺技は必殺である状態で打つ、か・・・そう言えば、ロベルトのノートにも同じようなことが書かれていたな・・・)」
翼はロベルトのノートに書かれていた内容を思い返す。
『翼、サッカーをやるのに欠かせないのが必殺技だ。必殺技には色んな種類があって、その可能性は無限に広がっている』
『けれど、必殺技は必ずしも100%成功するわけじゃない。必殺技は人によって効かない場合がある』
『だから、相手によって使い分けること。そして、タイミングを見て使うことが大事なんだ』
「(必殺技は相手によって使い分け、ベストのタイミングを見極めて使え。それが、ロベルトのノートに書かれていた必殺技の使い道だった。なら、俺がすべきことは・・・)」
翼はロベルトの教えを胸に、新たな決意を固める。
その間にも、南雲原には不穏な空気が続いたが、その空気を変えたのはマネージャーの千乃だ。
「あなた達は笹波君を監督と認めているんじゃなかったの?自分たちが選んだ監督を信じなくてチームが纏まるのかしら」
千乃の言葉に、思わず言葉を詰まらせてしまう一同。
「皆、千乃会長の言う通りだ。雲明君の言う必殺である状態は、きっとこの試合で必ず訪れるはずだ。そのタイミングを見極めて、俺が前線にいる2人にパスを送ります。それでいいかな?雲明君」
翼も千乃の言葉に賛同しながら後半の動きについて雲明に聞く。
雲明はしばらく悩んでから頷いた。
「・・・分かった。春雷を打つタイミングは翼に任せるよ」
「おい、雲明!」
桜咲が不満そうに雲明を見るが、彼が指示を変えることはなかった。
その横で来夏が翼に声を掛ける。
「翼君、春雷は・・・」
「少なくとも、今はまだ打つタイミングではないと思います。この後半で打つべきタイミングを見つけて、指示を出します」
「・・・・・・」
翼の言葉に来夏は何処か不安そうな顔をしていた。その顔は『春雷』を使えない不安ではなく、自責の念に駆られているかのような顔だった。
後半が始まり、選手たちがフィールドに戻る中、翼は地面を見る。
まだ若干濡れているが、前半より乾いていた。
「乾いてきたな・・・これなら後半動きやすくなりそうだ」
いつもと変わらないフィールドに戻ったことを確認しながら、翼はピッチに立った。
後半開始の笛が鳴り、桜咲からボールを受け取った翼がドリブルする。
そんな彼の前に空宮が立ちはだかる。
「勝負だ!空宮征!」
「いいぜ。受けてやるよ!」
翼は敢えて空宮に勝負を仕掛けて、空宮もそれに乗って迎え撃つ。
2人の蹴りがボールに激突し、その衝撃で2人の体がふっとぶ。
「(くっ、なんてパワーのある蹴りだ・・・!)」
「(いってー、キック力は互角みたいだな・・・!)」
2人の衝突で弾かれたボールを妖士乃が拾い、迫る北陽選手を前に彼はドリブル技を披露する。
「あやかしドリブル!」
ドリブル技で突破した妖士乃は、空宮との激突から体勢を立て直した翼にパスをする。
「ドライブシュート!」
パスを受け取った翼は『ドライブシュート』でゴールを狙う。
「何度やっても無駄だ!グラビティデザート!」
しかし、前半同様に陣内の『グラビティデザート』がゴールを阻んだ。
『またしてもドライブシュートが止められました!最早グラビティデザートを破る術はないのか!』
『前半に比べて
「(クソッ!せめて、あのキーパー技の弱点さえ分かれば・・・いや、ちょっと待て。威力が上がった?)」
翼は先程角馬が言ってた'威力が上がった'という言葉に疑問を浮かべた。
「(どうしてあの解説は、ドライブシュートの威力が上がったと思ったんだ?)」
翼は前半と変わらないフォームで『ドライブシュート』を打った。にも関わらず、威力が上がったと言った角馬の言葉の意味が分からなかった。
どうして彼は威力が上がったと思ったのか。考えている中でふとフィールドの地面を見た。
「(そう言えば、ドライブシュートを打つ時、前半よりも周りに砂が宙に舞って、目に入りそうになったな。後半になって、濡れてた地面が乾いたから、ドライブ回転を掛ける際に砂が舞うようになった――)っ!?」
そして、翼は気がついた。雲明が言ってた『春雷』を打つなという指示の意図に。
「(そうか!そういうことだったんだね・・・雲明君)」
翼は笑みを浮かべながら雲明の方を見る。彼も翼の視線の意味に気づき、コクリと頷いた。
陣内のパントキックから品乃にボールが渡ると、『シナノフォーム』で再び陣形を組みながら攻める北陽。
「妖士乃先輩は7番をマーク!雨道さんは6番に付け!」
対する翼もチームメイトに指示を出して、徹底的パスコースを封じる。
ボールを持つ品乃は冷静に見渡しながら、空いているコースにパスを出す。
しかし、それも翼の作戦の内だった。
「今だ!古手打さん!」
「任せて!」
古手打が持ち前の瞬発力でボールに反応し、パスをカットした。
「木曽路君!」
「あいよっと」
古手打から木曽路にパスが渡るが、渡った瞬間に空宮がスライディングでボールを奪う。
「貰ったぜ」
「うわっ!」
木曽路がボールを奪われ、空宮をマークしている柳生と亀雄が急いでボールを奪おうとする。
「クソッ!」
「止めなきゃ!」
「甘いぜ。オーバーグロウ!」
空宮はボールを2人に向かって蹴ると、ボールが突如強烈な光を放ち、2人の目をくらませて、その隙を付いて突破した。
「させるか!」
「なにぃ!?」
しかし、光の範囲から離れていた翼のスライディングでボールが弾かれ、フィールドの外に出た。
『青空!ボールを外に出して、どうにか危機を脱しました!』
『南雲原は空宮をマークしてる3人のスタミナが切れかけているように見えます。このままでは、試合が終わる前にスタミナ切れを起こしてしまうのではないでしょうか?』
角馬の言う通り、『ブロック・ザ・キーマン』で空宮を封じている亀雄と木曽路と柳生の3人はかなり疲弊しており、試合終了前までにスタミナ切れを起こすのは時間の問題だった。
南雲原は一旦タイムを取り、その間集まって作戦を立てる。
「クソッ!もう時間がねぇ!こうなったら、意地でも春雷を使って――」
「分かったよ。雲明君が春雷を使おうとしなかった理由が」
意地でも『春雷』を使おうとした桜咲だが、翼の言葉に反応し、彼を含めて全員が翼の方を見る。
「本当かそれは!?」
「あぁ、雲明君が春雷を使おうとしなかった
「あたし、だよね?」
翼の言葉を遮るように来夏が言った。
暗い顔で翼を見つめる彼女を見て、桜咲が疑問の声を上げる。
「どういうことだ?」
「実は・・・来夏先輩は足を痛めているんです」
「そう、なのか・・・?」
思わず来夏の方に視線を向ける桜咲。
来夏は何も言わなかったが、その暗い表情が肯定を意味していた。
「実は・・・先輩は春雷の特訓だけでなく、ドライブシュートを足で受け止める特訓をしてたんです」
「ドライブシュートを足で受け止めるだと!?なんで、そんな無茶な特訓をしたんだ!」
来夏の方を見ながら桜咲の怒号が響く。
無理もないだろう。翼の『ドライブシュート』は南雲原の中では現段階で一番強力なシュート技だ。それをパスとして足で受け止める特訓を『春雷』の特訓と一緒に行っていたのだ。当然、足も痛めるだろう。
来夏は俯きながら消え入りそうな声で言った。
「・・・この先、強い相手と戦うために、シュートだけでなく、強いパスにも反応できるようにって思ったの。春雷の起点になっているのは、あたしだから・・・」
「それで、つい先日、来夏先輩に頼まれたんです。俺のドライブシュートでパスを出して、それを先輩が受ける特訓をさせてくれないかって」
「どうして止めなかったんだ!ドライブシュートがどれほどの威力があるのか、シュートしてるお前が一番分かっているはずだろ!」
「・・・すみません。先輩の強くなりたいという想いに応えたくて、断ることができませんでした。それに、俺も先輩の考えは正しいと思ったからです」
「・・・たく、無茶しやがって」
桜咲は一瞬言葉を失い、深く息を吐いた。無茶をした来夏やそれを容認した翼に怒りはあるが、同時に強くなりたいと思う彼女たちの気持ちも理解できたからだ。
「お願い翼君。足を痛めたのは、無茶なオーバーワークをしたあたしの責任。でも、あたしはこんなところで負けたくない。ここで負けるくらいなら、この足が壊れた方がマシよ」
来夏は顔を上げて、翼の方を見る。その瞳には強い闘志が宿っていた。
他の皆も翼がどんな答えを出すのか見守る中、彼は突然しゃがんでフィールドの地面を手で触りだした。
「お、おい、翼!」
柳生が驚きながら翼に声を掛ける。皆から視線を向けられる中、翼は何度かペタペタと地面に手を付けているとニヤリと笑った。
翼は地面から手を離して立ち上がり、桜咲と来夏に向けて言う。
「・・・分かりました。試合が再開された後、北陽からボールを奪ったら、2人は前線に上がってください。俺がパスを出して、2人に繋げます」
翼の言葉に待ちくたびれたと言わんばかりに来夏や桜咲たちの顔が明るくなった。
そんな中、翼は来夏に対して、先の彼女の言葉に一つ間違いがあったことを伝える。
「来夏先輩、一つだけ間違いがあるので訂正させてください。雲明君が春雷を使うなと言ったのは、先輩の怪我が原因じゃありません」
「え?・・・どういうこと?」
「その答えは、春雷を打ったら分かります。今は春雷を打つことに専念してください。さぁ、そろそろ試合が再開されます」
そう言うと、翼はフィールドに戻り、来夏たちも疑問を残しながらも配置に付いた。
北陽ボールで再開し、空宮にボールが渡る。
「止めろ!」
柳生を初め、DF陣が空宮を止めようとする。
空宮はドリブルで次々と躱していき、柳生のスライディングもジャンプで躱した。
「無駄だ。君たちに俺は止められないよ」
「そいつはどうかな・・・古道飼!」
柳生が声を上げた瞬間、亀雄が空宮の着地の瞬間を狙って止めに入った。
「ダンシングタートル!」
「なにぃ!?」
亀雄は自身を高速回転させて、フィールドを乱舞しながらボールを奪った。
空宮からボールを奪った亀雄は翼にパスを出す。
「翼君!」
亀雄からのパスを翼が受け取る。
「桜咲!」
「分かってる!」
それを見た瞬間、桜咲と来夏は一気に前線へ上がった。
「受け取れー!」
翼は渾身のロングパスを送り、そのボールは来夏の足下に届いた。
北陽も殆どの選手が前に出ていたため、ゴール前にはGKの陣内しかいない。
『青空の超ロングパスが忍原に届きました!南雲原、絶好のチャンスです!』
『しかし、陣内選手のグラビティデザートを破らなければゴールはできません』
角馬の言う通り、いくらチャンスでもゴールができなければ意味はない。現に南雲原はこの試合でまだ1点も決めれずにいる。
故に陣内は呆れ半分、けれでも北陽GKとして通さないという強い気迫で迎え撃つ。
「無駄だ!お前らに俺のグラビティデザートは突破できん!」
「それはこれを防いでから言いなさい!行くよ桜咲!」
「来い!」
桜咲の掛け声に合わせて、来夏は回転を掛けながらボールを蹴った。
強烈な回転が掛かったボールが螺旋を描きながら空高く飛び、そこにジャンプした桜咲がタイミングを合わせて力強くボールを蹴り落とした。
「春雷!」
蹴り落とされたボールは地面にぶつかり、辺り一面に粉塵が飛ぶ。
次の瞬間、粉塵の中から紫電の一閃が飛び出し、ゴールに突き刺さった。
「なにぃ・・・!?」
遅れて陣内が呆然とした様子で後ろに振り向き、ゴールに入ったボールを見つめる。
『入ったー!南雲原の新必殺シュートが見事ゴールに突き刺さりました!南雲原、これで同点です!』
ワー!
田部の声と共にスタジアムから歓声の声が響き渡る。
その歓声を受けながら、桜咲と来夏は勇ましい佇まいで言った。
「これがあたし達の――」
「『春雷』!」
新必殺技の公開とその凄まじい威力に盛り上がるスタジアム。
南雲原は点を決めて喜んでおり、対する北陽は未だフィールドに粉塵が舞う『春雷』の威力に呆然としている。尚、空宮は「スゲー、これが雲明の切り札か」と嬉しそうにしてた。
その一方で『春雷』を打った2人は、練習の時よりも『春雷』の威力が上がったように見えたことに疑問を浮かべた。
「だが、ここまで効果が大きいとはな・・・」
「確かに、練習の時以上に見えたけど・・・どうして?」
「その答えは・・・フィールドの地面です」
2人の疑問に答えたのは翼だった。
「地面だと?」
「はい、春雷は打つときに強烈な回転が加わります。その際、地面の砂が大きく舞いますが、前半の濡れた地面だとその効果が半減します。一方、後半の乾いた直後の地面で打てば、その効果は最大限に発揮されます」
「なるほど。粉塵が大きくなれば、シュートの全貌が見えなくなり、分析が遅れる。北陽も見えないシュートの分析は難しいだろう。君は気づいていたのかい?翼君」
「いえ、俺も前半までは気づけなかったです。気づいたのは、後半ドライブシュートを打って、前半よりも砂が多く舞ったのを見たからです」
「翼ですら試合中じゃないと気がつかなかったのか。それを試合が始まる前から気づいていたのか・・・笹波雲明、とんでもない奴だぜ」
試合が始まる前から『春雷』の粉塵効果に気づき、効果が大きい状態になるまで打つなと指示した雲明の戦術眼に柳生が感心する。
しかし、そこで木曽路が一つ疑問を述べる。
「けどよ、そういうことなら最初っから言えば良かったじゃん。なんで、雲明は俺たちに言わなかったんだ?」
「それは多分、相手に気づかれないようにするためだと思う。もし、試合が始まる前に聞いてたら、俺たちはそのことを意識しながらプレイしてたはずだ。そうなれば、途中で気づかれる可能性があったからね」
そうなのか?と言わんばかりの視線を雲明に向ける桜咲たち。
視線に気づいた雲明は、ベンチから口を動かして口パクで言った。
サ・プ・ラ・イ・ズ
「なんか、サプライズって言ってるんだけど・・・」
「まぁ、そういうことにしてあげよう」
木曽路の指摘に対して、翼は笑いながら返した。
「何はともあれ、これで同点だ!」
「あぁ、ここから一気に逆転してやるぜ!」
桜咲と柳生が士気を高めると、その姿に触発されるように他の選手たちも活気づいてきた。
翼もその姿に触発されながらも、チームの司令塔として指示を出す。
「ここからは桜咲先輩と来夏先輩を主体に攻めます。向こうの攻めには、俺が皆に指示を出して、相手のタクティクスを無効化します」
皆が異論はないと言わんばかりに聞く中で、翼は更なる方針を示す。
「それともう一つ。ここからは空宮にブロック・ザ・キーマンは必要ありません。というより、残り時間でブロック・ザ・キーマンを継続するのは、今のままでは不可能です」
「・・・まぁ、体力的に俺らもそろそろ限界は来てるけど・・・」
木曽路は自身の体力が限界に来ていると感じたため、特に反論はしなかったが、その隣で柳生が口を開く。
「けどよ、そうしたら誰が空宮を止めるんだよ?」
柳生の問いに対して、翼は力強く答えた。
「空宮は・・・俺が止めます!」
『!?』
翼の宣言に柳生たちが驚く中、桜咲が聞いた。
「行けるのか?」
「勿論です。そのために・・・俺はこの背番号10を付けているんですから」
エースの役割を持つ背番号、10番を背負う翼の覚悟を見た仲間たちは、彼を信じてフィールドに戻った。
翼もまた、静かに闘志を燃やしていた。
「(試合は残り15分・・・決着を付けるぞ!北陽学園!)」
フットボールフロンティア地区予選九州・沖縄ブロック準決勝の試合も、最終局面を迎えるのであった。
今日の『燃えてヒーロー』:桜咲丈二、忍原来夏
『春雷』の粉塵効果は、翼自身が『ドライブシュート』を打って、前半よりも砂が舞ったのを見て気づきました。
次回で第3章終わりです。南雲原は果たして勝てるでしょうか!?翼VS空宮の勝負の行方は!?次回も楽しみにしてください。
次に見たいキャプ翼のキャラ(オリキャラ)は?
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岬太郎
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若林源三
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三杉淳
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松山光