深海で生まれたココロ   作:ほがみ(Hogami)⛩

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拾壱 改名

A島鎮守府に来て1週間ほど経った

ワタシは赤城や夕立、その他あの作戦に参加していた者と交流し、彼女達の言葉を少しづつだが覚え始めていた

 

「アカギ…ありがとう」

「いえいえ。どういたしまして。そういえば傷の調子はどうですか?」

「見ての通り…こんなカンジ」

 

ワタシ精一杯左腕に力を込める。しかしピクリとも動かなかった

触られている感覚も痛みも最近は無くなってきたように思える。左目に関しては、眼帯で押さえている。完全に見えなくなってしまったが、まだ回復の可能性はある。それ以上は望めないかもしれないが…

1度眼帯を外して目を開いてみる。

やはり何も見えなかった

しかし赤城はワタシの目を見てぼーっとしていた

 

「…アカギ?」

「あ、いえ!ごめんなさい。綺麗な瞳の色だなと思いまして…」

 

ワタシの目の色は空色。エリートやフラッグシップにもなれば黄色や赤に変わる。そうなるのは歴戦の深海棲艦のみ

しばらく目を開けていると、なんだかジンジンと左目が燃えるように熱くなってきたように感じる。赤城は驚いたような顔を浮かばせ、ワタシに鏡で素顔を見せると、ワタシの左目は青い炎で燃えているようなモヤが出ていた

 

「い、痛みは無いのですか?」

「ない…ただ、少しジンジンするだけ――ヲ、治った」

 

眼帯を付け直すとそれは治まり、目の違和感も無くなっていく

なんなのだろうか。過去に艦娘の攻撃により隻眼になった空母ヲ級が恨み辛みで目から炎を燃やしたという話は聞いた事がある。伝説の話だと思っていたのだが、その状況に近いのだろうか?

すると赤城は、まあとりあえず置いておいてと1度咳払いをして、話したいことがありますと一言置いた

 

「ヲ級。私たちの司令官にあって欲しいのです」

「……?」

「提督が直々にあなたと会話をしたいと話があり、もし良ければこの後どうかと」

「……」

 

元敵陣営のトップ。どんなことを言われるのだろうか

叱責か、あるいは軽蔑か。だがいつまで経ってもこの場所で深海棲艦としている訳には行かないと思っていた

今こそ彼女達に向き合うべきなのだろう

 

「心配するのは分かります。提督も悪い気持ちであなたと会話したい訳ではありませんし…」

「…わかった。ワタシ、テイトクに会う」

「本当ですか!」

 

赤城は嬉しそうな顔を浮かべ、ワタシはベットから降りる。1週間ぶりの地面に足を取られて転びそうになるが、赤城から支えてもらう。

このまま行くと他の艦娘になにか言われそうだとのことでフード付きのマントで体を隠す

そして…提督がいる執務室にたどり着いた

 

「―失礼致します。赤城です。空母ヲ級をお連れしました」

 

中から入っていいとの声が聞こえる。

扉が開かれると、12畳ほどの部屋の奥に机があり、そこに提督はいた。凛々しい目でこちらを見ており、ワタシは少し恐怖を感じる。だが赤が背中を支えてくれて、「大丈夫ですよ」と励ましてくれたお陰で一足前に出ることができる

 

「ワ…ワタシは…空母…ヲ級…ハジメマシテ…」

 

その言葉に提督は柔らかい言葉と笑顔で返してくれる。

その後、ワタシの腕と目が完治できないことについて謝罪した。ワタシは思っていなかった反応で少しアタフタしてしまうが、この人にワタシに対する敵意は無いのだと認識できる

話を聞けば、元々赤城からワタシのことを聞いており、とても興味が湧いていたのだとか。

―そしてもし良ければ、こちらの仲間にならないかと。

 

それに関しては少し恐怖がある。

異質なものは排除される。飛行場姫はそう言った。深海棲艦としても艦娘としても異質なワタシは、こちらで戦えるのだろうかと

しかし赤城はそれを見越していたようで、ワタシに対しこう囁いた

 

「この1週間、あなたの元に来た人はみんな笑顔でした。だから心配しなくて大丈夫ですよ」

 

ワタシは1週間で出会った人を思い返す

赤城に夕立、高雄に愛宕、天龍や時雨のことを。

誰一人として深海棲艦である私に罵声を浴びせることはなかった

 

「…深海棲艦から追われたワタシは…カンムスになれる?」

 

問いに提督はなれますともと笑顔で話してくれた

 

「…ワタシ、カンムスになる。信じてくれたみんなのタメに!」

 

提督はいい言葉を聞けて良かったと笑顔で微笑み、続いて艦娘名を決める会議が開かれる。

ワタシ自信には名前はない。ヲ級と呼ばれているものの、それは分類上の名前であるし、個とした名前は深海棲艦には必要ないのだから

どんな名前がいいかと聞かれても、ワタシには答えようがないし…

とワタシと提督は悩んでいると、赤城がひとつよろしいでしょうかと名前を提案する

 

「彼女の蒼い瞳と空母ヲ級から取って、(アヲ)と呼ぶのはどうでしょう」

「蒼…いいナマエ」

 

蒼。どこか懐かしいような名前であり、とてもしっくしり来た感じがする。

提督はスラスラと書類に名前を描き、ワタシにその紙を手渡す。そこに書かれていたのは、『空母ヲ級型深海棲艦改め、深海転換型航空母艦"蒼"』ワタシのハジメテの名前で、艦娘と認可された瞬間だった

 

「…改めて…深海転換型航空母艦・蒼。テイトク…ワタシ、アナタの力になる」

 

深海で生まれた時はこのような出会いになるとは思わなかっただろう。この瞬間、ワタシは再び生まれ変わったような気がする。

以前は深く冷たい道であったが、新しく歩むこの道がどうも暖かく感じた。




ヲ級ちゃんの名前は最初蒼ヲ(ソウヲ)にしようかなと思っていたんですけど、語呂悪いなぁと。次に蒼(ソウ)と考えていましたが、それではヲ級らしさが無くなると。ならば蒼(アヲ)にしましょうとなりました。
深海転換型空母・蒼をよろしくお願いします。実装待ってます。
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