超次元なサッカーでドライブシュートを打つ 作:イノウエ・ミウ
本作のセレクトキャラですが、翼がいるのでヴィクロから一人減らして4人加入します(ゲームだと5人選べる)。
亀雄の説得から数日後、雲明のクラスの担任である香澄崎栄子を顧問として加入したことで、サッカー部は部活として認められるようになった。
そんな彼らの次の試練は部員集めだった。
「こちらの方でサッカー部に入部したい生徒を集めて、過去のデータを基に、最終候補に行けそうな15人を選んでおきました。ひとまず、これだけいれば――」
「いえ、必要なのは4人です」
データを見ながら説明する百道の言葉を遮り、雲明がきっぱりと言った。
当然、周りはその言葉に驚愕の表情となる。
「おいおい、確かに後4人いたら試合はできるが、サッカーはチームスポーツだ。補欠も必要だろ」
「それに、亀雄君の時のように、試合中もし誰か怪我をしたら、代わりに出られる選手がいないと、俺たちは10人で戦うことになる。だから、最低限控えの選手も必要なんじゃないかな」
補欠となるメンバーも揃えておくべきだと言う桜咲と翼。
しかし、それでも雲明は己の考えを曲げなかった。
「確かに、何かあった時に交代できる選手がいないと、こちらが不利になります。ですが、今は11人以上でチーム戦術を考える余裕がありません。何より、皆には自分が欠けたらこのチームは終わると言う危機意識を持ってもらいたい」
「プレッシャー高すぎだろ・・・」
雲明の考えを聞いて、木曽路が顔を顰めながら呟いた。
「では、明日の放課後、笹波君には候補者の15人から4人を選んでいただきます」
「はい、それで構いません」
百道の言葉に頷く雲明。そこに四川堂が口を開いた。
「ひとまず、部員の選定に関する準備はこちらで進めておこう。後はあの問題だけか・・・」
「まだ何か問題があるんですか?」
「千乃会長だ。あの人はまだ、サッカー部を正式な部と認めてない」
千乃姫花、南雲原中の生徒会長を務める女子生徒。その彼女がサッカー部を認めないと言っているのだ。
「今起きているサッカー部の評判の変化に、あの人は本当にそれでいいのかと疑問に思っている。だが、その千乃会長を味方に付けられたら、サッカー部は強力に進化できる」
「どういうことですか?」
「千乃さんが生徒会長という権威を超えて、誰も逆らえない絶対的な存在であることには理由があるんだ」
「少しおしゃべりが過ぎるようね。四川堂君」
四川堂の言葉を遮りながら部室に入ってきたのは、先程まで話題に上がっていた人物、生徒会長の千乃姫花だった。
四川堂は慌てて「すみませんでした」と頭を下げるが、そんな彼に目を向けないまま、千乃は雲明たちに話し掛ける。
「言っておきますが、この集まりはまだサッカー部ではありません。何故なら、生徒会会長として、まだサッカー部を正式な部活と認めてないからです」
「待ってください。過去のサッカー部の悪い評判が消え去った以上、サッカー部を消す理由なんて無いはずです」
「旧体育倉庫の無断使用、笹波君の校内での数多くのハラスメント発言、桜咲君のこれまでの暴力的素行。サッカー部を潰す理由はいくらでも提示することが可能です」
雲明の抗議を物ともしない千乃に、今度は翼が異議を唱える。
「そんな。いくら生徒会長でも横暴すぎます。ここにいる皆のサッカーへの想いを知らずに、権力で潰そうとするのは間違っています。生徒会長はサッカーが嫌いなんですか?」
「好き嫌いの問題じゃありません。南雲原の生徒として相応しくない活動をしてる部活を正式な部活と認めるわけにはいきません」
「では、どうすれば認めてもらえますか?」
雲明がどうすれば正式な部活と認められるか聞く。
それに対して、千乃は雲明たちにある大会のことについて聞いた。
「フットボールフロンティアという大会を知っていますか?」
「勿論知っています。俺たちはその大会で、優勝することを目標にしてます」
「まだエントリーしてませんが」
「え?そうだったの?」
「サッカー部がまだ正式に認められてない状態でエントリーはできないよ」
翼と雲明がそんな会話をしてると、千乃は翼の方に顔を向ける。
「青空翼君・・・噂通りの人ね。あなたがフットボールフロンティアで優勝を目指していることは、私も耳にしてます。だから、私の方で出場申し込みを済ませておきました」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「お礼はいりません。どの道、あなた達にはこの大会に出場してもらうつもりでしたから」
翼のお礼を軽く受け流した千乃は、サッカー部を認めるための条件を言う。
「あなた達にはこの大会に出場して、初戦を勝ち抜いてもらいます。これが、サッカー部を正式な部活と認める条件です。そして、初戦の相手は西ノ宮中」
「条件は分かりましたが、そのたった一度の勝利に、サッカー部の存続を賭けるほどの意味があるのですか?」
「南雲原と西ノ宮は古くからのライバル関係にある。主要な運動部は全て西ノ宮より好成績を収めています。その西ノ宮に負けるということは、南雲原のプライドを汚すことになるのです」
「プライド・・・そんなのに何の価値が――」
吐き捨てるように言った雲明に対して、千乃は力強く言い返した。
「プライド!誇り!誰かに負けたくないという気持ち!それがあるから、人は人なんじゃなくて?」
「!? 一理あります・・・」
「雲明が押し負けてる。生徒会長恐るべし・・・!」
「でも、生徒会長の言っていることは俺にも分かるかな。俺だって、サッカーにおいては誰にも負けたくない。そういう気持ちは、勝つための大きな力になるからね」
雲明が対話で押し負けてる光景に戦慄する木曽路に対して、翼は千乃の言葉に共感していた。
「少しは話が分かる人もいるようね。私はサッカー部が南雲原の正式な部になるというのなら、その名が汚すことのない誇り高い部になることを望みます」
「・・・分かりました。フットボールフロンティア一回戦、必ず勝ち抜いてみせます。もし負けたら、潔くサッカー部は解散します」
「では、くれぐれもよろしくお願いします」
去ろうとする千乃を翼が呼び止める。
「待ってください」
「・・・まだ何か用?」
足を止めて、顔だけこちらに向けた千乃に、翼は真剣な表情で言った。
「俺たちは一回戦勝利で満足しません。必ず本戦まで勝ち進んで、優勝します。南雲原の名がどうとかそういうのは関係ありません。ただ、勝ちたいという想いを胸に・・・!」
その翼の言葉に、千乃は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに戻した。
「・・・そう。その言葉が嘘にならないことを期待しています」
そう言うと、彼女は部室から出て行った。
それを見届けると、木曽路が雲明に話し掛けた。
「またとんでもない約束をしたな、雲明」
「今回は喧嘩をふっかけてきたのは向こうだよ?」
「いや、そうだけどさぁ!」
「大丈夫だよソジ君、勝てばいいだけだから」
「それもそうなんだけどさぁ!このサッカー馬鹿共・・・!」
とんでもない約束をしたにも関わらず、前向きな雲明と翼に木曽路は疲れ気味に呟くのであった。
日がすっかり沈んで、辺りが暗くなった頃、翼は商店街の路地裏にあるサッカーグラウンドに来ていた。
グラウンドの周りには大量のサッカーボールが転がっており、相当な数を蹴ったことが分かる。
翼はペナルティーエリアから少し離れた場所に立ち、地面にボールを置いたら、勢い良く足を振り上げてシュートする。
ボールは上に高く飛び、しばらくすると下に落ちていったがゴールには入らず、ゴールネットの上を通り過ぎていった。
「駄目だ。どう蹴ってもゴールを超えてしまう。どうすれば、縦回転・・・ドライブ回転を掛けて、ゴールに入れることができるのかな・・・」
先程打ったシュートについて、どのように打てばゴールに入るのか色々考えながらシュートを続ける翼。
そこに雲明がやって来て、翼に声を掛ける。
「探したよ翼」
「雲明君、どうしてここに?」
「君が夜遅くまでここで練習してるって聞いて、様子を見に来たんだ」
雲明が地面に落ちているボールを見渡しながら先程のシュートについて聞く。
「今のシュート、翼の必殺技?」
「うん、まだ未完成だけど、これは俺の師匠が残してくれたノートに書かれている技なんだ。ボールに強烈なドライブ回転を掛けて、上に蹴ったボールを急降下させてゴールに入れる。単純だけど、ボールを蹴るタイミングと回転の強さがかなり複雑で、結構難しいんだ」
そう言いながら、新しいボールを持って地面に置く翼。
そんな彼に雲明はあることについて聞いた。
「ロベルト・本田。それが翼の師匠の名前だね」
「!? どうしてそれを・・・」
「調べたんだ。君ほど優れた選手が、どうして今まで表舞台に立たなかったのか気になってたんだ」
雲明は驚いている翼の前まで来て、話を進める。
「ロベルト・本田。日系ブラジル人であり、ブラジルの元プロサッカー選手。プロの頃はサッカーだとエースストライカーの意味を持つ背番号10番を付けてチームを勝利に導いた。だけど、試合中の事故で網膜剥離の診断を受けてしまい、サッカーを諦めざるを得なくなってしまった。それから数年経って、日本のとある町で彼があるサッカーチームのコーチをしていたという情報があった」
「・・・・・・」
「当時そのチームは名も知れぬ弱小のクラブチームだった。けれども、一人の少年とそのコーチが入ったことで、チームはたちまち勝利するようになり、遂には小学生のみで行われる全国少年サッカー大会にまで出場した。そのチームに入った少年が・・・翼、君だよね?」
「・・・全部調べてたんだね。うん、その通りだよ」
雲明の考察が正しいと肯定した上で、翼は師匠であるロベルト・本田との出会いについて語り出した。
「俺は父さんの仕事の都合上、転校することが多くてね。東京の都心から少し離れた場所に住んでた頃、俺はロベルトに出会ったんだ」
「元々ロベルトは網膜剥離の治療のために日本に来て、俺の家に居候してきたんだ。その縁で、俺はロベルトに本場ブラジルのサッカーを教えてもらった。前に見せたゴールバーにわざとボールをぶつけて、跳ね返ったところをオーバーヘッドで決める技もロベルトから教わった技なんだ」
転校初日、練習の時に見せた高レベルな技術もロベルトから教わったものなのだ。
「俺はロベルトにサッカーを教えてもらいながら、楽しい毎日を過ごしてきた。そんなある日、ロベルトが言ったんだ。『翼をブラジルに連れて行かせてくれ』。俺の両親にそうお願いしたんだ」
それはあまりにも突然のことだった。翼のサッカーの才能に惚れ込んだロベルトは、サッカー王国と言われ、自分の産まれ故郷でもあるブラジルに翼を連れて、世界一のサッカー選手に育てたいと頼んだのだ。
「この話を聞いた俺は、サッカー王国ブラジルでロベルトと一緒にサッカーをしたいって思ったんだ。それで、全国少年サッカー大会で優勝したら、ブラジルに連れて行くとロベルトと約束したんだ。それから、俺とロベルトは地方のクラブチームにそれぞれ選手とコーチとして入団したんだ。俺は約束を果たすために大会の予選、本戦と勝ち進んできた。チームもロベルトの教えのおかげで強くなって、遂に決勝まで進むことができた。だけど・・・」
「大会の決勝戦、そこに君の姿は無かったって聞いている。その理由が、ロベルトさんと関係があると僕は考えている」
雲明の推測を聞いて、翼はコクリと頷きながら話を続ける。
「大会の決勝、ロベルトは急に俺の前から姿を消したんだ。手紙を一つ残してね。その手紙にはこう書かれていたんだ『どんな事情であれ、サッカーを途中で止めてしまった俺は敗北者だ。何より、俺はお前に償うこともできない程の'大きな過ち'を犯してしまった。そんな人間がこれからサッカー界の未来を背負うお前を育てることはできない。サヨナラだ、翼』」
「大きな過ち?それはいったい・・・」
「それは分からない。俺は大事な試合を放り出して、必死にロベルトを追いかけた。どうして一人で行こうとするのか、ロベルトが犯した過ちは何なのか、それを知りたくて・・・でも、結局間に合わなくて、ロベルトは一人飛行機に乗ってブラジルに行ってしまった」
忘れもしない。飛び立っていく飛行機を空港の屋上で見ていたあの時の悲しみと怒りを。
「・・・酷い仕打ちだね。ブラジルに連れて行くって約束したのに、勝手に破って一人で帰るなんて」
「そうだね。俺はかなりショックを受けて、一時期部屋に塞ぎ込んでたんだ。チームも結局負けてしまった。当然、チームメイトは俺の事を責めたよ。お前が試合に出なかったから負けたってね」
「・・・こんな目にあって、君はロベルトさんやサッカーを嫌いにならなかったの?」
一度サッカーを嫌いになった自分だからこそ、この質問をした。尊敬してた恩人に裏切られ、周りから責められて尚、青空翼はサッカーを嫌いにならなかったのか知りたかった。
「・・・全部を恨んでいないって言えば嘘になる。黙ってブラジルに行ったことには怒りたい気持ちもある。でも、嫌いにはなれなかった。あんな別れ方をしても、俺はやっぱり、ロベルトが教えてくれたサッカーが好きだ」
「・・・強いんだね。翼は」
一度サッカーが嫌いになった自分と違い、絶望して尚もサッカーが好きという想いを貫いた翼を、雲明は称賛した。
そんな彼の称賛に対して、翼は首を横に振った。
「俺はそこまで強くないよ。俺が立ち直れたのは、ロベルトが残してくれたノートと一緒に戦った'パートナー'との約束があったからなんだ」
「パートナー?」
「少しの間だったけど、同じチームで一緒に戦った仲間さ。とてもサッカーが上手くて、俺の動きに唯一合わせられる選手だったんだ。その彼と約束したんだ。いつかお互い強くなって、日本代表としてコンビを組もうって」
「そのパートナーは今どこに?」
「ロベルトがブラジルに行って、1カ月ぐらい後に引っ越したから、今はどこにいるのか分からない。けど、俺と同じくらいサッカーが好きだったから、きっと今でもサッカーを続けていると思う」
嘗て共に戦ったパートナーの事を思い浮かべながら、翼は言葉を続ける。
「彼と約束した後、俺は決めたんだ。この日本で誰にも負けないサッカー選手になって、ロベルトがいるブラジルに殴り込むんだって。そのために、俺はもっと力を付けるためにクラブチームを抜けて、小学校を卒業するまでの間、ロベルトのノートに書かれた技をひたすら練習してきたんだ。そして今、この特訓の成果が次の試合で明かされようとしている・・・」
「フットボールフロンティア一回戦。君にとっても、サッカー部にとっても、絶対に負けられない一戦になる」
雲明の呟きに頷いた翼は、視線をゴールに向ける。
「(そうだ。次の試合、俺たちは必ず勝つ!サッカーが上手くて、周りから疎遠されてきて俺を受け入れてくれた南雲原の皆のために!そして、俺が立ち直るきっかけをくれた彼のためにも――)俺はこのドライブシュートを完成させるんだ!!」
足を大きく振り上げた翼は、叫び声と共に渾身のシュートを放った。
蹴ったボールは流星のように夜空を舞うと、やがて急降下していき、そして――
「「!?」」
その光景は二人にとって生涯忘れられないものになった。
翌日、雲明たちは陸上部のグラウンドに集まっていた。
雲明たちの目の前には、候補者と思われる15人が立っていた。
「では、サッカー部の入部希望者の皆さん、早速ですが入部テスト及び面接を始めます」
「候補者の皆さんには、3つのグループに分かれて面接に挑んでもらいます」
「役割は昨日確認した通り、雲明君は質問、四川堂君は号令、翼君は候補者にボールをパスする役で桜咲君はそれの邪魔、木曽路君は応援をお願いします」
「俺だけ地味じゃないっすか?」
木曽路が己の役割に不満そうな顔をしていたが、兎にも角にも入部に向けたサッカー面接が始まった。
集まった15人はとにかく個性的だった。
逆境から這い上がったサッカー部の姿勢に感動した者、サッカーに新たな可能性を見出した者、雲明の存在に興味を持った者など、各々がサッカーに対する想いを語った。
翼はパスを出しながら一人一人の動きを確認し、彼らの能力を測っていた。
そして、一通り面接を終えて、雲明たちは再度集まっていた。
「いやー、こっちが緊張したよ」
「15人相手は流石にきつかったぜ」
15人も相手して、疲れた様子で言う木曽路と桜咲。
その横で百道が端末を操作しながら雲明に言う。
「皆さんの評価はイナコードに送っておきました。それを基に、最終的に雲明君が決めるべきかと」
「君の考えるチーム作りには誰がベストなのか。それで決めた方が良さそうだね」
四川堂がそう言うと、雲明はしばらく考えた後、この中でサッカーが一番上手い翼に意見を求めた。
「翼、君の意見を聞きたい。あの15人の中で、君は誰を入れたらベストなチームになると思った?」
「そうだな。今のチームの状況を考えると、俺は――」
今のチームに必要なものは何か分析しながら、翼は己の意見を言うのであった。
数時間後、テストの結果や翼の意見を聞いて、雲明は選んだ四人に声を掛けるのであった。
今日の『燃えてヒーロー』:青空翼、笹波雲明
名前だけですがロベルトをモチーフにしたオリキャラが登場しました。出会いは違えど、この世界でも翼は師匠と言える存在に出会っています。
また、別れ方もキャプ翼のロベルトと若干違っており、こっちのロベルトは翼が優勝したのを見届けず、全国大会決勝直前に旅立っているので、かなり鬼畜なことをしています。
一方、翼もロベルトを追うために決勝をボイコットしたので、チームメイトから責められ、かなり落ち込みました。しかし、ロベルトが残したノートとパートナーとの約束のおかげで立ち直りました。そのパートナーについては・・・言うまでも無いでしょう。
セレクトキャラ、二人は確定してますが残りの二人は誰になるのか!?
※追記
翼の師匠の名前について修正しました。詳しくはこちらのリンクからどうぞ
姉御枠は?
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忍原来夏
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古手打七南
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雨道未理科
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百道唯奈
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千乃妃花