超次元なサッカーでドライブシュートを打つ   作:イノウエ・ミウ

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漫画版ヴィクロの妖士乃先輩、ゲーム版とは別人レベルで熱血漢だから興味がある人は是非見てほしい。
今回から第2章です。前半は雷門パート、後半は西ノ宮戦で進めていきます。


第2章 宿命の出会い 翼VS虎
『猛虎』の軌跡(前編)


フットボールフロンティア九州予選一回戦南雲原VS西ノ宮の試合から数週間前。

東京都にある中学校、雷門中ではサッカー部の選手たちがフットボールフロンティアに向けて練習していた。

雷門中、嘗てサッカーとは縁の無い中学校だったが、25年前に円堂守率いる雷門イレブンが日本一になってから一躍有名になった学校であり、その後も松風天馬を初め、数多くの有名なサッカー選手を生み出してきた。

今じゃフットボールフロンティアの常勝校で、その伝統と実績に敬意を込めてサッカー界から王者雷門と呼ばれている。

その雷門中のサッカーグラウンドで、雷門のエースストライカー日向(ひなた)幸太郎(こうたろう)は練習に励んでいた。

 

「行くぜ!」

 

チームメイトからボールを受け取った日向は、彼の十八番である相手を正面からふっとばして直線的に猛進するドリブル、直線的ドリブルでボールを奪おうとする相手を次々とふっとばしていく。

 

「ここは通さねぇぞ日向!」

 

そんな彼の前に同じFWの嵐大祐が立ちはだかる。日向と同じ学年であり、これまた彼と同じパワータイプのFWでもあるため、日向をライバル視しているストライカーだ。

こちらに迫る嵐を前に、日向は正面から迎え撃つ。

 

「何度やっても同じだ!くらえ!」

 

「ぐっ!」

 

日向の直線的ドリブルは、嵐の巨体すらもふっとばした。

そのままシュートを打ち、見事ゴールを決めた日向は、彼に倒されて膝を付いている嵐に向かって喋る。

 

「いいタックルだったが、俺を止めるにはまだまだパワーが足りないな、嵐!」

 

「クソ!もう一度だ!次は絶対に止めてやる!」

 

悔しさを滲ませながらも嵐は立ち上がり、再び日向に挑もうとする。

そんな彼らの様子をベンチから二人の男女が見守っていた。

 

「相変わらず幸太郎君の直線的ドリブルは凄いよねー。食らったらひとたまりもないね」

 

「嵐もよく挑むが、いつもふっとばされているな」

 

MFの星村ナオの呟きに、雷門のキャプテン月影連も同感と言わんばかりに喋る。

 

「幸太郎君、最近じゃシュートの威力も更に上がったって聞いているよ。すっかり雷門のエースストライカーだね。一年の頃を考えたら信じられないよ」

 

「そうだな・・・」

 

星村の言葉に呟きながら、連は顔を上げる。

 

「本当に色々あったな・・・」

 

雲一つも無い青空を見上げながら、連は雷門中に入学してから、今日までに起きた出来事を思い返した。

 

 

 

 

一年前の春、桜が咲き誇るこの季節に、一人の男が王者雷門の門をくぐろうとしていた。

 

「ここが雷門中か・・・」

 

雷門の制服を身に纏う新入生の日向幸太郎は、目の前に広がる校舎やサッカーグラウンドの大きさに圧倒されていた。

 

「めちゃくちゃデケぇ、これ全部サッカーの施設なのか?」

 

「確かに、凄い規模だな」

 

「うおっ!」

 

いつの間にか隣にいた男子生徒に驚く日向。

こちらを向いた男子生徒が自己紹介をする。

 

「驚かせてすまない。俺は月影連。ポジションはMFだ」

 

「月影か・・・よろしくな。俺は――」

 

「知ってるさ。日向幸太郎、去年の全国少年サッカー大会で所属してたクラブチームを優勝に導いたエースストライカー。まさか、お前程のストライカーが雷門に来るとはな」

 

「当然だろ。なんたって、あの雷門中だぞ。サッカーをやってる奴なら、誰もがここに入ろうと憧れるだろ。お前だってそうなんじゃないのか?」

 

「勿論だ。っと、そろそろ入学式が始まるな。それじゃまた」

 

そう言うと、連は校舎に向かって去っていく。

それを見届けた日向は、これまでの出来事や今は亡き父の姿を思い浮かぶ。

 

「(ここまで来たぜ。父ちゃん・・・)」

 

東京都の隣に位置する埼玉県のごく普通の一般家庭の長男として産まれた日向幸太郎。

幼い頃に事故で父親を亡くし、一人で日向たち4人兄弟を養う母親の力になるために、近所の商店街でアルバイト(小学生であるため、正式なものではなく、あくまで仕事の手伝いという名目で働き、その日の給料を貰っていた)しながらサッカーに取り組んでいた日向。

その厳しい家庭環境や当時所属してたクラブチームの監督の影響もあって、勝利への執念を人一倍持つようになり、勝利の為なら相手が傷つくことさえ厭わない程のハングリー精神で荒々しいプレイをしてきた日向。

その一方で、ストライカーとしての実力は一流で、その強靱な足から放たれるシュートで次々とゴールを決めていった。

そして、遂には去年開催された小学生のみの全国少年サッカー大会でチームを優勝に導き、日本一のストライカーの称号を手に入れた。

その実績を買われて、大会優勝後に彼は特待生として雷門中にスカウトされ、サッカーで結果を出す代わりに、授業料や寮の費用などを全て免除されるという好待遇をもらうことになった。

憧れの雷門中に特待生として入学することができ、喜びいっぱいの気持ちで、日向は亡き父親に向けて宣言した。

 

「見ててくれ天国の父ちゃん!俺は必ず、中学でも日本一になってみせる!」

 

 

 

 

日向にとって雷門でのサッカーは充実したものだった。

今までとは違う最新の設備やAI技術を活用したサッカーは、小学生の頃までひたすらボールを蹴って特訓してた日向にとって心躍るものであった。

また、部員たちも全国から集められた強者ばかり。彼らと競い合うことは、己を成長させてくれる良い刺激となっていた。

しかし、一つだけ不満があったとするなら・・・

 

「よし!今日の練習は終わりだ!」

 

「え?」

 

先輩である野神の練習終了の言葉を聞いて、思わず呆けてしまう日向。

練習してからそれほど時間が経っておらず、まだまだ体力には余裕があるため、日向は納得いかない様子で野神に話し掛ける。

 

「もう終わるんですか?まだ練習を初めてから2時間くらいしか経ってないはずですけど・・・」

 

「既に今日の練習メニューは終わったんだ。分析されたデータの結果によると、今日はこのくらいの練習量で良いみたいだからな」

 

「データって・・・そんな根拠もないことを信じるんですか?」

 

「今のデータサイエンスは優秀なんだ。データに従わないで、無理に練習を重ねたら、そのうち体を壊すぞ」

 

そう言うと、野神は片付けを始めた。

他の部員たちも特に異議を唱えることなく練習を切り上げる。

 

「(なんだよ、どいつもこいつも・・・)」

 

雷門に来てからの唯一の不満、それは自分と他の部員たちのサッカーに対する熱量の違いだった。

サッカーに関して非常に真面目に向き合う雷門だが、集まるのは負けを知らないエリート達ばかり。厳しい環境で育った日向と違い、英才サッカーで育った彼らは、日向のような熱い情熱と貪欲さに欠けていた。

 

「データが何だってんだ。勝つためには、ひたすら特訓するしかないだろ。そんなことも分からないのかよ」

 

熱の無い部員たちに愚痴りながら、日向は一人残って、自主練を始める。

強くならなければ、勝つことはできない。そして、強くなるためには、ひたすら練習するしかないのだ。

その言葉通り、日向は他の部員よりも人一倍練習に励んだ。当然、実力にも差が出るようになり、遂には一年生でありながら唯一、一軍レギュラーの座を手にするのであった。

 

 

 

 

それから更に時が経ち、フットボールフロンティア決勝戦。

 

『さぁ!フットボールフロンティア決勝戦!雷門中対帝国学園の試合がまもなく開始されます!』

 

『両者因縁のある関係ですが、近年では雷門中が圧倒的に勝ち星をあげています。そのため、帝国も打倒雷門に向けて、闘志を燃え上がらせているでしょう』

 

『しかし、雷門もそう簡単に勝ちを譲る気は無い模様!今年の雷門には、あの日向幸太郎がいます!』

 

『ジュニア時代では『猛虎』の異名で恐れられた選手。その強さは、このフットボールフロンティアでも発揮されて、これまでの試合でも数多くのゴール奪い、雷門中の勝利に貢献してきました。正に王者雷門が誇る虎!』

 

『その『猛虎』を相手に、帝国がどう戦っていくのか楽しみです!』

 

実況の田部と解説の角馬の声がスタジアムに響く中、雷門イレブンは控室で試合前の準備をしてた。

一言も言葉を発することなく、黙々と準備を進めていく。日向もまた、ユニフォームに着替えて、その時が来るのを静かに待っていた。

 

「やぁ、日向君。少しいいかい?」

 

そんな彼に監督の乙女仙次郎が話しかけてきた。

 

「何ですか?監督」

 

この人が自分に話し掛けるなんて珍しいと日向は思う。

普段から何を考えているのか分からず、試合はおろか練習の時すらも顔を見せない監督。とは言え、選手一人一人のデータに基づいた完璧な練習メニューを作ったりと、監督らしいことはしているため、決して放任主義という訳でもない。

日向にとっては、あまり関わることがなかったので、ぶっちゃけどうでも良い存在であったが、一応は監督であり、話し掛けられた以上、無視するのは失礼だと思いながら対応する。

 

「君に渡したい物があってね。君のお母さんからのプレゼントらしいんだ」

 

「!? 母ちゃんが!」

 

驚きながらも日向は乙女から手渡された箱を開ける。

中身は新品のスパイクと一通の手紙が入っていた。

その手紙の内容には、小学生の頃から使ってたスパイクが古くなったから新しい物を買ったこと、家計を助けるためとはいえ、息子にアルバイトをさせる羽目になり、欲しいものを買わせてやれなかったり、小学生らしいことをさせてやれなかったことへの謝罪と、その上で懸命に働いて、生活を支えてくれたことへの感謝が書かれていた。

一通り読み終えた日向は、嬉しそうに微笑んだ。

 

「母ちゃん・・・」

 

「いいお母さんだね」

 

そんな彼に、乙女は優しい顔で声を掛ける。

 

「はい!届けてくれてありがとうございます監督!」

 

「そのお礼は試合に勝ってから受け取るよ」

 

乙女の言葉を受け取りながら、日向は貰ったスパイクに履き替えた。

 

「履き心地はどうだい?」

 

「問題ありません。これならいくらでも点を取れますよ」

 

「期待してるよ。そろそろ試合が始まるね。それじゃ、頑張るんだよ」

 

「はい!必ず雷門を優勝させてみせます!」

 

元気よく言うと、日向は一足先に控室から出た。

その後ろで乙女の顔が僅かに歪んだことに気づかないまま・・・

 

 

 

 

試合の展開は雷門の優勢で進んでいた。

味方からのパスを受け取った日向は、そのままシュートの体勢に入り、渾身の必殺シュートを放つ。

 

「食らえ!タイガードライブ!」

 

「フルパワーシールド!ぐわっ!」

 

帝国のキーパーも必殺技で対抗するが、日向の『タイガードライブ』は『フルパワーシールド』を打ち破り、ゴールネットを揺らした。

 

『ゴール!!日向幸太郎、これで2点目です!』

 

『元プロのサッカー選手、宇都宮虎丸選手にも引けを取らない素晴らしいタイガードライブでした!』

 

『帝国もあらゆる戦術で対抗していますが、それら全てを食い破る日向幸太郎!彼を止めることが、果たしてできるのでしょうか!?』

 

そんな実況の声を聞きながら、日向は鼻で笑った。

 

「ハッ!この俺を止めれる奴なんて、この世にいるわけないだろ」

 

何処か自慢げに言う日向だが、その言葉には自分の強さを疑わない絶対的な自信に溢れていた。

自分はここにいる連中とは違う。小学校の頃に日本一になった自分が負けるはずがない。

その傲慢とも言える自信が崩れることは決してなく、帝国ボールで試合が再開されて早々に、日向は相手からボールを奪った。

 

「キラースライド!」

 

ディフェンス技で相手からボールを奪った日向は、再び相手ゴール向かってドリブルする。

 

『また日向幸太郎にボールが渡った!彼を止めようと帝国の選手が立ちはだかりますが、誰も日向幸太郎を止められない!そのまま3点目も決めるのか!?』

 

自分を止めようとする帝国の選手を直線的ドリブルで次々と吹き飛ばしていき、ゴールが見えたところでシュート体勢に入る。

しかし、ボールを奪おうと帝国の選手が複数人でスライディングを仕掛けてきて、それに気づいた野神が日向に向かって叫ぶ。

 

「待て日向!前から来てるぞ!」

 

「構わねぇ!そのまま俺のシュートでなぎ倒してやるよ!」

 

野神の制止を無視して、自慢の『タイガードライブ』で自分の目の前にいる敵をなぎ払おうと右足を振り下ろしたその時だった。

 

「タイガ――っ!!?」

 

振り下ろした右足に鋭い痛みが襲いかかり、次の瞬間にはスライディングされた二本の足が日向の右足に激突した。

一瞬何が起きたのか分からず、気がついたら、日向はグラウンドの上に倒れていた。

 

ピー!

 

審判の笛が鳴り響き、試合が止まる。どうやら反則と見なされて、一時中断したようだ。

仲間たちが日向の元に駆け寄ってくる。「大丈夫か!?」と心配そうな声が聞こえる中、日向は立ち上がろうとするが・・・

 

「な、なんだ?足が上手く、動かねぇ・・・」

 

足に力が入らず、上手く立つことができなかった。

そうしている間にも、数人が担架を運びながらこちらに向かって来ており、日向を担架の上に乗せようとした。

 

「待てよ、俺はまだ、戦える・・・!」

 

しかし、日向はそれを拒否すると、腕の力で起き上がり、気合いでどうにか立ち上がる。

 

「あ」

 

だが、地面に足を着いた瞬間、一瞬で崩れ落ちてしまい、再度地面に倒れてしまう。

再び立ち上がろうとしても何故か力が出ない。意識も段々と薄くなっていく。

 

「(俺は、こんなところで・・・!)」

 

最後まで勝利への執念を宿しながら、青空が広がるフィールドの中で、日向は意識を失った。

 

 

 

 

後日、病院のベッドで意識を取り戻した日向幸太郎は二つの報せを受け取った。

一つはフットボールフロンティアで雷門中が優勝したこと。自分が抜けた後、どうにか守り切ることができ、雷門中は今年も王者の座を守り抜いたのだ。

そしてもう一つは・・・自分がもう二度とサッカーをすることができないこと。

再起不能。日向にとってその言葉は、あまりにも絶望的だった。




今日の『燃えてヒーロー』:日向幸太郎


日向幸太郎は日向小次郎のようなハングリー精神を持っていますが、小学生時代に翼というライバルに出会わず、全国大会で優勝したので、少々天狗になっています。簡単に言うなら、キャプ翼で小学生時代の翼に出会う前の初期日向と中学三年の頃の日向を足して2で割った感じになっています。


そんな彼も最後は思わぬ悲劇に見舞われましたが、ヴィクロでのハル同様、彼自身の成長と雷門中の仲間との絆を深めるためにも必要なイベントとなっております。
ちなみに、ヴィクロのネタバレになるのであまり深掘りできませんが、何故あの人物があんなことをしたのかは、後に明かす予定です。


そして、ここで新しいアンケートです。内容は「もしも日向にヒロインを付けるなら」です。
対象は王者雷門の女子メンバーとなっております。とは言え、正直このアンケートの結果を反映させるかと言ったら微妙ですので(だって、作中で星村以外深掘りされたキャラいないし)、あくまでアンケートとして答えてくれたら幸いです。

もしも日向にヒロインを付けるなら

  • 星村ナオ
  • 赤袖茉莉
  • 有海崎玲亜
  • 梅雨咲多恵
  • 木下まつの(シグドママ)
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