遅れました。
この二次創作の主人公は“日本国”ではなく、“自衛隊”です。
フォーカスしてるのが自衛隊なので………まあだからなに?と言った話ですが。
普通は自衛隊
暖かい。
ふわふわとした柔らかい生地の服に包まれているから。
暖かい。
よく暖房の効いた、明るい照明といい匂いのする部屋にいるから。
暖かい。
聞けば無条件に落ち着いてしまう、そんな重く低い声と軽く高い声が飛び交い、笑い声が聞こえるから。
暖かい。
軽く高い声の持ち主が自分を持ち上げ、自身の胸元へ密着させたから。
暖かい。
とくとく、と一定のリズムで響く鼓動に何処までも“安心”を感じていたから。
アタタカイ?
アタタカイ、アカイ、エキタイ、カラダ、ツカル。
ムナモト、カラ、アフレル、ドクドク、トマラナイ。
カゼ、ビュービュー、サエギラレナイ。
フタリ、コエ、キコエナイ、ダレカ、ヒメイ。
フク、ズッシリ、オモイ、アカニ、ソマル。
「───っ!」
「おやようやくお目覚めかい?」
急な寒さに意識が浮上する。
目を開くと、視界の下半分にはピンク色が、上半分には水色が広がる。
「…………む?」
「おやおや相当お疲れのようだねぇ。こんな外で寝るなんて〜」
「そと?」
体に力を入れると背中に鈍い痛みを感じる。どうやら仰向けになっていたらしい。
上半身を起こして周囲を見渡す。
ロービジ塗装が施された金属の床。
その先には金属の柵があり、更にその向こうには青い海が見える。
「状況判断が遅いよ〜。本当に寝ぼけているのかい?」
声の方向に視線を向けるとピンク髪の少女が目に映る。昔のソシャゲに出てきたような見た目の美少女だが、その身に纏う迷彩服が、彼女が軍人であることを示している。
そして、視線を下ろすと自分の体が目に入る。
こちらも彼女と同じ迷彩服だ。
あ……そっか。
心臓から送られた血が脳へと回り、脳細胞を活性化させる。
少しボヤケていた視界と思考がクリアになる。
「───すぅ」
少し冷たい、潮混じりの空気を吸い、肺に酸素を送り込む。
拳を軽く開いて、閉じる。
もう大丈夫。
「おはようございます。犬橋一佐」
目の前の少女───自分の上司に挨拶する。
ロデニウス派遣部隊の指揮官にして、西日本方面隊司令官、犬橋一佐。
ピンク色の髪にオッドアイ、幼女体型とまさにロリの極致のような容姿をしているが、その口調や仕草からおじさん臭が香る。
だが肉体に引っ張られてか、時節見た目相応の少女のような振る舞いが、普段の彼女とのギャップを生じさせ、自衛隊内で密かな人気を生んでいる。
恐らく無意識にそうしているのだろう、だがそれがいいのだ。
無自覚なままに可愛らしさを見せ、そして次の瞬間には先ほどの光景は幻想だと言わんばかりに
本人はきっと、気付いていないのだろう。
その小さな躰がどれだけ周囲を───自分を魅了しているのか。
にへらぁ、と笑いながら彼女(彼?)が返す。
「うん、おはよう───上森クン」
ああ、今日も可愛い。
その特徴的な色の髪を視線に入れるだけで胸が高鳴り、その顔が自分のために向けられたというだけで頭がピンク色に染まる。まるで彼女の髪色のように。
顔に血が巡る。自分からは見えないが、恐らく朱が差している筈だ。
バレてないだろうか。いやきっと彼女のことだ。どうせ気付いていない。
つい先日、貴方の容姿が性癖だと
あの時は篠原准尉をだしに告白したし、彼女も篠原准尉をだしに流したが、今度は面と向かって告ってやろう。……いつかきっと。
「
薄緑髪の少女は、そう言って『あまつそら』の甲板上に立ち上がった。
§ § §
───ありえない。
一言で表すなら其処はそういう場所だった。
数百メートルを超える灰色の建造物がいくつも乱立し、それが何処までも続いている。
大地も建造物と同様の灰色の建材に覆われ、それが建物と建物の間を埋め尽くしている。
それだけならまだ良かった。
噂に聞く列強の首都も摩天楼が聳え立っていると聞いたことがある。
だが、これは違う。
其処には本来あるべきものが無かった。
それは人の気配だ。静か過ぎるのだ。
人の声は無く、変わりに何処にいるのか分からない鳥獣の鳴き声が反響している。
人工物が溢れる空間には、余りにも似つかわしく無い自然に侵食された姿だった。
かつて建造物に施されていたであろう色とりどりの塗装は、今はすっかり褪せ、そのうちの幾つかは半ばから折れ瓦礫へと成り、跡地からはまるで此処にいるのが当然とばかりに巨木が聳える。
灰色の大地はひび割れ、その隙間からは草木が茂り、陥没した場所には苔で囲まれた小さな池が出来ている。
その上を馬車ほどの大きさの鉄の骨組みが、苔に覆われながら何十何百と列を成している。
かつて繁栄した一つの文明、その終わりに広がる光景に圧倒されるブルーアイは呆然と呟く。
「ここは…………遺跡?」
その朽ち果てた姿はまさに、古代の遺跡と称するのが相応しい場所だった。
「遺跡なんでしょうかね? 私からすればただの廃墟ですけど」
後ろから掛けられた声に驚いて振り返ると、そこにはゴツい黒光りする鉄の棒を持った上森が立っていた。
「上森殿……」
「お元気そうで何よりですブルーアイさん。丸2日船室から出てこないと部下から聞いた時には焦りましたよ」
2日前。
ロウリア王国海軍をたった一度の大魔法(彼女ら曰く「カクコクゲキ」というものらしい)によって
そしてそんなブルーアイを心配した自衛隊員が、彼の船室(実際は彼の様子を見かねた個室持ちの隊員が貸した)に突入し、起こされたことで彼はようやく『あまつそら』が
ちなみにこの一連の流れはクワ・トイネ公国に無通告で行われたため、彼の国に派遣されている“何も知らない”
とはいえ、外交官は本当に何も知らないので、ある意味では被害者であると言える。
ただまあ、それは別のお話。
さて、話を2日後。つまり現在に戻そう。
ブルーアイの乗る『あまつそら』は無事に日本列島の横須賀へと到着していた。…………燃料の影響で越後ではなく太平洋側に向かうことになったり、デスマーチのせいで佐原と加々良は死にかけているが。
それでも漂流して無いのなら無事である。
ガバガバ判定の現場猫とブラック労働という旧時代の悪いところだけを引き継いだ組織が此処にいた。
「あの、此処は日本国なのですか? その……随分と荒廃しているようですが。もしかして何処かと戦争になっていたのですか?」
あれほど秘密のベールに包まれていた日本国の本土へとあっさりと来ることが出来たブルーアイは困惑の表情を浮かべながら上森に質問する。
確かに目の前に広がる廃墟群だけでもどれだけ繁栄していたかは察することが出来る。ただそれは
『あまつそら』のような鉄の巨船を持っていてもおかしく無いと思える文明の痕跡を見て、ブルーアイはこの地域が大規模な“何か”が原因でこうなったのではないかと考えたのだ。
上森は淡く微笑みながら口を開く。
「戦争? そんなものはここ数十年起きてませんよ。そもそも私達の国は転移前の世界では外交なんてしていなかったので」
「外交をしていなかった?」
「そうですよ。周辺国と一切の連絡を取らず、領海を徹底的に封鎖し、領海と領空と領土に侵入した存在を認めれば片っ端から攻撃する…………まあ鎖国というやつですね。大昔にもこの国は同じようなことをしていたらしいですよ」
ブルーアイは絶句した。
他国との交流を完全に排除した国家。海という天然の障壁に囲まれ、国内には巨大な都市の遺構を抱え、それでもなおロウリア王国海軍を一撃で葬る程の「力」を持っている。
つまるところ、必要な資源を自国で集め、必要な技術を自国で開発し、必要な資材を自国で生産する。
何もかもを、他国に一切頼ること無く一国でやり切る国力が、日本国にはあるという事だ。
国土が荒廃してもなお、これだけのことをやり続けられるというのは……。
一体、日本があった世界はどれだけ厳しい世界だったのだろうか。
「ブルーアイさん、朝食はお食べn───」
───パーン、と。
遠くから届いた破裂音がブルーアイの耳に入ると同時、上森は静かに地面に倒れた。
書くの忘れてた……。
■自衛隊員個人情報ファイル
●犬橋
階級:一佐(結構偉い)、元老、元日本政府軍事アドバイザー
役職:西日本方面隊司令官、現ロデニウス派遣部隊長
主任務:西日本放射能汚染領域の探索、及び旧時代の遺物収集。現在はクワ・トイネ公国の防衛支援。
容姿:背丈の低いピンク髪の少女(旧時代に存在した、透き通る世界の一人称おじさんのゲームキャラと類似)
経歴:西暦██年に自衛隊に入隊。██年に██作戦からの逃走撤退中、██(後の上森一尉)を回収。その後『蓬莱計画』へ強制的に参加させられる。
現在は上森一尉の個人的保護者として自衛隊に所属している。
備考:ファイルの機密レベルを█日前に変更。以降は情報保全隊の優先的保全対象へと切り替えられるものとする。