電子世界日本国召喚   作:とりさん

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最近受験期だからか、午前授業なのでさっさと帰れて楽チン。
投稿頻度もそれなりを維持できるかも?

あと感想の中で世界観の設定をほぼ当ててた人がいてめっちゃ動揺しました……。(汗)
完全オリジナル設定だと思ってたんですが、似たようなものがほかの作品にも合ったようです。(ショボン)



魔境=日本
第三話 ブラック労働、労基はなし


 

 

 

『緊急速報、緊急速報。政府より国民の皆様へ通達です。今現在を持ちまして[データ破損]。それに伴い、日本臨時政府による戒厳令が[データ破損]に発令されます。███による[データ破損]。[データ破損]の方から避難を開始してください。繰り返します────』

 

 

 ───██エリア内のラジオ局と思われる施設で発見された音声データ

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───深夜3時。日本列島()太平洋側沖。

 

 

 

 其処には深淵が広がっていた。

 一寸先も見えず、しかし耳を澄ませば波と風の音が聞こえる。

 月明かりは曇天故に水面を照らさず、生き物の気配も感じられない。

 

 ごうごう、と風の唸り声が響く中、ポツリと浮かぶ光がある。

 緑、赤、そして白の光。夜間に船舶が自身の位置を他の船舶や陸地に伝える光───航海灯だ。

 

 

 

 その様にして海上を進む船、『あまつそら』の艦橋では数人の自衛隊員が駄弁t……働いていた。

 

 燃えるように赤い髪の隊員がくわぁ〜〜、と欠伸をする。

 犬橋や上森の例に漏れず、容姿は(・・・)美少女である。

 

 アニメのキャラクターで勝ち気な性格をしていそうな容姿を持っているが、今の彼女にはそのような元気はないようだ。

 

 

「あ〜まじねみぃ……」

 

「ほんまか、操舵してんのお前だから寝るなよ? 海上で遭難とか誰も助けに来んぞ」

 

「大丈夫大丈夫。…………例え舵ミスっても最悪曳航してもらえばいいから」

 

 

 漆黒に包まれて何も見えない前方を見据えつつ、彼女は操舵輪に凭れ掛かるようにして体を預ける。

 それでも舵を真っ直ぐ維持されている辺りは流石と言うべきだろうか。

 

 

「曳航って……お前どの船にやってもらうつもりだよ……」

 

 

 燃えるような髪の操舵手が、今にも燃え尽きそうになっているのを見ながら、彼女の後ろでレーダーや海図と格闘している隊員が会話に応じる。

 本当に寝られても困るし、何より自分も慣れない作業で話してないと眠ってしまいそうだったからだ。

 

 

「む〜〜?」

 

 

 彼女は首を傾げながら、グイ〜〜ッと腰を捻って後ろを向く。

 自衛隊員達は体の柔軟性がオリンピック選手並みになるよう作られている(・・・・・・)ので、体幹を維持したまま背中側に180°曲がることも難しくないのだ。

 

 美少女だから良いが、そのポーズはどう考えてもホラー映画の登場シーンだろ。

 井戸から出てくるやつとか、ピエロのやつとか。

 

『あまつそら』の備品(・・)として置いてあったDVDを暇な時に見ていた隊員は、その時のシーンと彼女の動きを重ねて内心ヒエッとなる。

 

 そんな隊員の心拍数増加を余所に、彼女は続ける。

 

 

「他の貨物船とか? 後は戦艦とか?」

 

「うちに戦艦はねぇだろ」

 

 

 お前自衛官だよな? もしかして軍艦を全部戦艦とか言う奴か? 嘘だろ? そう思いつつも隊員は彼女に説明する。

 

 

「あんな? 今まともに動いてる貨物船に曳航する機能なんか無いんだわ。それに仮に有ったとしてもだぞ? 『あまつそら』みたいなデカい船引っ張ってみろ。後ろがもげるわ。…………たぶん」

 

 

 実際にはやってみないと分からない。

 初航海(・・・)な上、自分もそこまで詳しいわけではないのだ。

 

 

「なるほど? でも一隻で駄目ならもっと集めればよくない? ほら歴史ライブラリにあったじゃん。何だっけ? 一本の矢だと簡単に折れるが、三本の矢だとってやつ」

 

「誰だったけな、それ。……まあいい。とにかく無理なもんは無理なんだ。お前自衛隊が運用できてる貨物船の数分かってるか? 確か数十隻あるかないかぐらいだぞ? それに……これだッ!!」

 

 

 隊員は目の前のモニターを───何も映していない(・・・・・・・・)モニターを、左手で、眠気を振り切るようにぶっ叩く。

 

 バキッという音と共にモニターのカバーが外れ、床に落ちる。

 大きな落下音にビックリした彼女は、目をパチクリとさせる。

 

 隊員はその様子に内心笑いながら言う。

 

 

「ほら見てみろ。このクソモニター何も映しやしない。こっちのレーダーは映ってるが、海図モニターが表示されないせいでこうやって手探りで航海図を書かにゃ(・・)ならねェ」

 

「にゃ、にゃにゃ? にゃにゃにゃ?」

 

「ニヤニヤ笑いながら煽ってくんじゃねえ」

 

 

 自分の言葉遣いをネタに遊ぶ彼女は、先程までの眠そうな態度は何処へやら、こちらへ全身を向けて(・・・・・・)笑っている。…………お前操縦は?

 

 

「あ゛ぁ゛も゛う゛ッ゛!゛!゛ こんなのやってられっか!!」

 

 

 モニターを叩いた手とは反対の右手に持っていた本を操舵室の入り口へ投げ、両手で髪の毛をくしゃくしゃと掻き乱す。

 

 視界の端に銀色のサラサラとした髪が映る。

 部屋の灯りを反射してキラリと光っている。

 

 

「ニャハハ〜〜大変そうだねえ〜〜」

 

「ほんとだよ……」

 

「それでさ」

 

「うん?」

 

「海図は書けたんか〜?」

 

「見りゃ分かるだろ。ほれ」

 

 

 そう言って目の前に置かれている()の海図を彼女に見せてやる。

 定規と鉛筆、コンパスで幾度も書かれ、その度に消しゴムで消された跡が残っているその図は、今のおおよその位置の割り出しに成功していた。

 

 

「うまくいってるじゃん。さっすが〜」

 

「だろ? あ〜もうホント疲れた。あともうちょっとなんだから再測定とかしないぞ? このまま北東に真っ直ぐいけば、2時間くらいで着くはずだ」

 

 

 国土が異世界に転移するとかいう訳の分からない出来事のせいで人工衛星が消失し、準天頂システム(みちびき)が機能停止状態に陥った影響で現在地の把握を手動でやらざるを得なかったのだ。

 

 おまけに、唯一の(・・・)有人船である『あまつそら』は修復が不完全なまま再就役(・・・)したために、さっきのモニターの件のようにあちこちにガタがきているときた。

 

 

 ほんと、現在地の座標から航路の割り出しまでたった一人で、しかも何の知識も持たない自分がやるとか頭おかしいんじゃないか。

 

 さっき投げた本、『航海士入門書』を出港直前に渡して自分を操舵室に押し込めてきた緑髪の奴(上森)に心の中で悪態をつく。

 

 口には出さない。だって怖いから。

 本人が居ないからと言って油断は禁物だ。

 じゃないとこうやって…………

 

 

「にしても薄緑のキチガイ悪魔(上森)も酷いよね。こうやってオレらを操舵室に押し込んでおいて、自分は個室とふかふかのベットで新入りとニャンニャンやってるんでしょ〜?」

 

「おい…………」

 

「ほんとありえないわ〜。マジ人間のクズ、ゴミ、カス!! なあ知ってるよな? あいつ本土で毎回捕虜(・・)を拷問してるんだぜ? しかも情報収集のためじゃなくて愉しむために!!」

 

「なあその辺に…………」

 

「マジキモい!! なんなんあいつ。お前もそうだけど、オレも操舵なんて初めてなんだぞ?! そもそも船に乗ったことすらねぇ!! 勘と勢いに任せてここまでやって来たけど果たして着岸出来るのやら。それにお前と違ってこっちには教本すらねェ!!」

 

「出来るんじゃないですか」

 

「出来るかァ!! これでぶつけて沈めてみろ、文句言われるのオレなんだぞ? まじないわ〜……………………ぇ?」

 

 

 余りの驚きに瞳孔が小さくなっている彼女。

 彼女の視線は自分の後ろに固定されている。

 

 ほらな。

 後ろを振り返りながら、彼女の視線の先の人物に挨拶する。

 

 

「おはようございます。随分と早い朝ですね───上森一尉殿?」

 

 

 振り返った時、視線に入るのは緑。

 それも森のような、ではなく寧ろ森では目立ってしまう色合い。

 どちらかと言えば草原の方が保護色になって見つけにくいだろう。

 

 薄い緑、薄緑の髪を持つ戦闘服を着た美少女。(人格は問わないものとする)

 すなわち自分と彼女の上司、上森一尉である。

 

 寝起きなのだろうか。その長い髪は所々跳ね、戦闘服もシワがクッキリと出ている。その手には先程自分が投げた『航海士入門書』がある。

 てか操舵室の入り口、あのクソ重たい扉で閉まってたはずだが。一体いつの間にか入ってきたのやら。

 

 気になることは山ほどあるが、それは一旦置いておこう。

 問題は先程まで悪口を聞かれたことだ。恐らく全部。

 

 上官の悪口だから不味いのではない。

 ぶっちゃけ階級なんて結構テキトーに付けられているので、そこから生じる上下関係なんて誰も気にしていない。

 我らが敬愛するピンクロリの美少女(犬橋一佐)(中身は問わないものとする)に雑な態度をとっても怒られることは無い。

 

 ───が、このイカれレズ(上森)の場合には少し事情が異なる。

 

 

「おはようございます加々良(かがら)君。そして───」

 

 

 こいつは我が部隊───いや、自衛隊きってのサイコパスだ。

 

 他者を気遣う姿勢を見せず、また理解しようともしない。そもそもそんな選択肢が頭の中に無い。

 己の心を誤魔化さない、といえば聞こえは言いが、やってる事は自己中心的で傲慢な態度を隠さずとっているだけである。

 

 そしてコイツには趣味がある。

(肉体的な)同性を(性的に)食うこと? 違う。

 それもあるが、それよりもっと好きなことがある。

 

 

「随分と楽しそうに話してましたね、佐原(さはら)君?」

 

「ぁ……ぁ、あぁ…………あの、そのぉ……」

 

 

 それは支配だ。

 自分より立場の弱い存在を責める時、屈服させる時。そういった時に人一倍…………いや人二倍カタルシスを得るのが上森である。

 

 顔面を蒼白にする佐原。

 燃え盛るような髪と顔色の対比が、焚き火で生じる炎と灰を連想させる。

 

 一度始まった流れは止まらない。

 息を吐くように上森は佐原に圧をかけていく。その顔は醜悪が過ぎるが。

 口裂け女の方が可愛いかもしれん。

 

 

「おや? 舵輪から手を離しているようですが、オートパイロットの修理が出来たのですか? そんなスキルがあるなら他にもやってもらいたいことがあるんですよ。例えばこの電動マッs───どうしました? 顔色悪いですよ? まるで丸3日間一睡もせずに船の操縦をしてたみたいな顔ですね? あと3日ぐらい徹夜すれば元に戻ると思いますよ」

 

 

 それしたら死ぬだろ。

 本土の港から出港してから丸3日間徹夜中の加々良は思う。

 てかもう死にそう。

 

 暖かいベット。

 それが何より欲しいものだった。マジで寝たい。

 

 あと拳銃。

 目の前の上官を撃ち殺すために。銃弾が効くのかは疑問が残るが。

 銀の銃弾なら殺れるだろうか。

 

 

 

 操舵室の窓の外からは、いつの間にか水平線から顔を出し始めた太陽の光が入ってきた。

 今日も一日が始まる。

 

 

 

 

 





あらすじをよく読みましょう。

……はい、混乱しなかったのは政府だけです。
自衛隊は転移の煽りをモロに食らってます。
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