電子世界日本国召喚   作:とりさん

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多くのご感想、応援ありがとうございます。
筆のノリが良かったので今日も投稿します。




第二話 報連相? 燃えるゴミに出したよ

 

 

 

『死ね死ね死ね。国のためとは言わん。仲間のためとも言わん。恋人か、友人か、それとも家族か。恨み言を叫べ、上の連中を罵れ、敵を呪え。その命果ててもなお戦え。───頼む、死んでくれ。それが貴官らへ与える最後の任務だ』

 

 

 ██/█/█ █:█ ██方面隊第█師団長(修復された通信ログより抜粋)

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 先程までの荒れ具合は何処へやら。

 すっかり凪いだ海に浮かぶ『あまつそら』の甲板上で上森と犬橋は話していた。

 

 

「さっきの顔見ました? 祖国の窮地に駆け付けた仲間が実はとんでもない脅威だと知った時の顔! いや〜〜、さいっっっっこうでした!!」

 

「趣味悪いねぇ……上森クン」

 

 

 犬橋は船内へと繋がる扉を見ながら呟く。

 

 此処にブルーアイはいない。

 余りにも焦燥した様子の彼を心配した犬橋が、他の搭乗員に彼を船室まで案内させたからだ。

 

 続いて犬橋は隣にいる上森を見る。

 

 何時の日かアニメかゲームで見たキャラクターに酷似した容姿をしている彼女は、しかし見た者が思わずゾッとするような顔をしている。

 

 

 ───若いって残酷なことだね……。

 

 

 彼女は笑って…………否、嗤っていた(・・・・・)

 すれ違う者が思わず振り返ってしまうような端正な顔立ちも、頬が裂けんばかりに吊り上がった口角が全てを台無しにしている。

 

 

「それに」

 

 

 彼女は地平線を見つめる。

 先程まで何千隻という大規模な艦隊とそれを動かす何万人という人間がいたであろう場所だ。

 …………今はもう居ないが。

 

 そんな悍ましい出来事が起きた場所を見て彼女はブルリと躰を震わせる。

 

 

「~~~~♡。───っばい、最高すぎるッ!!」

 

「えぇ…………(ドン引き」

 

 

 彼女は人目を憚らず───達した。

 人が大勢死んだ中で、多くの者が家族を失い、多くの者が不幸に見舞われた。

 そんな状況()快楽を感じて絶頂しているのである。

 

 不謹慎極まりない上に、人として余りにも終わっている性癖に、毎度の事ながら(・・・・・・・)犬橋は溜息を吐く。

 

 死者には取り敢えず黙祷しておくのがセオリーだと考えている犬橋にとって、死者を冒涜する行為を平然と行う上森は下から数えた方が早いほどやべぇ人物である。

 

 彼女が自分の副官として着任してから随分と経ったが、どんな思考回路を持っていればこういう行為(虐殺とか殺戮とか)に興奮を覚えるのか、犬橋には未だに理解出来ない。

 

 まあかく言う彼も黙祷の意味を理解したことは一度もないのだが。

 瀕死の敵を前にして、確殺後に脳が快楽一色に染まるのが上森であり、危ないなぁとボヤきながら死体撃ちまでキメるのが犬橋である。

 

 端から見ればどっこいどっこい。どちらも死者への敬意やら、悼む心やらを欠片も持っていない。

 と言うよりも今の時代、自衛隊員の大半がそんな人間だ。

 殺人に対して躊躇が無い(引き金が軽い)のは入隊のための最低条件である。

 

 

「アハッ♡……アハ……アハハ」

 

「上森クン……流石にそれはヤバいよ〜。倫理的に」

 

「うわキモっ。人がイッてる所を態々見て感想を言うとか…………訴えますよ?」

 

「キモって言いたいのはこっちだし、そもそも訴える場所なんて無いでしょ……」

 

 

 この国に、この世界に自衛隊を裁ける存在などいないのだ。

 裁く存在がいない、故に全てが許される。……全て自己責任という但し書きは付くが。

 

 犬橋は思い返す。

 嘗て自分が見て憧れた自衛隊(防人)はどのような存在だったのかを。

 

 

「こんなだったっけな〜〜……?」

 

「何がです?」

 

「いや君を見てるとさ、旧時代の自衛隊もこんな奴ばっかりだったんだろうかって思うわけ〜〜」

 

「失礼ですね。この美少女に向かってこんな奴とは何ですかこんな奴とは」

 

 

 自分の身を守るだけで世間から大バッシングを受けていた頃と比べて、今の自衛隊はその性質を大きく変えていた。

 

 

 より残虐に、より幼稚に、より狡猾に。

 

 

 非合理合理、非合法合法を問う者はもはや誰も居らず、それを批判する者も同様に居ない。

 何処に出しても誇れる実力(・・)は、何処に出しても恥ずかしい軍隊(・・)へと変貌していた。

 

 

「いいかい? 旧時代の自衛隊ってのは規律を決して乱さず、誰に対しても礼儀正しい人達なんだ。今日みたいに政府に黙って核兵器を使うなんて以ての外なんだよ〜」

 

「ああ、政府の許可が無いと銃弾の一発も撃てないっていう……。何もしなくても批判されていたんでしょう?」

 

「そうそう。上森クンは知らないかも知れないけどね〜。彼らって災害救助に行っただけでも猛烈な非難を受けたことがあるんだよ〜〜」

 

「サイガイ、キュウジョ……?」

 

「災、害、救、助!! 地震とか台風とか土砂崩れとか。そういう災害時に被害を受けた人達を助けること!! なんで知らないの〜〜?」

 

「あっ、災害救助!! シミュレーションでやった事あります! 一生瓦礫をどかし続けるのに飽きて放置してたら生存者が全滅したやつですね!!」

 

「もう終わりだよねこの国」

 

 

 勝手に猫の国終わらすな。上森はネタを知らないのか突っ込んで来ないので、心の中でセルフツッコミをする犬橋。

 

 自分の知るそれとは大きく変わってしまった自衛隊を見て、犬橋はこの国の未来を静かに案じた。

 

 

 

 丁度その時、海のように青い髪とサファイアのように透き通った目の自衛隊員が走って来る。

 こちらも例に漏れず少女である。

 

 

「お話中失礼します。犬橋一佐、この後の予定について教えて下さい」

 

 

 ビシッと敬礼をした彼女の質問に犬橋は悩む。

 そして今回の一連の介入計画を立案した上森へと目を向けながら応えた。

 

 

「う〜んそうだねぇ〜〜。……上森クン、今回の攻撃(核攻撃)を提案したのは君なんだから、何か考えているかい?」

 

「え? いや何も。鹵獲した核兵器の痕跡を遺さないように処分できれば何でも良かったので」

 

 

 今回の介入で自衛隊、ひいては日本が失った物は何も無い。……書類上は、だが。

 その書類には『あまつそら』もロウリア王国海軍を消滅させた核弾頭も載っていない。

 

 今の(・・)自衛隊の所有艦船名簿に『あまつそら』は存在しないし、マスドライバーの使用目的は人工衛星の打ち上げとなっている。

 何だったら『あまつそら』を動かしている燃料も本土の精製設備の余剰を利用したし、此処にいる自衛隊員達も通信困難な(・・・・・)西日本地域に居ることになっている。

 

 お粗末な隠蔽工作だが、日本国政府(上の連中)に「此処には誰も居なかった。自分達は無関係である」と主張するには十分であった。

 

 

「処分の仕方が大胆過ぎる……。これ絶対上にはバレてるよ〜〜」

 

 

 まあバレていようが証拠さえ掴まれなければ良いんだけどね〜、と犬橋は思う。

 

 決して口には出さないが。

 口にすると目の前の副官が調子に乗って更にやらかす気がしたので。

 

 

「まあそこは一佐が何とかしてくださいよ。……すみません、燃料はどの程度保ちますか?」

 

「凡そ1週間…………と言いたいところですが、燃料タンクが一つ破損したので、もって3日といったところでしょうか」

 

 

 ほら、そう言って隊員は船の横を指す。

 それにつられて2人も海面を見たのだが……。

 

 

「なんか……黒くない?」

 

「さっきまで気になりませんでしたけど、こうやって見ると油の匂いがしてきた気がします。臭いですね」

 

 

 海面は一部が漏れ出た黒い燃料に染まっていた。

 その染みは『あまつそら』の側面を中心に広がり、結構な範囲を塗り潰している。

 

 幸い応急修理は完了しており、燃料の流出もそのうち止まるだろうと隊員は言う。

 

 

 ───なるほど、道理で甲板上に人がいない筈だ。

 

 

 犬橋は少し前から感じていた違和感の正体に気付いてスッキリする。

 

 …………それはそれとして。

 

 ちょっと洒落にならない規模での環境破壊に、上森と犬橋は顔を見合わせる。

 その顔はこう言っていた。

 

 

 犬橋はどうやって現地国家に言い訳しようかと。

 いや、寧ろ知らんぷりを決め込むべきでは、と。

 

 上森は単純に油臭さに不快感を。

 さっさと此処から離れたい、と。

 

 

 素早く互いの考えを理解した2人は決断する。

 

 

 ───黙って本土まで突っ走ろう。

 

 

「じゃあ本土に帰るしかないね〜〜」

 

「了解しました。……ところでブルーa「早く帰りましょう! 匂いがキツ過ぎて朝ご飯戻しそうです」…………はい」

 

 

 

 こうして『あまつそら』と自衛隊ロデニウス大陸極秘派遣部隊の面々は本土、日本列島への帰路へ就く。

 ……船室で魘されているブルーアイを乗せて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく見れば貴方可愛いですね。その青い髪、素敵ですよ」

 

「えっ? あぁ……はい……? ありがとうございm「正直めっちゃ好み」……ウェ?」

 

「私って犬橋一佐の副官なので個室が割り当てられてるんですよ。…………今夜、よければ部屋に来ません?」

 

「え、あ、え、え……?」

 

「上森クン、それは誘いではなく命令と言うものだよ〜〜。断るなんて無理じゃないかな〜〜」

 

「断らせる気が無いからこういう言い方してるんですよ犬橋一佐。貴方のちんちくりんな体型とかピンクの髪とか、正直私の性癖にマッチしてるって話します?」

 

「キミ。名前は?」

 

「えっ、あ、ほ、本官は篠原(しのはら)准尉です。今回の作戦からこちらの部隊に配属されることになりました」

 

「ああ、新入りだったか。……では篠原准尉、命令だ」

 

「ハイッ!」

 

「私は中身(・・)おっさんなんだ。間違ってもサイコレズな部下に掘られるわけにはいかないんだ。……すまんが今晩、上森一尉の個室に行くように」

 

「………………はい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 護国の英雄は守るべき者達を背に果てた。

 

 ではここで質問だ。

 

 英雄に守られた者から見た時、英雄の背中はどのように写った? 

 

 





●あまつそら
自衛隊の輸送艦、にほんばれ型輸送艦の2番艦。
西暦2025年に建造され、██年前に██した。
現在は航行能力を喪失していると推測される。

───内閣情報調査室記録管理課(最終更新日:██日前)


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