超次元なサッカーでドライブシュートを打つ 作:イノウエ・ミウ
南雲原中サッカー部部室。旧体育倉庫を改造したこの場所で雲明たちサッカー部は集まっていた。
「それで笹波、この間のあいつは本当に来るんだろうな?」
雲明にそう聞いてくるのは、一週間前の試合後にサッカー部に入部した元野球部の柳生駿河。
「絶対に来ます。今朝一年に転校生が来て、確かめに行ったら彼がいました。古道飼君と同じクラスだったので、ここに連れてくるよう彼に頼んでおきました」
雲明がそう言った瞬間、亀雄が部室に入ってきた。
「あのー、青空君を連れてきました・・・」
そう言ってきた亀雄だったが、何処かぎこちない様子の彼に違和感を覚える一同。
何かあったのか雲明が聞こうとした瞬間、あの時のサッカー少年青空翼が部室に入ってきた。
「どうも、今日転校してきた青空翼です・・・」
『(なんか暗い!?)』
初めて会った時とは一転して、めちゃくちゃ落ち込んでいる様子の翼を見て、皆の心は見事一致した。
桜咲が代表して亀雄に問い掛ける。
「おい、そいつどうしたんだよ?」
「えーと、転校して早々にサッカーボールを持ち出して、校内でドリブルしてたところを風紀委員に見つかって・・・」
「それでボールを没収されて落ち込んでいるってことですか」
「いやいや、ボール取られたくらいでそこまで落ち込むか!?」
「つか、なんで校内をドリブルしてんだよ」
「こればかりは風紀委員は正しい仕事をしたと言わざるを得ないね」
四川堂の呟きにうんうんと頷く一同。木曽路や桜咲も翼の奇行に少し引いていた。
「ボール、俺の友達、ボール・・・」
その話題となっている本人は、呪いに掛かったかのように同じ言葉を連呼してた。
早速自己紹介してもらおうと思っていたが、肝心の翼がこの調子では話が進まない。
「仕方ありませんね。彼のボールを取り返しにいきましょう」
「取り返すって・・・風紀委員から?」
「当然です。さぁ、行きましょう!」
風紀委員から翼のボールを取り返すため、雲明たちは部室を出る。
そして、一時間後。
「俺のボール!良かったぁ、無事だったんだね!」
部室に戻ってきた雲明たちは無事サッカーボールを取り戻し、翼にあげると彼はボールに抱きつきながら大喜びした。
「これで問題は片付きましたね」
「本当に片付いたのか・・・?」
一件落着と言わんばかりの顔をする雲明の横で複雑そうな顔をする木曽路。
何せ、サッカーボールを取り返す際に「彼はサッカー部だからボールを持ち込んでも何も問題ありません」「校内にサッカーボールを持ち出したら駄目というルールがこの学校にあるんですか?」「青空翼はあなたのようなモブじゃない」と風紀委員をボロクソ言って、最終的にメンタルをへし折るという話し合いというよりハラスメントに近い方法で取り返したのだ。後で色々訴えられないだろうかと心配する木曽路だった。
そんな木曽路の様子を気にもしない雲明は、翼の入部を歓迎した。
「改めてになるけど、南雲原中サッカー部にようこそ青空翼君」
「翼でいいよ。同じ学年だし、敬語もいらないよ。これからよろしく」
「おう、よろしくな!俺は木曽路兵太。雲明とは同じクラスで友達だ。気軽にソジって呼んでくれよ」
「分かったよ、ソジ君」
「お!ノリがいいねー。初対面で無愛想だった雲明とは大違いだ」
「無愛想とは失礼な。あの時は関わると面倒なことになりそうだったから関わらないようにしただけだ」
初めて雲明と出会った時に塩対応されたのを根に持ってそうな木曽路の言い分に対して、心外だと言わんばかりに喋る雲明。
そこに来夏が翼に話し掛ける。
「ねぇ、翼君ってサッカーめちゃくちゃ上手だったけど、いつからサッカーやってるの?あ!あたしは二年の忍原来夏ね。よろしくね」
「よろしくお願いします忍原先輩。サッカーは生まれた時からずっとやってます。ずっと、こいつと一緒でした」
「こいつって・・・そのサッカーボールのことか?」
そう言って、木曽路が指差したのは翼が持っているボールだ。
「うん!ボールはいつだって俺の友達だ!」
「そう言えば、前の試合でサッカーボールに話していたね。あれも何か意味があったのかい?あぁ、僕は四川堂我流。サッカー部員だけど、生徒会の副会長もしてる」
「ボールに話し掛けた?」
自己紹介をしつつ四川堂が先の試合で翼がボールに話し掛けた理由を問う。
木曽路や皆が疑問符を浮かべる中、翼は笑顔で理由を言う。
「それは勿論、友達だからです。話すのは当然じゃないですか」
「そ、そうなんだね・・・」
「こりゃ、雲明と同じレベルのヤバい奴だな」
片やイメージでサッカーをする
「それよりも、本当にあの時みたいなプレイができるんだろうな?練習だからって手ぇ抜いたら、置いていくぞ。っと、俺は二年の桜咲丈二だ」
「その心配はいりません。例え練習であっても、俺はいつでも本気でプレイします」
桜咲の言葉に翼がそう答えると、柳生が前に出て口を開く。
「なら、早速勝負しようぜ。前にやられた借りも返さないといけないからな」
「勿論です!えーと・・・」
名前を聞こうとした翼に、柳生が手を出しながら名乗った。
「二年の柳生駿河だ。よろしくな、翼」
「こちらこそよろしくお願いします。柳生先輩」
柳生から差し出された手を翼は握り返した。
雲明たちは部室を出て、部室の近くにあるサッカーグラウンド(簡易的なもので大きさも通常より小さい)に集まった。
部員たちは各ポジションに配置し、彼らの先にはセンターラインの前でサッカーボールを足下に置きながら立っている翼がいた。
「まずは翼の実力を改めて見たいと思います。翼は全員を相手にゴールを決めて、他の皆は彼からボールを奪ってください」
「データはこちらで取っておきます。思う存分プレイしてください」
雲明と彼の隣にいるサッカー部のマネージャー百道唯奈がグラウンドにいる翼たちに向けて言う。
「言ってもよ。いきなり全員で相手するのは流石にきつくないか?」
「俺は構わないよ。相手が何人いようが、全員抜いてみせる」
木曽路が心配そうな顔をするが、当の本人はケロッとしてた。
試合開始のホイッスルが鳴り、前にいた桜咲と来夏がボールと取ろうと翼に向かって走る。
こちらに迫る二人の姿を確認した翼は、驚異的なスピードと繊細なドリブルで二人を抜いた。
「速っ!」
「前に見たとはいえ、こうして相手すると、とんでもないスピードだ・・・!」
野球部との試合で見たとは言え、その凄まじいドリブルテクニックを前に圧倒される桜咲と来夏。
「俺たちで止めるぞ!」
「は、はい!」
今度はMFの位置にいた柳生と木曽路が迫る。
それを見た翼は、ドリブルしてる足を一旦止めると、二人がいない場所にボールを蹴った。
驚きながらも二人は蹴られたボールに目を向けると、地面に付いた瞬間ボールに強烈なスピンが掛かり、驚いている隙を突いて二人を抜き去った翼の下に戻ってきた。
「「なにぃ!」」
「ボールが戻った!?」
「回転を掛けてやがったんだ!二人を抜いたタイミングといい、完璧すぎるだろ・・・!」
翼の高等テクニックに柳生と木曽路は驚愕の表情になる。
翼の後を追いかけていた来夏や桜咲、フィールドの外で見守る百道も驚いていた。
「今、横に蹴ったボールが翼君の下に戻って来ましたね」
「強烈な回転を掛けたボールを誰もいない場所に蹴って、相手を抜いたタイミングに合わせて、自分の下にボールを戻す。ドリブルの初歩的な必殺技ですね」
ドリブルの初歩的な必殺技『ひとりワンツー』の解説をしながら勝負の行く末を見守る雲明。
「と、通さない!」
DFの亀雄が緊張しながらも果敢に翼の前に立ちはだかる。
自分よりも体の大きい巨漢DFを前にしても、翼は冷静に対処する。
「うわっ!?」
翼の巧みなフェイントに反応できず、亀雄は尻餅を付いてしまう。
その隙に翼は亀雄を抜き、四川堂がいるゴールに向けてシュートする。
「させない!」
四川堂がジャンプしてボールを取ろうと手を伸ばしたが、その手はボールに届かず、そのままゴールに向かっていく。
しかし、ボールはゴール頭上のゴールバーに当たってしまう。翼のシュートは外れたようだ。
「外れましたね」
「・・・いや、まだです!」
雲明がそう言った途端、翼はゴールバーから跳ね返ったボールに向かって走り、大きくジャンプした。
そして、空中でオーバーヘッドの体勢になり、その体勢のままゴールに向けてシュートを放つ。
「なにぃ!」
「いっけー!オーバーヘッドだ!」
四川堂が驚く隙にオーバーヘッドを決める翼。
空中から打たれたボールは真っ直ぐゴールの右隅を捉え、ゴールネットに突き刺さった。
「わざとゴールバーに当てて、相手を油断させた隙に跳ね返ったボールをオーバーヘッドで決める。海外のプロ選手でも、簡単にできない大技ですが、それを中学生がやるのは初めて見ました」
「凄まじいサッカーセンスですね。サッカーを知らない私でも思わず見惚れてしまいました」
百道と会話しながら、雲明は翼の実力を解析していった。
「あいつマジでヤバすぎる。本当に同い年かよ・・・」
「全く見えなかったです・・・」
翼の圧倒的な実力を前に弱音を吐く木曽路と亀雄。
そんな二人に桜咲たち二年が活を入れる。
「まだだ!たかが一回抜かれただけで諦めんじゃねぇ!」
「勝負はこれからだ!気合入れろ!」
「よーし!俺も全力で行くぞ!」
翼もまた、彼らの全力に応えるべく、本気でプレイするのであった。
「「「ハァ、ハァ、ハァ」」」
一通りプレイし終わり、グラウンドに座り込みながら疲労困憊で荒い息をする桜咲たち。
「ボールが速すぎて、目で追うのがやっとだなんて・・・」
「とんでもないドリブルテクニックだ。あれほど繊細なドリブル、見たことねぇ」
「マジ一度抜かれると追いつけねぇよ」
「シュートもあの時より更にパワーが上がってたぜ」
「僕、何回も尻餅付きました」
「シュートを何十回も打たれて、触れられたのがたったの二回だった」
あれから何度も翼に挑んだが、誰一人彼からボールを奪えた者は誰もいない。何度挑もうとも、彼の超人的なドリブルとシュートによって、全て返り討ちにされた。
彼らが息を整えている間に、雲明が翼の前に出て話し掛ける。
「お疲れ様、翼。初心者が何人かいるとはいえ、まさか全員を相手にここまで圧倒するとは思わなかった」
「いや、サッカー部の皆も強かったよ。何回か危ない場面もあったしね」
「さっきまでのプレイを見て、翼のプレイスタイルが分かったよ。翼のサッカーは南米特有のもの。そうだよね?」
「うん、俺のサッカーの基礎はテクニックを重視した南米サッカーのものなんだ」
雲明と会話していると、疲れからある程度回復した来夏が翼に問い掛ける。
「ねぇ、翼君。その南米のスタイルっていつから練習してたの?」
「俺のプレイスタイルは俺が小学生の頃、ブラジル人の師匠から教わったものなんだ。ちょっと待ってて」
そう言いながら、翼は自分のバックから黒いノートを取り出した。
「このノートは俺の師匠が残してくれたものなんだ。ここに書かれているのは皆、その人がブラジルで得たサッカーの技術が書かれているんだ」
「これは凄い。南米サッカーのあらゆる知識や技術が細かく書かれている」
ノートと内容を見た雲明は、そこに書かれている南米サッカーの知識や技術に感心する。
「俺はこのノートに書かれていることをマスターしようと一年間ずっと練習してたんだ。まだ完璧じゃないけど、基本的なものは全て覚えたよ」
「こいつを一年間ずっとか?なるほど、強いわけだ・・・」
ノートに書かれている高レベルな技の数々とそれを全て実現させようとしてる翼の強さの秘密を聞いて納得する桜咲。
「その師匠、今はどこにいるんだよ?まだ日本にいるのか?」
木曽路がそう聞くと、翼は少し間を置いてから答えた。
「・・・今はブラジルに帰ったよ。小学校五年の時にね」
その際、一瞬だけ翼の顔が暗くなったのを雲明は見逃さなかった。
今日の『燃えてヒーロー』:青空翼
例のノートが登場しました。この世界の翼もブラジル人の師匠からサッカーを教わっています。
その師匠も当然オリキャラです。モチーフは「キャプテン翼」を知っている人ならご存知へらることで有名なあのグラサン野郎です。
アンケートを取ります。内容は本作の姉御枠(ヒロイン)は誰にするかです。また、選択肢のうちの二人はこの作品で登場するセレクトキャラです。残りのセレクトキャラの公開はまた後日に。
姉御枠は?
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忍原来夏
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古手打七南
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雨道未理科
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百道唯奈
-
千乃妃花