電子世界日本国召喚   作:とりさん

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余計なこと言うとネタバレしちゃうので、感想の返信内容はかなり曖昧にしてます。

ロデニウス沖海戦から一向に時間が進まない……。
取り敢えず日本列島、本編開始です。



第四話 墜ちる巨鳥、霞んだ記憶

 

 

 ───『あまつそら』到着8時間前

 

 

 暗くなって暫く経った空。

 フクロウが鳴き始めた頃、群馬県と呼ばれる土地の上空を、一機のティルトローター機が重低感のあるローター音を響かせながら飛んでいく。

 

 長い胴体、その左右に一本ずつ腕を生やした鋼鉄の猛禽類。

 白く塗装された表面は所々錆び付き、茶色で汚れている。

 

『V-22 オスプレイ』

 ヘリコプターのような垂直離着陸能力を有し、輸送機として嘗てのアメリカ軍、そして自衛隊によって運用されていた航空機だ。

 

 内部に多くの兵士、物資を積み込み、車両を吊り下げて移送することすら可能であるこの機体は今、コックピットにいる2人の自衛隊員を除いて誰も搭乗していない。

 

 モニターの微かな明かりを頼りに計器を操作しながら、1人の自衛隊員がポツリと話す。

 

 

「いやー楽しみだな」

 

「何が?」

 

「コレだよ」

 

 

 コツン、とメーターの一つを軽く叩いて言う。

 

 

「この……なんだっけ? ぶいとーる? とにかく人が乗れる航空機さ。こいつを見たらきっとあいつら驚くぞ」

 

「ああ確かに。人が乗れる航空機なんて普通はないか」

 

「そうそう。ちなみにこの機体、発見された中では一番ガワ(・・)が状態が良かったらしい。中の配線やら電子機器やらは全部イカれてたから同型機から使えるパーツを剥ぎ取って、まともに飛べるぐらいに仕上げたものなんだと。同じ物はあと1機用意出来るかってとこらしい」

 

 

 日本列島が転移する一ヶ月前。

 嘗て岩国基地と呼ばれていた廃墟(・・)から、様々な使用可能な(・・・・・)兵器や物資が回収された。

 

 武器弾薬、衣服、保存食、薬品、部品、戦車やトラックなどの軍用車両、通信機を筆頭とした精密機器エトセトラエトセトラ……。

 

 オスプレイはその成果のうちの一つだった。

 適切な装備なしで人が長期間滞在することが出来ない西日本に於いて、長居することは死を意味する。

 

 普通ならそこの探索はリスクしか生まないが、自衛隊にとってそれはメリットとなる。

 

 自分達以外───競争相手(・・・・)がいない、というメリットが。

 

 それ故に自衛隊は求めるのだ。

 

 家が、工場が、道路が、海が、森が。

 それらが黒き汚泥(放射性物質)で包まれたその空間で、誰にも触れられることなく仕舞われた旧時代の遺物を。

 地上の遺物はその殆どが役に立たないスクラップだ。

 

 それに対して岩国基地───その地下倉庫に納められていた上記の軍需物資は、汚染もなく、故障もない、そして保存状態は良好。戦況(・・)が悪化していた自衛隊にとってはまさに祝福と呼べるものだった。

 

 

 

 副操縦士のヘッドセットにノイズが入り、続いて声が聞こえる。

 

 

《オオトリ、こちらベース。状況を報告せよ。オーバー》

 

「こちらオオトリ。現在関東エリア、群馬県上空を通過中。残り3時間で横須賀港へと到着予定。オーバー」

 

《把握した。向こうで燃料補給は出来ないから残量に気を付けるように。アウト》

 

「了解。アウト」

 

 

 彼らの目標は、オスプレイの輸送能力を活かして太平洋側に上陸する部隊───すなわち犬橋一佐率いるロデニウス派遣部隊の回収である。

 

 基地(ベース)からの通信を切った後、副操縦士は今回の任務について疑問を呈する。

 

 

「それにしても」

 

「ん?」

 

「なんで何もない太平洋側で上陸するんだ? 越後(・・)で今までどおり上陸すればいいじゃないか」

 

 

 旧時代、世界でも五指に入る経済力と工業力を有していたこの国の国力は、しかし時代の流れによってによって大きく衰退することになる。

 

 越後、或いは『越後工業区』。

 それは現在の日本列島に於いて自衛隊───ひいては日本国に残された唯一の(・・・)生産拠点である。

 

 原子核の分裂を利用した技術。

 西日本を居住不可能(・・・)領域へと変えたその力を応用して、破壊ではなく電力に変え、それを供給することで稼働する工場群。

 

 数多の機械と人工知能によって労働者の存在を完全に排除した科学文明の到達点に位置するこの工房は様々な工業製品を製造する。

 武器、弾薬、艦船、航空機、車両、生活必需品───そして人工衛星。

 

 嘗て新潟市と呼ばれた場所に位置する工業区は、クイラ王国から輸入された各種資源を呑み込み、転移前の何十倍という勢いで日夜休まず生産を続けている。

 

 そうして作られた工業製品は劣勢な戦線(・・)へと届けられ、破壊され、消費され、今日も鉄屑へと変わっている。

 

 

「そう思ったんだが…………お前転移の影響で海流が変わったって話知ってるか?」

 

 

 操縦士はポチポチとボタンやスイッチを押しながら話す。

 ちなみに操縦士はボタンやスイッチの役割を理解していない。

 

 何処を押せば何が機能するのか、或いは何を停止させるのか。何も分からないままにソレらを手遊び感覚で、半ば無意識に触っている。

 オスプレイの取り扱い説明書は地下倉庫には無かったらしい。

 

 肉体的な能力は旧時代と比べて飛躍的に向上したが、質に関しては致命的に低下した自衛隊であった。

 

 

「そうなのか?」

 

「旧時代の観測基地で集めたデータが確かならな? んで、『あまつそら』なんだが…………どうやら燃料がギリギリらしくてな。日本海側に行くと流れの変わった海流のせいで中国エリアまでしか航行できないんだと。だから海流に乗って航行できる太平洋側、そのなかでもマトモな港湾設備がある横須賀が上陸地点に選ばれたらしい」

 

 

 先月打ち上げられた通信衛星によって、短時間ながら本土との連絡に成功した『あまつそら』は、協議の末に比較的綺麗な(・・・・・・)港湾である横須賀へと向かっていた。

 

 そして統合幕僚監部(自衛隊上層部)は、彼女らの迎えのために虎の子のオスプレイを本拠地の越後工業区から派遣したのだ。

 

 ……尤も、『あまつそら』に乗っているのが自衛隊員だけであれば自力で帰って来いと言っていたかも知れない。そうなっていないのは、犬橋一佐の部隊が勝手に連れ帰ってきたお客さん(ブルーアイ)が原因である。

 

 流石の自衛隊も他国の人間を危険エリア(・・・・・)で歩かせるわけにはいかなかったのだ。もし彼に何かあったらこと(・・)である。

 

 クワ・トイネ公国(どうでもいい国)と敵対してクイラ王国(最重要相手国)との貿易を妨害されたらたまったものではない。

 今回の件に関して、彼らは東の連中(・・・・)以上に気を遣っていた。

 

 

「なるほどな。確かにそれだとオスプレイを使うのも納得だわ。車じゃ道がなくて行けねえよな」

 

 

 転移の数日前、北陸エリアと関東エリアを結ぶ高速道路が爆破されたという報告を思い出した副操縦士は納得する。

 

 

「そういう事だ。資源の余裕は出来たが、高速道路の復旧には数日かかるらしい。お陰で関東エリアに展開してる部隊が……ってなんだこれ?!」

 

 ───ビービービー!!

 

 突如けたたましい警報音がコックピットを満たす。

 前の計器のうちの幾つかは激しく明滅し、今が危険な状態であることを搭乗者に示している。

 

 

「うるせー!! 絶対ヤバいやつだぞこれ!?」

 

「分かってるって!! いったい何が「右側から何か来てる! ミサイr───」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 § § §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地上に広がる廃墟群、嘗て栄えていた都市の遺構から一筋の煙が伸びている。

 携帯式地対空防空誘導ミサイルシステム(MANPADS)から発射された地対空誘導ミサイルの跡だ。

 

 煙の伸びた先では、先程まで空を飛んでいたオスプレイが爆炎に包まれ、バラバラの残骸となって地上に降り注いでいる。

 

 一方で、ミサイルの発射地点には明るさを絞ったランタンに照らされる数人の人間がいる。

 人々が電子の世界で生きるようになる前の時代───旧時代のように私服に身を包んでいるが、その顔はバラクラマで隠され、砂漠色の防弾チョッキで胴体を保護している。

 

 さながら銀行強盗か、そうでなければテロリストのような出で立ちだ。

 

 そんな彼らの傍では寒々しい髪色をした1人の少女がコンクリートの上に転がっている。

 季節は春。まだ少し肌寒いと言うのに、彼女は一糸纏わぬ姿でピクリとも動かない。

 

 当然だ。死んでいるのだから。

 

 瞳孔は大きく開き、鼻や口から流れる血は、彼女が死んで間もないことを表している。

 

 歯は砕け、引き抜かれ、四肢は尽く折れてはいけない方向に折れ曲がり、手足合わせて20枚の爪は全て剥がされ、躰の隅々にまで凄惨極まる拷問と陵辱の跡が刻まれている。

 

 それを行ったであろう彼らに少女の様子を気にする者はいない。日々の恨みと溜まっていたもの(性欲)を存分に発散した彼らは、新たな戦果(・・)に歓喜していた。

 

 彼らのうちの1人がカーキ色のトランシーバーを触る。床で転がっている彼女───自衛隊員の持ち物だ。

 

 一時的に通信内容を録音出来る機能を使い、もう一度内容を再生する。

 

 

《……ザザッ…………群馬…………通過中……横須賀…………到着……》

 

 

 それはノイズが酷く、とても聞けたものでは無かったが、収穫はあった。

 

 彼らのうちの1人が話す。低い男の声だ。

 

 

「やつらは横須賀で何かをしようとしていた。どう思う?」

 

「はい!」

 

 

 彼らの中でも一際背の低い人間が元気よく手を挙げる。二次性徴を迎えていない男───少年と呼べる時期特有の高い声だ。

 最初に質問した男は呆れた、しかし確かな親しみを感じる声で言う。

 

 

「ここは学校ではないぞ。言いたいことがあるなら普通に言えばいい。わざわざ手を挙げる必要はない」

 

「はい、分かりました!」

 

 

 全く分かっていない様子だった。

 そんな少年の様子を周囲の人間は生暖かく見ている。

 とても床に転がっている少女への行為(・・)を行った後とは思えぬ程穏やかな光景である。

 

 少年はそんな周りの様子を気にすることなく続ける。

 

 

「横須賀には大きな港があります。横須賀基地と言って大きな軍事基地もあったはずです」

 

「なるほど? それで?」

 

「軍事基地自体はもう使えないかも知れませんが、もしかしたら兵器は残っていたのかも。それをあの大きな飛行機械で運ぼうとしていたのかも」

 

「そうか。ならどうするべきだと考える?」

 

 

 質問の意図が変わる。

 情報の精査から、自分達の今後についてへと。

 

 少年は真っ直ぐその男を見据えると、はっきりと迷いなく応える。それが当然であるかのように。

 

 

「行って、調査するべきです。本土にのさばる悪魔共に少しでも打撃を与えるために」

 

「よろしい。では君の意見を採用しよう。異議は…………ないな。では同志諸君、荷物を纏めたまえ」

 

「了解です! リーダー!」

 

 

 少年の元気な返事とともに彼らは動き出す。

 少女の遺体を足蹴りし、壁に立て掛けていた銃火器を手に取る。

 

 

「ところで」

 

 

 ランタンを1人が持ち、他の人間は荷物の入ったリュックを背負う中、少年はポツリと先程リーダーと呼んだ男に問いかける。

 

 

「どうした?」

 

 

 男は水を飲むためにバラクラマを下ろしながら尋ねる。

 額に火傷の跡が残り、額には深い皺が刻まれた黒目黒髪の男だ。

 

 そんな旧時代では周囲の注目を集める顔を少年は気にすることなく言葉を続ける。

 

 

がっこう(・・・・)って何ですか?」

 

 

 純粋な、ただ素直に疑問を放つ少年を見て、男は言った。

 

 

「この島が我々のものになった時、お前のような子供が毎日行くようになる場所さ」

 

「訓練場のようなものですか?」

 

「いや」

 

 

 すっかり霞んでしまった記憶を思い出しながら、男は続ける。

 

 

「銃なんて持つ必要がない。誰でも楽しく笑って話せる、そんな場所さ」

 

 

 





軍事ニワカなんで用語はミスりまくってるかも知れない。
何故か原因不明の眠気に襲われているので日本語もおかしいかもしれない。

ちなみにオスプレイに乗ってた自衛隊員や通信相手(ベース)容姿は(・・・)美少女です。
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