超次元なサッカーでドライブシュートを打つ   作:イノウエ・ミウ

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第1章ラストです。新たなオリキャラも登場します。


その男の名は幸太郎

フットボールフロンティア予選一回戦の前日、南雲原中サッカー部は試合に向けた最後のミーティングを行っていた。

 

「明日はいよいよ西ノ宮中との戦いです。この大事な初戦、必ず勝つために、西ノ宮中について、改めて皆に説明したいと思います」

 

皆の前に立って、雲明がホワイトボードを使いながら西ノ宮中の説明を行う。

 

「西ノ宮中は南雲原と同じ文武両道の進学校。過去の南雲原との対戦データを見ても、12勝11敗1分けと互角であることが分かります」

 

「西ノ宮は基本的にどんなサッカーをするんだい?」

 

翼が西ノ宮のサッカースタイルについて聞く。

 

「基本に忠実なサッカーをするチームだね。故に弱点は少ない。オフェンスはMFがFWの三人にパスを繋いで、守りの隙をついて得点します。ディフェンスに関しては注意すべき点はありませんが、キーパーが必殺技を持っています。だから、普通のシュートでゴールを決めるのは難しい。しかし、こちらも必殺技を使えれば話は別です」

 

雲明は周りを見渡しながら、明日のポジションについて発表する。

 

「FWはついこの間シュート技を覚えた桜咲先輩と忍原先輩。この二人を主体に攻めます。DFはゴール前に古道飼君と幕下君を置いて、サイドに雨道さんと古手打さん。そして、要となるMFは翼を中心に木曽路、柳生先輩、妖士乃先輩で行きたいと思います」

 

「どうしてMFが要になるんだ?」

 

自身がそのポジションにいるためか、木曽路がそんな質問をする。

 

「向こうのMFに優秀な指令塔がいるからです。西ノ宮のFWは彼の指示に従い、最適な位置からシュートしてゴールを決めます。故に、この勝負は如何に中盤を抑えれるかが鍵となります。そして、その中盤を抑える役目は・・・翼だ」

 

「俺が上手く中盤を抑えて、前線にパスを出せるか、だね」

 

翼が頷いたのを確認した雲明は、全員を見渡しながら言う。

 

「明日の試合はサッカー部の存続を賭けた大事な一戦です。今日まで特訓してきたこと信じて、必ずこの初戦を突破しましょう!」

 

『おう!』

 

明日の試合に向けて気合いを入れるサッカー部。そこに、段ボールを抱えた香澄崎が部室に入って来た。

 

「んしょっと」

 

全員が彼女の方に振り向くと、こちらに気づいた香澄崎が雲明たちに声を掛ける

 

「あ、皆いるね。丁度良かった。注文してたユニフォームができたの」

 

そう言うと、香澄崎は段ボールを床に置いた。

段ボールの中には、青と白のシンプルなデザインのユニフォームが入っていた。

 

『おー!』

 

サッカー部のユニフォームを見て、喜ぶ部員たち。

そんな中、雲明が疑問に思ったことを四川堂に聞く。

 

「正式な部じゃないのに、ユニフォームが作れたんですか?」

 

「正式な部ではないとはいえ、フットボールフロンティアに出るんだ。千乃会長が特別に手配してくれたらしい」

 

「千乃会長が?」

 

「どうせ面子だろ」

 

驚く雲明に対して、質素な発言をする桜咲。

そうしてる間にも香澄崎が部員にユニフォームを渡していく。

皆が待望のユニフォームに喜んでいる中、翼は自分の渡されたユニフォームの背番号を見て驚いた。

 

「俺が10番!?」

 

翼に渡されたのはサッカーにとって大きな意味を持つ番号である10番のユニフォームだった。

 

「10番はチームの要、エースの役割を持ちます。その言葉に相応しい選手は、このチームで翼しかいないよ」

 

「でも、新参者の俺が10番なんて・・・」

 

雲明がそう言うが、翼は遠慮がちな様子だった。

そこに、桜咲を初めとした二年の先輩たちが声を掛ける。

 

「サッカーに年も性別も関係ねぇ。フィールドに立てば、俺たちは全員対等だ」

 

「そんで、この10番を着るのに相応しい奴は、お前しかいねぇよ、翼」

 

「この中で一番サッカーが上手いのは紛れもなく君だ。だから、胸を張ってこの背番号を受け取ってくれ」

 

「期待してるね。エースの翼君♪」

 

「・・・分かりました。青空翼、エース番号10のユニフォーム、お受け取りします!」

 

先輩たちに背中を押され、翼は10番のユニフォームを受け取った。

 

 

 

 

皆がユニフォームを手に喜んでいる中、その話題は唐突に翼の口から上がってきた。

 

「ところで雲明君、今の少年サッカーで一番強いチームは何処だと思う?」

 

「随分唐突だね。どうしてそんな質問を?」

 

「南雲原に転校するまでの間、公式戦に出ないで、ノートに書かれてた技を練習してたから、少年サッカーについてあまり触れてなかったんだ。それで、この大会で警戒すべき選手について知っておこうと思ってさ」

 

「今は明日の試合に集中して欲しいけど・・・まぁ、それを聞いて試合当日に影響を受けるとは思えない・・・分かった。丁度皆もいることだし、全員に共有するよ」

 

皆の視線を集める中、雲明は自身が思う一番強いチームについて語り出す。

 

「今の少年サッカーで一番強いチームは、間違いなく雷門中です」

 

「雷門中・・・サッカー界では伝説とされているチームだね」

 

翼が深刻な顔で言うと、そこに桜咲が話に混ざる。

 

「翼も知っているみたいだな。まぁ、サッカーをやっている奴なら知って当然か・・・王者雷門、嘗て世界の頂点に立ったチーム、イナズマジャパンを率いてたGK円堂守がいた中学だ。今じゃフットボールフロンティア優勝は当たり前。正に不動の王者と言えるチームだ」

 

「せっかくだから、この動画を見たらどうかな。雷門中の試合の様子が映っている動画だよ」

 

「これ、前に俺がお前に渡した動画だろ・・・」

 

呆れる桜咲をよそに、雲明は自身のスマホの画面を翼たちに見せた。

画面に映し出されたのは、フットボールフロンティアの前哨戦、U-15スプリング杯での雷門中と北陽学園との試合の映像だ。

試合の映像を見ていく中で、翼は一人の選手に注目した。

 

「雷門の10番の選手、凄いテクニックだ。一人で四人抜いて、そのままシュートを決めた」

 

「円堂ハル、円堂守の息子で『サッカーモンスター』の異名を持つ雷門のエースストライカーです」

 

「『サッカーモンスター』円堂ハル・・・」

 

部員たちが円堂ハルの底知れぬサッカーセンスに釘付けになる中、翼だけは彼のプレイに違和感を感じていた。

 

「(何でだろう。彼のプレイは間違いなく日本のプロサッカーでも通用するレベルなのに・・・何なんだ、俺の中に湧き上がってくるこの違和感は?この違和感の正体、君に会えば分かるのか・・・?)」

 

画面の中にいる円堂ハルに問い掛ける翼。当然、返事など帰ってくるはずもなく、モヤモヤした気持ちで円堂ハルのプレイを見つめる翼。

すると、桜咲が割り込む形で口を開いた。

 

「確かに、円堂ハルのサッカーセンスは桁違いだ。けど、俺は円堂ハルに関しては、そこまで警戒すべき相手とは思わない」

 

「どういうことだよ?」

 

柳生が疑問の声を上げる。映像を見ても、円堂ハルのプレイは他の選手と比べ物にならないほどレベルが高く、南雲原にとっては、フットボールフロンティア優勝の最大の壁とも言える。

それなのに、円堂ハルは警戒すべき選手ではないと言う桜咲の意図が分からず、柳生や他の部員たちは疑問符を浮かべた。

すると、桜咲は「借りるぞ」と雲明からスマホを取ると、少し操作してから画面を見せる。

 

「この場面の映像を見てみろ。特にストライカーは、こいつの蹴りをしっかり覚えておけ」

 

画面に映っているのは、ドリブルしている一人の男子。黒い髪に肌が少し焼けているが、ユニフォーム越しでも分かるほど筋肉質な体。

そして、彼が着ているユニフォームの背番号は9番。サッカーではストライカー、点取り屋の意味を持ち、攻撃の要となる選手に与えられる番号だ。

そんな彼のプレイをしばらく見ていたが、映像が終わる頃には全員が目を見開き、その光景に言葉を失っていた。

 

「嘘でしょ。ただのタックルで人がふっとんだ・・・?」

 

「それにこのシュート。なんてパワーだ・・・!蹴ったボールがキーパーごとゴールに入りやがった・・・!」

 

「必殺技とか使ったんじゃないんですか?」

 

「残念だが、この試合はこいつを含めて雷門中は誰一人必殺技を使っていない。こいつは素の身体能力だけで、あれだけの強さを持っている」

 

来夏、柳生、木曽路があり得ないという顔をするが、桜咲は淡々と事実を述べていく。

 

「この試合、11対0という圧倒的な点差で雷門が勝った。その内の3点は円堂ハルが決めたが、こいつはその倍の6点も点を入れやがった」

 

「ろ、6点!?ハットトリックを二回も決めてんの!?」

 

木曽路が驚く一方、ハットトリックの意味を知らない来夏が翼に聞いた。

 

「翼君、ハットトリックって何?」

 

「一試合に一人で3点ゴールを決めることだよ。それを二回もやったとなると、この選手はただ者じゃない。間違いなく、エースストライカーと呼ぶに相応しい選手だ」

 

翼の説明を聞き、その凄さを理解した来夏は、改めて顔を強ばらせる。

 

「翼の言う通り、こいつは円堂ハルと肩を並べる雷門中のエースストライカーだ。奴はその強靱な足で何十本もゴールを決めて、雷門中をスプリング杯優勝に導いた。スプリング杯のMVPは円堂ハルだったが、得点王の称号はそいつが手にした」

 

「桜咲先輩、この選手はいったい・・・」

 

翼が緊迫した様子で画面に映っている選手について聞くと、桜咲は一拍置いてから、この選手の正体について語った。

 

「奴はサッカーコートという狩り場で選手を狩る獣だ。一度フィールドに入ったら、その牙でとことん相手を潰す。王者雷門に居座る一匹の虎――」

 

 

 

 

――『猛虎(もうこ)日向(ひなた)幸太郎(こうたろう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、とある新幹線の車内。

 

「起きてください。幸太郎さん」

 

新幹線の席に座っていた茶髪の少年が隣の席で寝ていた肌が焼けている黒髪の少年の体を軽く叩きながら起こす。

その声掛けによって目を覚ました少年は、深く被っていた帽子を上げて、自分を起こしてくれた茶髪の少年に話し掛ける。

 

「おうハル。どうしたんだ?」

 

「そろそろ目的の駅に着きますよ」

 

隣の席に座っていたハルと言う少年がそう言うと、幸太郎と呼ばれた少年は一旦体を伸ばしてから口を開いた。

 

「ようやくか。新幹線なのに東京から随分時間掛かるな。その上、今日ホテルに泊まって、明日は船で移動・・・退屈過ぎて逆に疲れるぜ。よくもまぁ、俺たちにこんな窮屈な任務をくれたモンだ」

 

「仕方ないですよ。母様の・・・理事長直々の命令なんですから」

 

「命令ね・・・こんな辺境の地まで俺ら雷門に助っ人を頼むとは、よっぽど腕に自信のないチームなんだな」

 

「さぁ、どうでしょう?まっ、チームが変わろうと、いつも通り勝つだけです」

 

「分かってる。弱いチームのお守りってのは気に入らねぇが、どうせ予選までの付き合いだ。さっさと終わらせて、雷門に戻るぞ」

 

「はい、幸太郎さん」

 

二人の少年は新幹線から降りて、異国の地へと足を踏み入れる。

この二人の少年を知らぬ者はサッカー界において一人もいないだろう。サッカーを愛する少年少女達なら誰もが憧れ、恐れおののくエースストライカー。

一人は嘗て0からサッカー部を作り上げ、当時無名だった雷門中をフットボールフロンティア優勝まで導いた伝説のGK円堂守の息子。

もう一人は小学校の頃に全国少年サッカー大会でチームを優勝させ、去年のフットボールフロンティア及び今年のU-15スプリング杯では、その強靱な足から放たれるシュートで雷門中を優勝に導き、得点王の称号を手に入れた雷門の虎。

 

『サッカーモンスター』円堂(えんどう)ハル

 

『猛虎』日向(ひなた)幸太郎(こうたろう)

 

歴戦の王者雷門を代表する二人のエースストライカーが長崎の地に立とうとしていた。




今日の『燃えてヒーロー』:青空翼


・次章予告

「幸太郎のサッカーとハルのサッカーは、同じように見えても本質は全然違う」

「まさか、あの二人が出てくるなんて・・・」

「不用意に近づくな!奴のドリブルにふっとばされるぞ!」

「ボールは友達か・・・君、めちゃくちゃ面白い奴だね」

「俺のサッカーは、お前らのお遊びサッカーとは違うんだよ!」

「サッカーは、俺たちの夢だ!」

次章、第2章『宿命の出会い 翼VS虎』


イナズマイレブン今日の格言
「憧れは恥ずかしいことなんかじゃない。夢はいつだって、憧れから始まるんだから」


遂に登場しました。翼のライバルとも言えるオリキャラ、日向(ひなた)幸太郎(こうたろう)の登場です。
モチーフは勿論、大空翼の宿命のライバル日向(ひゅうが)小次郎(こじろう)です。キャプ翼同様『猛虎』の異名を持つ彼が王者雷門及びフットボールフロンティアでどのような活躍をするのか!?お楽しみに

姉御枠は?

  • 忍原来夏
  • 古手打七南
  • 雨道未理科
  • 百道唯奈
  • 千乃妃花
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